ライダーさんたちのバイブル、ツーリングマップルの北海道編を開いてみる。
北海道編だけで何冊も持っているが、一番古い2005年版だ。
青二才だった僕が未知なる北海道に夢を馳せて目をキラキラさせて見入っていたそのツーリングマップルは、読み込みすぎてボロボロだし、さすがに18年も前のものなので劣化もしてきている。
その中の1つの写真に目が留まった。
「カムイワッカ湯の滝」。
温泉の流れる滝である。滝のぼりをして最上部まで行くと、湯舟みたいにちょうどいい滝つぼがあるのだが、2004年を最後に大部分が閉鎖されてしまった。
2005年版のツーリングマップルは、2004年の取材データによって作成されているので、手に取った時点でもう上の写真のように湯舟に浸かることはできない。
僕が未知なる北海道に夢を馳せて目をキラキラさせたスポットは、もうこの18年でほぼ全部行っているが、こういう経緯でカムイワッカ湯の滝だけは行けなかった。
だが、長い年月を経て歴史が変わる!
2023年、カムイワッカ湯の滝、再び解禁!!
2023年の夏、アツいのは気温だけじゃなかったんだな!!
知床半島の最奥地
今回語るのは、2023年のことではない。
今年の夏はまだ北海道には行けてないのだ。…というより、今年の夏休みは九州に行こうとしている。
つまり僕は2023年に解禁されたカムイワッカ湯の滝には行けていない。
じゃあ今回何を書くのかと言うと、「大部分は閉鎖されたけども一部は行けるよ」ってなってた、この18年間の様子を書こうと思うのだ。
最寄りの町である知床ウトロから約24㎞。
しかもその行程の大半は未舗装路であり、スマホも圏外であり、クマが多く生息する大自然で世界遺産の山の中。しかも当然のように道が狭い。
7月や8月であれば混雑などを避けてマイカー立入禁止でシャトルバスなどでないと行ないのだが、9月に入るとマイカーもOK。
僕は日本6周目の初秋、愛車の日産パオでこの道を走った。レトロで貧弱なパオは、この未舗装路でドッコンドッコン揺れたね。すまん、パオ。
誇りまみれになってカムイワッカ湯の滝の駐車場に辿り着いた。
スタッフさんが常駐していて駐車場の場所を指示してくれたり、然るべき装備を持っているか確認されたりする。
写真の奥がもう滝への入口。かなりいい立地の駐車場だな。
カムイワッカ湯の滝は、ザックリいうと「一ノ滝」から「四ノ滝」まで分類される。
下流の一ノ滝からグイグイ滝のぼりをしていくと徐々に滝の湯温が上がっていき、四ノ滝のあたりで浸かっていてちょうどいい温度になるそうだ。
しかも四ノ滝の滝つぼは広くて丸くてちょうどいい深さで、公衆浴場の湯舟みたいな感じだそうなのだ。
冒頭に掲載したこの写真も、四ノ滝である。
説明書きにある通り、20分ほど滝のぼりの必要があるらしいね。
2005年~2022年は二ノ滝以降がすべて閉鎖されてしまっており、つまり僕の訪問時も一ノ滝までしか行くことができなかった。
残念だが、それでも楽しいいいスポットだった。それを次章にてご紹介しよう。
ワクワクするアクティビティー
正面に滝が壁のように立ちはだかる。圧巻の光景だ。
ここにチャレンジするには必要なものがいくつかある。
1つ目は沢歩きできる靴。沢靴とかウォーターシューズとか、しっかりカカトを固定できるサンダルとか。
2つ目はある程度濡れてもいい服。ひざくらいまでは濡れるので、裾をまくりあげれば大丈夫。
3つ目はチャレンジ精神。これ一番大事。でもウトロからここまで舗装路を走って来た時点で、みんなチャレンジャーだよね。
ただ、上の写真の部分には正面からの突撃はしない。
左側の遊歩道から回り込む。
なかなかにバイオレンスな角度だもんね。そっか、そもそも滝だもんね。
遊歩道を登りながら横目で見ようぜ。
そして滝の中腹。ここからは傾斜がやや緩やかだ。
遊歩道から滝そのものに突撃し、中をジャブジャブ歩きながら登って行くことができるゾーンの始まりだ。
すげーワクワクしてきた。このためにサンダルを持ってきたんだもんな。
ね、滝のぼりというよりかは渓流歩きって感じでしょ?
もちろん注意を払う必要はあるが、老若男女問わず楽しめるアクティビティースポットだと思う。
はい、もう川の中に一歩入っただけで楽しい。
渓流の水ってキンキンに冷たいイメージがあるけど、そこは世にも珍しい温泉のカムイワッカ湯の滝。冷たくはないのだ。
かといってアツアツではなく、「ちょっとぬるいかな?」くらいな感じ。ようするにこの半袖で過ごせる季節にとてもちょうどいい湯加減。
振り返って下を見ると、さっき遊歩道でトラバースした傾斜のきつい最下部が見える。
これはなかなかの迫力。ちなみにここには立ち入りはできない。
写真右上に見えている橋は車道であり、さっき左から来て右側にある駐車場に愛車を停めたんだ。
同じような絵ばかりで恐縮だが、あなたもきっとここに来ればそうなる。
しかし楽しいのだ。
童心に返るっていうのはこういうことなのかな?ただただ水の中をジャブジャブ歩いているだけなのに、なんで口角が上がりっぱなしなのだろう、僕。
きっと本能が喜んでいる。五感全体で喜んでいる。そこに具体的な言葉はいらない。
しかしいい時期にここに来たものだ。
前述の通り、7月や8月はマイカー立入禁止でシャトルバスに乗ることになるので、それはそれでラクチンだけどもスケジューリングが大変になる。
かといって6月や9月の知床って、かなり涼しい時期だからね。そうなると渓流遊びには不向きとなる。
これは9月の中旬。晴天だし珍しくポカポカにほど良く暑い気候。
こんないい時期に渓流遊びできているのだから幸せだ。
もっとも、2023年の今年のようにアホみたいな猛暑が今後のニューノーマルとなるのであれば話は別だけどね。
ここ2・3年の地球、なんか変だ。北海道は涼しいくらいがちょうどいいのに。
…とりあえずズルッと滑りそうになった。
二ノ滝以降の封鎖と18年ぶりの開放
閉ざされた世界
カムイワッカ湯の滝は2005年に大きな転機を迎えたそうだ。
その大きな理由が2つある。
1つは、知床が世界遺産に登録されたこと。
知床には観光客が押し寄せ、ここにもすごい数の人が訪れるようになった。そうなるとやっぱり事故などの危険が増す。
だから本当は四ノ滝よりさらに上の、もっと高温でいい感じの滝つぼもあったそうなんだけど、それらが全部閉鎖となった。
上に行くほど危険だからだ。
2つ目は、それと時を同じくして落石が見られるようになったこと。
四ノ滝に大きな落石が数個みられるようになったので、「これはキケンだ」ってことで一ノ滝より上を完全閉鎖した。
この2つの事件が2005年に起こったのだ。
だから2005年のシーズン後半以降、誰も二ノ滝よりも上に行けない時期が続いていた。
一ノ滝エリアの滝も数段に分かれていて滝つぼがあるが、これはぬるいので入浴って感じにはならない。むしろドボンと転落しないように注意だ。こちとら普通に服を着ているからな。
もう一段登れば、一ノ滝エリアのゴールとなる。
なかなかの傾斜だが、本来の二ノ滝以降に比べればまだまだ序の口っぽい。
はい、登れるのはここまでだ。以下のようなプレートが掲示されている。
この先上流側で落石が発生しており、今後も落石の恐れがあるため、これより先の立ち入りは厳禁です。絶対に登らないようお願いします。
奥に見えているのが二ノ滝だろうか?
傾斜はさらにキツくなり、ワイルドな雰囲気を醸し出している。
2005年以降閉ざされている世界。僕らはまたいつか、このロープの先に行くことができるのだろうか…?
再び開放された世界
2023年夏、衝撃のニュースが飛び込んできた。
カムイワッカ湯の滝、二ノ滝から四ノ滝まで再び開放するとのことだ。
正確に言うと2021年に超久々に3日間だけ限定解放されたり…みたいなイベントもあったのだが、ちゃんと復活するのは2023年が初であり、実に18年ぶりとなる。
ただ、ロケーションは以前と少し異なる。
やはりずいぶんと落石が増えたようなのだ。今までの立入禁止地点のロープ越しに二ノ滝を見ただけでも、これだけ巨石がゴロゴロしているもんな。
かつては滝つぼが湯舟のようだった四ノ滝も、大岩がたくさん転がり込んで"入浴"って感じのロケーションではなくなってしまったらしい。
しっかえい安全面を確保する上でも、カムイワッカ湯の滝へは完全予約制。
1日210名までであり、時期にもよるけども2000円~2800円ほど料金が生じる。
さらには事前のレクチャー動画視聴やヘルメット着用が義務化されるような、自然の中ではあるけども有料のアクティビティー施設に姿を変えた様子だ。
もともと無料とは言え気軽には行けないスポットであったが、よりハードルが上がったかもしれない。特に、その日その日を天気やテンションをもとにアドリブで動く旅人にとってはなかなか予定が立てづらいスポットとなったかもしれない。
そこの自然をしっかり守り、かつ観光客の安全も守るのであれば、このくらいが妥当なのかもしれないね。
ちなみに今年四ノ滝まで行った人のリポートなど見ると、かなりハードな滝のぼりで、怖いしケガしそうだし断念する人もいるしで、ハンパなカクゴでは無理なんだなぁって理解した。
ボルダリングとかで予行練習しといたほうがいいかもしれんね。
僕は今年は北海道には行かない。すぐにはカムイワッカ湯の滝に再訪することはできない。
だけどもいつかこの深部に足を踏み入れることを楽しみにしているよ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: カムイワッカ湯の滝
- 住所: 北海道斜里郡斜里町遠音別村
- 料金: 2023年までは無料、2023年の新運用形態からは¥2000~2800
- 駐車場: あり
- 時間: 2023年の新運用形態からは9:00~16:00、事前予約制