2023年現在、日本国内には参観灯台(一般人が登れる灯台)が16基ある。
その最南端が宮古島の最東南端である「東平安名崎(ひがしへんなざき)」に建つ平安名埼灯台だ。
国内全ての参観灯台を見て来た僕が、その最後となる2023年春に辿り着いたのがこの平安名埼灯台であった。
さぁさぁさぁ!
もう敷地内に入ったようだぜ!宮古島の突端はもう目の前のはずだ!
数時間前はやや曇り空だった宮古島、今はそれなりに晴れ渡ってきた。
これは良い!いい風吹いてるぞ、我が人生!!
未知の彼方に平安名埼灯台が見えてきた!
あれが島の東南の終着地点!
珊瑚礁の海にニョロッと細長く突き出した半島の最先端部分だ!!
駐車場に車を停めた。
外に出ると南国の熱い風が身を包んだ。
青の海を眺めながら歩く
駐車場から岬の灯台までの距離はザッと300mほど。
別に取るに足らない距離ではあるが、この南国沖縄では少々堪える距離だった。
なにせ暑いのだ。
まだ3月ではあるが、薄手のシャツ1枚でも普通に汗ばむのだから。
体感としては関東地方の6月下旬とかと同じくらいであろう。
上の写真のように、綺麗な芝生と遊具の周囲には誰もいない。
この暑い中であんなところ行ったら、遭難するに決まっているからだ、たぶん。
そんな人々の心の隙間にスッと入り込んでくるのが、駐車場の隅にいるキッチンカーだよね。
僕もゾンビのようにフラフラと近寄ったが、ちょっと苦手な南国系フルーツを使ったものばかりだったので残念ながらスルーした。
岬の先端へと続く遊歩道の脇にはプレハブ小屋があり、ここで協力金300円以上の支払いの声かけをされる。
2021年から始まった運動で、「任意であるはずなのに強制的に徴収された!」みたいなクレームも出ちゃったりして活動はちょっと混乱しているようだ。
ただ、これだけの公園を綺麗に管理するのって、やっぱお金必要だよね…。その点だけは理解できる。
ところで、その遊歩道起点のすぐ脇から海方面に降りる道がある。
ご覧の通り「保良漁港」と書かれているので、漁港に降りる道なのだろう。
漁港まで降りなくっていい。ほんのちょっと坂を下ったところから海を見下ろしてほしい。
とっても綺麗だから。
はい、これは本州では見られない海の色だね。
ごめんなさい、少し彩度を調整しています。南国の魅力にさらにブーストをかけたい気持ちに駆られてしまったので。
ちなみにこの先も彩度を調整した写真は出てくるのでご承知おきください。
大きな岩がゴロンゴロンとトラップのように点在している海岸。
これ、漁港を行き来する船はテクニカルに避けることになるのかね?
シューティングゲームの弾幕みたいだな。
灯台はまだまだ先。
景色はいいけども暑い。歩道からの照り返しもキツい。
3月でこれなのだから、夏本番だったらクラクラしちゃうかもしれないな。
途中で傍らに巨大な岩があった。
「マムヤの墓」という名前の岩らしい。
説明板があったので読んでみた。以下にザックリと略そう。
マムヤっていうのは、なんだかハーブの香りがする美女。
野城按司(按司ってのは豪族のこと)とラブリーな関係になるが、実は野城按司は妻子いるので不倫関係。
なんだかんだで野城按司、マムヤに対し「今後のことを考えるといい匂いのオマエより糞尿の臭いがしても妻の方がいいや」って言い放ってマムヤを捨てる。
マムヤ、ショック受けて平安名崎の断崖から飛び降りる。
…全方向に対し救いようのない話だ。なんてこった。
そもそもこの物語が始まった時点で誰も幸せにはなるまいて。
これを読んでどういう感情をいだいてどういう顔をしろってんだよ。
そんなことをモヤモヤ考えているうち、保良漁港がずいぶん後ろに見えるようになった。
左奥、防波堤に囲まれた四角いエリアが漁港だな。
少し沖合を見ると、海の深さの影響か、場所によって色が全然違う。
このコントラストが沖縄の海って感じで美しい。
灯台の目の前まで来た。
冒頭でも書いたが、この灯台は一般人でも登ることができるぞ。
では、これからこの灯台の内部に突撃する!
平安名埼灯台に登ろう
他の参観灯台がどんな感じか知りたい方は、上記の【特集】からご覧いただきたい。
僕は全て訪問しているから。
もっとも、灯台に登ったのはその中でも一部だけど。
灯台に登るには、日中の営業時間内に行かなければいけない。
しかし灯台は岬にあり、僕は岬には日の出や日没を見に行くケースも多かったので、参観灯台のもとへ行く目的は必ずしも「登る」ではなかったのだ。
あと、参観灯台に登るには2023年現在では300円の料金が必要だ。
景観がいいスポットではなんとなくそれをケチってしまい、下からの眺めのみで満足していた。
だが、ここでは登る。
もしかしたらここには一生来ないかもしれない。
そんなときにあとから「あのとき登ればよかったなー」とは思いたくないのだ。
たかが300円、時間にして15分ほどであろう。
せっかく参観灯台全制覇を目指して宮古島まで来たのだ。登るっきゃない。
お金を払い、灯台内の螺旋階段を登って行く。
97段、一歩一歩踏みしめながら。
途中に窓などは無く、外の景色は見えない。見えるのは塔頂部に着いてからだ。
そのジラされている感じがなんとも言えぬ。
間もなくして鉄階段が出てきた。
ということは、もう灯台の頭の部分までやってきたということだ。
ほら、上を見上げるとドーム型の頭頂部の中に、灯台の巨大レンズが見える。
水平線まで照らすレンズ、間近で見るとド迫力以外の何物でもない。
鉄階段の先には小さいドアがあり、そこから頭頂部をグルリと取り囲むテラス的な部分に出ることができる。
幸か不幸か、この灯台に入ってから出るまで誰1人として出会わなかった。
この頭頂部も僕1人。
南国の風が気持ちいい。…いや、ちょっと強いかな…。
歩いてきた道を振り返る。
左奥のちょっとワチャっとしたところが駐車場だ。
その右手の海が四角く囲われている部分が保良漁港。
こちらに向かって伸びる遊歩道の途中に赤い屋根の東屋があり、そのすぐ上に巨石マムヤの墓があるのだが、ちょっと上の写真ではわかりづらいかもしれない。
保良漁港を拡大してみた。
改めて、岩がゴロゴロしすぎている。南国の遠浅で穏やかな珊瑚礁なのに、なんでこんなにも不釣り合いな岩がゴロついているのか。
これは、この島を形成している琉球石灰岩が長年の波や風の浸食で崩れたとか、あるいは1771年に発生した明和地震の津波の影響で一気に崩されて、かつ津波の影響で沖合まで散らばった…とか言われているみたいだよ。
いずれにしても、このサイズの大岩が島から剥離して落っこちたのだね。
創造するだけで怖い。
でもその隙間から見える青い海が綺麗すぎる。
よく見れば、岬の大地の上も巨岩が多い。さっきのマムヤの墓だって巨岩だし。
これらも津波で打ち上げられたという説が濃厚だ。
そんな岬全体の様子が俯瞰して見られるのも、灯台ならではであろう。
しかし、なんか怖いな。
特に高所恐怖症ではないし、他にいくらでも高所の観光地には行っているが、なんだかここはゾクゾクした。
沖縄の離島という特性上、周囲見渡す限り高い建造物も山も何もないからかな?
きっと僕、この島で一番高い場所にいる。
上を向くと灯台のレンズが見える。
わー、なんか怖い怖い。こんな足場の狭くって風の強い場所で上を向くという行為が怖いぜー!
では、そろそろ地表に戻ろうか。
受付では参観灯台16基のスタンプラリーの台紙も売っている。
一瞬躊躇したが買うのを辞めた。
きっとやろうと思えば日本7周目で余裕で全てスタンプを押せるだろう。
だけども参観灯台って前述の通り日中しか登れないし、それにメンテナンス等で非公開の日もある。
そういうのを加味して旅の日程を考えるのが面倒なのだ。
僕は自由に旅をしたい。
だからスタンプはいらない。登れるとき、登りたい気分のときに登るさ、これからも。
しかしこの灯台は良かったぜ。
間違いなく。
秘密の見晴台と無人販売所
再び車に乗り込んだ僕は、半島の付け根まで戻る。
距離にしておよそ2km。
ここでちょっとメインの道を外れたところに、立ち寄ってみたいスポットがあるのだ。
Googeマップには「東平安名崎見晴台」という名前で登録されている。
知らないと絶対に入り込んだりしない、岬の付け根の行き止まりの道の途中のスポットだ。
上の写真のところに車を停めることとなる。
意外なことに1台先客の人の車が停めてあった。清々しいくらいにカエル色の車だな。
頑張らなくても全然普通に景観はいいが、もしギリギリまで行くのであれば足元に注意が必要。
つまりサンダルは自殺行為。
小さな広場から、2㎞先の東平安名崎を臨むことができるぞ。
カエル色の車に乗っていたと思われるファミリー3人が嬉々として記念撮影をしていた。微笑ましい。
ちょっと待機した後、僕もここに立つ。
すごい光景だ!
海に2㎞突き出した東平安名崎の細長い半島。
テーブル状で、上は平らだけども断崖絶壁の切り立った岬。
それが手に取るようにわかる。
さらに、それが端からボロボロと崩れて海に散らばっているのが、特に手前付近の断崖で顕著だ。
その一番奥に建つ灯台。
さっきまで僕、あそこにいたんだなぁ。
カエル色の車のおじさんが、家族に向かって「よーし、これからあそこまで行くぞー!」と言っていた。
そっか。皆様はこれからか。
ここで行き先を見ておいた方が気持ちが高ぶったかもしれないな。
僕もここに先に来ればよかったかも。
さて、このスポットには気になるものがもう1つある。
なんか無人販売っぽい発泡スチロールのケースが置かれているのだ。
『冷た~い飲み物 どれでも1コ100円』と書かれている。
気になるぜ。
中を見てみると、コーラ・缶コーヒー・さんぴん茶・栄養ドリンク、いろいろある。
この猛暑の中での温度が気になったが、ちゃんとキンキンに冷えていた。
ありがたい、きっとキチンと定期的にメンテしてくれる方がいるのだろう。
上の写真を撮っていたらカエル色の車のおじさんがやってきて、「こういうのっていいですよね!自分撮ろうかなー?ってゆーかちゃんとこれ中身入っているんですかねー?」と言って来たので、「ご心配なく!」と返しておいた。
僕はコーラをもらおう。
ちょっと疲れが溜まっていたので栄養ドリンクと迷ったけど、ここは炭酸がいい。
料金は横のかわいい箱に入れる仕組みだ。
カエル色の車と共に見晴台を出発する。
すぐに岬の先端に行くか、根本方面に行くかのT字路に突き当たる。
前にいるカエル色の車は岬の先端方面に曲がって行った。
じゃあね、みなさん。
僕は軽く手を振った。
冷たいコーラで蘇った。
さーて、次はどこに行こうかな。
宮古島一周ドライブはまだまだアツいぜ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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