週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.302【福島県】震災の津波に耐えた!!岬のお手本のように美しい「塩屋崎」よ、永遠に!

「岬に灯台が建っている絵を描きなさい」と、もしあなたが言われたら、どんな絵を描くであろうか?

 

それは、もう決まっているのだ。

「人類みんな祖先一緒なんじゃねーの?」ってくらいに、きっとみんな同じ絵を描くのだ。

 

 

まぁうまい下手の程度の差こそあれ、大体こんな絵になるんじゃなかろうか。

 

しかしだ!

こんな岬と灯台はいったいどこにある?

そもそもこの構図を見ているあなたはどこにいるんだ?

海なのか?じゃあ船に乗っているのか??

 

…そんな"岬のお手本"のような地は実在する。

全国数100の岬を巡って来た僕であるが、船に乗らずに、そして決死の思いもせずに気楽にこの景色を眺められる岬は、パッと思い付くのは2つだけだ。

 

1つは三重県の「大王崎」、そしてもう1つが今回の舞台の「塩屋崎」なのである。

 

塩屋崎灯台

なんて綺麗な眺めなのだろうね…。

この景色を再び眺められることに、感謝する。

 

 

美空ひばりの歌う岬

 

僕と塩屋崎との出会いは、確か日本2周目だったよな。

日本1周目では夜のためにスルーしてしまっていたからな。

 

早朝、その日の最初の観光を塩屋崎に定めた、暑い夏の日。

海から見上げた、丘の上の灯台が印象的だった。

もっと近づいてみたかったのだが、朝早くて丘に登る階段がまだ開放されていなくって。

 

でも見上げるだけでそれなりに満足したし、浜辺を歩き回り、犬の散歩のおじさんと世間話をしたりした思い出があるのだ。

 

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極寒の岬1

あれ?塩屋崎への道ってこんなに狭かったっけ?

メッチャ込み入った住宅地の中を走っているんだけど、これで正しいんだったっけ?

 

…そんなアプローチとなったのは、日本3周目のときのことだった。

海沿いを南下してきたんだけど、こんなところを通る必要あるんだったっけ?でもカーナビもないし、日本2周目の記憶も薄れていたので正解は不明だ。

 

極寒の岬2

まぁいいんだ。結局灯台にたどり着くのだから。

灯台は高さ50mの断崖の上に聳えている。

 

岬自体は日本地図で見ても肉眼で見ても、2次元的には海に大きく飛び出していたりはしなくって岬感はあまりない。

だけども3次元、つまりは高さで見ると周囲に比べてググっと盛り上がっており、なんか地層とかも周囲とは一線を画しているような気配だ。よく知らんけど。

 

極寒の岬3

前回は早朝でゲートが閉まっていてあそこまで登らなかったから、今回は登ってみたいぞ、っていう気概でやってきた。

今回も朝ではあるが、早朝ってほど早い時間ではないので大丈夫だろう。根拠もなしにポジティブに考えている。

 

あ、でもあそこに登る前に、気になるものが海岸にあるのだ。

岬の手前に車を駐車場に停める直前、なんだかわからないけど石像みたいのが立っていたのだ。

オブジェとかモニュメントとか像とか、そういうのが好きなのだ、僕は。

その正体を確かめるべく、200mほど歩いて海岸を戻った。

 

極寒の岬4

正体は「美空ひばりさん」の石像だった。

 

僕はこのとき初めて知ったけど、ここ塩屋崎はひばりさんの歌の「乱れ髪」の舞台になったのだそうだ。だからそれを記念して石像があるそうなのだ。

なるほどなるほど、ひばりさんの存在は知っているけど、その歌は知らなかった。もちろんここが舞台とも知らなかった。

 

極寒の岬5

名前は「永遠のひばり像」。

偉大な歌手にふさわしいネーミングであるが、石像自体は絶妙にデフォルメされていてかわいらしい。

なんとなく、ひばり像と一緒に記念撮影してみた。

 

極寒の岬6

この像、近づくと「悲しき口笛」っていうひばりさんの歌が流れる。

この歌も知らない歌だ。

 

僕、「ひばりさん、ひばりさん!」みたいなテンションで近付きまくっていたので、ガンガン歌が流れた。

朝から近所の迷惑じゃなかったかな?海風が強いから聞こえないかな?

うん、きっと大丈夫。

 

極寒の岬7

灯台の登り口近くには、「みだれ髪」の歌碑とひばりさんの遺影碑があった。

ちょっと説明版など読んでみたところ、どうやら「みだれ髪」っていうのはひばりさんの生前最後の歌らしいね。

この地がその舞台になったのだから、そりゃアピールしたいわ。切ないけども、すごく栄誉なことだものな。

 

碑にはスピーカーがあったので、「これはアレですかな…?やっぱりアレがこうなるんですかな…??」って恐る恐る近付いてみると、やっぱり歌が流れた。

大音量だ。フォルテシモだ、ひばりさん。

これが「みだれ髪」っていう歌なのかな?そうなんだろうな。

 

極寒の岬8

碑の前でずっと聞いているのも手持無沙汰なので、歌を聴きつつ灯台への階段を登ることにした。

灯台のある丘への階段、今回はオープンしていたのでね。

 

はぁはぁ、なかなかにハードな登りだな。さすが50mある断崖の丘。

この日は大寒波が来ていて福島県浜通りも僕の車もコチコチに凍っていたので、階段も凍結しており滑りまくった。マジで怖かった。

 

そしてひばりさん歌、長いな。ずーっと流れていたよ。大音量なのでどこまで登っても聞こえるし。

 

極寒の岬9

そんなこんなで灯台の目の前まで到着た。

敷地に入るには当時200円が必要であり、8:30からオープンするそうでちょうど始まった矢先だったのだが、僕は入らなかった。

敷地の外から見下ろす海の眺めだけで最高だったからだ。

 

極寒の岬10

既にひばりさんの歌は終わっていたが、キンキンに冷えた木枯らしが、登り階段でほてった体に心地よかった。

あぁ、そして僕はこの時、もう少し内陸部を撮影しておけばよかった。

このときはそんなことを思いもしなかったが、後年後悔することとなる。

 

 

震災後の夕暮れに

 

夏の夕暮れである。

東北地方を一周する旅の終盤に、この岬を再訪した。

 

夕暮れ岬1

 

周辺の様子、すっかり変わってしまった。

昔訪問したときのコチャコチャした住宅地はどこだったのだろう?

津波でなくなってしまったりしたのだろうか…?

そんな不安な気持ちだ。

 

夕暮れ岬2

綺麗な海だが、寂しい気持ちになる夕暮れ時であった。

灯台前の浜辺近くに車を停めた。

駐車場っぽい駐車場はなかったけど、周辺空き地だらけだから余裕だ。

 

この時間だと灯台への丘は登っているうちに暗くなってしまうので、今回は海岸から見上げるだけにとどめようと思う。

 

夕暮れ岬3

山の向こうの夕焼けと、塩屋崎。

トワイライトタイムの岬と灯台もいいもんだ。エモい。旅も終盤なので、いろんなことを思い出し、考えてしまうような切ない時間と景色だ。

 

震災の津波で、塩屋崎も大きな被害を受けたという。

こっち側からは見えないけど、向こう側の崖は大きく崩落し、灯台ギリギリのところまで崩れてしまったらしい。

あとちょっと崩壊が広かったら、灯台も海に転がり落ちていたかもしれない。

 

夕暮れ岬4

その震災後、あの塩屋埼灯台は9ヶ月の間機能を停止していたそうだ。

その後ようやく、再び点灯することができたとか。

 

美しい景色を作る灯台。真っ白で綺麗な灯台

そういうこともあって「日本の灯台50選」にも選ばれてる。壊れずに復活してくれて本当に良かったと思う。

 

夕暮れ岬5

「乱れ髪」の遺影碑の中のひばりさんに「お久しぶり」って挨拶をする。

 

以前は近付くとスピーカーから歌が流れる仕掛けだったけど、今回は歌は流れず。

震災の津波で壊れたのだろうか…?

 

夕暮れ岬6

ところで、永遠のひばり像はどこだっけ?昔、その石像と一緒に写真を撮ったよね…?

確ここから200mくらい離れた防波堤に立っていたよな…。

 

うろ覚えの記憶を頼りに防波堤沿いを歩くが、当時とは景観が違ってしまっていることもあり、いまいちピンとこない。

 

夕暮れ岬7

さらに震災の津波の影響からか、ほどなく立入禁止になってしまってしまった。なんてこった。

永遠のひばりも、もう存在しないのだろうか…??

 

…ん?

待てよ…!!

 

夕暮れ岬8

立入禁止エリアのずーっと先に見覚えのあるシルエットが!

あれだよ、あれがきっとひばりさんだよ!おーい!

 

なんだかうれしいなぁ。 

津波に耐えたのかなぁ?それとも新しく作ったのかなぁ?

今も近づいたら歌が流れるのかなぁ??

 

夕暮れ岬9

カメラでズームして撮影した。

性能が悪すぎてよくわからないが、僕にはわかる。以前ツーショット撮ったから。

 

ひばりさんは海沿いで、夕焼けを背に歌を歌うポーズをしていた。

それを見られただけで、幸せな気持ちになった。

 

夕暮れ岬10

太平洋に夜が近付く。

夕暮れに包まれる塩屋崎を後にし、僕は東北と関東を隔てる岬、つまり東北一周の旅の最後の目的地である「鵜ノ子岬」に向かった。

 

 

16基しかない登れる灯台

 

その後の訪問時には、岬手前はさらにロケーションが変わっていた。

手前2kmほど、広い範囲で大規模工事が行われている。その中を迷路のように車道が作られていて、それを辿って岬エリアまでやってきた。

 

参観灯台1

東北の太平洋側の各地で復興作業が進んでる。

ここも地震の影響から立ち直るため、大きな整備を行っているのだろうかね?

 

ちょっと今回は灯台にフォーカスした話をしたい。

塩屋埼灯台は、実は一般人も登ることのできる灯台なのだ。

そういう灯台のことを"参観灯台"という。日本に16基しかないとても貴重な灯台だ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

「他の15灯台ってどこなの?」って方は、上のリンクから【特集】をご覧いただきたい。

僕、北は青森から南は沖縄の宮古島まで、参観灯台を全て見て回っているから。

 

ただし、実際に登ったのはその中の一部だけだけどな。

恥ずかしながらこの塩屋埼灯台にも登ったことはない。足元までだ。

 

参観灯台2

震災の復興が劇的に進む、とある年の秋に訪れたときも丘には登ったが灯台には登らなかった。

さらに景色はいいのだろうが、登ることにそこまで価値を見いだしていない若かりし頃の僕なのであった。

 

参観灯台3

お金を払うとあの四角い建物の脇から先に進めるが、僕はいつだってここまでだ。

だけどもここからの灯台の眺めがとても絵になると思っている。

 

どうやらこの一帯は潮の流れがとても急で暗礁なども多いため、江戸時代の頃から灯台の前身である狼煙台があったらしいよ。

それが灯台になったのは、1899年のこと。

120年以上の歴史があるんだな、すごい。

 

参観灯台4

だから僕も、次に訪問したときには登ってみたいと思う。

震災後、3年近く一般人が登れなかった灯台。そこから復活したのだからね、見る価値はすごくあると思うのだ。

 

参観灯台5

震災後、ガッチリ固められた砂浜。

かつてこの角度では写真を撮っておらず、昔がどうだったのか比べることができずに悔しいが、かなり景観が変わったように思える。

 

参観灯台6

自然の海岸が少なくなって、ちょっと味気なくなってしまった感もあるけれど、塩屋埼灯台の立つ丘はこれで守られることになったろう。

大事なことだ。

 

参観灯台7

そうそう、「永遠のひばり像」の足元に再び行けるようになったのは、2015年のことと記憶している。

また間近でひばりさんに会うことができるようになったのだ。マジ久しぶり。

 

参観灯台8

以前のように近づいても歌は流れなくなってしまった。

だが、いてくれることに価値があるんだよ。

 

 

少しずつ変わりゆく景色

 

最後に、直近である日本6周目でアプローチしたときの写真を出していきたい。

 

新しい時代1

東北の太平洋側はどこもそうなんだけど、盛り土されたり防波堤が作られたりで、もう過去の地形も景観も面影がなくなりつつある。

いいとか悪いとかはよくわからない。でも新しい時代が来ていて、新しい世界が誕生しつつあるのは事実だ。

 

新しい時代2

前項で感じた通り、人工的で殺風景な感じもする。

でもこれ、植樹とかしていくためのエリアなのかな?何10年もかかるかもしれないけど、遠い将来のここは緑に包まれるのかな?

だとしたら今しばらくは殺風景だけども、それは震災での傷を癒していくための期間なのだろう。

 

新しい時代3

ちょっと涼しい10月の頭の塩屋崎。

なんていい眺めなのだろう。

みんなが思い描く、岬に建つ灯台。そのものではないだろうか。

 

ここから見る景色だけは、昔とほとんど変わっていない気がする。

 

新しい時代4

ちなみに来るたびに車は変わっているけどね。

今はまた違う車に乗っている。今の愛車に塩屋崎を見せる日も楽しみだ。

 

新しい時代5

「乱れ髪」の碑からは、ひばりさんの歌が流れた。

久々に復活したのだね、この機能。

 

新しい時代6

「永遠のひばり像」にも挨拶した。

この像も文字通り永遠だ。

周囲のロケーションは変わりつつあるけど、ひばりさんは永遠だ。

 

…どんな景勝地もどんなスポットも、時間が流れれば徐々に変わっていくさ。

人間が作ったものは数10年すれば劣化し作り直さないとだし、時代の流れでニーズも変わるし。自然物だって100年単位で見れば徐々に変わるし。

 

それはしょうがないこと。

僕は日本を何周もすることで、その変化を人より少しだけ気付けているかもしれない。

 

新しい時代7

そういうのが楽しくって、まだまだ僕は日本を走るのだろう。

 

あ、丘に登る階段、すごく綺麗で白くなっているじゃないか。

また1つ新しい変化を発見!

 

…そして僕は灯台の足元まで、またゆっくりと登って行く。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 塩屋崎
  • 住所: 福島県いわき市平薄磯宿崎
  • 料金: 無料(灯台は¥300)
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし(灯台は9:00〜16:00、季節により変動あり)