人類にとって「空を飛ぶ」というのは、飛行機誕生の前後に関わらず強い憧れである。
ゆえに、僕らは空を飛ぶ飛行機を見れば自然とそれを眺めてしまう。
離陸直後、着陸間際の飛行機を見ることができたら「わぁ、近いね、大きいね」だなんて呟いてしまう。
国内には飛んでいる飛行機を間近で見られるスポットはいくつかあるが、今回ご紹介したいのは宮古島から橋で繋がる下地島の「下地島空港」。
そこに「17END(ワンセブン・エンド)」という、絶景ビーチから飛行機の着陸を眺められるスポットがある。
そこに4回ほど訪問し、飛行機の到来を待ち受けた。
空振り・失敗・故障…。
いろいろあったが、宮古島を旅した中でも随一の思い出となった。
そんな2023年春の思い出を語ろう。
あ、結論から言うぞ。
ちゃんと飛行機の着陸シーン、カメラに収めたからな!!
【1回目】どうやら間に合わなかったようだ
まずは今回の舞台となる、下地島の17ENDの場所をイメージしていただきたい。
こんな感じだ。
僕は数日間、宮古島を拠点として上の地図の島々をドライブしながら巡っていた。
17ENDにも何度か足を運んだ。
なぜなら、海がすごく綺麗だし、飛行機の着陸シーンが見たいからだ。
さて、まずは1回目。
下地島。島の何割かを空港が占める島。
そういう事情もあってか、やたらと直線の車道の多い島。
その島の先端に向かって僕はアクセルを踏む。
下地島にフォーカスした地図を掲載しておこう。
僕は今、"西側通行止地点"に向かっている。
ここから17ENDへは、徒歩の距離も600mほどだし途中に絶景ビーチもある。
それに反し"東側通行止地点からだと"1.5kmも歩くことになり、景観も西側には劣るのだ。
西側通行止地点の手前200mくらいのところから、道路脇が駐車車両でビッシリになった。
実はこの先、駐車場はある。20台くらいは停められる。
しかしそれ以上に17ENDが人気なのだ。
正確に言うと「17ENDビーチ」と呼ばれる幻のビーチ周辺が人気なのだ。
道路脇に駐車し歩くこと数分。
駐車場のすぐ先にある西側通行止地点に到達した。
以前はこの先の17ENDも、さらにその先の東側通行止地点までも車で行けたそうだ。
つまり下地島空港を車で一周走れた。
だけども宮古島と伊良部島を結ぶ「伊良部大橋」ができたりして観光客が多くなり、17ENDは車乗り入れ禁止となったそうだ。
さっきの写真ではフレームアウトしていたが、西側通行止地点の時点でもう左手はコバルトブルーの海。
それ以降は右手は飛行場・左手は海、という絶景を眺めながらひたすら歩く。
海はメッチャクチャ綺麗で、みんなキャッキャしながら撮影している。
最高だな、南国の海は。
ただし17END、トイレも無い・自販機も無い・日よけになるようなものも無い。
駐車場でキッチンカーを見かけたこともあったが、それの存在を信頼しすぎるのはキケンであろう。
事前に入念な準備をしておくべきだぞ。
その歩道沿いに、小さな小さな白い砂浜が現れた。
これが干潮時にしか出現しない、幻の17ENDビーチ。
ほんのわずかなスペースだが、あるとないのとでは景観の印象が大きく異なるね。
ちなみに以降の章ではもっと大規模に美しく広がる17ENDビーチも出てくるから、楽しみに待っていてほしい。
ハイライトである、海の上に設置された誘導灯が見えてきた。
あれは飛行機が下地島空港に着陸する際に目印とする誘導灯。
あの橋に沿って飛行機は降下してくるのだ。
あそこまで歩いてみよう。
美しすぎる。
澄み渡る海に伸びる一本の誘導灯ブリッジ。
この海の上に飛行機が舞い降りたら、それはとてもステキな絵となるであろう。
僕は宮古島上陸初日とあって、飛行機の着陸時間までは調べて来なかった。
まずはそんな計画的ではなく、本能に沿って適当に島々をドライブしたかった。
まだここに来るチャンスはあるだろうから、飛行機を見たければちゃんと調べてから再訪すればよいと思っていた。
結論から言うと、この日僕が17ENDの根元の道路に車を停めたのは14:22。
17ENDの突端に到達したのは14:35。
その直前直後の飛行機の下地島空港到着予定は14:35。
つまりニアミスだったのだ。
"下地島空港到着予定14:35"とは、ちゃんと空港の搭乗口に飛行機を連結する時刻とかだろう。
…ってことは、リアルに飛行機が舞い降りたのは14:20くらいだったのではないかと予想する。
あと15分早ければ飛行機を見ることができたかもしれない。
…と、Webで調べてここまで振り返ったのは、この旅が全て終わってからのことである。
いいんだ。
とりあえず第1弾、海とビーチとこの誘導灯が見られただけで100点。
余談だが、このとき17ENDの突端から何気なく撮影した下地島空港には、到着したばかりのスカイマークのジェット機がちゃんと写っていた。
撮影時はあまり気にも留めていなかったな…。
【2回目】なんで今だけスマホが壊れる?
2日後のことである。
僕は再び17ENDに来た。
だが待ってくれ、ここにきて由々しき事態だ。
スマホが死んだ。
真っ黒い画面のままで、電源が入らない。うんともすんともいわない。
つい15分前まで、直前の立ち寄りスポットで撮影していたのに。
3月後半だがTシャツ1枚でも汗をかくとんでもない気温。
スマホもアツアツになっている。
せめて冷やせば復活するだろうか…?
飛行機の到着は13:05かな?
あと10分も無い。
スマホのことも気になるが、飛行機の到来も気になる。
スマホの電源ボタンを押したり離したりしながら、僕は飛行場の突端を目指して歩く。
しかし暑ィ。汗が噴き出る。変な汗も出る。
スマホが無くてもコンパクトデジタルカメラがあるから、普通の撮影ならできる。
ただし僕はスマホを使って飛行機着陸シーンの動画撮影をしたいのだ。
あと、スマホ壊れたら困るよね?
今までの写真データ・LINE・Gooleマップにメモしてある巡りたいスポット名・リアルタイムレポート・帰りの飛行機のチケット…。
このまま起動しなかったらマジにヤバいぜ…!!
左手の17ENDビーチはアホかってくらいに綺麗だ。
心が邪悪な鬼とかがこの海を見たら一瞬で心が浄化されて消滅しそうなほどの色だ。
だけども僕は突端に急ぐ。
飛行場の誘導灯が見えてきた。
飛行機が現れるまであと何分くらいだろう?5分?
相変わらずスマホに電源は入らない。
コンパクトデジタルカメラで撮影するしかなさそうだな。
覚悟を決める。
あ、ただ僕のコンデジ、確か連射モードがあったはずだ。
素早いものを撮影するのであれば連射で何枚も撮影するのが良い。
確実に1枚はいい写真が撮れるだろうし、飛行機接近から着陸間際まで、いくつかのシーンも撮れるだろうし。
え?なんでみんな左側を見ているの?
何を指さしているの?なんか来るの?飛んでくるの?
現在時刻は13:04。
飛行機到着は13:20。
まだ16分前だが、予想以上に早いな…!
…待て、まだ僕のスタンバイが間に合っていない…!
ちょっとダッシュする。
ゼーゼー、暑い。
喉が渇いた…。
しかしなんとか飛行場の突端エリアまで到達した。
…と同時に…!
13:20到着の飛行機が正面に大きく見え始めた。
たぶん誘導灯の上を滑空するまでの時間、あと10数秒…!
本来であれば誘導灯の真正面まで行きたいが、それにはあと20秒はかかるだろう。
無理。
えっと、連射モード、連射モード…。
普段使わないモードなのでちょっとたどたどしい。
走行している間にもう飛行機は誘導灯のブリッジの上に差し掛かった。
間に合った!撮る!!
いや、なにやってんだよ、僕のカメラ――!!
起動したのは連射モードではなかった。
「1回のシャッターで、いろんな色合いや拡大パターンの写真を自動で造り上げる」という、正直個人的にはあまり必要性を感じていないモードを選択してしまっていた。
なんかちょっとエロいピンクの写真とかモロクロっぽい写真が手元で次々に生まれた。
いや…、こんな写真が欲しければ後でPCからでもなんでも簡単に作れるのだがね…。
あっけに取られる僕の背後で、飛行機は「シュゴーーッ!」っていい音をさせながら下地島空港に着陸した。
なにこのオチ。
あ、ただね。前述のモードはちゃんと1枚無加工の写真も撮れる。
僕の1度きりのシャッターチャンス自体は悪くはなかった。
その写真が上記である。
無論、先ほど書いたように誘導灯ブリッジの正面まで行きたかったけどね。
それと動画で撮りたかったけどね。
これはまたリベンジせねばならない…!
飛行機到着から6分後、僕のスマホは無事に電源が入るようになった。
もう1回言うけどさ、なにこのオチ。
なんで飛行機到着時だけ壊れるんだよ、コイツ…。
【3回目】飛行機の到着、予定より早すぎ事件
13:20着の飛行機は、前章の通り横からのコンデジで1枚のみ撮影した。
さて、実はこの1時間15分後、14:35にも飛行機が到着する予定がある。
これはなかなかに短いスパンだ。
さすがにしっかり日焼け止めを塗っているとはいえ、1時間以上も日よけの無い17ENDにいたら命の危機だ。
下地島の他のスポットを1箇所観光して、1時間後に再びここに戻ってこようか…。
17END。本日2回目の訪問である。
14:00ピッタリには西側通行止地点に車を停めていた。
飛行機到着時刻は14:35。まだ35分もある。
ふふふ、さすがに近くで観光していたからな、余裕の到着だぜ。
14:04、17ENDに続く歩道に入る。
つい数10分前に立ち去ったばかりのポイント。
むしろ汗をかいたTシャツすら乾いていないくらいのついさっき。
でも再び僕は飛行場の突端まで歩くのだ。
ちょっともう足がシンドいけど、がんばるぞ。
次こそスマホで飛行機の着陸シーンの動画を撮るのだ。
念のためスマホの動作状況を再チェックする。
うん、カンペキだ。
今回は勝利を確信した。気分はルンルンだ。
しかし聞いてくれ、ここで事件が起きたのだ。
進行方向の彼方の空に、キラッと太陽光を反射させるものが見えた。
それが徐々に大きくなる。
みんなご存じ飛行機だ。
マジか!
早すぎないか!??
考えるヒマもない。
とりあえずスマホの動画モードを起動させる。
17ENDの突端よりも300mほど手前にて、こんな動画を撮った。
いやいやいや、ところであの飛行機はなに?
僕が目指しているのは14:35着の飛行機なのだ。
まだ今は14:10だ。
さすがに25分前は早すぎだろう。
でも、だとすればあの飛行機はなんのか。
17ENDにはときどき練習機も着陸するというから、それだったのだろうか…?
であれば本命はこれから来る。
僕は歩道の中途半端な場所から進むべきか戻るべきか迷ったが、とりあえず一縷の希望を胸に、17ENDの突端方面に歩くことにした。
僕の心はモヤモヤしているが、それに反してビーチはとても澄み渡っている。
干潮らしくビーチのサイズも大きく、遠浅の海がどこまでも続いているぞ。
ちょっと心の余裕があるから語るが、17ENDビーチに降りる階段は存在しない。
つまり今僕がカメラを構えている上の歩道から、砂浜に降りる道や階段は無い。
じゃあみんなどうやって降りているのかというと、テトラポットの斜面をどうにかこうにか下っている。
なかなかスリリングだよね。
上の写真ではその角度がわかりづらいので、よろしければこの記事内の他の写真をご覧いただきたいが、傾斜は30度はあるだろう。
しかも波の勢いを殺すためのブロックだから、ゴツゴツした造りだ。
サンダルでは少々怖いかもしれない。
僕は下のビーチに降りることはなかった。
特に海でパシャパシャ遊びたいとも思わないし、シュノーケリングしたいとも思わないからだ。
「海で遊ばないのになんで沖縄行くの?」と聞かれたこともあるが、海を眺めながらドライブすればいい人なのだ。
ビーチ、最高に綺麗だよね。
先ほどのリベンジをするかのように、僕は何度も動画撮影をした。
なのでその1つをあなたにも共有しよう。
短い動画だが海の綺麗さは伝わると思うので、ぜひ見てほしい。
閑話休題。
17ENDの突端にやって来た。
あぁ、この海の上を飛ぶ飛行機を見たかったなぁ…。
あと5分くらい僕の行動が早ければ見られたのに。
いや、まだこのあとちゃんと正規の飛行機が来る可能性はあるけどさ。
この記事を読むあなたは「毎回行動が遅いんだよ!ゆとりをもって行動しろ!」って思われるかもしれない。
しかしね、冒頭で記載の通りトイレも自販機も日よけも無い世界なのだ。
あまり長居をできない。
なるべくギリギリで行きたい気持ちが強い。
まだ世の中は3月後半であり、僕も先週まではコートを着ていた。
いきなりのこの気候変化、油断すると体調崩すのだ。熱中症になりやすい事例の1つだ。
さて、僕がわざわざこの突端まで希望を諦めずに来た理由がある。
リアルタイムに飛行機の離発着情報がわかるのだが、お目当ての14:35の飛行機がまだ「到着予定」のカテゴリにある。
まだ到着していない可能性があるのだ。
それに突端にはまだ飛行機を待機していると思われる人たちがいる。
みんな飛行機が飛んでくる方角を見ている。
僕もここでしばらく待つことにした。
到着予想時刻は14:35。
まだ10分ある。これから来るかもしれない。
14:35を過ぎるか、下地島空港のWebが更新されて14:35の便が「到着済」になるまで待ってみようじゃないか。
暑い。日焼けする…。
こういうとき「スマホでもいじっていれば10分くらいすぐでしょ?」と思われるかもしれないが、あまりの日差しの強さで画面すらまともに見えないのだ。
日影がない沖縄ってツラいのな…。
14:30、本来の飛行機到着時刻まであと5分となった。
遅延でなければもう飛行機は来ているはずだが、空は相変わらず静かだ。
例の飛行機は「到着済」に入った。
マジか…。
なんか更新されるのが遅かったな…。
さっき動画で撮影した飛行機が、14:35着の便だったのだ。
すごーく早く順調に到着したのだ。
ちゃんと突端で撮影できずに残念だったけど、乗っていた人、ウェルカム宮古島エリアへ!
【4回目】曇天の空に最後の望みをかけて
翌日は、僕が宮古島に滞在できる最終日であった。
しかも昼過ぎから天気が下り坂となり、そのあとは数日間ずーっと雨だという。
であれば、12:00に下地島空港に到着する便が最後のシャッターチャンスだろう。
前方に雲が広がり出した。
あぁ…、あと1時間待ってほしかったが、飛行機が飛んでくる方向は雲だらけになりそうだな…。
もう綺麗な17ENDビーチの写真は何枚も掲載したのでお腹いっぱいだと思うが、これが最終訪問の曇天17ENDビーチである。
曇りなのでここまで歩いてくるのはややラクだった。
現在時刻は11:35。
飛行機到着は12:00。
仮に昨日みたいにすごく早く飛行機が来ても対応できる時間だ。
10人弱の人が待機している。
ちなみに17END、4回訪問したがせいぜいこの突端での飛行機待機の人は20人~30人だ。
「混み合っていて思うように撮影できない」ってことは100%ない。
2023年3月の僕はそう感じた。
一瞬日が射して期待させてくれたり、すぐ曇ったり…。
そんな不安定なアップダウンを繰り返すこと10数分。
飛行機が遠くに見えたのは、11:50頃のことだった。
さぁ、ラストチャンス。失敗は許されない。
スマホの動画モードを立ち上げた。
僕が撮りたかった、17END(ワンセブン・エンド)。
曇天だったり、途中に振り向いたときにスマホの縦横を撮り間違えてしまったりと反省はあるが、それも思い出の1つにしていいくらいの出来にはなったと思う。
お腹が青く光る飛行機。
南国の海の色がそのまま反射しているのだ。
なんてファンタスティック。
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…最後の最後でなんとかリベンジ成功した。
そう思った。
だけども振り返れば、4回足を運んだ経験そのものが貴重であり、いかに楽しかったか。
なんだかんだでいろんな角度から飛行機を撮影できたしな。
(ちゃっかり離陸シーンも撮影していたしな)
下地島空港の17END。
ちょっと不器用な僕が飛行機を追いかけた、一生忘れられない思い出。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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