しかし星の数ほどうどん屋がある。いや、星よりかは少ないけど800店舗くらいはある。
僕が訪れたうどん屋はそんな中のほんの数10店舗だが、どれも格別にうまい。
僕は味オンチなので「どの店がどのようにうまい」とか言えないし、全て正確に味を記憶しているわけでもないから「あの店よりこの店がこのようにうまい」などという批評や順位付けもできない。
しかし、僕は旅人だ。
「あの店の訪問は楽しかったなぁ」・「店構えが印象的だったなぁ」・「あんな雰囲気の中でうどんを食べられて最高だったなぁ」っていう観点からだったらいくらでも語ることができる。
…そこでだ!
おいしいことは大前提!
その上で僕の印象に残る3店舗を今回ご紹介しようと思う!
なんとなんと、奇しくも全て日本6周目で訪れた店舗だ。
「そりゃYAMAが昔の記憶がおぼろげになっているだけじゃねーの?」みたいなヤボなツッコミは、謹んで半分正解としてあげよう。
朝8時に閉店!?朝だけの「上杉食品」
訪問記
健康な朝はうどんから始まる。
僕の人生にはそういう文化はあまりなかったが、さぬきではポピュラーらしい。
…というわけで、「上杉食品」という早朝から営業しているうどん屋を求めてやってきた。
そして道が狭い。
上の写真の右前方に既にお店が写っているのだが、店周辺に車を停めるところがないのであえなくスルーすることとなる。
見つけた。
お店から100mくらいの空き地が上杉食品の駐車場だ。
すごく牧歌的な駐車場の看板が立て掛けられている。
ここに愛車を停め、改めてお店を訪問する。
良い店構えだ。
飾りっけがないところがいい。きっとうどんのことしか考えていない。
そんなお店だ。
さて、このお店の特徴であるが、それはどうやら朝しか営業していないらしいという点。
基本的に朝の6:00~8:00。
でも週末だけ9:00まで営業するようだ。
すごい独特な営業スタイルだよね。
でも売切れ次第終了だそうで、場合によっては上記の時刻よりも遅くまで営業していることもあるらしい。
しかし逆の見方をすれば、お客さんの多い時期はさらに閉店も早まるということ。
とにかく早起きして行かねばならないお店だな。
ちなみに現在時刻は7:15。
バッチリ営業中である。ワクワク。
あと、上の写真には「P→ 30M」と書いてあるが、駐車場はどうみても100mくらいは離れていた。
念のためにGooleマップでも確認したが、そのくらいの距離があった。
まぁいいけど。
店内はちょっと薄暗い。
いいじゃないか。いかにも店員さんが黙々と働き、そしてお客が黙々とうどんをすする…といった雰囲気の空間だ。
僕はちょいとビビリなので、一番入口に近い席に座った。
その後すぐに全テーブルが埋まった。なかなかにギリギリだったな。
(コロナ禍なので相席も憚られるしな…)
メニューは各テーブルの上に置いてある。
…ということは、店員さんがオーダーを取りに来てくれるのかな?
シンプルに「小1玉」のかけうどんにしよう。
このあともう1店舗行きたいからな。
ところでミッフィーちゃんのテーブルクロスがかわいいな。
この職人気質な店内とのギャップが良い。ギャップ萌え。
オーダーできたので、ちょいと店内をキョロキョロする。
よく見えないが、お店の奥の方の棚には生活用品らしきものがチラホラと乗っている。
聞いた話ではこのお店は生活雑貨なども扱っているそうだ。
だけどもうどんがメッチャ人気なので、そのコーナーはどんどん隅に追いやられているらしい。
店内のもう片方の隅。…というより僕のテーブルのすぐ脇には商品が山積みだ。
白い大量の包装紙の箱は、何かのギフトなのだろうか?
それとオロナミンC・カラムーチョの箱・ティッシュ・サラダ油・ガスボンベなどが見て取れる。
生活感がバリバリだ。近所の人は早朝6時にカラムーチョ食べたいときにここに来ればいいのね。
あ、写真にテーブルが写っているのでご説明しよう。
お茶は卓上のグラスにセルフでペットボトルから注ぐスタイル。
揚げ玉はタッパーから入れ放題だが、残さないように自分のキャパと相談して入れよう。
数分でうどん登場。
わざと引きで撮影した。この店内にこのうどん。いい絵面じゃないか。
極太でツルツルの麺。
優しい味のだし汁。
正直まだ朝なのでそこまで空腹ではなかったが、この優しい味とツルツルの麺が、胃の中にスッと吸い込まれて行くように感じた。
もう箸が止まらん。スイスイ進む。
うどんにはショウガが乗っており、それがピリリと効いているのが特徴だ。
正直麺とだしの味を楽しみたいので必須ではないと感じたが、食欲増進には一躍買ってくれたようだ。
1907年(明治40年)創業の老舗で、現在5代目だという。
そして毎日午前3時から仕込みをしているそうだ。
そのうどんがとても尊い。
今日初めて口に入れるものがこのうどんであったという幸せ。
それを噛みしめつつも数分で食事を終え、駐車場に戻る。
キラキラ輝く朝日が最高に眩しかった。
今日もいい日になりそうだ。
住所・スポット情報
だし香り天ぷら特大「山内うどん店」
訪問記
実はこれは、前章の上杉食品を訪ねた直後の話である。
およそ30分後、僕はのどかな田園地帯に来ていた。
目指していたのは「山内うどん店」。
この数日前にTwitterでオススメとして情報をいただいた。
とりあえずお店の外観が僕好みだったので、こうして駆け付けたのだ。
ほら、もうこの看板だけでうまそうな雰囲気が出ているじゃないか。
そして青空と田園。ステキな世界。
1つ問題があって、それは早く到着しすぎたということ。
9:00開店らしいのだが、今はまだ8:10だ。
ご覧の通り駐車場には車は1台もいない。
あと50分、なかなかに時間を持てあましそうだなぁ、どうしよう。
僕はお店の前まで行ってみることにした。
ここの駐車場から店舗自体は見えないのだ。狭い坂を登って行くようで、推定で100程ある。
時間もあるからさ、店舗の場所を一度確認しておこうじゃないか。
あ、普通に人、並んでた。
既に10人くらい並んでいる。
有名店とは聞いていたが、これはなかなかですぜ。
あと、店舗前にも駐車場があった。たぶん10台くらい停められる。
だけども今さら愛車をここまで移動させるほどではない。
僕も並ぼう、即並ぼう。
背後の鬱蒼と茂る竹林が、秘境感があって良い。
その前に立つ店舗は、トタン屋根が緑の苔で覆われている。
そして特徴的な煙突。どうやら麺を大鍋でグラグラ茹でるそうで、そのための煙突のようだ。
1つ前の写真の左端には、店舗前に重ねられた大量の薪が見える。
薪で大鍋を焚いているのだろうな、ワクワク。
ちなみに上記は退店時の写真である。
僕は行列に並び、まだかまだかと開店を待った。
さっき上杉食品で食べたばかりだが、未知のうどんへの好奇心が抑えられなかった。
近くに並んでいる人はもう今日4店舗目だと言っていた。
早朝からそんなに巡れたのか、すごい。計画もすごいし胃袋もすごい。
行列はどんどん伸びる。
車もどんどん来る。全国津々浦々のナンバープレートだ。
駐車場なのか行列スペースなのか、混然一体としてきた。
煙突からはモクモクと白煙が立ち上る。
近くに並んでいた詳しそうなおじいさんが、「今日は祝日でこれだけ並んでいるし、きっと8:45には開店だな」と言っていた。
そうであればありがたい。
常連じいさん、参考情報をありがとう。
うん、暖簾がかかったのはデジタル時計で計ったかのように9:00ピッタリだった。
常連じいさん、いったいどうした。
さて、お店はOPENしたがすぐには着席できない。
上の写真、暖簾をくぐってすぐ左側に注文カウンターがあるので、そこでオーダーし商品を受け取ってから座るのだ。
メニューはカウンターの頭上に掲げられている木の板だ。
えっとえっと、どうしよう…。焦る。
ひやあつにしよう。小のひやあつだ。
そしてカウンターの前にズラリと並べられたフライ類が飯テロでしかない。
いや、さっき上杉食品行っているから別に空腹では無いんだけどさ。
でも食べたいでしょ?「春は揚げ物」って、清少納言も言っていたでしょ?
ゲソ天を頼んだ。
おばちゃんが「ほいよっ!」って器の上にドンと乗せた。
盛大にはみ出していた。断じて丼が小さいんじゃねぇ、ゲソ天がデカすぎるのだ。
うどんを受け取ったら、あとは自由に席に座るだけだ。
ご覧の通り客席は結構広い。1人だとカウンター席か、うまく譲り合って相席になるのだろうな。
いい感じのこあがりの席もある。
ファミリーがノンビリすごすにはうってつけだろう。
僕はサッと食べて風のように立ち去る予定だ。
だからカウンター席に向かう。
視界には壁とうどんしかない。それが良い。
水はセルフだ。ウォーターサーバーがカウンターの近くにあるから自分で取りに行こう。
うっま!
かなりの極太麺でもちもち。ひやあつで正解だな。麺の感触を存分に堪能できる。
ちょっと表面がザラついているのは、手打ちだからなのだうか。
だしの香りもいい。
イリコ・かつお節・昆布などから取っているそうだ。
白く透き通っていて、メチャ体にいい印象の優しい味。香る―。
だからジャンクなゲソ天を食べてみたくなるのだ。アウトローな性分なのだ。
カリカリの分厚い衣の中にゲソが2本。
この衣が醸し出す脂分が、だしに絶妙なコクを与えてくれる。これで160円だ。
店内にいたのはものの数分だ。だが満足だ。
並んだ甲斐があったなぁ。
店の外に連なる大行列を眺めながら、僕は早々に駐車場に戻る。
住所・スポット情報
ブームの火つけ、お米屋の「谷川米穀店」
訪問記
最後は山深い地のレジェント店、「谷川米穀店」だ。
このお店は、えっと…、波乱万丈だぞ。
「仙人でも住んでいるのかな?」みたいな景観の集落にやって来た。
ここにさぬきうどんブームの火付け役の1つと言われるすごいお店がある。
ずっと前から存在だけは知っていたが、営業時間が短い上に超行列店ということもあり、敬遠していた。
やってきたのは日本6周目の最初のドライブだ。
数日前に納車したばかりの日産パオでやって来た。
お店から少し離れたところに駐車場もあった。
公共交通機関では極めてアプローチ困難な立地だから駐車場も早々に埋まっている懸念をしていたが、空きがあった。ラッキーだ。
そうそう、ここだ。
Webなどで何度も見て恋焦がれていた光景。
いつもはこのガードレール沿いにズラーッと人が並び、1時間待ちもザラだという。
お店は10:30~13:30の3時間しか営業しない上、店内が狭いのだ。
だけども絶品なのでお客さんは遥々と山奥まで食べに来るのだ。
この日は平日。そして10:30の開店とほぼ同時のアプローチ。さらにちょっと小雨。
お店が空いている条件はほ満たしたと確信した。
行列は全くなく、そのままお店の中に突撃できてしまうレアな構図だ。
米穀店なので、当然米屋さん。
写真の一番右にも米穀店を示す看板が掲示してある。
ただ、観光客目線だとここはお米屋さん要素は皆無であり、完全なうどん屋さんであろう。僕にとってもそうだ。
では入ろう。
あのドアを入った瞬間の右手が注文カウンターだ。
メニューはうどんorそば・量は大or小、そして玉子をつけるかつけないかの選択肢だ。
当然うどんである。ボリュームは小である。
玉子つけよっかな、うふふ。
その場ですぐに丼を受け取ることができる。
店内のテーブル席は満席であった。
平日の開店数分後なのに、こんなにも盛況なのだ。
しかし壁際にイスがいくつか置いてある。ここに座って食べることができるのだ。
充分。1人だしサッサと食べたら出て行くし。
膝の上のうどん。風情のあるいいロケーションである。
刻みネギがたっぷり、そして端に添えられているのはお店独自の青唐辛子の佃煮。
生玉子が麺の陰に隠れている。
それだけだ。だし汁は無い。
少し醤油をかけて食べるのがここでの流儀だ。
テーブル席の人に一瞬醤油を取らせてもらい、玉子と共に混ぜて食べる。
はい、うまい。
しっかりコシがあるけど玉子効果もあってマイルドで。
だしが無いことで「うどんを食べている」っていう感じがすごくする。
とてもシンプルではあるが、すごく満足感がある。
他の人の様子を見ていると、一瞬で食べきってまたカウンターに向かい、追加注文をしている。
そうすると丼の中に替え玉を入れてくれるのだ。
ただ、僕は1玉で充分だな。コイツをしっかり味わうよ。
…この谷川米穀店であるが。
昭和時代からの老舗であり、2代目のときに一大ブームが巻き起こった。
僕が訪問したのも2代目時代の終盤だったと思う。
ただ、その後に3代目にバトンタッチした。
ここから先は自己責任でWebなど見てもらえばいいが(見ないほうがいいかもしれないが)、味や接客についての辛口コメントが吹き荒れる。
特に接客については相当なコメント群で、ファミリーで行くには危険を感じるほどだ。
さらに2022年秋に3代目店主は逮捕されることとなる。
(接客起因とかではなく、もっとヤバい事案で)
あわや閉店かと世間では騒がれたが、今は2代目が返り咲いているそうだ。
味や接客が元に戻ったのであれば常連さんにとっても喜ばしいに違いない。
僕が再びこの店を訪れるかどうかは疑問だが、せっかくの名店、以後も品質を保った上で長く続いてくれればうれしいと陰から祈っている。
住所・スポット情報
うどん巡りは続く…
三者三様、いろんなお店があったな。
さぬきのうどん屋さんは、地域に根差したお店が多い。
それに個人でやっているところが多いから、味も文化もバラエティに富んでいるのだ。
もちろんチェーン店でもさぬきうどんはとてもおいしいが、僕は可能であれば昔ながらの個人店に入りたいと思っている。
特に製麺所のように、「メインは製麺で食事処としてはオマケ」みたいなお店は面白い。
セルフサービスのお店も最初は戸惑いが大きいが、その戸惑いこそが旅の醍醐味だと思っている。
僕はまだまだここで紹介しきれないほどのお店を巡っている。
また機会があったら、ユニークなお店について執筆したいな。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。