能登半島の先端に当たるのか当たらないのか…という場所にある町、珠洲市三崎町。
この町には超常的なスポットが2つある。
1つは「聖域の岬」。もう1つは「ここが日本の重心地の碑」。
どちらもその概念は目に見えないもののような気がして、最初は頭に「?」が浮かぶ。
そういうときはアレだ。
考えるのではない、感じるのだ。
…というワケで今回は、この2つのスポットを一気にご紹介しようと思う。
聖域の岬
謎が謎を呼ぶ
能登半島は昔から好きであり、よく走りに行っていた。
そんな僕が最初に「ファッ!?」って思ったのは、いつだっただろうか?
2009年頃だっただろうか?
何かと言うと、能登半島先端付近の珠洲市三崎町の道路に上記のような標識が設置されたのだ。
日本三大パワースポット
秘湯 ランプの宿
絶景 空中展望台
正直に言おう。僕は違和感を感じてしまった。
まずは"パワースポット"という言葉がそんなに好きではなかった。
まぁ神社参拝するし初詣も行くから矛盾はあるんだけど、「ここでこれをすればパワーを得られる、幸せになれる」的なことは信じないタイプの人間であった。
さらに能登半島の最先端は「禄剛崎(ろっこうさき)」ではないかと思っていた。
ただ、上記禄剛崎の記事にも書いたが、最先端の定義はとても難しい。
どちらが先端なのかは正解はない。
それであっても、思い入れのある禄剛崎から"最先端"の称号を取られて「アレレ」な気持ちになった。
さらに言えばこの看板の構成、左の文言が概念であり、右がスポット名称だと認識した。
つまり「秘湯(概念)―ランプの宿(スポット名)」・「絶景(概念)―空中展望台(スポット名)」。
「秘湯であるランプの宿」・「絶景である空中展望台」。
だけども一番上だけ「珠洲岬(概念?)―最先端 聖域の岬(スポット名?)」だ。
逆だろう。僕はそう思った。
国土地理院のページにも見に行った。
予想通り、"珠洲岬"だった…。
聖域の岬って、通称じゃないか…。なんてこった。
ところでせっかく今回は珠洲岬を取り上げるので、プチ情報。
実は珠洲岬って定義があいまいなのだ。
狭義では「金剛崎」を指す。
2つ上の国土地理院の地図でもそうであるように、国土地理院はこの狭義で考えている。
ただ、広義になると非常にあいまいだ。
禄剛崎を含める説もあるし、どこにあるのかわからない「宿崎」を含める伝承もある。
謎が謎を呼ぶ。
珠洲岬、さっき書いておいてなんだけど、やっぱ"概念"なのかもしれない…。
ただ、こうやって地図を描いていて気付くのだが、「三崎町ってきっと3つの岬があったからなんだなぁ」とか思うよね。
ふふふ、だから地名って面白い。
(だからよけいに"聖域の…"とかに上書きしてほしくない)
パワースポットを訪れる
数年後、実際に聖域の岬を訪れてみた。
日本4周目のことであった。
海沿いの県道28号をさらに海側に曲がり、こんな感じの林道を1㎞走る。
なかなかにワイルド。
…と思ったら、アホみたいに世界が開けた。
なんだなんだ、大型観光バスまでいる。アイツもさっきの林道を走って来たのか、すっげ。
そして目の前には海が広がって、その前にピカピカで真っ黒の展望塔がある。
しかし"聖域"をゴリゴリ推しすぎかな。
いたるところにここがどれだけすごいパワースポットなのかが書いてあるけど、これちょっと引くぜ。
ちなみにここが聖域である根拠は、対馬海流(暖流)・リマン海流(寒流)が沖合でぶつかるから、それと亜熱帯ジェット気流と寒帯ジェット気流もぶつかるから、だそうだ。
そういうことから2009年頃から「日本三大パワースポット」を名乗り始め、グイグイそれを押し出したんだって。
ちなみに他の2つは「富士山」と長野県の「分杭峠」だそうだ。
足元には「よしが浦温泉ランプの宿」が見えている。
この岬もあの宿の敷地。てゆーか、ランプの宿のプロモーションで、宿も岬もバッキバキのインスタ映えスポットに生まれ変わったのだ。
もともとは船でしか行けず、そして文字通り電線も無くってランプだけの宿。
そんな老舗の数100年の歴史を持つ宿だったが、すごい転換だよね。
さて、ここから先の展望台や岬の先端方面に行くには500円が必要みたい。
しかし料金所には誰もいなくって、近くの人に聞いたら「今の時間は普通に行けるよ」と言う。
なので僕も、展望台の空中に突き出たゾーンに行ってみたよ。
空中展望台っていう名前らしい。
これはなかなかいい眺めだね。海風、すげー感じた。
それからさらに2・3分ほど遊歩道を歩き、岬の先端に出る。
ここも本来は有料の敷地なのだそうだ。
…まぁまぁかな。
さっきの空中展望台付近の光景の方がインパクトはあった。
本来の500円分の価値があるかと言ったら、うんちょっとアレかな…。
でもこの地を開拓したりすごく綺麗にしているから、お金きっとかかるもんね…。
戻ってきてお土産屋を少し覗いたら、パワースポットグッズに溢れていた。すご。
ちなみに2022年現在は、展望台と海の近くまで下がったところにある「青の洞窟」との共通券のみの販売で、価格は1500円だって。
青の洞窟は僕は行ったことないので言及できないが、ライトで青く照らしているだけで1500円という情報もあり、世間の評価は「おいおいずいぶん攻めているな」って感じらしい。
僕が再びここを訪れるかと言ったらとても疑問だが、この時代においてこういうわかりやすいテーマを持つ景勝地はアリだと思う。
あなたがもしスピチュアル好きなのであれば、目指してみてもよいだろう。なにせ日本三大パワースポットなのだから。
ここが日本の重心地
小学校に行ってみよう
もう1つご紹介したいスポットがある。
それは同じ三崎町にある「珠洲市立みさき小学校」だ。
さっきの地図にみさき小学校を追加しておいた。
広義の珠洲岬のド真ん中くらいにある。
…これも日本3周目のときだった。
海沿いを走っているとふと「ここが日本の重心地」というポールが見えた。
「うおっ、なんだあれは!…でもまぁいっか!」って、持ち前のルーズさ全開で通りすぎた。
いい感じの直線道路だから、もうブレーキ踏むのもメンドかったのだ。
同じく日本4周目・5周目でも、なんとなくスルーした。
しかし、ダメだ。僕は日本の中心に当たるスポットを全部行きたいのだ。
日本6周目こそはここに立ち寄る!
…はい、いきなり日本の中心というパワーワードが登場してしまった。
しかもそれがたくさんあるっぽいことを書いてしまった。
これはいったいどういうことだろう?
実は日本中心の定義って曖昧で、様々な定義により無数に乱立しているのが実状だ。
ぶっちゃけ30箇所くらいある。
詳細については上記リンク先の【特集】をご覧いただきたい。
そしてこの無数の日本の中心を全部巡ってみたいと夢見ているのが、この僕だ。アホでしょ。
そしてこの日本の重心地だって、日本の中心と呼べるスポットであろう。
だって日本の重心なんだもん。
さて、まずは実際に現地訪問してみた。
春うららな最高の日であった。
みさき小学校に到着。
小学校は週末ということもあり、誰もいない。
しかし校門が開いている。
ちょうど通りかかった人に「ちょこっと日本の重心地の写真を撮りたいのだが、中に車を停めていいものですかねぇ?」と聞いたら「良い」と言われたので、校門を入ってすぐのところに愛車を停めた。
小学校の校舎を眺めた。
『早寝、早起き、朝ごはん』
"朝ごはん"だけなんだかテイストの異なる文言な気もするが、人生を正しく送るための心理が書かれている。僕は全部できていないかもしれない。
子供たちよ、こんな大人になってはいけな…、いけ…、 … … …まぁいいんじゃないか?楽しいし。
そしてメインの標柱である。
『ここが日本の重心地』
長い月日を経て、ようやく間近にこの碑を見れた。やったね。
日本の重心地とは
ところで、日本の重心地とはどういうことか。
日本の地図をプリンタとかで印刷してほしい。
そして出てきた紙を海岸線に沿って綺麗に切り取ってほしい。
で、この紙をたった一点でうまくバランスを取るとしたら、それはどこなのか。
そいつが日本列島の重心点の概念だ。
まぁ実際にやろうとしたら紙はペラペラすぎて折れ曲がるし、北海道・四国・九州・離島などバラバラになっちゃって無理だろうから、偉い人が机上で計算するんだけどさ。
その答えが、陸から遠く離れた富山湾の海の中だ。
日本列島の重心点は海の中だった。
これは国土地理院のお墨付きの、確かな情報なのだそうだ。
ただし、これだと海の中で誰も行けないし見れない。この切ない想い、どうにかしたい。
そこで考えた。
「一番近い陸地に日本列島の重心を名乗らせちゃいませんか?」って。
一番近い陸地は能登半島の【先端】の… …。
うん、ここで空気は少し不穏になる。
また「禄剛崎」の記事を引用してしまって申し訳ないが、上記のリンク先でも日本の重心地について語っている。
禄剛崎には「日本列島ここが中心」という日本の中心を示す碑があるのだ。
その根拠が、日本の重心地であるということだ。
丸かぶり!
これはヤバい。どちらかがニセモノなのか?
しかも禄剛崎の日本の中心のほうが1000倍有名だ。マジで。
とりあえず僕がすべきこと、それはなぜこのみさき小学校に日本の重心を示す碑があるのか、正しく理解することだ。
珠洲岬みたいにより海に突き出た場所なら、気持ち的にまだ理解できる。
しかしなんでまた小学校に…。
まずは碑の裏側を見た。
1942年(昭和17年)に「粟津国民学校」の初等科第1回卒業生が寄贈したものだった。
歴史古ッ!
もっと最近のポッと出のスポットだと思ったわ。恐れ入ったわ。
そして「北緯37度29分1秒・東経137度20分32秒」と書かれているな。
これは何かの手掛かりにならないだろうか?
Googleマップってさ、経緯度を入力して検索することもできるよね?
絶妙にズレ、そして絶妙に海に沈んだ。
なんだこれ。よくわからん。
次にありったけのWeb検索をした。
ここを訪れた観光客、日本の中心マニア、みさき小学校のWebページ、市町村のWebページ…。
根拠情報ゼロ!!
どうなってんだこれ!
日本の重心地の碑、せっかく立ててアピールしたいのかしたくないのか、なんなんだ、このスポット!!
役場の観光課に問合せ
僕は珠洲市の観光交流課に問い合わせてみることにした。
回答までメッチャクチャ日数がかかり、「あ、これヤバい聞いちゃったのかな?踏み込んじゃいけない領域だったのかな?」って確信したあたりでお返事が来た。
結果は「わからない」であった。
観光交流課内には資料等がなかったため教育委員会やみさき小学校にまで問い合わせてくれたそうだが、なんの手がかりもなかったそうだ。
今まで他の日本の中心においても様々な市区町村に問い合わせをしたが、一番情報量の少ないお返事をいただいたのが、このここが日本の重心地であった。
1942年、戦時中か…。もうここまで古いと資料も無いのかな…。
いや、しかしながらわざわざ調査しお返事くれた珠洲市観光交流課さん、誠にありがとうございます。
わからないことがわかっただけでも、成果なのだ。
ここからは僕が勝手に妄想しよう。
能登半島の先端は2つある。それぞれ属する町も違う。
1つは禄剛崎を有する狼煙町だ。ここは岬の先端に重心の碑を作った。
観光客の多く来る岬なので、観光客にアピールするためだ。
従い、重心の碑も有名になった。
もう1つは珠洲岬を有する三崎町だ。
町内の小学校に重心の碑を作った。
観光客が訪れるようなスポットではないので、知名度は全く上がらなかった。
…なぜ小学校に碑を作ったのか。
未来を担う子供たちが育つ場所に、大きなステータスを示す碑を作り、自信に満ちた子供になるよう願いを込めたのではなかろうか。
全部僕の妄想。でもそんな経緯があったらいいなって思う。
先程の聖域の岬の項目では、スピリチュアルなものに少し否定的な書き方をした。
しかしな、考えてみれば僕が足しげく巡っている日本の中心だって、形もないし定義も曖昧、もしかしたらスピリチュアルと同じジャンルのものなのかもしれない。
スピリチュアル、言い換えれば人の思い、人の希望。
それこそ人が生きるに一番大事なもの。
聖域の岬もみさき小学校も、そう考えれば目指す方向は一緒。
まだあんまりパワースポットの魅力をわかっていない僕だが、これも前向きに伸びしろだと捉えよう。
生きるのに必要なのはパワーだ!
よーし、じゃあ元気よくいくぞ!
エブリバディ・セイ!!
早寝、早起き、朝ごはん!!
早寝、早起き、朝ごはん!!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
聖域の岬(展望台)
- 住所: 石川県珠洲市三崎町寺家10-11
- 料金: 1500円
- 駐車場: あり
- 時間: 8:30~17:00
珠洲市立みさき小学校
- 住所: 石川県珠洲市三崎町粟津10-1
- 料金: 無料
- 駐車場: 基本無し
- 時間: 日本の重心地の碑を見るだけなら特になし