クリスマスの近いこの時期に、お送りしたい記事がある。
ところで本記事、歴代で一番意味不明な記事タイトルのような気がして大変に恐縮だ。
ただし何も知らずに突撃した僕だって混乱したのだし、キチンと背景事情を把握すればこのタイトルだって「なるほどな」って思っていただけると思う。
今回ご紹介させていただくスポットの名前は、「高森湧水トンネル公園」という。
森?湧水?トンネル?公園?
情報量が多く、ちょっと混乱しかねない名称だ。
ふふふ…。
だがね、こんな程度で混乱するのは素人よ。
当時日本5周目であったYAMAさんはその点、かなり冷静である。
高森湧水トンネル公園のある南阿蘇地区は、九州有数の湧水エリアである。
ここはトンネルの周囲に水が涌き出ている…とかに違いない。
ちょうど車内にストックしていた飲料水が無くなったところだ。
空のペットボトルを左手に、いざ高森湧水トンネル公園!!
僕は水を汲みたかっただけなのに。
高森湧水トンネル公園の標識に従い、僕は田園地帯へと車を進めた。
駐車場からもさらに標識があったので、それに沿って歩いて、両側が切り立った壁に挟まれた公園に入った。
公園の中央は川になっていて、そこには大小の噴水がいくつもある。
その向こうにトンネルが見えてきた。
なるほど、トンネル公園の"トンネル"とは、あれを指すのだな。
たぶんだけども、あれはもともと鉄道トンネル。
この噴水のある川の部分がきっと昔線路だったのではないだろうか?
そう推理した。
…しかしなんだかおかしいぞっと。
想像していたのと違うぞっと。
自然豊かな環境で、溢れ出る湧水を汲めるようなスポットだと思っていたのだ。
例えば北海道の「ふきだし公園」のようにさ。
あ、ふきだし公園をご存じでないあなたのために、以下に1枚ご紹介しておこう。
しかしそういう雰囲気ではない。
トンネルの入口には料金所のようなものが見えている。
どうやらテーマパーク的な施設のようだ。
こんなところで「すみません、湧水どこで汲めますか?」なんて聞いたら、怪訝な顔をされるに違いない。
もちろん、噴水がジャボジャボ出ているこの川の水を汲むのもちょっとどうかと思うし…。
片手に持っていた空のペットボトルをそそくさとバッグにしまう。
喉は乾いているが、ちょっと訪問先の選択をミスった。
だがせっかくここに来たのだ。入ってみよう。
どんなところかわからないが、洞窟とかトンネルとか、そういう暗くて狭いところは好きなのだ。
ここの奥に入るには、料金300円が必要とのことだ。
ところでなんだここは?
まったくわからないので、受付の人に聞いてみた。
「昔、ここに鉄道のトンネルを掘ろうとしたの。だけども工事中に湧水がすごい出ちゃって鉄道として使うことはできなくなっちゃったの。そんな跡地を活用して、中にイルミネーションとかいろいろ飾っているのよ。」
…と、そんな感じの説明だ。
(ちなみに高森は地名。ここが高森町。)
おぉ、なんか興味深いぞ。入ろう入ろう。
5月なのにクリスマスなのだが。
トンネル内、最初はいくつか休憩用のテーブルとベンチのセットが出てきたが、基本的には中央に用水路のように川が流れ、その左右に歩道がある仕様だ。
なるほど、この水路が外の噴水のある川に続いているのだな。
右が往路用、左が復路用となっている。
しばらくずんずん歩くと、イルミネーションが出てきた。
うぉ、もしかしてアレはクリスマスツリーか!?
用水路に沿ってクリスマスツリーのようなものが設置されている。
「アレっ?」て思った。
今は5月だ。クリスマスの時期ではない。むしろクリスマスの正反対くらいの時期だ。
おかしな、時空がゆがんだのかな?
やっぱクリスマスツリーである。
1つや2つではない。後から後から、行列のように出てくる感じだぞ、これ。
そしてこれらのクリスマスツリーは、水路の上に張られたワイヤーから吊り下げられているような感じだ。
ほうほう、ユニークではある。
当然のように「Merry! Christmas」と書かれている。
しかし僕は5月に「メリークリスマス」と言われるのは初めてでして、ちょっとどんなリアクションをすればいいのかわからない。
なんか知らないキッズの写真も連なっているし。
クリスマスツリーは手を休めることなくジャンジャカ登場してくる。
いろんなタイプがあってユニークだ。
そしてね、このイルミネーションによって川面もほのかに照らされているのだ。
これがまた幻想的なのである。
僕以外の観光客はほぼいない状態のようだ。
せっかくなので1つ1つをジックリ見ながら進んで行こうではないか。
ただしあまりジックリ見ていると足元がおろそかになって水路に落ちかねないので、そこだけ注意だぜ。
だんだん慣れてきた。
…というより、ゲシュタルト崩壊した。サブリミナル効果で脳がバグった。
そうなのだ。今はクリスマスなのだ。
ほらここ、すっごい寒いしさ。トンネルの奥の奥だからだろうけど、もう「冬」って言ってもいいくらいの涼しさだと思う。
それに暗いし。もう今が昼かどうかもわからない。
たぶん夜なのだろう。雰囲気的に世界は今、クリスマスイブなのだろう。
七夕もやっちゃう、斬新な廃トンネル活用術。
僕はすっかり洗脳された。
クリスマスソングを口ずさみながら、さらにトンネル内を奥へと進んだ。
七夕!!
季節も文化もいきなり変わり、クリスマス一色だった僕の頭がパニックを起こした。
もう一度言うが、今は5月だぜ。
七夕飾りには少し焦り過ぎではなかろうか?
まぁ僕も順応性はそこそこあるから、30秒後には「七夕七夕☆」みたいな感じでルンルンしながら再び歩き出した。
後半の七夕ラッシュを過ぎると、いよいよ最奥部だ。
トンネルの一番奥は、水上様が祀られている。
その横にはウォーターパールっていうハイテクな滝みたいなギミックがあった。
細かい水流に特殊な光を連続して当てることで、水滴が空間に停止しているように見えたり、ゆっくりと上に向かっているように見えたりするの。
僕の場合は手振れしちゃってうまく写真に撮れなかったけどもな。
入場チケットの裏にもウォーターパールの説明があるので、それを掲載しようと思う。
あ、チケットがすんごいボロボロなのは太古の昔だからではなくって、カバンの奥底でクッシャクシャにしてしまったからだ。
僕の場合、扱いが雑で大体こうなってしまう。
あとは七夕の飾りについての説明もある。
『毎年7月7日を中心に行われー』とのことだ。
七夕まではおよそあと2ヶ月。"中心"の概念が結構広いな。
改めて、この施設の概要をご説明しよう。
鉄道用のトンネルをここに掘っていたんだけど、湧水がビッシャビシャに出てきてもう無理ってなって諦めた。
1975年ごろのことだったそうだ。旧国鉄時代だね。
それ以来、今もトンネルの中からは毎分32tもの水が流れ出ている。
ここ高森町の貴重な水源として役立っているそうだ。
トンネルの長さは2kmちょっとあるそうだけど、そのうちの550mが一般公開されている。つまりは往復で1100m。なかなかの距離。
その片道550mの間には、約60個のクリスマスツリーなどが設置されている。
とっても面白い企画だ。
「いらないトンネルを観光地化するにあたり、クリスマスツリーをいっぱい並べよう!」とはなかなか思いつかない発想だ。ステキ。
しかも季節や天候を問わないしな。
偶然だったが、とても良い出会いであった。
白川水源で改めて水を汲む。
高森湧水トンネル公園で満足したのはいいが、当初の目的だった"飲料水を手に入れる"というミッションが実行されていない。
ついでなので、最終章ではその直後の行動を少しだけご紹介する。
水、欲しい。
ここいらは湧水ジャンジャンあるエリアだから、本来は簡単に入手できるはずだ。
そう考えた僕は、有名な「白川水源」に行くことにした。
白川水源は日本1周目でも水を汲んだ懐かしい地だ。
こうしてやってきたのが、高森湧水トンネル公園から西に数㎞の地。
田んぼの向こうに「南阿蘇白川水源駅」が見えている。
南阿蘇白川水源駅、なかなかに長いネーミング。
しかしこの2つ隣が日本一長い駅名の「南阿蘇水の生まれる里 白水高原駅」だ。
そこも昔から知っている。有名な駅だ。
白川水源の近くの臨時駐車場的に愛車を停めた。
あまり水源に近いと混雑していたりして、車を停めづらいかなーと思って。
そしてテクテク歩いて白川水源の敷地に向かうんだけど、結果から言うと最寄の駐車場もガラガラだったわー。離れた駐車場に停める意味なかったわー。
まぁいい散歩にはなったけど。
阿蘇を代表する名水100選。
清流無限に湧き出ている。
水が綺麗すぎる。もう、透き通っていて川底までクッキリ見える。
水草も青々と茂っている。
阿蘇のカルデラに降った水が、敷地内にある「白川吉見神社」の境内からコンコンと湧いているんだって。
その水量は、1分間に60tなのだそうだ。ハンパねぇ!
境内に向かって川沿いの遊歩道をしばらく歩くと、料金所が出てきた。
環境保全のために100円が必要なんだって。そっか。
ただ、かつて日本1周目でここに来たときは確か無料だった。
環境を維持するには、やっぱ資金が必要になったということなのだね。
そりゃそう。貴重な資源を守るためだ。納得。
これが白川吉見神社の社殿の1つ。
湧水スポットに夢中で、周囲の人は神社にはあまり興味を持っていない様子だったぜ。
そしてこの僕もだ。
ここは日本1周目で来たときのことを覚えているぞ。
僕らはここで水を汲んだんだ。
川幅がここだけボコッと広くなっている。ここだけ泉のようになっている。
そこで水が川底の砂を舞い上げながら湧き出しているのだ。
水が川底から湧き出している部分は、青く見える。
水が青いのか、それとも川底の砂が青いのか。
なんて神秘的なのだろう。
居合わせた人と挨拶し、お互い記念写真を撮ったりした。
満を持して、僕もここで持参したペットボトルに水を汲む。
じょうごやひしゃくが一緒に置いてあるのが親切だ。
ちなみにここの水は年中14度だそうで、すんごい冷たかった。
その場で飲んでみたらとてもマイルドでおいしかった。
これ、たちまち寿命がのびる系の水だ。
こうして、「ちょっと水でも汲もうか」から始まった寄り道は、思ったよりも時間がかかったが、思った以上に充実し楽しいものとなった。
自然豊かな阿蘇エリア。
山もすごいが水もすごい。
だが、山と水は密接な関係があるしね。
台地の恵みに感謝。
…もう間もなくクリスマスだ。
「クリスマスにどこに行こうか?」とあなたがまだ考えているならば、高森湧水トンネル公園も検討してみていいかもしれない。
なんなら忙しくてクリスマスどころではなかったとしても、ここでは年中クリスマスだ。
そんなハッピーなスポットを、覚えておいてほしい。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 高森湧水トンネル公園
- 住所: 熊本県阿蘇郡高森町高森1034-2
- 料金: 300円
- 駐車場: あり
- 時間: 4月~10月…9:00~18:00、11月~3月…9:00~17:00