いよいよ冬がやってくるな。
冬の寒さが苦手というあなた。
2022年の夏は猛暑すぎて大変だったというが、早くもあの暑さが懐かしいとボヤいているあなた。
…実は僕もだ。
抜けるような青空、入道雲。
夏草の蒸しかえるような匂いを嗅ぎ、汗をかきながら歩くのも楽しい。
絵に描いたような夏休み。
僕ら日本人の記憶の奥底には、そういう夏がいつだってあるに違いない。
今回はそんな季節外れの夏らしい景観をお届けしたい。
…福井県から、「立石岬」。
敦賀半島シーサイドドライブ
目指すはこの半島の先端、立石岬である。
その岬の先端に何があるのかはよく知らないが、僕は岬マニアだ。
とりあえず大きそうな岬があったら先端まで行ってみる。僕にはそういう習性がある。
ほら、テントウムシなどの昆虫も、棒にとまらせると一番上まで行くでしょ?
アレと似たようなものだ。
たぶんだけど、僕も生まれたときにマッドサイエンティストの博士にそういうプログラムを埋め込まれたんだと思う。知らんけど。
そして、今回の世界観を表すMAPである。
なんとなく頭に入れておいていただけると良いかもしれない。
ちなみに「敦賀港」は、北海道に渡るフェリーに乗るために何度か利用したこともある、思い入れのある港だ。
船旅はいいよね…。それはまた機会がございましたら。
「手の浦海水浴場」の横を通過する。
お、水着の男女。夏真っ盛りだね。
そして海の向こうに見えているのは若狭湾の東端を形成する海岸線だ。
ここは深い湾になっているのだ。
「水島」も見えるぞ。車を停めた。
水島は、敦賀半島先端近くから砂州で繋がっていそうで繋がってい無さそうな、小さな2つの無人島だ。
別名"日本のハワイ"とも呼ばれているそうですぜ。
手前には水島行の船乗り場もあるのが、上の写真で確認できる。
あの水島にも海水浴場があり、サマーバカンスを楽しむためにクルーザーで向かう人々がいるのだ。最高かよ。
僕の写真では表現しきれないが、角度や天気次第では、マジに沖縄の珊瑚礁のように淡い水色の海に囲まれるのだ。日本海、あなどれない。
水島のビーチで楽しむ人々が、あなたにも見えるだろうか?
僕は…、うん。見なかったことにして自分の道を歩むよ。さーて、立石岬…。
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車道の行き止まりまであと1㎞も無いだろう、というところまできた。
よく見えないがこのあたりの左側一帯は「敦賀原子力発電所」の敷地だ。
物々しいバリケードに、ちょっと気が引き締まる。
道の脇に「猪ヶ池」という池があったので再び駐車した。
これが猪ヶ池だ。
木々に囲まれた周囲1kmほどの池である。
なんで僕がこの池に興味を示したのか、次のGoogleマップを見てほしい。
岬のほぼ先端。すぐ隣は海なのだ。
にもかかわらず、不思議とこの池は完全は淡水だという。
なるほど、過去にもあったなこんな池。
こうした岬の先端付近にある淡水池の謎については、半年前の2022年春の「ブラタモリ」で成り立ちを解説していて知った。
岬の右側と左側から均等に風が吹き付け、それによって岬の陸地部分に窪みができ…。
岬のとんがりが2本になったりしたけどそれが繋がって行けのように取り残され…。
うむ、感動したんだけども内容はもうおぼろげだ。すまない…。
なのでごまかすように次章の本題に移行する。
立石岬灯台を目指して草の中
敦賀半島最北の車道は小さな港、「立石漁港」にて行き止まりとなる。
その漁港の駐車場を使っていいそうなので、ここに愛車を停めた。
さて、ここから徒歩なのだが、どっちからどうやって岬の先端の灯台まで行けばいいのか…。
見ると写真の最奥、岸壁と民家の間に標識が掲示されている。
あっちだ。
いやがおうにも「クマ出没注意」のフレーズが目に入る。
なんてパワフルな字だ。こんなところにもクマいるのか…。
そして一転して上の青い看板には立石岬灯台の絵が描かれているのだが、薄っすらしすぎてレリーフみたいになっている。
敦賀海上保安部のWebサイトでも、クマへの注意喚起がされていたので画像を引用させていただく。
海上保安部とは思えないほどに砕けたテイストのイラストだ。
直接記載できないオトナの事情があるのだろうが、ポケモンを意識した構成であり、「マジモンに注意」の表現がウケる。
いや、本当に熊が出てきたらウケるどころの騒ぎじゃないけどな。
じゃあ歩くか。
ここから灯台までは山道を15分ほどだそうだ。
進行方向に進むと、いきなり海際の狭い遊歩道。草がモジャモジャ。
わっ!
いきなりこんな人が出てきて心臓止まりました。
近所の畑のカカシだと思うが、山道でクマにビビっている人に対してこれは有効すぎる精神攻撃。
夏草の成長速度に対し、人類による整備の速度が負けている。
これは写真で見える以上に歩きづらいぞ。足もとすら見えないような草むらを進んでいく。
しかし夏を満喫しまくっている図だ。
気温はきっと30℃台の後半だろう。
メチャクチャ暑い。梅雨なのにすごい快晴。汗がほとばしる。
だれか、今の僕をビールのCMに起用してくれ。てゆーか冷えたビール下さい。
本能がそう渇望していた。
両側の茂みは、僕の身長ほどにもなった。
さっきまでは海風が体に当たって多少クールダウンしてくれたが、今はそれすらない。
シンドい。
シンドいといえば、僕の足元もだ。
今回はサンダルしか持っていない。サンダルで来るところじゃないぞ、ここは。
せめてスニーカーだ。ケガするぞ。
しばらく進むと今度は道は山側に大きく折れ、かなりの急坂の山道になる。
これはキツい。汗が無限に放出される。
足もとは岩がゴロゴロしていてサンダルでは滑る。踏ん張りが効かない。
10分ほどハァハァ言いながら山道を登ると、ついに灯台の頭が姿を現した。
ついたーー!!
日本人が初めて設計した洋式灯台
夏草の中から灯台の頭頂部が見えたときにはとても安堵した。
ここまで観光客はゼロ。
しかもクマが出るかもしれない。
道もあっているのかイマイチわからない。
つまり不安だらけだったのだ。
そうまでしてここに来たかった理由は2つある。
冒頭の通り、ただ単に僕が岬好きであるから。
そしてもう1つは、この灯台は日本人が初めて設計から建設まで自分たちでやり遂げた灯台であるからだ。
その偉大な功績を見ていたかったのだ。
空、青。そしてクソ暑い。
だがしかし、最高の絵だ。
これまでの鬱蒼とした空間から解き放たれたカタルシスよ。
そして傍らにあった説明板がこれだ。
山口県の西部、「角島」という本土と道路で繋がっている島にある「角島灯台」だ。
これはデカいし白塗りしていない素材剥き出しの荒々しさで、僕も大好きだ。
島に渡るための「角島大橋」もインスタ映えスポットとして非常に有名であり、数々の車のCMにも出ているので、あなたもどこかで目にしたことがあるかもしれない。
話を立石岬灯台に戻そう。
これまでの洋式灯台って、それなりに海洋知識のある外国人が「ここに作るといい感じですよ。設計してあげましょう。」みたいなノリだったの。
だけどもこの立石岬灯台は、日本政府が「ここ敦賀を中国を始めとする大陸側の玄関口とする!だから灯台必要!」って方針を定めたの。
そういう経緯で、日本人が設計・建築をしたのだ。
もちろん今でも現役。
しかも登録有形文化財にも登録された。
過去、ブログ内で似て非なるステータスを持つ灯台を取り上げたことがある。
これは日本人が初めて建設し、その喜びから灯台に菊の紋章までくっつけた。
ただしこれは設計士はイギリス人だったのだ。
完全なる日本製は、立石岬灯台が最初。
ズングリしているが、青空に立つその姿はなかなか素晴らしい。
ここも周囲は草ボウボウだが、綺麗に整備されているのではなく、こういうワイルドなところに立つ灯台っていうのも悪くはないな。
そう思った。
ただし、とても暑かった。木陰は皆無。
あまり炎天下にいると日焼けしてしまう。
灯台に別れを告げてまた15分ほど歩き、漁港の愛車の元へと帰ってきた。
もう汗だく。ヘロヘロ。
カバンを投げ捨て、ボディシートで体を拭いた。
チクショウ。願わくば、僕も海水浴したい!
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いよいよ明日から冬がやってくる。
それに合わせて気温も一気に下がるとのことだ。
僕らは冬には夏を懐かしみ、夏には冬を懐かしむ。
そんな繰り返しの思いが原動力となり、地球を動かし四季を巡らせているのかもしれない。
…という妄想ができるのが、日本の四季の素晴らしさ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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