週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.192【秋田県】5月末~6月頭のみ出現!!八幡平の「ドラゴンアイ(龍の目)」を目指せ!

「これは…、想像していたよりもハードな道のりだな…!」

 

雪を踏みしめながら、僕はそう思った。

2・3日後には暦上夏になるはずだが、真冬の装備をしても凍えており、そして周囲360度全てが真っ白であった。

 

安全面を加味すると引き返したほうがいいかもしれない、とも思った。

しかしギリギリでなんとかなりそうな状況だったので進み、そして目的地に到達することができた。

結果として踏破できたわけだが、事前の情報収集や準備に不足があった点は反省している。

 

…という重い出だしだが、僕がどこを目指していたのか。

 

 

 

「ドラゴンアイ」。

 

 

東北地方を南北にぶった斬る巨大な奥羽山脈

その奥羽山脈内にある日本100名山の1つ「八幡平」。

その頂上付近にある「鏡池」という池。

 

雪解けシーズンになると池の周囲から徐々に溶けていき、ジャストなタイミングで訪れると巨大な龍の目のように見えるのだ。

これがドラゴンアイ

 

2022年の開眼も、もう間もなくだろう。

では昨年の2021年がどうだったのか。

実際訪問した様子を執筆したい。

 

 

八幡平は霧の中

 

「八幡平アスピーテライン」。

1年の半分近くが冬季通行止めとなる、東北山間部を貫く快走路だ。

 

僕はそこで眉間にシワを寄せて山を見上げると、「間もなく世界は暗転するな…」ってつぶやいた。

 

八幡平1

ここはまだかろうじて晴れている。しかし山の奥地はドロドロの雲だ。

今からあそこに行き、そしてしばらく散策をしようと予定しているのだ。

ヤベーなこれヤベーよって、ことだ。

 

八幡平2

薄明光線が世界の終わりのようにも思えた。

さて、しばらくは太陽さんともお別れだぞっと。

ここからの霧の中の世界、腹をくくれよっと。

 

八幡平3

はい、来た。

「山の天気をなめるなよ」が具現化した。

 

写真ではわかりづらいが、トロトロ運転をしなければいけないほどの濃霧だ。

そして雨。

さらには窓ガラスを通して冷気をヒシヒシと感じる。

萎える。

 

八幡平4

八幡平山頂駐車場に到着した。

何度も来ている場所なのだが、「駐車場への入口はどこだっけ?」っていうレベルの濃霧だった。

 

そしてガラガラに空いていた。

本来、ドラゴンアイの時期は、周辺はメッチャクチャ渋滞ですさまじいと聞いていた。

この天気のせいなのか、それとも現在が早朝6時過ぎという時刻のせいなのか。

おそらくはその両方だと思うのだが、事実スッカスカだった。

 

八幡平5

公衆トイレでトイレを済ませ、身だしなみなどを整えた。

車からのこの往復で既に僕は結構服を濡らし、かつ寒さで歯がカチカチ鳴っていた。

先を思いやられるな、これ。

 

マジどうする?

こんなロケーションだからドラゴンアイは諦めるか?

 

そういう考えも頭に浮かんだ。

だがせっかくここまできたのだ。

行けるところまでは行ってみよう。

 

冬用のジャンバーを着込み、手袋をする。

旅グッズを詰めたカバンを肩にかけ、手には傘。

靴は普通のスニーカーだ。

とりあえずこれで出陣。

 

八幡平6

アスピーテライン上にある、山頂への遊歩道入口部分。

ここに岩手県秋田県の県境を示す標柱がある。結構な人気スポットだ。

 

あなたもここで激しく反復横跳びしますよね?

岩手県秋田県岩手県秋田県…!」ってゼーゼー言いながら反復横跳びしますよね?

知らんけど、僕は昔から毎回やっている。

 

そして目指すドラゴンアイはギリギリで秋田県なので、今回の記事のカテゴリは「秋田県」としている。

 

それでは、いざ遊歩道へ!

 

 

雪中の歩み

 

ここで、僕が歩む行程をご紹介しよう。

 

雪道1

赤い線が遊歩道だ。

遊歩道開始」地点から歩き、ネタバラシしちゃうけど「雪道ゾーン」を経由して「ドラゴンアイ(鏡池」まで行く。

 

夏から秋にかけてであれば、何度も歩いているコースだ。

その時期であれば鏡池までは20分ほどの道のりだ。とりわけすごい傾斜も無い。

 

雪道2

まずは遊歩道序盤の光景。

小雨は降っているものの、歩道は綺麗に整備されているし滑り止めも充分。

左右も笹が生い茂っていて景色は"冬"ではない。

寒いけどね!寒いけどねッッ!!

 

雪道3

先ほどの地図にも出てきた分岐ポイントにて。

おそらくこの時期限定で設置されている、簡素な看板が出てきた。

ここからドラゴンアイまでは徒歩10分とのことだ。

 

これ、この先相当な悪路でちゃんと装備してきた人よりも遥かに時間がかかったのだが、あとから振り返るとピッタリ10分でドラゴンアイに到着していた。

(もっと長い時間を歩いていたような気もしたが。)

かなり素人に配慮して記載してくれたのかもしれない。

 

とりあえず、ここを左に行くのだ。

この時点で薄っすらと懸念していたことが脳内の多くを占めることとなる。

 

雪道4

雪道が現れた。

恐れていた雪道だ。懸念が実現した。

徐々に雪が積もっていくような感じではなく、いきなり雪渓の上を歩かざるを得なくなった。

 

これから見るのは雪に覆われたドラゴンアイなのだから、当然そこに行くまでの道も雪に覆われている可能性は充分にあった。

それを予測できなかった僕に落ち度がある。

 

雪道5

思い返せば、日本一周目でも6月上旬の八幡平を仲間と歩いていたのだ。

あのときも積雪だったし、みぞれ雪も降っていた。

 

仲間の一人はハーフパンツにサンダルであり、防寒具と呼べるものはなぜか車に乗っていたレスラーマスクしかなく、それを被っていたっけ。

僕も半袖であり、ひとしきり雪原を歩いたあとに戻ってきたレストハウスで震えながらお茶を飲んだっけ。

 

レストハウスで近くにいたおばさんが、僕らが雪原を歩いてきたと知り「すごいね、登山部?」と言ってきた。

僕は「登山部であればこんなバカはしないと思います」と言い、おばさんは「それもそうね」とうなずいた。

 

あれから日本を5周したのに、僕は全然成長していなかったのだ。絶望。

 

雪道6

 

とりあえず雪渓に乗ってみた。

うむ、なかなかに固くそれなりに滑る。

新幹線の中で買うアイスクリームくらいの固さだ。

 

完全に平坦な部分であればバランスを保ちつつ歩けるが、少しでも傾斜があるとヤバい。

特に下り坂はヤバい。滑って転ぶぞ、これ。

 

唯一の救いは傘を持ってきたことだ。

幸い傘をさすほどの雨ではなくなったので、畳んでストック代わりにした。

思いっきり雪に突き刺すのだ。

これで次の一歩を踏み出せる。

 

これを繰り返す。

ゆっくりゆっくり、確実に歩みを進めた。

 

雪道7

ここいらの写真が少ないのだが、行動面でも精神面でもそれどころじゃなかった。

開けたフィールドが出てくると、どこに行けばいいのか不安になる。

ピンク色のリボンで道は示されているし、雪には踏み跡もあるのだが、それでも広い空間というのは不安を演出してくれるね。

 

前から人がやって来た。

ベテランぽいおじさん一人だ。

わりとサクサク歩いてきた。

 

そっか、登山靴かスノーブーツ。それが必要だったのだ。

スニーカーは極端に性能が落ちるぞ。

これはこれからドラゴンアイを目指すであろうあなたへの教訓だ。

 

雪道8

ずいぶん長い時間歩いたような気がした。

「帰りのこともあるから、もうこれ以上はカンベンしてくれ」って思ったころに、ドラゴンアイの鏡池が姿を表した。

 

 

ドラゴンアイ出現

 

静かな霧の中に佇むドラゴンアイ。

ついに到達。

先客は2人ほどいた。

 

ドラゴンアイ1

これは少しだけ時期が早い。

ドラゴンアイの真の開眼は、池の中央に浮かぶ雪の真ん中が溶けて丸い穴が空いた瞬間だ。

あと1週間ほどだろうか?

 

ドラゴンアイ2

しかし開眼後は形が崩れやすく、雨が降っただけでドラゴンアイが崩壊したりする。

今回のこれも、ちょっと眠そうだけれども充分にドラゴンアイだ。

龍の白目に当たる部分は、澄みきったコバルトブルーだ。

天気がよければ本当に綺麗だったに違いないが、霧の中でも幻想的だ。

 

ドラゴンアイ3

奥の方をよく見てほしい。

曲線に亀裂が入っている。

 

なんでなのかわからないが、2週間くらい前からこの現象だそうで、今年のドラゴンアイは例年以上に崩れやすいのではないかと言われている。

 

僕はこれを「ドラゴンのコンタクトレンズがズレた」と呼んでいた。

決して綺麗なトラゴンアイではないが、見方を変えればこの光景もまたとないユニークなものだとポジティブに思えるもんね。

 

ドラゴンアイ4

僕は何枚も写真を撮った。
しかし構図は似たり寄ったりだ。

 

その理由は2つある。

ひとつは遊歩道が池をぐるりと取り巻いているわけではないから。

もうひとつは、下手に歩き回ることで転倒したり池に転落するリスクを減らすためだ。

 

ドラゴンアイ5

遊歩道からドラゴンアイへは、上図のようにすり鉢状になっている。

もしここで足を滑らせたら、龍の目の中にドボンだ。

たぶん這い上がることはできず、低温症で間もなく死ぬ。そんなのはゴメンなので、へタに歩き回らなかった。

 

ドラゴンアイ6

遊歩道とドラゴンアイを隔てているのは、1本の細いロープだけだ。

簡単に下をくぐることができるレベルなので、転倒したときの歯止めにもならない。

あなたも行く際にはくれぐれも気をつけてほしい。

 

ドラゴンアイ7

しばらくすると、2人組の人がやってきた。

では、そろそろ立ち去るか。

 

 

一場春夢の世界

 

帰還1

帰りの下り坂はさらに怖かったが、大体どのくらいの距離で雪原が終わるか把握していたので、気持ちはラクだった。

カメラのタイムスタンプを見たところ、なんだかんだで15分で車道に到着してた。

 

あと、分岐より手前のまだ雪道になっていない場所で、初老のご夫婦とすれ違った。

おじいさんは「ドライアイはこっちでいいですか?」と聞いてきたので、「ドラゴンアイはこっちですよ」と丁寧に応答した。

横にいたおばあさんが恥ずかしがっていた。

 

帰還2

車道や駐車場の霧はさらに深くなっていた。

もう愛車がどこなのかもよくわからなかった。

 

しかし帰って来れてホッとした。

短い時間であったが、ドキドキしたさ。

 

帰還3

なお、このあとのドラゴンアイであるが…。

 

公式Webでその後もずっと情報を追っていたところ、目玉が飛び出すようなヘンテコな成長を遂げたりし、例年には無い不思議な経過を辿って行った。

そして6月の下旬ごろに完全消滅したようだ。

 

 

これは昨年ではないが、僕が7月上旬に撮影した鏡池だ。

周囲には緑が溢れ、そして左右にかろうじて雪が残っている。

 

ドラゴンアイは、こうして終わりを告げるのだ。

 

 



晩春から初夏にかけての一瞬の夢のような光景、それがドラゴンアイ。

あなたも興味があれば、キチンと装備を整えて見に行ってほしい。

 

ほら、2022年もそろそろ龍が目を覚ますぞ。

耳をすませば、龍の唸り声が聞こえてきそうだ。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ドラゴンアイ(鏡池
  • 住所: 秋田県仙北市田沢湖玉川
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり(八幡平山頂駐車場)
  • 時間: 特になし