「〇〇で一番早い日の出が見られる地」っていうステータスが存在する。
なんだかワクワクするフレーズだよね。輝かしい1日が一番最初に始まるのだから。
それは反対に言うと「〇〇で一番早く夜が来る地」なんだけど、やっぱ"夜"よりか"日の出"の方が、より多くの人の心を射止めるのではないかと思う。
さて、青森県で一番早い日の出が見られる地っていうのはどこなのだろう?
結論から言うと、青森県の「小舟戸(こみなと)海岸」というスポットである。
※"みなと"って読むのだ。初見では絶対無理。
ちなみにこの場所、「階上灯台」って言った方がピンと来る人もいるかと思うので併記しておこう。
現地にはこんな石碑がある。ちょっとそそられるでしょ?
じゃあ行ってみようか、階上町へ!…ってわけで、僕がここを訪れたエピソードを3回分、ダイジェストでお届けする。
朝日を見に行こうぜ
僕が一番最初にこの小舟戸海岸を目指したのは2011年、つまりはあの東日本大震災が発生した夏のことだった。
宮城・岩手・福島などと比べるとまだ被害は少なめだが、それでもところどころに津波の跡が見られる光景に胸を痛めつつドライブしていたときのひとこまである。
場所はここ。岩手県との県境がすぐ南側にあるのがわかるよね。
ピンを立てた階上灯台のところがちょっと海に突き出ているけど、岬ではないらしいんだ。小舟戸海岸という名前がついているんだ。
東北地方を縦断する国道45号を北上してきた場合、青森県に入ったらすぐに海に向かって右折する。
そのままストレートに走った先が小舟戸海岸。
ただ、少なくとも当時は小舟戸海岸や階上灯台を示す標識とかは無い。それでも大体真っすぐ行けば大丈夫だ。
朝の5時台。夏とはいえ早朝は冷える。そんな中での到達。
これは途中で振り返って歩んできた道を撮影したもの。
車を停めたのは、遊歩道の延長にある小さな小屋のあたり。そこから数分歩くと広大な芝生の丘があり、その上に階上灯台が立っている。
…という看板があった。ここは海岸からそこそこ近いような気がする。東日本大震災のとき、ここはどうだったのだろうか。
この高さであれば波を被りそうなのだが、パッ見たところ被害を受けたような痕跡が無い。無事だったのかな。だったらいいな。
遊歩道を歩いた先、階段を数10段登ったところに灯台を発見。
その周囲は海を見下ろす広い芝生地帯になっていた。
青森県で一番早い日の出が見られる地だというから、ここで朝日を見られたらうれしいなって思ったんだけど、ご覧なさい太陽どこですか?
むしろ「海もどこですか?」ってくらいに周囲がホワイトアウトしている。
とりあえず、先に石碑を拝もう。上の写真にも石碑は写っている。灯台の右手だ。
『青森県最東南端の地』の碑。
こういう斜めの端っこってなかなか数も少なくて珍しいよね。さらに青森県の最東南端なんて、日本地図レベルで見れば別に出っ張っているわけではないから、失礼ながら地味めな存在だと思うんだ。
そこにこんな碑があるから心に刺さる。碑があって当然のロケーションにあるのではなく、「おぉ!こんなところにあるのか!」ってなるのが良いのだ。
ここに来れてよかった。
実は僕がここの存在を知ったのは5年くらい前なのだ。とにかくいろいろなスポット情報を調べるのが趣味な僕は、その過程でここを知った。
しかしそのときは1都道府県の斜めの端っこには特に興味はなくってね。「でもそういうのも面白いかもな」って思ったのはつい最近だった。
うーん、いまだに空は霧で覆われている。
それでも、たぶん今日は曇りではなくて晴れなんだ。まだ早朝だから朝霧でモヤっているけど、もうちょっと経てば放射冷却で晴れ渡ると思うんだ。
だから10分ほど空を見上げていたけど、晴れるまではまだ数10分はかかると判断した。
もう今回はこんな感じの天気でいいや。これで満足しよう。
また近いうちにここに来ればいいや。
2ヶ月後の再訪
…その2ヶ月後のことだ。僕はまたも小舟戸海岸を再訪することとなる。
被災した岩手県の海岸線を確認しつつ、青森県に足を踏み入れるところまでを走行する目的であった。
時刻はやや太陽が西に傾いてきた時間だ。朝日とは程遠いが、別に朝日とかはもういい。むしろ前回は霧だったので、晴れ渡った小舟戸海岸と階上灯台を眺めたいっていうのが第一目標だ。
これは国道45号を反れて真っすぐに海に向かっているときの絵だ。
快晴だと爽快感が違う。少し開けた窓から吹き込む風も爽やかだった。春や秋の東北は、ドライブしているときの風が最高に気持ちいいよね。
突き当りにあるちょいと貧相で駐車場と呼んでいいものかどうか迷うような駐車スペースに愛車を停める。
…これさ、正しい駐車スペースってここでいいの?誰か小舟戸海岸に詳しい人がいたら教えてほしいぜ。
2ヶ月前の自分の姿と重ねるように、灯台を目指して歩く。前回は振り返って撮影したけど、こうやって青空と灯台を入れて撮影した方が遥かに絵になるよな。お気に入りの1枚だ。
こんなにも水平線がくっきり見えて。空も海も青くて。
でも、もうしばらくは太平洋を見て胸が苦しくなるような日々が続くのだろう。
僕自身が東日本大震災で被災したわけでもなく被災地に所縁があるわけでもないのにこんな気持ちになるのだから、なんらか関係性のある方々の苦しみは筆舌に尽くし難いのであろうな…。
遠く、海を臨む少し突き出た芝生の高台に、石碑2つとブイがあった。思いっきりカメラをズームしてこれを撮影。
ごめん、実は2024年の執筆現在もこの碑がなんであるかは僕は知らないんだ。Webでも調べたけども、出てこなかった。
なんで2011年当時に近くまで行かなかったかというと、ここまで岩手県の被災地をずっと見て来たので少し心が重い状態だった。横にブイがあることからも「大津浪記念碑かな?」って思ったけど、そうであるとまた少し心が重くなる。
だから遠望だけですませてしまったのだ。
さて、話を明るい方向にシフトしていこう。丘の上の灯台だ。芝生がまぶしい。
灯台を取り巻く背の低い柵がオシャレだ。
西日を受ける最島南端の石碑。
こういう端っこだとか真ん中だとか交点だとかを示す石碑やオブジェが大好きでね。もしこの碑がここになかったら、僕は2024年現在に至るまでもここに来ることはなかったかもしれない。
場所を示すことって、大事なのだ。示したこと自体が魅力となり、マニアがそこに訪れるきっかけにもなるから。
ちなみにこの石碑、意外と小さい。チャーミング。
寒風にさらされながら
ここで一気に時系列を飛ばし、直近の日本6周目にて訪問したときの写真を最後にご紹介したい。
真冬のすんごい寒い中で、僕はここに訪れている。
"東北"というフレーズが出ただけで「雪がすごいんでしょ?」という方が多いが、雪がすごいのは日本海側とか山間部だ。
太平洋側は積もるときはそこそこ積もることもあるが、基本的には積もらない。山脈が西からの雲を堰き止めるから、太平洋側は基本冬場は晴れるのだ。そして仮に降ったとしても、海沿いの町は風が強いから少々の雪は全部吹っ飛んでいく。
なので上の写真もあまり寒そうではないかもしれないが、実際は指がちぎれ飛びそうなほどに寒い!さすが真冬の青森!ちょっとナメてた!夕方だしなおさら寒い。
しかも風通し抜群の丘の上なので、分厚いコートのフードもしっかり被って震えながら灯台を目指した。
灯台の右手に建てられている看板には『三陸復興国立公園 階上海岸 小舟戸園地』と書かれている。震災後に新設されたものだ。
東北の太平洋沿岸の多くの景勝地は三陸復興国立公園として、未来に向かって歩んでいる。
あまりに寒くて、この石碑を撮影して早々に引き返した。これで満足だ。
…ただ、もしかしたらまたいつの日か再訪し、日の出チャレンジするかもしれない。
灯台から少し南側に歩いた川の中には、岩手県との県境を示す『境』と書かれた石があるそうで、それは見たことないし面白そうなので見に行くかもしれない。
おそらく地元の方以外にはかなり知名度の低いこの青森県最東南端。
あなたも国道45号をスルーするのではなく、ちょこっと立ち寄ってみるとよいです。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報