予備知識ゼロの状態で、瀬戸内海沿いをフラフラ走っていたときのことだ。
ちょっと間違えて狭い道に入ってしまったなって思ったら、視界にいきなり恐竜が飛び込んできて焦ったのだ。
免許を取る際に教習所で「"かもしれない運転"をしなさい」と言われたが、正直僕は「運転中に恐竜が出現する"かもしれない"」までを考えてハンドル握っていなかった。
不覚。
恐竜の近くに愛車のHUMMER_H3を停めた。
今回は、そんな真冬の出来事を執筆しようと思う。
カブトガニ博物館
無料の恐竜公園を探索しよう
経緯は前項の通りだ。
場所は笠岡市の瀬戸内海沿い。
本当は近くの県道を走ろうかと思っていたのだが、このあたりは少し道が複雑で、一本反れてしまったようなのだ。
それにすぐに気づき、Uターンしようかと周囲をキョロキョロした瞬間、遠くにティラノサウルスの頭があるのが目に入った。
「何ごと!?」って思って、僕は一瞬フリーズしたさ。
だけどもそこは、幼稚園時代から恐竜大好きな男の子。
「よし、行ってみよう!」ってなってティラノサウルスの元まで車を走らせた。
1人旅はテキトー&フリーダムなのだ。
惹かれるものがあったら全部駆け寄る。
さて、駐車場に到着して判明したのだが、ここは「カブトガニ博物館」という施設の一部だ。
屋外が「恐竜公園」となっており、この屋外エリアは無料で誰でも入れる。(博物館の開園日に限る)
なるほど、以前からカブトガニ博物館の存在は知っていたし、このすぐ近くの県道も何度か走ったことがある。
だけれども、こんな恐竜がいるとは知らなかった。
今回は道を間違えて良かった。
とりあえず、一番インパクトのあるティラノサウルスの足元にやってきた。
なかなか大きい。
ティラノサウルスの下にいるのが、この僕だ。
ティラノサウルスは柵で囲ってあるので僕の方がやや前面にいるという遠近法にはなっているが、それでもティラノサウルスがかなり大きいことがわかるだろう。
横にはソテツ、そして後ろには「ビッグサンダーマウンテン」みたいな岩山があり、雰囲気もたっぷりだ。
ティラノサウルス、喉や首が真っ赤だな。
こういうタイプのティラノサウルスは初めて見た。
「ジュラシックパーク」で歓喜した世代としては、体格や模様にちょっと違和感があるけど、少なくとも化石から色や模様はわからないしね。
自由なのだ。恐竜はイマジネーション。
そしてさらに、岩山をよく見ていただきたい。
プテラノドンがいる。
ちょっと翼がコッチコチに固まっていそうな雰囲気であるが、今は2月だ。
彼らも寒さでコッチコチ。非常に納得である。
園内の説明板を改めて見てみた。
この恐竜公園には、7種類8体の恐竜がいるとのことだ。
そして公園は3つのエリアに細分されている。
今僕がいるのが砂漠ゾーン。他には海ゾーンと森林ゾーンがあるという。
わかった、全部行く。
ちなみにここ砂漠ゾーンには2体のプロトケラトプスがいたのだが、小さくてあまり迫力なかったので、写真には納めなかった。今は後悔している。
海ゾーンだ。
実際はやや小さめの池のようではあるが。
そこにいるのは1体のみ、エラスモサウルスである。
青いなー、すごい青み。
そんで切羽詰まったお顔をしてらっしゃる。
絶対に「あ"あ"あ"あ"ぁ…!!!」とか言っている。
言わんこっちゃない、2月の池になんか飛び込むからだ。
そんなことやってるから、あんたら滅びたんだぞ。
最後は森林ゾーンだ。
首のカーブが美しい、ディプロドクス。
大きいしカッコイイ。さすが最大規模の恐竜だ。
ただ、首や体部分の模様がキリンぽくって、顔を見ない限りは何となくキリンをイメージしてしまう風貌だ。
池の向こうにいるのはアパトサウルスだ。
この池には、さっきのエラスモサウルスもいる。
あっちにはどう行けばいいのだろうか?
ちょっと周辺を見渡してみたが、わからなかったので池越しの撮影に留めた。
少なくとも敷地の整備の人とか、絶対に行けるようにはなっていると思うのだが。
そしてアパトサウルスも独特の模様があるね。
このザックリした黒と白のカラーを見ると、なんとなくマレーバクを彷彿とさせてしまう。
実際のバクとは模様はずいぶん異なるのだが、このずんぐりした体格もあり、「バクみが強いな」と感じた。
林の中にいるのはイグアノドンだ。
木々の葉っぱを食べている。
一番森林ゾーンっぽいシチュエーションだ。リアルな木をうまく利用した配置も見事だ。
そしてもう1匹、木立の中でゴソゴソうごめく気配が…!
いや、そんなハズはないのだが。
撮影しなかった2体のプロトケラトプスを含め、これで8体すべて見たのだよ。
さらに、ここの恐竜は実際に動くようなギミックは無いはずだ。
…って思ったら、芝刈りしているおじさんだった。
ビックリした。
そうだよね、のどかな平日の昼下がりで観光客も少ないから、ここぞとばかり芝刈りだよねー。ごくろうさまです。
恐竜にかける熱い想い
カブトガニ博物館の公式Webが、恐竜公園のかっこいい動画を作っているので、まずはそこへのリンクを貼らせていただこう。
…まぁ、この動画の中でもプロトケラトプスの扱いが小さいことにお気づきいただけるであろう。
そりゃ僕も写真を撮らずにスルーするわ。
ごめん、プロトケラトプス。
さて、そもそもなんでここに恐竜たちがいるのか。
このカブトガニ博物館のWebサイト内に説明がされているので、要約してご紹介したい。
ひとまずこの恐竜たち、実際に岡山県にいたものではない。
カブトガニの時代のイメージをよりパワフルにするため、ヨーロッパからアジアにかけて生息していた恐竜たちを再現したのだ。
そしてこれらは遊具的に楽しんでもらうものでは無く、ガチに真面目に作っている。
恐竜にかけては国内で第一人者である教授だとか、アメリカの博士だとかが検討を重ね、筋肉・シワ・ポーズに至るまで考えぬかれたものなのだそうだ。
でね、現地で僕がディプロドクスを見て「キリンみたいだ」って思ったけど、これもあえての配色だったらしい。
「同じような場所で同じような生活をすれば、同じような模様になるかもしれない」と考えた結果とのことだ。
そんな感じで、これまでの恐竜図鑑に描かれていたものとはちょっと異なる再現となったそうだ。
そして、こういう本格的に作った恐竜公園としては、国内初なんだって。
そりゃスゲーです。
参考までに恐竜公園がいつできたのか調べようとしたけど、明確にはわからなった。
カブトガニ博物館ができたのが1990年なので、きっと同時なのだろう。
カブトガニの育つ地
ここはカブトガニ博物館。
あくまで主役はカブトガニである。
そして僕もカブトガニ好きだけどさ、ちょっと先を急ぎたかったので中には入っていない。
従い残念だが、内部のことまでは語れない。
だが、この周辺は野生のカブトガニが生きる貴重なエリアである。
そのあたりを少しだけご紹介しよう。
…あ、その前にあなたはカブトガニはご存じか。
あの2億前から姿の変わらない、生きる化石だ。
甲羅がカッコいいが、裏返すとちょっとグロいヤツだ。
気になるならWikipediaさんに教えてもらうといい。
はい、雑な周辺MAPだ。
このカブトガニ博物館の周辺の深い入り江、「神島(こうのしま)水道」ここが日本で最大のカブトガニ生息地域である。
ここは干潟である。
ドロドログチャグチャな感じで、でも汚いわけではない綺麗な干潟。
そんな泥の中でカブトガニは生きている。
でもこういうところってどんどんコンクリートとかで固められていくし、ゴミとか漂流物で汚れていき、カブトガニは絶滅間際なワケだ。
そんな中でも、キチンとカブトガニの育つ環境を維持できている神島水道とその周辺。
そこを何度か僕は走った。
上の写真は神島水道の少し東、「沙美海岸」で車中泊から目覚めたある春のときの写真だ。
まずは温暖な瀬戸内海の気候を好みで感じ取れ、そして海を見てその綺麗さに心を奪われるよね。
瀬戸内海、荒波を四国がブロックしてくれるので本当に穏やかなのだ。
徐々に明るくなる海岸を散歩するのは楽しい。
ちょっと雲が多い日だが、それもそれでいい。
ちょこちょこ車を停める。
ここは「青佐浜」というらしい。
どうやら穴ジャコ釣りで有名なところなのだそうだ。
シャコって、なんか怖い見た目だよね…。
この当時の僕は、まだシャコを食べたことが1回しかない。(2022年現在でも2回しかない)
シャコも確か沿岸部の泥の中の生物。
カブトガニの後輩。こうやって瀬戸内海で繋がっているのだろうな。
シャコの魅力はよくわからないが、感慨深い。
こうして神島水道に差し掛かると、防波堤にカブトガニ繁殖地を示す標語などが出てくる。
2憶年前から地球に生きる生物が、この防波堤のすぐ向こうにいるのだ。
恐れ多くてドキドキするわ。
…と思ったら、すんごいデフォルメされたカブトガニのキャラクター。
全然恐れ多くない感じだった。親しみやすいデザインだった。
これ、カブトガニ博物館のマスコットキャラクターで、「カブニ君」というらしい。
その後、メスの「カブ海」と2016年に結婚して今は2匹の子供がいて…、みたいなサクセスストーリーがあるようだが、そこはよくわからん。
ちょっと干潟の中を覗き込んでいた。
でもそんな簡単に見つかるものでも無いよね。
どうやら産卵シーズンだとパッと見つけられることもあるそうだが。
絶滅間近なんだから、巧妙に隠れていただいて正解。
そう長い時間ではなかったが、こうして僕は笠岡市を去る。
すぐ西にはゴチゴチの工場群や埋立地が現れる。
ただほんのひととき、わずかな時間であるが、僕は2億年前を垣間見ることができた。
途方もない過去から現在に生きる、貴重なカブトガニ。
彼らがこの先も生きていける環境を守っていきたいね。
彼らの時間軸で考えると、それは千年先・1万年先・1億年先になるのかもしれないが、それが1日1日の積み重ねであることが、人間だってカブトガニだって同じだ。
1日1日を大切に。
そして…。
★KABUTOGANI WO TAISETSUNI★
カブトガニを大切に
(…なんだこの終わり方は…)
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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