普段壺を使う生活をしているわけではない。
特に壺に興味がある人生を送っているわけでもない。
だけどもふとTVをつけたらやっていた、TV番組「開運!なんでも鑑定団」で歴史ある古伊万里焼が出てきたら結果の価値が気になる。
着物をキチッと来た鑑定人の「中島誠之助さん」がそれに対して「いい仕事してますねぇ」と唸るとなんとなくこっちまで嬉しくなる。
例え贋作でも「床の間に飾るといい感じだと思いますよ」とフォローしてくれると、幸せな気持ちになる。
伊万里焼きにはあまり縁はないが、「なんかいいもんなんだな」って、こうして昔から刷り込まれている。
さて、上の写真は日本6周目の佐賀県訪問時のものである。
九州を巡るほぼ全工程が快晴であったが、悲しいかな佐賀のときだけザーザー降りだった。台風が近づいていたのだ。
おまけに台風の影響で旅の日程を短縮しなければならず、真っ先に佐賀県がその犠牲となった。
そんな中でも、とある道の駅の敷地内のブドウは雨に濡れていきいきとしていたな。
このあとの台風で落ちないことを祈る。
まぁ、アレだ。
この記事執筆時にちょうど全国的に梅雨空だし、例の人気アニメでは壺から出たり入ったるする敵が出ているし、書くなら今でしょって決意した。
だから巨大な壺の乗った橋、「伊万里津大橋」の話をする。
※ "伊萬里津大橋"の表記もあるが、当ブログでは"伊万里津大橋"とします。
壺との出会い
秘窯の里大川内山
今回の話のメインは伊万里津大橋なのであるが。
日本2周目のときは、まだそういう焼き物の侘び寂びなんて全くわからない、ガキの延長みたいな感じの時期であったが、伊万里市内の「秘窯の里大川内山」っていう里の中にある「鍋島藩窯公園」を1人散策していた。
大川内山は江戸時代に朝廷に献上する最高品質の伊万里焼を焼いていた、歴史のある土地だそうだ。
古い窯元が立ち並び、窯の煙突がいくつも聳え…、そんな石畳の道をのんびり歩いた。
まだ朝の時間帯であり、里は静かであった。
ちょうど匠たちがに火を入れ始めた時間であった。
ガラケーで撮影した画素数が控えめな写真で申し訳ないが、公園内の橋の欄干に伊万里焼の壺が乗っていて、思わず撮影したのが上記だ。
撮影したら雨が降ってきた。
チクショウ、雨だ!旅の途中の雨はちょっとゲンナリするぜ!
闇夜に浮かぶ壺
それから数年が経った日本4周目のときだ。
正直、鍋島藩窯公園の思い出もほとんど忘れていたし伊万里焼のことも意識してなくって、伊万里の町は旅の途中のただの通過点だった。
夜だったしね。もう観光はできない。
そんな折、ふと渡った橋の上に壺があることに気づいた。
眠かったのでまるで幻のような光景であったが、これは夢ではなくて事実だ。
その橋の名前は伊万里津大橋という。
実は僕は日本1周目からこの橋の存在を知っていたけど、その存在をすっかり忘れていた。
橋の上でたまたま車を停められる一瞬があったので撮影できた奇跡の写真。
その後も長らくその詳細を間近に見ることはなかった。
そうそう、ことあと伊万里市内で立ち寄ったのが「伊万里温泉 白磁乃湯」である。
"白磁"っていうのは、白いツルツルした焼き物にかかっている釉薬のことだよね。
なぜこのようなネーミングなのかは調べてもわからなかったが、伊万里焼つながりでなんだか嬉しくなるよね。
とてもきれいで設備の整った温泉だったよ。
…というのはさておき。
旅の終わった後、盛大にボケた壺の写真を眺めながら「いつかちゃんと間近で壺を撮影したいな」って思い続けていたのだ。
別に壺が好きなわけはないが、中途半端な写真を撮ったことでリベンジ精神が刺激されたのだ。
そんな状態で年月が流れた。
僕は壺を間近で愛でる
この章では日本5周目と6周目の写真をミックスしてお届けする。
僕は再び伊万里を訪れ、2回伊万里津大橋を自分の足で歩いたのだ。
雨である。
最近僕と佐賀県と雨は、相性がいい。
いや、言葉を選ばずに言うのであれば「カンベンしてくれ」って感じだけどな。
でも、ポツポツ雨が当たるフロントガラス越しに巨大な壺が見えてきたぞ。
あぁ、伊万里市に入ったのだなと身をもって感じる。
ボロッボロの壺。
とても巨大だ。お相撲さんが3人くらい入れそうだ。
「伝説のなんたら…」が封印されていそうな雰囲気。
隣の看板には「福右衛門窯」と書かれているので、その窯元のオブジェ的な存在として鎮座しているのかもしれない。
あるところでは、道路脇の石柱の上に上品に置かれた壺が目に入った。
あまり大きくなく、自宅の床の間に置いてもいいかな…くらいの手ごろなサイズだ。
ま、僕の家には床の間はおろか和室すらないけどな。
雨に濡れてもともと華やかなデザインが際立っているように感じた。
昼間の伊万里津大橋にやってきた。
橋の上に飾られた壺をしっかり見るため、少し離れたところに車を停めてから徒歩で伊万里大橋を歩くのだ。
伊万里津大橋は1981年にできた95mの橋。
伊万里市を流れる「伊万里川」の最下流に架かる橋なのだそうだ。
橋を渡ると、巨大な壺が欄干に乗っているのが見えている。
日常の中に潜む非日常って感じがして、近づく前からなんだかドキドキする。
まだ壺までの距離はあるが、壺の巨大さをひしひしと感じ始めたころだ。
橋の真ん中に到着。
そこに設置された巨大な伊万里焼の壺。その大きさな1.5mあり、伊万里津大橋完成時の1981年からここにるそうだ。
この壺は"染錦四季草花文大壺(そめにしき しき くさばなもん おおつぼ)"というらしい。
上品な青みが印象的だ。
ちなみに反対側の車線にはまた別の壺があるんだけど、それはこの後でまたご説明するね
壺の頭頂部には獅子像みたいなのがチョコンと乗っていてかわいい。
この壺設置プロジェクトには当時900万円がかけられ、雨や潮風にも負けられない特殊技術を使っているのだそうだ。
そうであってもこれだけ絢爛豪華な骨董品みたいな壺を24時間365日、橋の上に無防備に置いておくという精神がすごい。
本来であれば博物館とかに置いておいたほうが良いのではなかろうか。
治安の悪い国であれば1日で盗まれるか壊されそうだぜ。
橋の反対側だ。
こっちにも壺がある。反対側と違って白さの際立つデザイン。
名前は"染錦花見風俗絵大壺(そめにしき はなみ ふうぞくえ おおつぼ)"。
それはともかく、橋の上って風も雨も強いよね。
傘が壊れそう。泣きそう。
こんな雨の天気だが、壺の絵をよく見てみるとなかなかに優雅だ。
男女がピクニックに興じているぜ、このリア充が。
こっちはこんなにも関わらず楽しそうなだぁおい、爆発しろって思った。
壺の手前には説明版があった。
写真には撮らなかったが、なかなかに胸アツな説明書きであった。
古伊万里は、古くはヨーロッパの貴族たちの間ですんごい価値のあるレアアイテムとして、とても有名だったんだって。
まだ日本が鎖国していて世界中からナゾの国だと思われていた時代。
そんなころに類まれなるデザインの骨董品として出回った古伊万里。
まさに東洋の神秘、日本の誇るべき宝だよね。
かつての栄華(今ももちろん大人気だけど)をイメージして、伊万里津大橋の上には巨大な壺を置くことになったんだって。
伊万里市内で壺が置かれた橋として一番知名度が高いのが、この伊万里津大橋。
だけども他にも壺が置かれた橋、実はあるんだ。
僕はそこにはまだ未訪問。
日本7周目でまた機会があったら訪問してみたいな。
日本5周目・6周目、佐賀は雨だった。
次はぜひ、晴れの日に。
梅雨に入る日本列島で、そんな思いを未来に馳せた。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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