ゾロ目って好きだよな、人類は。
同じものが並ぶことに、ある種の快楽を感じるのだ。
今回は、緯度・経度にて「3」を並べてみたお話だ。
…たくさん並べるのだ。
東経133度33分33秒・北緯33度33分33秒。
連続する3の数は、12個。
似たような羅列は地球上に他にもありそうなものだが、気軽に人類が到達できるのはここ、高知駅からもほど近い「地球33番地」のみだ。
どうだ、このアイデンティティは!
中二心をくすぐるスポット
ここの存在を知ったのは、いつだったろうか?
今から17年前の2004年ごろには確実に知っていたな、確か。
名前がやたらワールドワイドで、しかも少年漫画に出て来そうな地名だ。
つまりは中二が好きそうな地名だ。
東経133度33分33秒・北緯33度33分33秒という数字の羅列だって、なんだか中二が好きそうだ。
中二は意味もなく難しい数式などを口にしたがる。
僕もかつては円周率を延々言えたらカッコいいだろうと思い込み、でも6ケタで挫折した。そういうことだ。
そんな中二を引きずる旅人ならば、もう行くしかないよな、…という話で早速現地である。
ここは高知市。
しかも中心地である高知駅にも歩いて行けるくらいのなかなかに普通の街中。
そんな場所に地球33番地はある。
裏を返すと付近の交通量が多かったり、気軽に駐車できるような場所が無かったりと、毎回ちょっとオロオロするのが恒例行事である。
あなたは僕のことを旅慣れしている無敵の人間とお思いかもしれないが、全然そんなことは無い。
目の前の小石には全部つまづく。笑顔でつまづく。
だから僕はここに何度来てもちょっと迷い、駐車できるいい感じの場所を見誤り、ようやく駐車したら現地まで歩いてかなり時間がかかったりと、ロクな目に合わない。
せめてあなたは、最後に掲載するGoogeマップで安心・安全に辿り着いてほしい。
(僕、カーナビ使わないから迷うんだな、そっか。)
南岸のモニュメント
歩いていると江ノ口川の南岸、住宅地の中に聳えるモニュメントが見えてきた。
チェスの駒のようにオシャレなフォルムだ。
これが、1962年に建てられた地球33番地の記念モニュメントだ。
ちょっと経年劣化はしているものの、確かな達成感を味わえる。
どうやら、地球33番地という概念を作ったのも、同じ1962年だったそうだ。
ほら、高知県って台風結構来るじゃない。
当時ってそういう情報をラジオをメインとして流していたんだけど、台風の位置情報をラジオで伝える際、高知に差し掛かったときにやたら「3」が多いなってことに誰かが気付いてしまったのだ。
歴史的大発見だ。
じゃあ「3」を使って町起こしてしちゃおうか!ってなったらしい。
それが地球33番地だ。
しかし、すごくマニアックなスポットである。
普通に観光客はここを訪問したりするのだろうか?
ここを目指して高知に行く人は僕のようなマニアだけかもしれない。
しかし、世界的にも類まれな、緯度軽度の12連続のゾロ目が、閑静な住宅地にあるというギャップがまたすばらしいのだ。
庶民的な街中に聳えるモニュメント。
その足元にはきっと近所の人が丁寧に手入れをしているプランターが並び、綺麗な花が咲き誇っている。
これがいいのだ。
夜に訪問したこともある。
夜と言っても、11月下旬の17時台だけどな。
1年で最も早く日が沈む時期なので、既に太陽はグッバイしてしまい、周囲は暗黒だった。
とぼとぼ歩く僕の前に現れたのが、このモニュメントだ。
なんか光っている。
ライトアップされているのではない。自分自身で光っているのだ。
頭頂部付近に裸電球をぶら下げて。
さて、ここで思い出してほしい。
昼間に撮影した写真において、モニュメントの頭頂部から不自然なワイヤーが出ていたことを。
これが電線だったのだな。
このアナログっぷり。さすが1962年(昭和32年)である。
シンプル・イズ・ベスト。
川の中のポイント
地球33番地はこれだけでは終わらない。
てゆーか、まだ33番地そのものはご紹介していない。
前項はあくまで「近所にある記念モニュメント」なのだ。
冒頭の写真をもう一度掲載する。
右端の○の部分をご覧いただきたい。
これが真の33番地のポイントと言われている。
川の中に桟橋のように突き出た遊歩道の先にあるのが、33番地だ。
前項でご紹介した南岸のチェスの駒のようなモニュメントは、その右下4時の方向に見えている。
では、次は桟橋ポイントに行くのだ。
泳いでいくのはちょっと頭が悪いので、一番近くの橋を渡りつつ大回りで北岸へと向かう。
これだ。
4本足の不思議な造形物が川の真ん中にある。
なにより、手すりなどが無いのがスリリングである。
ちなみに上の写真は、桟橋がボロボロだった時代のものである。
はい、時は少し流れた。桟橋、ピッカピカだ。
まずはありがとうございます。
「いや、それもいいけど手すりを作ろうよ」という声が僕の耳にも届いたな。
うん、僕もそう思った。
そしてハトが多いな。
「ハト、じゃま!」とか言いながら歩いていると、邪悪なクランクに気付かずに川に落ちるシステムなのだ。
このクランクは歩いていても怖いし、仮にテトリスであってもこんなの降ってきたらイヤだなって思った。
何より、なぜゆえクランクにしたのか。
川岸から桟橋を作り始め、途中で「ヤベ。2mズレていたわ。」と気付いたのだろうか。
まぁこれについては深追いはしないこととする。
一番の近道は遠回りなのかもしれないし。「遠回りこそが俺の最短の道だった」とか思ったのかもしれないし。
4本足の建造物の上にくっついているのは、ピカピカのボールだ。
「地球を見立てているのかな?」と思ったけど、ただのツルツルのボールであった。
あるいは「ウォーターワールド」のように陸地がすべて水没した世界線の地球だ。
そこに「33」の文字が書いてある。
ついでにハエによく似た羽のようなものが生えている。
何度もここを訪れているが、どの写真も「33」が斜めになっていて、正面からの写真を撮れていないことをお詫びしたい。
お詫びしたいしグチりたい。
どういうことか説明させてくれ。
立地はこんな感じだ。
「33」の文字は、川の流れと同じく左右についている。
いや、これどう頑張っても「33」を正面から撮影できないではないか。
だから上の写真も桟橋から最大限に体を伸ばして転落するギリギリで撮影していたり、あるいは少し離れた川岸からズームして撮影しているのだ。
「33」、90度ズラして設置してほしかったな…。
夜バージョンもご紹介しよう。
まずは対岸からだ。
なかなか激しくライトアップされている。
住宅地にしては強烈な光だ。
窓の外にこんなのあったら、お高めの遮光カーテンでないと安眠が約束できないな。
だけども川面に写った「逆さ33」が素敵だ。
北岸にやってきた。
暗闇に浮かび上がる魔のクランク。
ひとまず肉眼で見えてはいるが、昼間よりも視認しにくいのは明確。
夜の川に落ちないように気をつけねばならない。(だから手すりを)
UFOの着陸場面のようにカッコいいライトアップをされている「33」の球体。
夜空に確かな存在を放っていた。
足元には間接照明的に、方位計が照らされていた。
なんだかウエスタンなテイストの風合いだ。
日本測地系と世界測地系
測量の基準についてをちょっとだけ語りたい。
地球33番地とは、日本測地系に基づく測量で算出された地点である。
- 局所座標系の範疇に属する測地系(日本周辺にのみ適用することが前提)
- 準拠楕円体はベッセル楕円体
- 楕円体中心のずれは以下の通りである。事実上の日本測地原点である「東京大正三角点[7][8]」において、X、Y、ZをITRF94座標系の直交座標値、X2、Y2、Z2をTokyo97座標系[10]の座標値とすると
(引用元:Wikipedia)
うんうん、なるほど、何もわからない。
しかし重要なのはここではない。
実はこれまで使用されていた日本測地系であったが、2002年から世界測地系に切り替えられたのだ。
時代はグローバルなのだ。
そうなると、ちょっとだけ緯度も軽度もズレる。
つまりは、地球33番地はここではなくなる。
南東へ約445mのところが、2021年現在の世界測地系の測量で示される地球33番地なのだ。
僕はそれを知り、少しうろたえた。
だが安心してほしい。
公式Webサイトは語っている。
近年、緯度経度の基準が、日本測地系から世界測地系というモノサシに変わりました。
これにより、新しい基準で測ると400mほど東南に離れた場所とされています。
しかし、私たちは当初からの川の中のポイントを愛し、いまでも『地球33番地』と呼んでいます。
ここが地球33番地でいいんだよ。
新しい測量法?知らねーよ。
そんなことよりも大事なものがあるだろ?
…「愛」だよ。(自分の左胸をこぶしで叩きながら)
恐れ入った。
愛には何者も勝てない…、かもしれない。
いや、例えば一国のお姫様が、借金だか贈与だか返すだか返さないだかで自分の弁護だけを頑張っている弁護士志望の庶民男子との結婚を望んだところで、それは地球33番地のクランクより100倍困難な道のりであり、愛だけで全てが叶うわけはないと思う。
しかしこんな愛ならあってもいいんじゃないかと思った。
古い測量方法ではあるけれども、確かにここは地球33番地。
江ノ口川の岸辺に、今も静かに佇んでいる。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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