大分県は、九州の北東部の角地に位置する物件だ。
つまりは、朝日は拝めても西に沈む太陽は非常に見づらい立地である。
そんな大分県に、一箇所だけ海に沈む太陽を見れる場所があるという。
オンリーワンか!
なんだそのプレミア感は!
そのスポットの名は、「真玉海岸」。
「日本夕日百景」 の1つである。
では今回は、昨シーズンである2019年の秋に、僕がそんな夕日を追い求めた話をしたい。
日没近付く粟嶋神社
まずは、真玉海岸の直前に立ち寄った、「粟嶋神社」の話からしたい。
大分県の北東部に丸く突き出す国東半島を、反時計回りでドライブした。
終盤は、半島の西海岸から海が見え始める。
ちょうど夕日の時間だ。
どこかで日没を眺められることに期待をする。
こうしてやってきたのが、粟嶋神社である。
縁結びの神様として有名なのだそうだ。
駐車場付近には、上の写真の通りフニャフニャっとしたオブジェがある。
名前は「結」というらしい。
ちょっと斜めから写真を撮り過ぎてわかりづらいかもしれないが、祝儀袋の水引みたいな感じに2本の紐が絡まっているし、正面から見るとハートみたいなかたちとなる。
あー、よかった。正面から見なくって。
孤高の一人旅だから、ハートなんて目撃したら、心にそれなりの傷を負うところだった。
17:30の太陽。
秋なのでずいぶんと日没が早まった気配だが、それでもあと30分近くは沈まないだろう。
どうしようか。ここで30分待機すべきか、次のスポットに移動すべきか。
背後に立派な展望台があるのを発見。
砦のようだ。
とりあえず、あそこに登ってみよう。
登った。そして見下ろした。
粟嶋神社は「粟嶋公園」とも呼ばれているが、確かに境内とは思えない広大な敷地である。公園というネーミングの方がシックリ来るかもしれない。
僕は前回の日本5周目の夜、ここ国東半島に来ている。
国東半島に到着した時点で夜で、そして国道213号から粟嶋神社にに入る道が真っ暗で狭そうでビビり、ここまで来れなかった。
こうしてみると、ビビるような道ではなかったように感じられる。
真っ暗な時間帯にここまで来たら、月夜に照らされる海岸でも眺められたのだろうか?
これが、展望台からの夕日である。
うん…駐車場から見る光景とあんまり変わらないね。
なんだったら、手前の木立がジャマで海が見えにくく、駐車場からの眺めのほうがオススメかもね…。
駐車場からだったら、きっとステキな日没が見えると思うよ。
そして、冒頭でご説明の通り「大分県で唯一水平線に沈む夕日が見られるのは真玉海岸」である。
なぜここ粟嶋神社は上記に該当しないのだろう…?
- 広義ではここから見えるのも真玉海岸。
- しっかり水平線に沈まない。厳密には水平線上に陸がある。(あるいはそういう季節もある)
まずは「1」について考えてみよう。
粟嶋神社から真玉海岸までは、4.1㎞だ。
決して長い距離ではないが、地図で見ると上記の通り海岸線は起伏に富んでいる。
真ん中にはゴチゴチに人工の「臼野港」もある。
上記3スポットを全部まとめて「真玉海岸」と呼ぶには無理があるように感じられる。
次に「2」について考えてみよう。
さっきの写真を再掲する。
太陽の近くはあまりの光量であんまり定かではないが、陸地は上記の緑のようになっていると思われる。
太陽の真下まで陸地があるように思われる。
このため、水平線に沈む夕日とは認められていないのだろうか…?
うわー、厳しい…!!
でもルールはルールだもんな。
「2」の理論が正であるのだろうな、と納得した。
縞模様を描く芸術的な真玉海岸
まだ日没まで時間もありそうだし、どうやら水平線に太陽が沈むわけでもなさそうだし。
僕はこの2つの理由から、海岸線を南下し真玉海岸を目指すこととした。
前述の通り距離はわずか4㎞。
車で走るのであれば5分ほどである。楽勝。
海岸が見えてきた。
なにあれ!!?
思わず車を停めて撮影したのが上記である。
砂浜がちぎれ飛んで、大変なことになってらっしゃる。
ここで僕が即座に連想したのは、熊本県宇土市の「御輿来(おこしき)海岸」である。
砂浜に描かれる、見事な無数の曲線。そして夕日の名所。
真玉海岸と、とっても似ているよね!?
実は御輿来海岸、非常に見てみたかったのだ。
ぶっちゃけますと実は昨日の昼、熊本県の御輿来海岸に行っているのだ。
さぁ笑え、ゲラゲラ笑え。
…これが、僕が昨日撮影した御輿来海岸である。
シャバシャバだし、なんか海水茶色いし。
絶望してフェンス越しに撮影し、すぐに後にしたのだ。
こんな悲しい物語の翌日なのだから、真玉海岸とのこの出会いは感動するよね?
僕は真玉海岸がこんな芸術曲線の海岸だとは知らなかったから、この偶然かつ突然の出会いに、一層の感動をした。
海岸の駐車場に車を停めた。
なかなかに混雑していたが、スッと入れるだけの空きがまだあってよかった。
周辺には多くの人がカメラを構えている。
…しかしすごいな、この紋様は。
干潮によって現れた、複雑な紋様。
遠浅であり、かる風や波であらかじめ作られた適度な起伏のある干潟があってこその、この景観なのであろう。
自然の力の偉大さに心、震える。
あー、涙が出そうだ。
旅路の中で、この夕日ですよ?
知らない土地に1人で、この夕日ですよ?
旅情しか感じない。
月に何度かしか見れないであろう、「夕方の干潮」と「快晴」が重なった日。
そのちょうど日没の時間に、何も考えていなかった僕がフラリと出現する。
その可能性たるや、極めてゼロに等しいかもしれない。
なるほど、だからこそ日本1周目~5周目において、この近辺を走っていたのに存在すら知らなかったのか…。
まだまだ日本には知らないことが多い。
僕はまだまだ成長できる。
記念撮影している人もいる。
縞々で複雑な海岸線。さながら迷路を辿るようにあそこまで行ったのだろうか?
空も干潟も、徐々に赤く染まっていく。
日没後もしばらくは、シャッターチャンスは続きそうだ。
まだ日没までは少しだけ時間がある。
しかし僕は、それを待たずにこの海岸を出発することにした。
ゴメン、真玉海岸、日没まで待機しなくって。
でも、僕には目論見があるのだ。
この先にはもう1つ、夕日・夕焼けが似合うスポットがある。
暗くなるまでに、そのスポットに到着したいのだ。
そのスポットは、豊後高田の「昭和の町」。
僕のお気に入りスポット。
その話は、また機会があったら語りたい。
…ところで!
このまま綺麗に執筆を終わらせようかとも思ったが、1つだけ見逃せないことがある。
…水平線に太陽、沈まなくね??
これにより、前述の推測もなんだか成り立たなくなってしまったような気がするが、正直僕は細かいことは気にしない。O型だし。
少なくとも、大分県で水平線沈む太陽を見れるのは、このエリアだけなのだ。
そして、粟嶋神社も真玉海岸も、それぞれ違った魅力がある。
この2つに一度に出会えたこの旅に、心からの感謝をしたい。
満たされた気持ちで、僕は次の昭和の町を目指す。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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