四国本土の最南端。
かの有名な「足摺(あしずり)岬」だ。
あなたが四国のビジュアルをボンヤリとでも思い出せるのであれば、きっとそこには下方向に鋭く飛び出した岬が2つある。
今回は、僕が何度かこの岬を訪問した中でも印象深かった、夕日を見たときと、朝日を見たときのエピソードをご紹介したい。
四国の南国へようこそ
北海道・本州・四国・九州。
日本の本土と言われるこの4つの大きな島、それぞれの東西南北端がある。
詳しくは、僕の書いた以下の【特集】をご参照いただきたい。
四国には4つの県が存在するのだが、香川・徳島・高知・愛媛それぞれが東西南北端を仲良く1つずつ所持している。
その中でも、足摺岬は最も知名度が高く、観光客が多い岬であろう。
僕も四国東西南北端の中で足摺岬だけは、子供時代から存在を知っていた。
従い、最初に踏破したときには感慨深かった。
思い入れのある岬なのだ。
四国もここまで南になると、亜熱帯テイストが出てくる。
緯度も南であることに加え、暖流である「黒潮」の本流が直接激突するという、全国唯一のスポットなのだ。
※この黒潮がカツオをいっぱい運んでくるから、高知の名物がカツオなワケであり。
そんな感じで、年中そこそこ温暖な足摺岬。
岬のする近くには「亜熱帯植物園」もあり、そこにはヤシ・シダ・ビロウといった、南国を彷彿とさせる植物がワサワサはえている。
上記は亜熱帯植物園ではないが、岬周辺の歩道を歩きながら撮影したものだ。
曲がりくねった幹の、トロピカルっぽい木々がジャングルのように鬱蒼と茂っている。
とても岬の遊歩道とは思えない。
沖縄の山間部でもハイキングしている気分だ。
亜熱帯植物園で繁殖しまくっているというビロウの木も、「沖縄市の木」に登録されているしね。
沖縄ではビロウを扇子にしたり庭木にしたり、泡盛の甕をしっかり塞ぐために使ったりするのだ。
そういう意味でも、もう足摺岬はリトル沖縄って目線で見てもいいんじゃないかと、僕は勝手に考える。
夕焼けの最南端
日本4周目。
年明けから10日ほどが経過した真冬のドライブ。
僕は一瞬だけ車を停め、窓から素早く夕日を撮影した。
正確にはここは、岬の先端ではない。
足摺岬を有する半島には入ったが、このペースでは岬の先端に到着する前に夕日が沈んでしまうと推測した。
従い、念のために夕日を撮影しておいたのだ。
足摺岬の駐車場に到着した。
もう日は沈んでしまったであろう。ただし夕焼けはまだ見れるに違いない。
僕は素早く車を降りると、とりあえず傍らにある「四国最南端」のオブジェを撮影した。
灯台をかたどった、特徴的なデザインのものだ。
展望台に駆け上がった。
太陽は既に見えない。
しかし、赤く染まった西空が、夕日の名残を感じさせてくれている。
なんてアクロバティックな立地に立つ灯台なのだろう!
灯台の直下は80mほどの断崖。落ちたら助からないね、これ。
この立地が、足摺岬付近の海岸の荒々しさを現しているのだろう。
冒頭で記載の通り、黒潮の激突で浸食された海岸なのだ。
灯台は真っ白でシュッとしている。
チェスの駒で言えば、ビショップのようなデザインだ。
微妙にアシンメトリーなところが、心をザワつかせるが。
まだ真っ黒になるまでには時間がある。
あそこまで歩いて行ってみよう。
灯台の足元までやってきた。
「日本の灯台50選」にもエントリーされている、巨大な灯台だ。
さっき展望台から見た限りでは距離があったのでそのスケールは正確には把握できなかったが、近づいてみるとその迫力に驚かされる。
あと、周囲が完全に南国だ。
トロピカルだ。
白い巨塔。
高さは18mある。国内の灯台ではなかなか大きい。
まぁ、とは言え島根県の「出雲日御碕」は43.65mもあるから、それに比べればコンパクトである。
しかし、この亜熱帯植物の隙間から見上げる灯台は、一見の価値ありだ。
再び展望台に戻ろう。
周囲は闇に包まれつつあるが、この時間帯の景色もまたステキなのだ。
駐車場脇の「ジョン万次郎」の像を見ながら歩く。
ジョン万次郎は少し猫背だ。
ジョン万次郎、少年時代にここいらで漁をしていたら漂流してしまい、その流れでアメリカ入ったりなんやかんやと、12年近い大冒険をした人だ。
明治時代における日本の国際交流に大きく貢献した人の銅像だ。
あぁ、南国の夕暮れ。
そりゃ1月上旬だからさすがに寒いけども、この景色を見れば心だけは温かい。
パインジュースなど飲みながら夕暮れを見守ってもいいかなって、一瞬だけ考える。
展望台まで戻ってきた。
残照が海をブラッディな色に染めていた。かっこいい。
メチャクチャかっこいい。
闇を照らす一陣の光だ。
力強く、沖を航行する船に向かってその光を届けている。
四国最南端の灯台。
その使命は非常に重いものがあるのだろう。
この時間に灯台を見れてよかった。
確かな満足感を抱き、僕は再び駐車場へと引き返すのだ。
ジョン万次郎は、赤い空をバックに不気味に立っていた。
ホラー映画で出て来そうな、不穏なシルエットだった。
なにこれ怖い…。
朝日の最南端
日本5周目。
年明けから10日ほどが経過した真冬のドライブ。
…偶然だが、またこの時期よ。
岬にほど近いこの民宿で、昨夜の同泊だった「ユウ君」。
昨夜は僕の部屋で遅くまで一緒に酒を酌み交わした旅人だ。
足摺岬からの日の出が7:02だというので、日の出を見たいユウ君は、それに合わせての朝食を希望していた。
僕もとりあえずそれに付き合った。
ご飯をムシャムシャ食べている僕らの横で、オーナーのおばあちゃんが語る。
「足摺岬は断崖が多くて、自殺者もいるのよ。先日も死体が見つかってね。(自主規制)な状態になっていてね…。身元が分からなくってね…。」
「この民宿にも警察から『こんな感じの人が宿泊していませんでしたか?』って確認が入るのよ…。」
…ばあちゃん、食事中にその話をしちゃうのか。
まぁいいけど。
日の出時刻の12分前。
民宿の前で、僕とおばあちゃんは出発するユウ君を見送った。
お元気で。昨日夕方に出会ったばかりで短い付き合いだけど、楽しかった。
走るルートは大体同じだから、またどこかで会うこともあるだろう。
ユウ君は車に乗り、颯爽と去っていった。
特に日の出の瞬間にはこだわらない僕が民宿をチェックアウトし、そして足摺岬に到着したのは7:50頃であった。
日の出から40分近くが経過していた。
周囲を見渡したが、ユウ君の車は無かった。
既にここを出発してしまったのだろう。
ジョン万、オマエいいもの頭に載せているな。
軽く挨拶して展望台に向かう。
展望台に上った。
レンガ造りの要塞チックな展望台。
中央には円形の台座があり、そこには方位板が埋め込まれている。
「四国最南端」の文字が刻まれている。
なんかこれが好きなのよ。何気に日本1周目から撮影し続けている。
ヤベーくらい綺麗な朝日。
太平洋の彼方から太陽が昇ってきている。
遮るような陸地や島は、視界には無いのだ。
それが突端感を強く感じさせる。
スペシャルな1日の始まりだ。
確かに日の出には40分も間に合わなかった。
しかし、これは充分に「朝日を堪能できた」と言える構図だろう。
僕はこれで満足なのだ。
海には、太陽が縦に光のラインを作る。
神々しい。
この光のラインが、僕の目の前まで続いている。
「YAMAよ、あなたも神になりなさい」と導かれているように…、感じないけどな。
そこまでおめでたい脳みそではないけどさ。
そして灯台だ。
なんだこの穏やかな表情。
荒々しい黒潮と断崖のイメージとはかけ離れる、凪いだ海だ。
波1つ無い。
空も海もパステルピンクで、「荒れ狂うモンスターが主人公の決死の説得で、一瞬だけかつての人間の心を取り戻した瞬間」みたいな状態になっている。
この灯台の美しさよ。これを表現するのに、もはや言葉はいらない。
ずっとここで海を眺めていたい。
そう思える朝であった。
展望台から西方向の断崖だ。
朝日に照らされて美しい。
見づらいかもしれないが、断崖の上には展望台と東屋がある。
あのあたりも飛び降り自殺の人気スポットなのだと、民宿のばあちゃんが言っていたな。
今朝ドッサリと尋常じゃない量で提供してくれたシラスとか、それをエサにしていなかったでしょうな…??
足摺岬は、南海に鋭く突き出た岬である。
従い、東側にも西側にも海が広がる。
つまり、朝日も夕日も眺めることができる。
1日を最初から最後まで堪能できるのだ。
なんてすばらしい岬。
さぁ、ユウ君を追うように僕も旅立とう。
待ってろ、ユウ君。
連絡先すら知らないけど、どこまでまた会えるような気がするぜ。
※この翌日、「室戸岬」の朝日を一緒に見ることになりました。
曇天でも大迫力
最後に曇りの日のエピソードを少しだけご紹介しよう。
…雨上がり。
九州をほぼ一周し、そして四国に上陸した日本3周目の僕。
ずっと晴れていたのだが、今日だけは朝から空がグズついている。
そんな足摺岬だ。
ジョン万の表情も心なしか険しい。
キッと沖合を見つめ、「これは…、嵐が来るな」とでも言いそうな表情だ。
彼は漂流のプロですからね、彼がそういうならば きっとその通りになるのでしょう。
足元を見ると、海が荒れ狂ったようにシェイクされている。
これは絶対死ぬヤツだ。
でも、曇天でもこのクリームソーダのような色。
本当にここの海が綺麗なんだろうということを気付かされる。
おなじみ、灯台と断崖。
灯台の足元の崖にかろうじて引っかかっている巨岩を見ていると、不安になる。
まぁでも日本4周目でも5周目でも、この岩はこの位置にあるから、なんとか踏ん張っているのだね。意外と地盤強いっぽい。
僕以外に老夫婦がいたので、お互い写真を撮りあった。
あぁ、ちなみにね、足摺岬に行くときには半島の東岸にある県道27号は使わないほうがいい。
これはこれで楽しいけど、なかなかの狭路だ。
上の写真は、曇天の岬を見て県道27号を使って引き返すときの写真だ。
巨大な日産サファリにとって、この道は結構狭い。
擦れ違い100%無理。
狭路がメンドウになったので、途中の空き地でラーメン作って食べることにした。
さっき岬で出会った老夫婦の車がそんな僕の横を通り過ぎ、じいちゃんが麺をすすっている僕に笑顔で手を振った。
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足摺岬には、まだ日本6周目では訪問していない。
2021年1月10日前後にもし訪問できていれば、「またこの時期に来ましたー」とか言えたかもしれない。
しかし、世の中は再びコロナウイルスに伴う緊急事態宣言が出され、かつ全国的な大雪で日本列島はパニックだ。
せめて、足摺岬の記事をあなたにお届けすることで、その思いを伝えたかったのだ。
…またいつか、足摺岬で会おう。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 足摺岬
- 住所: 高知県土佐清水市足摺岬
- 料金: 無料
- 駐車場: あり(ただし台数少なめ。GWや夏休みなどの繁忙期は、離れた場所からシャトルバスなど運行となるので、注意のこと。)
- 時間: 特になし