週末大冒険

週末大冒険

ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No:040【京都府】関西最後の秘境「芦生の森」!!単独立入禁止の山中で廃線跡を辿る!!

ここに再度警告致します。

ご自分の命を大切になさって下さい! 

 

警告  

一人での入林禁止!

芦生研究林では、毎年死亡事故を含む遭難が発生しています。 

 

さて、困ったね。

あたかも「青木ヶ原樹海」ような、デンジャラスな文言の並ぶ「芦生の森」の公式Webサイトの画面を見て、僕は思案した。

 

僕は「午後の紅茶」を午前中に飲むのをためらうくらい、法を順守する男だ。

…というのは大げさすぎだが、1人での訪問がダメと言われているのに、無理矢理1人で突撃するのは得策ではないことくらいはわかる。

 

関西地区に居住していて、山岳アドベンチャーに同行してくれそうな仲間…。

ふと思いついて、僕は携帯電話を取り出した。

連絡先は、3年前に有人日本最南端の島「波照間島」で出会った旅人、「ひまこさん」だ。

 

姉さん、僕のムチャに付き合ってくれ。

 

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…というわけで、関西最後の秘境とも言われる、「芦生(あしう)の森」に行ったときの話をしよう。

 

 

 

芦生の森に行くために

 

最初に、少し「芦生の森とは何か」を語らせていただく。 

 

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なぜなら、万が一にもこのレポートを最後まで読まずに、僕のブログの影響で芦生の森へ突撃してしまう人がいたら、大きなご迷惑をおかけしてしまうかもしれない。

 

芦生の森に行くためには、まずは芦生の森を知ることから始まる。

実際、僕もそうした。

 

もしあなたが特に芦生の森に行くつもりがないのであれば、それはそれで安心。

しかし、本編に入る前に本章を読んでいただくことで、より盛り上がるのではないかと思う。

 

…とまぁ、大層な導入でもったいをつけたが、芦生の森っていったい何なのか。

 

 

99年の約束

 

まずはその正式名称だ。

京都大学フィールド科学教育研究センター森林ステーション芦生研究林」

長い。僕も素ではこの正式名称を言えない。

 

この森は、実は「京都大学」が管理しているのだ。

スポット名からそのことだけでも感じ取ってくれればOK。

 

時は1921年(大正10年)。

京都大学は研究の目的で、京都府滋賀県福井県に囲まれた深い深い山間部の森、約4200haの地上権契約を結んだ。

 

 

それが上記である。

 

まわり一面、グリーングリーン

西日本屈指の広大な原生林。

高速道路で行こうとしても、どこからも遠いという困った立地。

 

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地上権契約の期間は99年

なんか小学生みたいな期間設定だ。

 

現に僕も、ゲーム機を親から買ってもらえなかった幼少時代、クライメイトの「有澤くん」からゲーム攻略本だけ借りて、「へぇ、ドラゴンクエストってこんなゲームなのかー」って、やりもしないのに攻略法だけ詳しくなった。

そのゲーム攻略本、有澤くんから「99年貸してやる」って言われていた。

もちろん今も大事に所持している。

 

有澤くんが芦生の森を意識して99年と言ってきたのか、もはや知るすべはない。

しかし、そこには確かに約束があった。

 

 

手つかずの巨大原生林

 

芦生の森は、巨大な原生林。

 

太平洋と日本海の中心くらいにあるので、そのどちらの特徴をも兼ね備えているという稀有な存在。

また、標高600mちょっとの場所に位置する暖温帯林と冷温帯林の中間くらいの気候なので、これらの両方の特性を持っている。

 

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こんなレアな条件を満たし、ここまで巨大な原生林は日本に他に例がない。

 

さらに、4200haの敷地の多くは、ほぼ手つかずの原生林である。

一部は大学の研究だとか財源のためだとかで、一部伐採して運び出したり、加工したりもされたが、その範囲はわずか6%とも言われている。

 

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つまり、広大で貴重な原生林が、ほぼ手つかずの昔のまま残っているのだ。

これは、京都大学が管理したからこそだと思われる。

一般の観光地ではないので、他者による訪問・伐採・環境の変化が起きにくかったのだろう。

 

もちろん動植物などの生態系も、環境まるごと長年保存し、研究されている。

まさに研究者たちのサンクチュアリ!!

芦生の森は、1つの世界だ。

これで関西最後の秘境と呼ばれていることにも納得!

 

ja.wikipedia.org

 

昭和時代前半に活躍した、植物学者の「中野 猛之進さん」はこう語っている。

植物を学ぶ者は、一度は京大の芦生演習林を見るべし」と。

すごいぞ、芦生の森の評価!

 

※ちなみに、「芦生演習林」っていうのは、芦生の森の昔の呼び名ね。

 

 

森に足を踏み入れるには

 

さて、これで芦生の森の概要はご理解いただけただろう。

芦生の森は、京都大学のものであり、研究者のための森だ。

だから一般の人の認知度はかなり低い。

 

荒らされることなく、生態系を守る必要があったからだ。

一般人がワイワイ入って踏み荒らしたり、「森のくまさん」歌いながらハイキングしたり、オニギリをパクついてゴミを捨てられたらどれだけ迷惑か、想像できよう。

 

しかし、一般人もこの森に入れなくはない。

 

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…しかるべき条件を満たし、そしてしかるべき申請をすれば。

 

京都大学目線で考えれば、一般人が自分の敷地にノコノコ入って遭難したり自殺したりしては、それこそ大迷惑である。

だから、もろもろの条件をつけ、申請をさせ、警告もしているのだ。

 

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芦生の森の公式Webサイトは2017年ごろにリニューアルされ、スタイリッシュなデザインのものとなった。

 

しかし、それまではTOPページに上記の文字がドンと構えるものだった。 

上記はその旧Webサイトを、かつての僕が念のため保存しておいたものである。

 

怖いだろ?

ちなみに、もっとガチなのをご消耗であれば、以下のエピソードもどうぞ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

 

では、具体的に芦生の森に入るための条件って、なんなのだろうか??

これについてはあえてここには記載しないこととする。

本当に興味があるなら、あなた自身で問い合わせ、そして調査してほしいと思う。

 

なぜなら、僕が訪問時のルールが現状と同一とは限らず、そして現状のルールがあなたが訪問する際のルールと同一とも限らないからだ。

 

研究の都合、環境保全のため、コロナの影響、何でどのように変わるかわからない。

そしてさらに、次項でご説明する内容も絡んでくるかもしれない…。

 

 

歴史の狭間の執筆

 

前述の通り、京都大学1921年に99年の地上権契約を結んだと記載した。

1921年から99年…。

 

2020年、今年じゃないか!

 

そう、芦生の森にとって、今年は歴史的な年なのだ。

さぁ、契約満了で新たな運命を辿るのか、それとも京都大学が契約を更新するのか…。

 

僕は内心ドキドキしていたさ。

実はすでに結果は出ている。

今年の4月くらいに発表された。

 

fserc.kyoto-u.ac.jp

 

『京大・芦生研究林 30年間借地再契約_南丹・地元財産区と期限切れ迫り』

 

京都大学が契約更新した!

今度は30年!

 

地元の新聞と、京都大学のサイトにこじんまりと出ただけ。

かなりマニアックな話題だったようだな。

 

しかし、もし京都大学がこの土地を手放したらどうなるか、とか一部ではウワサがされれていたところ、もうしばらくはこの森は、手つかずの秘境でいられるようだ。

 

そんな99年目の最後の年である2020年、僕は是非ともこの森のことを執筆したかった。

 

*-*-*-*-*-

 

さぁ、前置きが長くなった。

 

時は少々さかのぼる。

梅雨入り前の一番緑豊かな時期に森を歩こうと思っていたら、数日前からずっと土砂降り。

そんな最悪のコンディションの中、僕は芦生の森を目指しハンドルを握る…!

 

 

ロッコ道への突入

 

土砂降りの中、僕は愛車を山の奥へ奥へと走らせる。

滋賀県大津市でひまこさんと合流後、芦生の森の登山口へと向かっているのだ。

 

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秘境へ1

早朝はワイパー最速でも視界が効かないほどのザーザー振りの雨だった。

今はそこまでではないが、普通の雨。

 

こんなコンディションで、マジ大丈夫なのか??

 

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秘境へ2

はい、到着。

装備を整えた後、「芦生研究林事務所」で入林手続きをした。

 

…ってサラっと書いたが、実態は結構大変だった。

事前確認済みなのに、なぜか施設がOPENしていなくってさ。

念のため電話をしてみたがつながらなくってさ。

 

ひまこさんがさらに上位組織の電話番号を調べてくれ、なんだか事情をわかっていない職員の人に交渉を重ね。

なんだかんだで了承を取り付け、2人で手作りした入林届に、上位組織から聞いた必要事項を聞いて投函。

 

これでいいんだよな?

正規なフローは踏めなかったが、一応許可はもらってやることはやったぞ?

では森に足を踏み込むぞ?

 

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秘境へ3

登山道の入口は、森林軌道の起点でもある。

まぁつまりトロッコね。以下トロッコと書く。

 

森の研究のためのあれこれの理由からトロッコが積極的に使用されたのは、1927年から伐採作業が終了した1960年代まで。

1980年代には、ほとんど使用されなくなったようだ。

 

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秘境へ4

では今も残る、この機械式のトロッコはなんなのか。

…っていうと、今でもすごーく稀に巡視のために運行することがあるそうなのだ。

 

しかしその区間は一部であり、後述する「灰野集落跡」まで。

その先は、軌道は大きく崩れるからな。

 

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秘境へ5

このトロッコ道は、2008年に近代化産業遺産に登録されている。

『山間地の産業振興と生活を支えた森林軌道の歩みを物語る』のだそうだ。

 

さぁ、ここでいよいよ今回の僕の目的を明かそう。

 

  1.  トロッコ道を歩いて当時に思いを馳せる
  2.  トロッコ道の深部、線路の芸術的な大崩壊スポットを見る
  3.  緑豊かな森の風景を写真に収める

 

この3点だ。

「1」と「3」は、「屋久島」でその面白さに目覚めた。

「2」は、当時少しずつ目覚めつつある廃墟趣味へのプロローグだ。

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秘境へ6

幸いにして雨は小降りになり、ゴアテックスのレインウェアを着ていればそんなに気にならない。

カサはなくても歩けそうだな。

 

では、森へと突入だ…!!

 

ロッコ軌道にいざなわれ

 

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ロッコ道1

薄暗い森の中、線路に沿ってテクテク歩く。

屋久島の「縄文杉」を目指して延々と歩いたときの風景に似ている。

 

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ロッコ道2

おっ、街灯がついている。

異世界に吸い込まれそうな、神秘的な風景だ。

 

なぜこんなところに街灯があるのか。

それは、この先に1軒だけ民家があるからだろう。

 

古来から森の中にはいくつか集落があり、京都大学の土地となってからも存在していた。そして、あらかた廃村となった現在、最後の1軒が現存している。

…と聞いたことがある。

 

予想は当たったようだ。

間もなく森の中に1軒の民家が出てきて、電線はそこに引き込まれた。

その先にはもう電線はない。

 

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ロッコ道3

由良川」が右手に見えてきた。

由良川は、京都の北海岸に注ぐ川。その源流に近い部分が、こうして目の前にある。

 

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ロッコ道4

この写真、左手の傾斜の先が川。

 

川に合流していく支流も多い。線路の下が橋になっているのがおわかりだろうか? 

同じ写真を、ちょっと左側から橋にフォーカスして見てみよう。

 

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ロッコ道5

こうなる。

ロッコは小さな小さな橋を渡る。

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ロッコ道6

歩き出して40分。

灰野集落跡にやってきた。

1960年まで、ここには集落があった。

 

今、その面影はほとんど残っていない。

その1つは、当時家が建っていたであろう石垣。

 

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ロッコ道7

もう1つの面影は、「灰野神社」が今も存在していること。

小さな祠と鳥居が残る。

 

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ロッコ道8

鳥居も祠も綺麗だ。

今も誰かがしっかり手入れをしているのだろう。

 

森の神は、住民がいなくなった後も、60年間この森を守り続けている。

そしてきっとこの先も、守ってくれるのだろう。

 

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ロッコ道9

説明版があったので、掲載しよう。

 

灰野集落は、江戸時代初期の1638年に山番っていう名目のもと、人を住まわせたのが始まるだったそうだ。

最盛期には8軒の家があったそうだ。

うん、最盛期でも小規模だね…。さすが山奥。

 

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ロッコ道10

線路の脇には、次世代を担う予定の線路の枕木が積まれている。

ほとんど運行しないトロッコだけど、枕木が劣化したらここの在庫から取り換えているのだろう。

 

前述した通り、トロッコの運行終着点はこのあたりらしい。

ここから先はもうトロッコは走らないので、線路は荒れてくるぞ。

 

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ロッコ道11

ね、結構不安な品質になってきたでしょ。

 

…それとは逆に、森はより一層、深みを増す。

 

 

スグリーンの世界

 

雨、ほぼ止んだ。

 

最初は多少降っていたけど、ほぼ頭上の木々が覆ってくれていたので「適度度なクー
ルダウンになって逆に嬉しいね」とか話していた。

初夏なので、晴天であれば相当暑かったろう。

特に遠景を楽しむわけではないので、安全に歩けるのであれば天気は関係ない。

 

いや、むしろ雨や雨上がりのほうが、森は生き生きする。

 

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スグリーン1

昔は、苔ってあんまり好きではなかった。

ジメジメして日陰に育ち、汚いイメージがあった。

 

しかし、屋久島でそのイメージが一変した。

苔は森を包む緑のスポンジ。水を吸い込み、みずみずしく輝き、全ての動植物の生活を地表で支えている。

少なくとも、森の苔はすごい。そう力説したい。

 

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スグリーン2

少しブレている写真が多くて、大変に申し訳ない。

ぶっちゃけ太陽光が少ないせいで、写真がちょっとブレやすい。

 

苔って、晴天で乾燥しているときは茶色ですごい見栄えが悪かったりもする。

写真を撮るとさらに白っぽく、色あせた森に映る。

 

しかし雨に濡れると苔は一気に緑になる。

を本気で見るなら雨。つまりを本気で見るなら雨。そう感じた。

 

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スグリーン3

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スグリーン4

見よ、至ところから水が滴っている。

こうやって森はうるおい、成長する。

同時にしっかり水を吸収することで、川の急な増水だとかも防いでいるのだ。

苔すごい!苔すごい!

 

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スグリーン5

苔は拡大写真にするとさらにかわいい。

さながら、ミクロな木のようだ。

 

ジオラマやテラリウムで、森や木を苔で再現する手法がある。

苔は小さな小さな森なのだ。

 

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スグリーン6

こんな感じでところどころで足を止め、接写写真を撮っている。

僕らの歩みは遅いが、とんでもなくワクワクしている。

 

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スグリーン7

まぁね、でもあまりに雨が多いと、苔も水を吸収しきれないけどね。

ほら、そのせいで土砂崩れだ。

ここ数日の尋常じゃない土砂降りの影響か??

 

ロッコ線路が見えているせいで、事故感がハンパない。

実際の鉄道でこうなったらニュース速報が止まらないだろう。

 

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スグリーン8

唐突に歩道が鉄板になった。
なぜだろう?身を乗り出して足元の由良川を覗いてみる。

 

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スグリーン9

かつての木製歩道がバッキャバキャになって転がっていた。

なんだったら、かつての歩道そのものが崩落していた。

 

これも自然の摂理。

芦生の森は、その気候から京都の街中に比べ1.6倍も降水量が多いのだ。

 

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スグリーン10

苦手な人と食事中の人に配慮し、一部のみ小さな画像でご紹介する。

 

これは、獣の骨だ。

滑落死だろうか?白骨が散乱し、それを取り巻くように毛皮の残骸。

 

これも自然の摂理。

 

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スグリーン11

森は霧に包まれた。

雨が止み、気温が高くなって地中の水が蒸発してきているのかな?

 

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スグリーン12

雨が森をはぐくむ。由良川を作る。

しかしその雨が、土砂崩れなどで牙を剥くこともある。動物がそれに巻き込まれることもあるだろう。

 

そういう自然界の営みが、手の届くところで繰り広げられている。

 

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スグリーン13

複雑な成長をした木。

プレッツェルに似ている。「プレッツェルの木」と名付けた。

 

この日撮影した写真の中でも、お気に入りレベル上位だ。

森の緑の鮮やかさが、非常にうまく記録に残せた。

 

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スグリーン14

苔と戯れていると、背後からゾロゾロと10数人の中高齢者のハイカーが登場。


森に入って初めて他の人と出会った。

結論から言うと、唯一の他者との邂逅であった。

そのくらいに、人が少ない森。


僕らはゆっくりと歩きたいので、グループの人には先に行ってもらった。

 

そして上の写真からも感じ取れるかもしれないが、歩道はさらに崩壊が進む

さぁ、ゾクゾクしてきたぜ。

 

 

崩壊したトロッコ橋梁

 

歩き始めて1時間30分。

ふと左手の由良川を見ると、橋が落ちていた。

 

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崩壊ゾーン1

このときは、「ふーん、橋が落ちていますね」くらいにしか思わなかった。

これは、「赤崎谷仮橋」という名の橋だ。

あとで少し出てくるから、覚えておいてほしい。

 

この橋は、僕らの進む道ではない。

僕らはトロッコの軌道跡を進むのだ。

引き続き線路に沿って歩く。

 

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崩壊ゾーン2

うおっ!!

 

ロッコ線路がなくなっている!

谷間の向こうに線路の続きが見えているが、谷間を渡るためのレールは消失している。

 

まさかこれ…。

来たか、僕が見たかった大崩落ポイント…!!

 

遊歩道はこのちょっと手前から、谷間の底に向かって続いている。

遊歩道に沿って谷間の底に行けば、レールの先がどのようになっているのか見える。

 

僕ははやる気持ちを抑えながら谷間へと降りた。

そして、線路の途切れた部分を谷の底から見上げた。

 

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崩壊ゾーン3

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崩壊ゾーン4

 

 

ロッコ橋梁、崩壊!!

 

 

シビれた。

この崩壊美に。

 

僕は、この1枚の写真に魅入られ、芦生の森に行こうと決意したのだ。

つまりはこの写真を撮ることが、芦生の森に来た目的なのだ。

 

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崩壊ゾーン5

そしてレールは、ギリギリ力尽きそうになりつつも、なんとか谷の反対側に手を乗せている。

「ファイト、いっぱーつ!」って感じに踏ん張っている。

 

人工物が自然に飲み込まれ、朽ちていく。

この状態は、今だけのもの。来年は来年の良さがあるのかもしれないが、同じ状態は2度とない。

それが、崩壊美なのだと僕は考える。

 

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崩壊ゾーン6

間に合ってよかった。

僕がここに来るきっかけとなった1枚の写真と、ほぼ同じ状態で見ることができた。

一期一会に感謝する。

 

 

ところで、目線をさらにレールの進行方向へとズラしていくと…。

 

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崩壊ゾーン7

 

あ、向こうにも橋が転がっている。

 

 

慌てて駆け寄った。

「大丈夫かー!」って。いや、全然大丈夫じゃなさそうなんだけど。

 

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崩壊ゾーン8

こっちはまだ、橋を形成する木の板が残っている。

落橋してからそんなに年月が経過していないのだろうか…?

 

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崩壊ゾーン9

橋を支えていた木の柱は、朽ちて完全に倒壊している。

これでは、いくらレールや橋板が丈夫でも、こうなってしまうよな。

レールは急角度に地球に激突していた。

 

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崩壊ゾーン10

ギリギリまで線路に近づいてみた。

向こうからトロッコが走ってくる絵を想像すると、ド迫力だ。

 

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崩壊ゾーン11

線路はさらに続く。

バッキバキに折れながらも、谷を這い上がっていく。

下にいるひまこさんと比べると、4mほどの落差だろうか?

 

ところで、川を渡るトロッコレールが朽ちて落ちているにもかかわらず、僕らはこうして両側から写真を撮れている。

 

いったいどうやって川を渡ったのかというと…。

 

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崩壊ゾーン12

 

丸太橋。

 

 

その下を、土砂降り直後の由良川がゴーゴーと流れている。

これが現在の正規ルートであった。

 

さて、ここで直近で登場した橋とルートを、ヘタクソな絵でご説明したい。

 

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唐突に名前を出して恐縮だが、落橋したトロッコ軌道は、それぞれご紹介した順に「赤崎西橋梁」・「赤崎東橋梁」というそうだ。

 

しかし、Webサイトで調べてもなかなかこの2本の橋の情報は出てこなかった。

落橋した写真も、ほとんど見つからなかった。

(少なくとも訪問前後において)

 

「なぜだろう?」って考え出したのが、上の図だ。

赤崎谷仮橋が現役であれば、歩行者は赤崎西橋梁・赤崎東橋梁の目の前まで行く必要がなかったのだ。

仮橋が落ちたからこそ、丸太橋ルートができ、赤崎西橋梁・赤崎東橋梁を見れるようになった。

 

推測だけど、仮橋が落ちたのは僕らが訪問する2・3年前と判断した。

複数の条件が重なっての、奇跡的な邂逅なのであった。

 

 

遊歩道の終焉

 

崩壊ゾーンでは、50分ほども費やして周囲の見学をしていた。

 

その間に、先ほど僕らを追い抜いて行った中高年ハイカーさんたちが戻ってきていた。

「この先は通行止めだったよ」とか言っていた。


あと、おじさんの1人がヒルに噛まれたらしく、手から血をダラダラと流していた。
ヒルに詳しいひまこさんが対処のアドバイスをしていた。
僕は、手持ちのポケットティッシュをおじさんに丸ごとあげちゃった。

 

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終点へ1

さぁ、どうやら僕らの探索も終盤らしい。

イカーさんたち曰く、あと1㎞もしないうちにこのコースは通行止め。

そこまでは歩いておこう。

 

崩壊ゾーンから谷間をよじ登って、またトロッコ軌道の続きを歩き出す。

 

ちょっと歩いていると、首筋にほんのちょっとだけどチクッとした感覚が走った。

何気なくその部分を手で触ってみると、プリッとしたものが指に当たった。

 

 

来たーーー!!来やがった!!
ヒルだ!!
そしてそこは僕の頸動脈ゥゥーーー!!

 

 

ja.wikipedia.org

 

すぐに引き剥がす。

まぁホントは出血が酷くなるから無理に剥がしちゃダメなんだけど、そんな理性的に行動できるほどオトナじゃないのよ、僕は。

 

「チクショウ!チクショウ!ひまこさん、首から血が出ていませんか?」と尋ねるんだ
けど、どうやら大丈夫みたい。

助かった。僕が敏感肌で良かった。

 

あと、さっきヒルに噛まれて血だらけだったおじさんを見ていなかったら、わずかなチクッとした痛みとヒルとをリンクできずに対応が遅れたかもしれない。

たぶん僕の足音か体温かで察知して樹上から落ちてきたんだろう。

恐ろしい。そして腹立たしい。

 

数分も歩かないうち、今後は腕に違和感。

 

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ヒル、いるーー!!

腕の上でウネウネしているーー!!

 


デコピンで地平線の彼方に吹っ飛ばす。

今度も噛まれる前だったみたい。危ない危ない。

 

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終点へ1

歩き始めてから2時間半後。

「小蓬(こよもぎ)作業場跡」に到着。

 

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終点へ3

伐採作業の作業小屋がかつてあった場所。

しかし現在は小屋は解体されて残骸が山積みにされているだけ。

数年前に落雷かなんかで壊れちゃったと聞いている。

 

他には、よくわからないけどコンクリートの遺構が残っていた。

 

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終点へ4

『この先間もなく通行止』的なことが書いてある。

だが、まだ進めそうだ。

行けるところまで行こう。

ロッコ軌道も、まだ先を示している。

 

さらに歩くと…!!

 

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終点へ5

またまたトロッコ橋梁が大崩壊!!

これはまたハデにやられちゃいましたねー。

 

全容を把握するため、谷を滑り降りて下から見上げることにした。

 

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終点へ6

これは谷に下りる途中、少し違う角度から撮影したもの。

かろうじて残る支柱に、見事なバランスで乗っかっているだけのレール。

大道芸のようだ。

 

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終点へ7

空中を結ぶ、限界ギリギリの橋の残骸。

橋と言っていいものかどうか迷うくらいの、最後の姿。

お相撲さんが支柱に張り手をかましただけで、この橋の歴史は終わるのだ。

 

そのスカスカの橋越しに見上げた空が、さっきよりも随分と明るくなっていてきてることに気付く。

このあと、晴れ間が見えるな、きっと。

 

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終点へ8

谷の反対側を、レールが駆け上る。

そこを上がったところが終着点であった。

 

引き返そう。

目的は果たした。

 

 

血塗られたメモリー

 

降水確率100%からの見事な大逆転を決め、意気揚々と引き返す。

 

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帰路1

崩壊ゾーンまで戻ってきた。

日が当たると、またイメージ変わるな。

 

ここでランチにしよう。

2つの廃橋の見える、最高のデルタ地帯でパンを食べた。

 

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右を見ても廃橋。左を見ても廃橋。

 

あぁ、僕は目覚めそうだ。廃墟趣味に目覚めそうだ。

滅びゆく美。なんて甘美な世界。

 

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帰路2

この森に入って歩き始めてから既に3時間半。

では、入口を目指して戻ろうか。

 

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帰路3

行きに見てきた光景が 走馬灯のように再来する。

しかし、日があたると清々しさがUPしている。

 

雨と晴れ。その二面性を1回で見れて嬉しいぜ。

 

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帰路4

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帰路5

…あ!

線路の向こうから、灰野神社の鳥居がニョッキリと見えてきた。

 

灰野集落の片隅には、巨大なトチの木の倒木があることに、帰路に初めて気づいた。

芦生の森訪問者の中では、ちょっとだけ有名な木なのだそうだ。

 

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帰路6

完全に苔に覆われていて、森の主って感じだった。

倒れて消えゆく命も、ここではまた神聖だ。

 

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帰路7

集落から見上げる山々は上の方が霧で覆われ、なかなか神秘的だった。

森の天気はめまぐるしく変わる。

人知を超えた、圧倒的パワーだ。

 

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帰路8

もう周辺の雰囲気は深い森というより、日当たりのいい木立の中。

草に飲み込まれそうになっている日向のトロッコ軌道が、夏の到来を予感させる。

 

森の中の一軒家の脇も通り過ぎ、ゴール間際。

全ての危機も過ぎ去り、僕らはヘラヘラと談笑しながら最後の約300mを歩いていた。

 

 

甘かった。

 

 

ひまこさんが「靴の中に違和感がある」と言って、靴を脱ぎ始めた。

僕はこの時点で、「その違和感はヤベーだろ」って思った。

パンドラの箱を開けてくれるな」って思った。

 

靴の中から覗いたのは、血みどろの靴下と、クネクネクネクネと踊り続けるヒルが2匹

すぐに靴下を脱いでもらった。

するとさらにヒル、追加1匹。

 

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う、うおぁわぁぁぁーー!!

バイオレーーーンス!!! 

 

グレートジャーニーからの、いきなり火曜サスペンス劇場

 

血を拭こうにも、ポケットティッシュは数時間前に、ヒルに噛まれたおじさんにあげちゃったし。

靴下からヒルを剥がそうにも、鋭い牙で靴下に噛みついていて、引っ張ってもグニグニ伸びるだけで剥がれないし。

ムリに剥がそうとするときっとこれ、血液をゲボッと吐いてさらに周囲が大惨事になるよ。

 

どうしょもないけどあと200mほど!

このまま進む!

 

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帰路9

ゴールが見えてきた!

5時間前に駐車した、愛車のパジェロイオが見えてきた!

 

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帰路10

ひまこさんは素足に靴を履いてゴール!

 

僕は片手にひまこさんの血だらけの靴下を持ってゴール!!

 

終盤に我らのパーティーに加わったヒル2匹も、靴下にかじりついて一緒にゴール!!


なんだかわけわんねーけど、もういいや。

 

 

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「ひまこさん、医務室…!」  

「あれー、事務所まだ開いていない!」

 

「水道で洗濯…」

「車内に救急箱…!!」

 

 

まだしばらく現場はバタバタしそうだけど、これが関西最後の秘境を歩いた僕らの物語。

 

ありのままの原生林に、等身大でぶつかった物語。

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 芦生の森
  • 住所: 京都府南丹市美山町芦生
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: いろいろ制限あるので、各自調べてほしい。