"三陸海岸"って大体誰もが耳にしたことあるよね?
リアス海岸で有名だ。僕も小学校の頃から社会の時間かなんかで習い、「海岸ギザギザじゃねーか!すげぇ。いつか僕も現地でギザギザを実感したい。」と思っていた。
ところでその三陸海岸はどこからどこまでを指すのかご存じだろうか?
これは諸説あるのだが、青森県八戸市の鮫角(さめかど)から宮城県石巻市の万石浦までを指すのが一般的のようだ。その距離、総延長で600kmだ。
おおまかに地図で示すと以下のようになる。
鮫角は明確なスポット名ではない。
これが示すとすれば「鮫角灯台」、あるいは灯台のすぐ側にある「葦毛崎(あしげさき)」を指すこととなるそうだ。
では、今回はその葦毛崎と鮫角灯台について執筆しよう。
とりわけ葦毛崎については好きなスポットで、10数年通っている。全部の訪問時の写真をご紹介するとえらいことになっちゃうので、うち5回分の訪問記録をミックスしてお届けしようと思う。
あ、せっかくなので最南端の万石浦の夕焼けを撮影した写真もオマケで掲載しておくね。ここもいいスポットだぞー!
西洋の古城のような展望台
僕が葦毛崎を好きな理由の1つ。それは展望台がとってもカッコいいという点だ。
展望そのものも大事だが、展望台のデザインも大事。まずはその「葦毛崎展望台」にスポットを当てたい。
寒い寒い時期の、少しどんよりした写真をまずはご用意した。そりゃ青空の展望台も大層ステキなのだが、ここは曇っていても絵になると勝手に思っている。
どうだい?なんとなく西洋の古城のように見えてこないかい?そして僕の勝手なイメージなのだが、西洋の古城ってこんな感じのドロドロした天気がとても似合う」と思ったりしている。曇っている方が「過酷な運命に立ち向かう」って感じで力強さを感じるっしょ。
ほとんど同じ構図だが、これは夏の早朝5時ちょっとすぎに撮影した。
さて、この展望台はなんでこんなデザインなのか。「石造りにしたらカッコいいかなー?」って感じでたまたま造ったのか。それとも本当に西洋の古城などをモチーフにしたのか。
実は、ここは幕末に国外の船を監視するために砲台が設置されており、さらには第二次世界大戦のときには軍がレーダーを設置していたそうなのだ。
つまりはガチの軍事施設を居抜いて展望台にしたのだ。
そんな名残があるからこそ、この物々しいテイストの景観なのだ。
夏の昼間の濃霧の中で撮影したお気に入りの写真である。
この近くに「蕪島」っていう3万羽のウミネコが舞うとんでもない神社があってよく行くんだけどね、そこはすごい晴れていたの。そこからここまでのわずか2㎞でメタクソにガスった。なにこれ。
ただね、霧は濃いけど、霧の中の岬ってのも絵になるね。幻想的。
夏の野に咲く花と一緒に撮影したらすごくいい感じになった。このあと再び走り出したらまたすぐに霧は晴れたし、ここだけ粋な演出してくれて今は感謝している。
たぶんだけど、この岬の北と南で地形が大きく違うから、気温や気候も違っていて、それがぶつかり合って霧になっちゃっただけなんじゃないかな?
日本6周目の真冬の夕景。耳がちぎれんばかりの寒風の中で見上げた要塞展望台。いつきてもここは心を打つような景色を見られる。
にもかかわらず、そんなに観光客は多くない。駐車場も大抵は充分なゆとりがある。もっとみんなに知ってほしいスポットの1つだ。
これは日本6周目の終盤、直近で訪れた際のものだ。
文句なしの快晴。あぁやっぱ快晴はいいよね。なんだか見上げているこっちまで誇らしい気持ちになるよ。
長い戦いの時代を終え、平和を勝ち取った後のお城のようだ。物語のエンディング。
ここまで似たような写真をモリモリご紹介してきたが、何気に展望台の上部の写真はこれ1枚しかなかった。
中央に円形のベンチのある広場。どうだい、爽快感があるだろう。ここからの眺めについては次章でお見せしよう。
遥かなる三陸海岸の始まりを臨む
冒頭でご説明した通り、葦毛崎から南側にリアス海岸の日本代表である三陸海岸がスタートすると言われている。展望台からその始まりのポイントを見ることはできるかなぁ…?
これは南側を眺めたときのものだ。
付近は遊歩道が連なっており、「種差海岸」というこれまた僕のお気に入りの景勝地まで歩くことも可能だ。寒いし風が強いので歩かないけど。車で行くけど。
目線が低いからあまりよくはわからないけど、沿岸の地形はそこそこワイルドなようにも感じる。少なくとも浜辺で海水浴ができるような平和的な気配は感じられない。
続けて北側の写真。とてもギザギザで危険極まりないシルエットだ。
もうすでにこの展望台のちょっと来たからリアス海岸が始まっているのかもしれない。2㎞北の蕪島はまだ穏やかな顔をしていたから、ホントここのすぐ近くで大きく海岸の様相が変わったのだろう。
このギザギザが、ずーっと宮城県の石巻市まで続くそうなのだ。600㎞も。壮大な物語だな。
例の霧の日の写真がこれだ。海霧で手前部分しか海は見えないが、岩礁は光に照らされてコントラストがクッキリしている。
この時の写真、全部好き。
霧の中の岩礁にフォーカス。霧の中に牙をひそめているようだ。打ち寄せる波が白く砕け散っているところからも、その荒々しさを感じさせる。
海水浴はおろか磯遊びをするにも危険なレベルの岩礁だ。リアス海岸、攻撃力が高ェぞ。
そんな荒々しさを絶妙にマイルドにしてくれ、そして色鮮やかにまとめ上げてくれるのが手前の草原だ。黄色いのはハマナスの花かな?
夏の早い時期に行くとこんな光景を見ることができる。北国の海沿いの夏を感じさせるひとこまだ。
快晴で穏やかな日の海。申し分ないほどに綺麗だが、せっかく三陸海岸を見るなら風のある日、波の打ち付ける姿を見るのが粋かなって思ったりもする。
…って感じで、「明確にここのポイントから三陸海岸が始まる。地形が変わる。」って程にはわからない。
しかし、確かにここ近辺から岩礁地帯が始まるのは、周辺をドライブしつつこの展望台に登れば感じ取ることができるんじゃないかな。
最後は後ろを振り返って駐車場を眺めよう。緑豊かでのどかな立地。
右端にオシャレな建物が見える。あれは「ホロンバイム」というカフェレストランだ。カレーやパスタもあるけど、観光客は店頭で気軽にソフトクリームを買っていくケースが多いように感じられる。
今回の写真では取り上げていないけどさ、僕もすっと昔、初回にここに来たときは同行の仲間と共にここでソフトクリームを食べてひといきついたんだ。そんな思い出のお店。
ソフトクリーム片手に展望台から眺める三陸海岸は、なかなかにいい記念になるかと思うぜ。
日本の灯台50選、鮫角灯台へ
冒頭で書いたが、三陸海岸北端の地は"鮫角"と定義付けられている。この鮫角という名前を持つスポットは鮫角灯台であり、この灯台が三陸最北端のポイントとなっているのではないかと考える。
つまり、「地形的な最北」は葦毛崎だけど、「名称的な最北」は鮫角灯台みたいな感じなのではなかろうか。
お互いの距離はとても近いので、一緒に訪れてみるといいかもしれない。
どのくらい近いかというと、若干ズームはしているものの葦毛崎の展望台から見た鮫角灯台がこんな感じだ。
直線距離で200mちょっとしか離れていないところにある。とはいえ葦毛崎から行くには大きく迂回しなければいけないのでアプローチがやや厄介ではあるが。
名前こそ"葦毛崎”・"鮫角灯台”と関連性はないが、"葦毛崎灯台"という名称でも妥当な位置にあるのだ。
道がわかりづらいくで面倒なので、僕もここには葦毛崎ほどには頻繁には訪れてはいないが、それでも数回は行ったことがある。
初めて行ったときは、北側にある蕪島から南下しつつ向かったんだったよな。
走っていると『鮫角灯台 1㎞』という看板が出てきて、「あぁたった1㎞だったら行ってみるか」ってなったのだ。
その1㎞がまぁまぁハードコアでストロングスタイルだった。
いきなり分岐が出てきたの標識が標識がなかったりして出鼻をくじかれたけど、大体の予測で進路を決めた。
サラブレッドを育成している「タイヘイ牧場」の横を通過するんだけど、そこは未舗装だったりして。
海の近くなのにその気配がゼロ。この先に灯台があるのかかなり不安になるようなロケーション。
それに対向車が来たらすれ違いも無理だ。もっとも、対向車はおろか灯台周辺で他の人を見かけたことすらないんだけどな。すごく静かな立地なのだよ。
こうして辿り着いた、鮫角灯台の駐車場。そこそこ広くて自販機もある。
…ただ、一点注意だ。Webを見ると「駐車場がない」・「10分歩いた」・「5分歩いた」のようなコメントが散見される。
おかしいな、僕は毎回灯台の足元まで車で行っていたんだけどな。直近の日本6周目でも行けたんだけどな。
ルールが変わってしまっている可能背尾もあるし、曜日によって異なる可能性もある。なのであなたが行く際には少し時間に余裕を持っておくとよいな。
灯台を見上げる。こうして写真で見ると大きいように感じるが、実際は22.73mで特段大きくはない。
灯台の足元からの眺めもすごくいい…って程ではない。葦毛崎展望台と比べてしまうと、どうしてもね…。
しかし驚くなかれ。この灯台はすごいのだ。
なぜなら「日本の灯台50選」に選ばれている貴重な灯台だから。これすごいんだぞ。周囲全部海で、かつ岬だらけで灯台だらけの日本において、そのTOP50に入る風光明媚でかつ価値のある灯台ということなんだから。
どうやら「八戸港」を行き来する船の目印になっている灯台ということもあり、航海上の価値は非常に高いらしい。それは納得。
岬の知名度が高いわけでもないし、アプローチがややわかりづらいし、灯台自体が高くて大きいわけでもないし、人がたくさん来るわけでもないし、灯台の周囲に何もないけども。それでも50選なのだ。それが尊い。
実は、冬以外の週末は一般人も登れる灯台である。
常に公開されているわけではないので、日本に16基ある”参観灯台”には残念ながら含まれないが、準参観灯台と言っても良いだろう。
あなたも行く機会があったら登れる日を目指してみるといい。
僕は登ったことはないが、この灯台に登ればきっと葦毛崎を含めたリアス海岸を見下ろすことができ、三陸海岸の北端もしっかり判断できるかもしれない。
そんな報告を待っている。
エピローグ
最後に、自己満足のために書かせていただきたい項目がある。
あれは2022年初秋、日本6周目で2回目の葦毛崎展望台を訪問したときのことだ。
展望台から左に鮫角灯台、そして右には八戸市街の沖合を臨む構図で写真撮影をしていた。
その際に「あっ!」って思った。写真の赤丸の部分だ。次の写真でズームしてみるね。
何を隠そう、僕は数時間前まであの船に揺られていた。そして八戸港に到着後、朝市でご飯を食べたり蕪島を観光しながらここ葦毛崎展望台に辿り着いたのである。
僕を乗せた船が遥か北海道へと帰っていく。僕の北海道を巡る旅がこうして終わる。
いいタイミングでお世話になったフェリーの後姿を見送ることができ、胸が熱くなった。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
葦毛崎
鮫角灯台