週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.332【富山県】リアルな石像が1000体以上!!富山屈指の珍スポットはミステリアスだ!

1200。

このエリアにある石像の数だ。無数の仏像が立ち並ぶスポットは国内にはそこそこあるが、さすがに1200体は聞いたことがない。

ましてやそのスポットを作り上げたのは一個人だというから常軌を逸していると感じた。

 

そのスポット名は、「ふれあい石像の里」と「おおざわの石仏の森」。その2つは800mほどしか離れておらず、車を使えば一瞬での移動距離だ。

そして富山県内ではちょっと名の知れた珍スポットだそうだ。

 

行かねばならぬ。

その情熱の源泉はいったいどこなのか、確かねばならぬ。

 

 

朝日に照らされた美しい紅葉を見ながら山間部を走っていたのだが、ふれあい石像の里が近づくと途端にドンヨリしてきた。

なるほどなるほど、僕の不安が空模様に反映されている。

 

 

プロローグ:狭路の先の石仏王国

 

国道41号は「神通川」の西側に沿って設置されている。その川の対岸には県道188号があり、そこにふれあい石像の里&おおざわの石仏の森があるという。

 

県道188号1

国道を反れて県道に入った僕は「マジか」とつぶやいたよね。

国道と県道、その扱いにメリハリが効きすぎている。格差社会が著しい。この道で合っているのか不安になって一度車を止めて地図を確認し、どうやら僕の選択が正しいそうなので再びアクセルを踏む。

 

県道188号2

対向車が来たら擦れ違い困難だが、対向車なんて全然来ないような静まり返ったロケーション。寂しい。「対向車来ないで」と「対向車来てくれ」の感情がハーフ&ハーフ。

 

県道188号3

ただ、しばらくこの道を走っていたら、右手にモリモリととんでもない数の石像がこっちを見ている人口爆発状態になったので寂しさは消し飛んだ。

異様すぎて怖いけども。前面に立ちはだかっているのは人間ですらない異形の者々だし。

 

県道188号4

…というわけで、まず到着したのは向かって南側にあるふれあい石像の里だ。

県道沿いに上の写真のような駐車スペースがあり誰もいやしねぇ。しょうがない、僕1人で満喫するか。

 

 

ふれあい石像の里

大量の一般人の石像がほほ笑むよ

 

ふれあい石像の里。いきなりフレンドリーなフレーズのスポット名だが、何をどうふれあえばいいのか戸惑う。

「そのフレンドリーさは、片道通行じゃないですか?」とか思ってしまう。

 

ふれあい石像の里1

まぁまずはご覧くださいよ。山深い地に、チュドーンと立派な『ふれあい石像の里』という石碑が立っているのよ。物理的にも精神的にもなかなかの重みを感じる石碑。

そしてその奥に…。

 

ふれあい石像の里2

ふれあい待ちの石像たちがお行儀よく並んで待っている。ふれあい大渋滞。

シュールすぎて1人で来たことを後悔してしまう。僕1人で受け止めきれるのかな?ふれあい石像の里とおおざわの石仏の森で合計1200体の石仏があるそうだけど、ここだけで700体ほどいるというしな。

 

ふれあい石像の里3

ドキドキしながら足を踏み込んでみた。

すぐに気づくのだが、これらは仏像ではない。現代人だ。しかも服装がラフな人も多い。偉人でもない。一般人だこりゃ。

表情もおだやかかつ和やかであり、「なんかの呪いで石化されちゃったのかな?」って思う。僕も「オマエが1201体目だ!」とか言われて石化されそうで怖い。

 

ふれあい石像の里4

こうやって、この辺でキッチリ座っていれば石化されたりするのかな?

みんなと同じように座ってみたつもりだ。ちなみにこの並びは正座している人が多かった。僕は正座するとすぐに足がしびれちゃうタイプ。あなたはどうですか?

 

ふれあい石像の里5

 

その男、自分の知人を石仏にした

 

さて、このスポットの由来について説明していこう。

ここは「古河睦雄さん」っていうこの地域のちょっとお金持ちな人が作ったスポット。石像が好きな古河さんは、「石像いっぱい作って観光地化させてこの地を盛り上げるぞー!」ってなったらしい。

ふれあい石像の里とおおざわの石仏の森でテーマは違うんだけど、こっちは一般人中心スポットだ。

 

ふれあい石像の里6

この人たちがどなたなのかというと、古河さんの友人・知人・親族・恩師などだ。実在の人物だ。

 

古河さん、きっと自分の人生で出会った人たちをこうして具現化したかったのだろう。僕らから見たら全く知らない人たちで見たところで何のありがたみも感じない。

知らない人の写真を見せられて「これ、自分の知り合いなんだよね」と言われても「へぇ」以外のリアクションが出てこないのと同様に、感情が迷走する。

 

ふれあい石像の里7

それに僕は古河さんがだれかすら知らない。知らない人の知り合いだからダブルでよくわからない。

古河さんにとってはきっと重要な人たちなのだが、僕にとっては知らない人に囲まれ過ぎて混乱しか感じえない。

犬とかもいるけどね。犬は「かわいいですね」とか思えるけどね。

 

ふれあい石像の里8

この一般人の石像はここに400体ほどあるという。

400人も石像にしたいほどの知り合いがいるってなかなかにすごいよね。古河さんの人脈はすごい。僕は40人すらも思いつかない。そして石像にはしたくない。

 

古河さん、自分で所有しているこれら知人たちの写真を中国の業者に送付し、「写真をもとに石像造ってほしい」とオーダーしたらしいよ。

何気ない写真が元になっているから、みんな表情が穏やかなのだ。

 

ふれあい石像の里9

上の写真の中央みたいに、ときどき異物が紛れ込んでいるのを探すのも面白い。

あきらかに等身の違うナイスバディなお姉さんがいるけど、これは別の趣旨で設置したものか?それとも古河さんがキャバクラとか行って知り合ったのか?

ふれあい石像の里10

お姉さんはギリギリ実在するかもしれないけど、これになるともうナイトメアとしか思えない世界観なんだけど。どうした古河さん。僕、心配になってきた。

 

ふれあい石像の里11

おーい、おーい、古河さーん。

…なんか古河さんが遠くに行ってしまった気持ちだ。

 

ふれあい石像の里12

とりあえずここまでで僕は理解した。

ふれあい石像の里とは、僕らが石像にふれあうという意味ではない!古河さんがふれあった人たちを石像にしたという意味だ!

 

なんてこった!真実はそうだったのか、これはいっぱい食わされたぜ!趣旨もスポット名も、すんごい自分主体なものであった。

そのバイタリティがこのカオスワールドを生んでいるのだ。好き。

 

ふれあい石像の里13

ついでにもっとカオスな1枚をご紹介しよう。

これは最前面、県道側から撮った写真だ。前章で書いた通り異形の者が並んでいる。十二支の動物たちを擬人化したものだそうだ。

左側から亥(いのしし)・戌(いぬ)・酉(とり)…と並んでいるのがわかるね。完全に化け物チックになっているけどな。

 

ふれあい石像の里14

敷地の奥の方に行くとテイストが変わった。

仏像っぽくなってきた。みんな坊主だ。古河さんの坊主の知り合いを密集させたのか?「ハゲは奥に引っ込んでろ」みたいなスタンスの方だったのか、古河さんは?

いや、実は違う。

 

ふれあい石像の里15

これらは次にご紹介したい、おおざわの石仏の森に置ききれなくなってあふれた石仏なのだ。それが300体くらいいる。石仏だから坊主なのだ。

坊主人口爆発であふれかえり、強制移民。そしてボッコボコの廃車もあって世紀末な扱いのゾーンじゃねぇか。ワクワクしてきた。

 

…ということで、次は800m離れたおおざわの石仏の森に行くぞ!

みんな話に着いてきているか!?僕はもうゲシュタルト崩壊しているよ!

 

 

おおざわの石仏の森

造りすぎた五百羅漢の話

 

僕は再び県道188号を走る。

 

県道188号5

相変わらずのロケーションだ。夜だったらちょっとここは走りたくないものだ。

ふれあい石像の里&おおざわの石仏の森は、県道であるがゆえにかなり気付かれにくい立地になってしまっているのだろう。

だが仮に国道にあんなもんあったら、ドライバーさんたちビックリして事故るかもな。やっぱ県道にあって正解なのかもな。

 

県道188号6

落石もあるらしい。ワイルド。

しかしすぐに右手に石像がたくさん見えてきてデジャブ。2回目なので僕も「はいはい、また来ましたよ」と手慣れたもんですわ。

 

おおざわの石仏の森1

仏塔がそびえ、ヤシの木みたいなのが生い茂り、そしてチラチラと無数の石像が見えている。世界観がバグり散らかしていて非常にGoodです。最初からクライマックス感がある。

愛用のバッグをひっさげて車から飛び出した。僕もハイテンションになってきた。

 

おおざわの石仏の森2

石垣の上から数人のお坊さんが僕を見下ろしている。右手には狛犬みたいな配置で牛がいる。

前述のとおりこっちも古河さんの立ち上げたスポットなので、基本的なテイストは一緒だ。ただしさっきのふれあい石像の里とは違い、こっちは"石仏"。羅漢像が立ち並んでいるのだ。

 

おおざわの石仏の森3

さっきのように実在の一般人ではないためか、顔立ちは大体一緒。

だけども衣装やポーズなどはよく見ると1人1人違う。中には変なポーズをしている人だとかもいるので、あなたがもしヒマだったらそういうのを探してみるのも一興だろう。

僕はちょっとだけ疲れたのでそういうのはしない。

 

ちなみにここは"五百羅漢"を再現しているのだそうだ。

五百羅漢の名の付くスポットは日本各地にあるのでご存じの方もいると思うが、ブッダに付き従った弟子が500人いたのでそういう呼び名になっているのだ。

 

おおざわの石仏の森4

それを等身大の仏像で作ったのだから山の斜面がすごいことになっちゃっている。古河さん、これのための6億円を費用を賭けているからファンキーすぎる。

"おおざわの石仏の森"という名称、森の中にあり、かつ石仏が森のようにあるというダブルミーニングなのかな?なんてセンスだ。感服。

 

ただ、古河さんのすごいところはそれだけではない。

「五百羅漢だったら他のスポットにもあるよね。自分はここを世界一にしたい。だったら500体じゃ足りない。もっと作ろう。」…そう思って追加300体、つまり独自に八百羅漢を作ってしまったのだ。

弟子は500人のハズなのに古河さんが勝手に300人増やしちゃって、極楽浄土できっとブッダもビックリしているに違いない。

 

その追加300体をここには設置しきれなくなって置いたのが、さっきのふれあい石像の里の深部なのだ。話が繋がったね。

 

おおざわの石仏の森5

他にも如来像・菩薩像・明王像などなど、70体いる。五百羅漢と全部合わせて570体。

ここだけ見れば、まだ「仏教に熱心な人」だったのだろう。

ふれあい石像の里に五百羅漢からはみ出た300体と知人の像を作ったことで一気に珍スポットレベルが跳ね上がったよね。僕はそんなふれあい石像の里が好きなのだが、順番的にはこのおおざわの石仏の森から見た方が良かったかもな。

ラーメン屋に行って王道のラーメンを食べる前に、カレーライスみたいな飛び道具的なメニューを頼んじゃったような気分だ。

 

 

その思いを胸に刻んで

 

このスポットにあなたが訪問するならば、ぜひ見つけてほしい石像が1体いる。それは巨大な毘沙門天明王像などと一緒の列にひっそりとたたずんでいた。

 

古河先生1

一番手前だ。

「あれ?現代人の服装の人がいるぞ?こういうコンセプトはふれあい石像の里だったのではないか?」って思われるかもしれない。

この人だけは違うのだ。例外なのだ。

 

古河先生2

これが古河睦雄さんである。

1990年代に中国の彫刻家に6億円をかけて無数の石像をオーダーしてこれら2つのスポットを作り上げ、そして2013年に80歳で亡くなられた人だ。富山県の珍スポット界では偉大なる人物だ。

 

古河先生3

足元の台座にも名前と、そしてこの像が中国で造られた旨が刻まれている。

 

その近くには、おおざわの石仏の森とふれあい石像の里のスペックやコンセプト、思いについて記載された説明版もあった。詳しく知りたい方は以下の写真を拡大してみてほしい。

 

古河先生4

このスポットは、古河先生が平和・幸福・健康などを願って造ったのだそうだ。

さらには「心のなごみになってほしい」・「富山県の観光や飛騨路の話題になれば幸いだ」と思ったそうだ。

 

なるほどなるほど。平和・幸福・健康などはスケールが大きすぎて僕が推し量れるものではない。

心のなごみは…。うーむ、なごむというよりちょっとザワついたかな。富山県の観光や飛騨路の話題には、一部熱狂的マニアが沸いていると思うよ。一般観光客にはハードルが高いかもしれないけど、珍スポットの聖地だと思うよ。

 

古河先生5

ここには無料休憩所も設置されている。

僕の訪問時は朝の7時を少し回ったくらいの時間だったので開いてはいなかったが、冬季以外の日中は解放されていて管理人さんもいるらしい。

 

古河先生6

ガラス越しに中が見えた。

時間が合えば管理人さんと話してみたかったかなって、ちょっとだけ思う。レトロな椅子に座ってノンビリした時間を過ごしてみるのも楽しそうだな。

それらはまたいずれ、機会があれば。

 

古河先生7

敷地は山の斜面であり、その小高い地からは神通川がよく見えた。石仏たちもみんな川を眺めていた。右端にはダムがチラリと見えているね。「神通川第2ダム」だ。

 

川の西側は国道がある道も広いし家もあるが、東側は道が狭くてご覧の通りカオスなスポットが2つあるのみ。

まぁでもこうやって東側から穏やかな空を眺めるのも悪くないかな。晴れてきたし。

 

古河先生8

熱い情熱を持って、強い信念を持って、人には理解しがたいけれども自分のやりたいことを突き進む。

そういうエッジの利いたアイデンティティがあった方が、凡庸な人生を送るよりも価値があるのかもしれない。

 

古河先生9

古河さん、たぶんあなたはすごい人だよ。

人間、死んだ後にも何か後世に残せるものが1つあるだけでもすごいもんだと思う。

僕にはできるかなぁ…?

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

ふれあい石像の里

 

  • 住所: 富山県富山市寺家
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし

 

 

おおざわの石仏の森

 

  • 住所: 富山県富山市牛ヶ増高割1092
  • 料金: 無料
  • 駐車場: あり
  • 時間: 特になし