「くれふしの里古墳公園」には日本一大きい埴輪(はにわ)がいる。
ズドーンとロケットのように芝生広場の中央に鎮座している。「そもそも埴輪ってなんだったっけ?」って感じにゲシュタルトが崩壊しそうなくらいに巨大な埴輪だ。
その名は「はに丸タワー」。高さは17.3m。
ウケ狙いのためだけでここに立っているのではないぞ。ここは茨城県内でも有数の古墳群であり、公園内には16基もの古墳がある。一部は綺麗に復元されている。
それらを楽しく遊びながら学べちゃうスポットなのだ。
ならば行っちゃうしかないよね!
前々から存在は知っていたが、僕が訪問したのは日本6周目も終盤に差し掛かってからだ。
そのときの訪問記をリポートしよう。
前方後円墳に登ろうぜ
常磐道の水戸ICのほど近く。
正直、なかなかの住宅地にあったので「こっちであっているのかな?」ってドキドキしながら小道に入った。
だがすぐに僕は納得する。
古墳はお墓。お墓があるということは、近くに人が住んでいたということ。すなわち太古の住宅地。
その場所が今も人が多く住む場所であることは至極当然だ。今も昔も、ここは住み心地のいい場所だったに違いない。そういや空も風も気持ちいいし。
どうやら到着したようだ。
あんまりキチンと写っていないけど、前面道路がちょっと狭くって奥まった立地だ。でもそれなりに車の往来はある。
敷地の入口で出迎えてくれるのは馬の埴輪だ。
実在する馬の埴輪を再現したものだろう。なんだかワクワクしてきたな。埴輪にはいろんな種類があるが、やっぱ人間や馬などの生物をかたどったものが好きだ。
駐車場から公園内に入ると、ドーンと素晴らしい古墳が現れた。あとからわかることだが、結論としてこの古墳が一番大きくて一番かっこいい。
名前は「牛伏4号墳」というらしい。
Googleマップではこの公園の敷地内には他に牛伏5号墳・牛伏6号墳・牛伏9号墳・牛伏10号墳・牛伏17号墳の存在が記述されている。
冒頭に書いた通り公園内には16基の古墳があるそうだが、その中でもTOP6にあたるのが4号墳を含んだこれらなのだろう。
しかもGoogleマップでは4号墳だけ「牛伏4号墳(唐櫃塚古墳)」というようにナンバリングの後に別称までついている。きっと特別な存在なのだ。
長さ72m・幅54m・高さ7mほどの規模の前方後円墳らしい。6世紀後半ごろのものなんだって。
それ以上の詳しくは、興味がある方は上の説明版を拡大して読んでほしい。
細かいことは置いておいて、僕は今興奮しているのだ。なぜなら古墳に上るための会談があり、そして古墳の上には無数の円筒状の埴輪が並べられているからだ。
はに丸タワーの存在は知っていたが、こんないいものがあるということは恥ずかしながら調査不足だった。上らねば、一刻も早く。なぜなら冬の日は短いのだ。
前方後円墳の"前方"部分まで上ってきた。多数の円筒埴輪が出迎えてくれている。
いいねぇ。埴輪って人型や馬型を思い浮かべる方も多いだろうが、数量で言えば圧倒的に円筒型が大多数なのだよ。
小学生時代はそれを聞いてちょっとガッカリした記憶もあるが、こうやって並べると圧巻なのだよ。
円筒型の埴輪は主にこうやって墳丘に沿って並べて、その輪郭をクッキリ美しくかたどるのに使われていたそうだ。
たくさんの埴輪を復元してこうやって並べ、しかも無料で上まで登れるようにしてくれている公園に感謝だ。
はに丸タワーに登ろうぜ
そろそろ園内の目玉、はに丸タワーの話をしよう。
なんともシュールな絵なのである。園内のほぼ中央に位置する芝生広場の真ん中に、このアンニュイな顔をした巨大な埴輪が立っているのである。
冒頭にも書いたけど高さは17.3mだ。デカいが気の抜けた顔をしているので、怖くないやら別の意味で怖いやら。
青空に堂々とそびえるテカテカな顔をしたはに丸タワー。
実はコイツの頭の上が展望台になっていて、無料でそこまで登ることができる。世にも珍しい埴輪型の展望台、登るしかないだろう。
そう思って裏に回ったら、なかなかのハリボテ感にあふれていた。
なんだよ、埴輪的なコーティングがされているのは表側だけかよ。裏側はどこまでも四角くスリッドな階段がむき出しだ。どうやら6階建てらしい。
内部に入った。
『この「シンボルモニュメント」は宝くじの普及宣伝事業として整備されたものです』って書いてあった。
一瞬「宝くじで高額当選した人が建てたのかな?」って思ったけど、違うよね。
宝くじって1等の当選額もものすごいけど、結局は多くの国民が買ってハズレるので、ガッポガッポお金が入るよね。その儲けたお金がどこに行ったのか…、っていう答の1つがきっとこれなのだろうね。
平成初期に宝くじを買った人ー。あなたのお金がはに丸タワーの一部になったよー。
納得したところで鉄階段を登っていく。足元からカンカンいい音が響く。
「このまま同じ無機質な光景が6回繰り返されて屋上展望台に到達するのだろうなー。屋上に至るまでは、どうせ大したネタもないのだろうなー。」って思っていたら、違った。ネタにあふれていて飽きることがなかった。
途中の踊り場に、なんだか異様なデザインの円形の穴があった。
なんだろうか?覗き込んでも何も見えない。何も聞こえない。意味不明だ。そのときはそうとした思えなかった。真実は後から知ることとなる。
わっ!いきなりデカい埴輪の顔面が出てきた!すごく意味が分からない!
いや待て、埴輪の左右に何か説明書きがされている。それを読まねばならない。
『はにわの口にそっと手を入れてごらん。古代から、宇宙からのメッセージがあなたに届くよ。』
なるほどなるほど、意味わからん。百歩譲って埴輪だから古代からのメッセージは届くかもしれないが、宇宙はどこから来たのだろう。
手を入れてみた。何も起こらない。どうやら壊れているようだ。
僕の敬愛する珍スポットハンターの方が昔ここを訪れているのだが、そのときには埴輪の目が光って短い音楽が流れた後、「あなたと同じ人はこの世にいません」だとか「爪は短く切りましょう」だとかのメッセージボイスが流れていた。
ふむふむ、確かに爪を短くするのは遥か彼方の宇宙から届けなければいけないほどに重要なことなのかもしれないな。
とりあえず埴輪に手を食われて、爪どころか手が短くならなくてよかったわ。
はにわの反対側の壁の掲示物だ。
メロディーサウンド??
『はにわの声を聞いたかい。コインを入れて、耳を当ててごらん。美しい世界が広がるよ。』
コイン投入口があるが、何円が必要なのかわからない。そして見るからに正常稼働していない。お金を投入したら負けだな、これ。
後から調べたところ、小銭を入れるとパイプを伝って下に落ち、その際の音がパイプ内に反響して聞こえるギミックだったらしい。
"美しい世界"か、これ?ちょっとだけいやらしい世界かもしれない。でもやればよかった。次回行ったら新500円玉入れてみよう。
屋上まで来た。思いのほか楽しかった。
そして屋上にはチューバのようなデッカいパイプ状のものがあった。序盤でもあったな、この形状のもの。
ここれ気づいたのだが、これはタワーの内部の異なる場所同士で音声通話できるギミックだったのだろう。
正式名称は伝声管だ。僕はジブリ映画の「天空の城ラピュタ」での使用シーンが印象に残っている。
とはいえ、多分今はこのタワー内にいるのは僕1人。誰とも通話はできない。
もっとも誰かタワー内に入ってきた人とこのパイプを通して気の利いたトークができるほどのコミュニケーションスキルもないわ。絶望。
ちょっとヘタな絵と、ひらがなだけの丁寧を通り越してちょっと読みにくい注意書き。
"かみなり"という単語が3回使われている。落雷、とっても怖いのだ。
上を見上げると青い空に避雷針がまっ直ぐに伸びていた。
今日は雲1つない快晴だ。寒いけれども気分は最高だ。
古墳あふれる憩いの公園
はに丸タワーの展望台から園内を見下ろしてみよう。
冬なのでちょっと殺風景な印象もあるが、きっと眼下の木々は桜。春には一面がピンク色に彩られるのであろう。
調べてみるとピクニックスポットや花見スポットになっているそうだ。住宅地だし、暖かいシーズンには賑わいそうだね。
一組のファミリーがいて、小さな子が1つしかない遊具で楽しそうに遊んでいた。ほほえましかった。
反対側からは、木々の向こうにチラッと街並みが見えた。
あっちは南側かな?ここまでは小高い丘だけど、ここを境界に南側はどこまでも平野が続いているのだ。それを見下ろすにはちょうどいい立地。古代の人もそんな理由からここを集落にしたり古墳を作ったりしたのだろうか?
最後に少しだけ、園内を散策したときの写真をご紹介しよう。
園内、ブランコのようなちょっとした遊具ならある。
そして園内の倉庫だか事務室だかの建物は、竪穴式住居みたいなデザイン。なかなか凝っているな。
こっちの遊具はすんごい。土器っぽいデザインだ。どう遊ぶのかよくわからないけど、これで遊んで育つ子供たちはラッキーだ。独特の感性が育つぞきっと。
向こう側ではピクニックしているファミリーがいる。寒いのにすごい。
でも気持ちはわかる。真冬でも日中少し暖かかったら、ピクニックしてみたくなるよね。屋内に引っ込んでいるだけでは人生もったいないよね。
東屋の屋根が前方後円墳!
最初は気付かなかったが「なんだかあの屋根おかしいぞ」って思って眺めていて気付いた。
この発想はすごい。墓が浮いているんだもん。大地に作られるはずの丘が浮いちゃっているんだもん。その下でくつろげと言うんだもん。好き。
最初の章では牛伏4号墳だけを取り上げたが、園内の林の中にはこのようにほかにもいろんな古墳がある。前方後円墳のかたちのプレートでそれが示されている。
ただし4号墳以外はかなり小規模で、上の写真のようにこんもりした丘が見て取れるだけだ。埴輪などもない。
どこからどこまでが古墳なのか。
ちょっとした高低差も全部古墳に見えてきて、何が何だかわからなくなる。
まぁでもそんなもんでしょう、この世の中って。
僕らが我が物顔で暮らしいているこの土地も、昔は誰かが生活を営み、そして死んでいく。地球上にはこうして無数の人生が堆積しているのだ。
古墳公園。太古の墓場ではあるが、なんとも陽気でなんともユニークで。
そんなゆるい世界が僕は好きだ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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