2016年秋のことだった。
袖ヶ浦のこの地に降り立った、ロック界のカリスマが、こう言った。
「ここはハワイかよ!」
アメリカ西海岸のカリフォルニアに雰囲気が似ていることで少しずつ認知度が上がっていた矢先のこの場所は、彼の言葉をきっかけに人気爆発したという。
このスポットの名は、「千葉フォルニア」という。
以来、南関東の車好き・バイク好きにとっての聖地である。
千葉フォルニアに車を停めて
2020年の最終日。
そんな節目の日に、僕は千葉フォルニアを目指した。
天気は文句なしの快晴だ。
千葉フォルニアは袖ヶ浦の東京湾を埋め立てた工場地帯の一角の「袖ケ浦海浜公園」に続く道を指す。
南関東以外の人に話すなら、「アクアラインの千葉側からすぐ」と言えばイメージしやすいと思っている。
すぐ近くには「木更津かんらんしゃパーク・キサラピア」という遊園地がある。
青空に観覧車が聳えていた。
その他のアトラクションも公道から見えている。
興味をそそられるが、僕のような男ひとりで観覧車に乗っていたら、年末というより世紀末みたいな感じになりかねないので、自粛する。
アメリカ西海岸に思いを馳せて
さらに海へと向かうと、工場地帯の横の海沿いのヤシの木の並木が見えてきた。
ここが千葉フォルニアだ。
なんか正面奥の方に車がたくさん停まっている。
もう少し近付いてみた。
こんな感じだ。
みんなヤシの木の下で、いい感じのソーシャルディスタンスをキープしている。
このヤシは”ワシントンヤシ"というらしい。
ネーミングが既にアメリカンだな。
ワシントンは西海岸だはなく東海岸だけど、O型は細かいことは気にしない。
背の高いヤシが98本、袖ヶ浦海浜公園に向かって1.2㎞並んでいる。
その向こうは東京湾だ。
この光景が、カリフォルニアに例えられているのだ。
みんな、路肩に車やバイクを駐車して、愛車の写真を撮ったり、景色を眺めたり、同じ趣味の仲間同士で談話している。
あとはきっと、SNSとか投稿しているのだろうな。
世はSNS時代だ。
このスポットも、Twitterやインスタグラムの力で一気に有名になったのだ。
僕も愛車の日産パオを駐車してみた。
他のみんなはカッコいいバイクやとんがった車の人が多いので、パオは異質に見えるかもしれない。
しかし、パオもこの風景にとても馴染むのだ。
少し話は反れるが、日産パオは昭和時代の最後に発表され、3ヶ月のみの完全受注生産の車。
そして平成時代に世に出た車の第1号である。
日産が、令和の今では実現ほぼ不可能なほどに、凝りに凝ったデザインをし、世に送り出した。
そのコンセプトは、「電柱がヤシの木に見える」というものであった。
つまり、何気ない日常をワクワクするような冒険に変えてくれる車なのだ。
電柱がヤシに見えるのだから、本物のヤシが似合わないハズがないよね。
そして、袖ケ浦の海もカリフォルニアに見えるのだ。
もう、見まがうことなき常夏バカンスなのだ。
大晦日?明日は正月??
なにそれ。いいからアロハシャツ持ってこい。
少しアングルを変えると、放送事故のように日常感が垣間見える。
道の反対側は工場地帯だからな。
しかしな、モデルだってきっと自宅ではヨレヨレの部屋着だし、聖人君主だって密かにエロい妄想とかしているだろう。
物事はなんでも、裏と表があるのだ。いい勉強になったな。
道路の反対側から撮影してみた。
この道路の広さ、そして交通量の少なさ、なんだかアメリカンだな。
だからそんなに交通量は多くはないのだ。
東京湾の大パノラマ
愛車の後ろには、「東京湾アクアライン」の「アクアブリッジ」部分、そして川崎や横浜のビル群、さらに箱根の山や「富士山」が見えている。
すごいロケーションだ。興奮する。
さらにアップにしてみた。
海の向こうのアクアラインと富士山が良く見える。
実はアクアラインの手前に、「千と千尋の神隠し」のワンシーンにも例えられる、海の中に続く電柱が写っている。
僕はこの後にそこで2020年最後の日没を見るのだが、その話はまた機会があったとしよう。
そして、富士山だ。
わかりやすくコントラストを少し調整した。
カリフォルニアなのに、日本の象徴富士山だ。
もしあなたがここで写真を撮り、知人に「カリフォルニアを走ってきたぜ」と写真を見せようと考えているなら、富士山をどうごまかすのか、今からしっかり考えて対策を立てるといい。
東京都心のビル群も見える。
「東京タワー」とお台場の観覧車だ。
「東京スカイツリー」も見えるぞ。
群を抜いて高い。
頭上にはANAの飛行機が飛んでいた。
「羽田空港」離発着のものだろうか?
そしてこれはアクアラインの中継地点である「海ほたる」だ。
この記事を公開する数日前に「金曜ロードショー」を見たあなたは、「タイタニックか!」とか思われるかもしれないが、東京湾の海上に浮かぶPAだ。
ジャックとローズがイチャコラしながら逃げ回っているわけではないし、音楽隊が斜めになりながら「主よ御許に近づかん」を演奏する必要もない。
とても安全なPAだ。
あとは、「横浜みなとみらい」なども見えているのだが、アクアブリッジの向こう側でちょっと見栄えがしないので、割愛したい。
…というわけで、ここからは東京・川崎・横浜と言った大都市を、ちょっと外側から俯瞰して見ることができるのだ。
その距離感が、とても心地良いと感じた。
袖ヶ浦海浜公園にて
では、次は千葉フォルニアの延長線上にある袖ヶ浦海浜公園に行ってみよう。
車に再び乗りこんで、ほんの1~2分だ。
はい、到着した。
後ろには展望タワーが聳えている。
…が、タワーの上に乗っているボール、あれはなかなかにヤバいな。
乗せた人のバランス感覚もすごいが、もし地震で「ゴローン」と落ちてきたら、それこそヤバいな。気になる気になる。
振り返れば、千葉フォルニアのヤシの並木が見えている。
1.2㎞続いたカリフォルニア区間の終了だ。
では、展望タワーに登ろう。
どうやら無料のようなので、ここまで来たなら登らない選択肢はない。
あのタワーは、高さ25m。
ちょっとWikipediaさんの説明を引用しよう。
人々の夢をいっぱい乗せた未来の宇宙船を想像したアルミ製の銀色の球形の屋根が設置されている。
また「人や生き物にやさしい地球環境づくりのための自然エネルギー」を活用して公園内の電力をまかなうための風力発電施設が設置されており、新たなシンボルタワーとして、自然エネルギーの学習の場、さらには観光施設として多くの人々に活用されることを期待されている。
(引用元:Wikipedia)
…だそうだ。宇宙船だ。
張り出しバルコニーのような、扇型の展望台。
高所恐怖症の人だったら、あそこに立つことを想像しただけで足ガクガクになりそうだな。
内部は狭いらせん階段だ。
灯台を登るときなどと同じような感覚だ。
グルグルと25m、ひたすら登ろう。
そんで屋上出ると、やっぱ怖いなこのボール…!
写真では伝わらないかと思うが、頭上に結構なプレッシャーをかけてくるよ、これ。
ボールを支えている華奢なアームが壊れでもしたら、「インディージョーンズ」第1作の冒頭をリスペクトすることになるよ、僕。
上からの展望だ。
特に左部分、異国情緒あふれるテイストである。
向かって右奥には、さっき走って来た千葉フォルニアが伸びている。
鉄塔が雰囲気を少し破壊してしまっているが、ヤシの並木とその背景となる海は、とても絵になる。
次は、公園のさらに奥側を見てみよう。
散歩したら気持ちが良さそうな緑地がずーっと続いている。
真冬なのに、緑が生い茂っている。
初夏だとかに来たら、さらに気持ちが良いのだろう。
東京湾の反対側に見える景色は、さっきの千葉フォルニアからのものと同様なので割愛する。
しかしここは高さが25mあるから、より海が広く迫力のあるパノラマが広がっていた。
ツーリングの新名所へ
冒頭で少し触れた通り、この千葉フォルニアが有名になったのは最近の話だ。
袖ヶ浦海浜公園が2004年にでき、その当時からヤシが植えられていたそうなので、千葉フォルニア誕生もきっと2004年なのだろう。
(間違っていたら申し訳ない)
毎年袖ヶ浦海浜公園で「氣志團」がロックフェスをしているんだけど、2016年に「矢沢永吉さん」がゲスト出演したときに「ここはハワイかよ!」と言い、そして人気に火がついたようだ。
また、2016年・2017年頃の各種雑誌で千葉フォルニアという名前が使われ、首都圏のインスタ映えスポット、ライダーたちの人気スポットとして紹介されたことも大きいだろう。
そしてなにより千葉フォルニアという秀逸な名前が誕生したことが、ここのスポットの人気の底上げになっていると感じた。
では、"千葉フォルニア"という名前はいつから使われ始めたのか。
おそらくは誰かが通称で使ったことが口コミで広がったと推測した。
…であれば、Twitterだ。
もしかしたら2016年あたりかな…と思って検索してみたら、チラホラ既に使われている。
2015年、2014年も、使用数は少ないが千葉フォルニアという言葉は存在している。
2013年、2012年もいた。
マジか…。僕は当時全然ここの存在を知らなかったよ…。
結論、2010年にわずか数人の人が千葉フォルニアというい言葉を使っていた。
もしかして彼らが始祖なのだろうか…。
ちょっと話を聞いてみたい気もしたが、彼らの最後のツイートは既に数年前であり、アクティブユーザではなさそうだったので、話しかけるのは辞めた。
今もどこかで新しいスポットが誕生しているのだろう。
そして、ウワサになったりならなかったりしているだろう。
こうやって少しずつ時代は移り変わっていく。
だからこそ、僕はまだまだ日本を走りたいんだよね。
毎回新しい発見があるし、きっとこれからもあるのだから。
では、さらば千葉フォルニア!
さらば2020年!!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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