週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.205【東京都】国内の位置を示す基準点「経緯度原点」!大使館だらけのエリアにあった!

…もし、この小さな丸いプレートが無くなったら、日本国内の「場所」の概念が根本から崩れて大パニックになってしまうのだろう。

 

 

きっとそれは、ある日突然この世から「住所」という概念がなくなることを想像するのと同義ではないだろうか。

 

そんなことを考えながら、僕は小さいプレートにそっと触れた。

 

日本の位置を示すための唯一無二の宝。

これこそが「日本経緯度原点」だ。

剥き出しで設置されていて、僕のような一般人も気軽にタッチできるけども。

 

このプレートを中心に、北海道から沖縄まで、網の目のように正確に位置情報が設定されている。

その真ん中に僕はいる。

まさにここは、日本の真ん中ではなかろうか。

 

 

日本地理の基準点

 

…というわけで、今回のスポットは日本経緯度原点だ。

広義での日本の中心の1つである。

 

こう書くと、あなたは「えっ?日本の中心っていろいろあるの!?」と思われるかもしれない。

うん、実は日本の中心というのは日本各地に無数にあるのだ。

ぶっちゃけ30箇所くらいある。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

詳細については上記リンク先の【特集】をご覧いただきたい。

そしてこれら無数の日本の中心を全部巡ってみたいと夢見ているのが、この僕だ。アホでしょ。

 

上のリンク先を見ていただければわかると思うが、「日本の中心」といえばそれは大体地理的な中心を指す。

じゃあその"地理"の大本はどこなんだよ、と言えばここなのだ。

 

  • 平面座標を司るのが、経緯度原点
  • 高度を司るのが、水準原点

 

「この2つで日本のあらゆる場所を定めなさい」って、測量法(昭和24年法律第188号)第11条でも定められている。

経緯度原点を例にとると、「経緯度原点の緯度と経度が〇〇度だから、どこそこの緯度と経度は△△度だね」っていうふうに、どんな場所も経緯度原点からの距離で定められているのだ。

 

ちなみに日本水準原点は「国会議事堂」の前にあり、これについては以下の記事で執筆済みだ。

 

drive-ns.hatenablog.com

 

経緯度原点と水準原点も、地理の根幹を示す法的なスポットなのである。

 

だからなのか、場所も東京都心なのである。

水準原点は国会議事堂前というすんごいVIPな場所にあるが、経緯度原点だって負けてはいない。

どんなところなのか、気になるでしょう。

 

じゃ、ごたくはとりあえず中断し、実際行ってみるか。

 

 

怒りのアフガン

 

青空に「東京タワー」。最高。

 

目指せよ原点1

東京スカイツリー」にお株を奪われて随分年月が経ったが、それでも東京タワーは渋さ溢れてカッコいい。

 

真っ赤に染まる東京タワーを横目で見ながら、僕は経緯度原点を目指す。

そう、経緯度原点はこの近くにあるのだ。

 

目指せよ原点2

付近ではどうやら祭りの準備が進められている。いいね。

東麻布の町内会にて開催している、熊野神社祭禮というお祭りなのだそうだ。

 

目指せよ原点3

これは山車かな?小さいけども山車がある。

お神輿も付近で待機しているのを見かけた。

こういう光景を見るだけでワクワクする。

 

そんな界隈ではあるが、同時にこのエリアは大使館がすごく多い。

ちょっと付近の地図を掲載しよう。

 

目指せよ原点4

左端の矢印の先が、経緯度原点。

赤く囲ったのが大使館。この地図だけでも6箇所ある。

でも6箇所だけなのかと言うと、この地図では端折られているだけで、もっとある。

 

日本経緯度原点のすぐ隣にも、上の地図には無いが2つ大使館がある。

日本の地理のシンボルにも関わらず、大使館に挟まれた異国情緒かほとばしるスポットなのだ。

 

あなたも行く前にはカクゴしておいたほうがいい。

ちょっとした海外旅行気分になることを。

 

目指せよ原点5

あと、現地付近は道が狭い上に(たぶん)駐車場ないし、大使館の警備が物々しいので、車で行くのであれば少し離れたところでコインパーキングを探しておくといいんじゃないかと思う。

 

国道1号から小道に入る。

都心の国道1号という華々しいステータスだが、一本道を反れると途端に閑静になる。

 

目指せよ原点6

振り返ると東京タワーも、狭い路地のビルの間に挟まれてほっそりしている。

 

この狭い路地の正面にズドンと「ロシア大使館」がある。

警備員とモロに目が合うので、怖くて写真は撮っていない。

なぜなら屈強なロシア人とトラブルになったとき、僕の体格ではかろうじて太刀打ちできないからだ。

まぁあなたも行かれるのであれば、有事に備えて経緯度原点を見学しに来た旨をロシア語で説明できるようにしておくと吉だ。

 

目指せよ原点8

ロシア大使館に沿って左に折れると、「東京アメリカンクラブ」が現れる。

上の写真、右端の石垣がロシア大使館で、左側が東京アメリカンクラブだ。

 

うおぉ、なんてインターナショナル並びだ!セレブリティ!

そして冷戦終わって良かったな。隣同士で仲良さそうだな。

 

目指せよ原点9

前方に警備員がいた。

アメリカンクラブ正面の「サウンドシティ」の警備なのかわからないが、一見するとその先には許可者しか入れなさそうな雰囲気。

でもちゃんと行けるので、強い心で突き進んでほしい。

大丈夫、あなたは怪しい人ではない。

 

さらにそのすぐ先、「アフガニスタン大使館」があって行き止まりだ。

上の写真の正面がアフガニスタン大使館。


もちろんゲートには警備ががいる。

まっすぐにそのゲートに向かって歩くこととなる。

そのギリギリの右手、写真に写っている右端の黒い柵の向こう側が経緯度原点だ。

 

目指せよ原点10

アフガン警備員に目的を訪ねられたときの言い訳、もう大丈夫だよね?

下手すると、そりゃもう「ランボー3/怒りのアフガン」だよね。不朽の名作。

 

こうした幾多の困難を経て、経緯度原点を踏めるのだ。

感無量ってヤツだ。

 

 

ここから広がる日本

 

いやはや、実に大変な道のりでしたな。

アフガンの人に「なんでアイツ、あんな何もない公園に1人で入って行くんだ?」みたいな目で見られたけど、アフガニスタン大使館の前の公園が僕の目的なのだ。

日本経緯度原点なのだ。

 

経緯度原点1

こんな感じの、芝生の広場。

説明板があったり碑があったり、そして肝心な経緯度原点とそれが設置されている台座がある。

あるのは大体そのくらいだ。

 

経緯度原点2

国土交通省国土地理院が定めた、経緯度原点を示す立て札。

誇らしい。ここは日本だ。それは譲れない。

 

経緯度原点3

そしてここが経緯度原点である謂れを書いた石碑だ。

簡単に要約しよう。

 

1892年(明治25年)、ここには「東京天文台」があったんだ。

そこには子午環っていう、子午線に沿った方向にしか動かせないレトロでナイスな特殊望遠があったのだ。

その中を「経緯度原点にしようぜ」って定めたのが始まりだ。

 

経緯度原点4

ところがだ。

1923年(大正12年)の関東大震災で、大事な大事な子午環がブッ壊れた。

まぁ子午環はアナログなギミックだから壊れたら壊れたでしょうがないんだけど、経緯度原点どうしようかって考え、そのままその位置にプレートを埋め込んで経緯度原点の定義を守ることにした。

 

経緯度原点5

はい、この碑文の左側を見てほしい。石の台座がある。

これが、旧天文台の子午環が設置されていた台座部分だ。

中央に黒い小さな丸があるのがわかりだろうか?それが経緯度原点だ。

 

経緯度原点6

 

日本経緯度原点

 

 

パワフルな書体で刻まれている。

そしてなんかちょっと濡れている。梅雨だからかな?

 

経緯度原点7

ただ、大事なのはその右の丸いプレートの方だ。

すごく小さいが、接近してみよう。

 

経緯度原点8

あ、ちょっと写真ボケた。なんてこった。

ただ、プレートの中央には、お鍋にシイタケ入れるときみたいに、綺麗に十文字のマークがある。

そして日本経緯度原点の文字。

 

まさにここが経緯度の中枢。

東経139度44分28秒8759・北緯35度39分29秒1572。

全然キリはよくないけど、ここの経緯度が上記であることを基準に、全国すべての経緯度が確定する。

 

経緯度原点7

日本全国にある11万箇所ほどの三角点も、元をたどれば全てここから測量技師さんがコツコツ測量して位置を定め、全国に展開して行ったのだ。

 

あとは、原点方位角という、要するに「真北からどれだけズレているの?」っていう基準点の要素も持っている。

ここ経緯度原点と茨城県の「つくば超長基線電波干渉計観測点」を結んだときの角度。

それが真北から32°20′46.209″ズレている。

このズレも、全国の北の定義の基準となるのだ。

 

経緯度原点8

説明の碑文のすぐ右にある石柱の上に、原点方位角を示すプレートがあるぞ。

「現方位方向↑」って書かれているから、ここでつくばに思いを馳せてもいいんじゃないかな。

 

経緯度原点9

こんなところから、日本地理は始まるのだ。

すごいじゃないか。さすが東京だぜ。

 

 

東日本大震災でズレた!?

 

あと、経緯度が永久ではない。

2001年には測量方法がアナログな測量から衛星を使ったハイテクなものに基準が変わり、それによってここの経緯度も少し修正された。

 

それから、これは日本水準原点の項目でも書いたが、やっぱ地球は生き物だから地殻変動もあるし、大きな地震とかでちょこっとズレちゃうこともあるのだ。

そのたびに修正している。

 

前述の大正時代の関東大震災でもズレた。

2011年の東日本大震災でもズレた。東北を中心とした未曾有宇の災害であったが、この東京都心にも影響したのだ。

ほんの3cmほどではあるが、ミリ単位で計測して微修正したのだ。

 

旧時代の記憶1

地震でのズレが、経緯度原点そのものに何か影響を及ぼしたわけではない。

だが、僕は経緯度修正前の2000年代一桁時の写真を持っているので、最後のご紹介しよう。

 

これが経緯度原点だ。

なんかちょっとブレている。なんてこった。

 

旧時代の記憶2

その左の、子午環台座部分の名残だ。なんか濡れている。

"日本経緯度原点"の文字がキラキラの金色だ。剥げ落ちて保守していないことが判明した。

キラキラよ、カムバック!

 

旧時代の記憶3

あ、なんか広場がすごく狭い。

きっと現在の4分の1くらいしかない。昔はこんなにもモジャモジャだったのだ。

僕が現在の開放感のあるロケーションの方が好きだな。

 

*-*-*-*-*-*-

 

そんなこんなで、ちょっと地味だけども地理マニアには知っておいてほしいスポット。

誰もいなくって静かな小さな広場だけど、日本には無くてはならない広場。

 

 

高いビル群に囲まれたエリアだけど、これからもここから日本が広がるのだ。

ここに立てば、日本全国を感じられるかもしれない。

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 日本経緯度原点
  • 住所: 東京都港区麻布台2-18-1
  • 料金: 無料
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 特になし