東京都心に大久保という町がある。新宿区に属し、新宿駅からも徒歩圏内だ。
そこに個人的にメッチャうまいと思うカレー屋さんがあるから紹介したいと思うのだ。
店名は「小さなカレー家」。牛すじカレー専門店だ。
そのお店の外観はこんな感じ。
「小さい以前にいろいろヤバくないか!!?」というあなたの心の声が聞こえてきた。
まぁ確かに狭いし暗いしボロっちい感じのお店である。そしてそれらの要素と味を全部ひっくるめて最高のお店なのである。
行ったら最後、もうここの味を忘れることはできないぞ。禁断症状が出るくらいにうまいのだぞ。
大久保の路地裏に名店あり
場所は大久保駅から徒歩で一瞬だ。
車で来ると最後の200mくらいでとんでもなくカオスで狭い路地に入るので、その一瞬手前のコインパーキングに駐車しておくことを強くオススメする。
あの隙間の奥。そこに小さなカレー家がある。あと、大久保駅がある。
大都会からいきなり庶民的な世界への入口なのだ。
JR中央総武線大久保駅。新宿駅からも歩いていけるし、韓流で有名な新大久保駅はすぐそこだ。
なのに、なんだかあふれ出る地元感。新宿らしさが全然ない、平成初期の空気すら漂う駅。各駅電車しか止まらないからかな?
駅前もこんな感じ。駅前ロータリーとかそういうのは(少なくとも僕が出てきた改札には)見当たらなくって、雑居ビルがひしめき、赤ちょうちん越しに高架をゴトゴト走る電車が見えた。
しかも居酒屋は昼過ぎだというのに空いていたりしている。何だよ飲みたくなるじゃないか。
雨がザーザー降っていて寒かった。いつもは喧騒であふれているであろうこの路地も人がまばらだった。
いきなり中華風のゴツい塔が出てきてビビった。
ちゃんと撮影したかったが、土砂降りの中で傘をさしていたのでこのアングルが精いっぱいだった。
「東京媽祖廟(とうきょうまそびょう)」っていう、在日の台湾人の人たちが建てた寺院らしい。大久保エリアはアジアパワーが強いからね、なるほど。
そんな路地の中、大きめのタクシーが停車して全てを塞いでいる前に小さなカレー家があった。
路地とは言え、周囲の建物は小奇麗だ。なのにあの店だけオンボロというか、屋根がグロテスクなまでに剥がれていて武器な雰囲気すら醸し出している。
これが、何度も通うこのお店との初対面だった。
なんだよ店の中が暗くて奥が見えんぞ。
小さくてボロくて暗いお店
この章ではお店の外観と内観を中心に取り上げよう。味はもちろん最高だからこそ僕も何度か訪問したのだが、世間一般のこのお店は特徴的な外観を無しには語れまい。
『牛すじカレー』・『一度食べたらくせになる味』と書かれている。
牛すじカレーの専門店なのである。正確にいうと違うメニューも無いわけでは無いのだが、ラーメン屋でラーメンを食べるのと同じくらいに牛すじカレーの存在がほぼ全てを占めている。
この特徴的な看板、黄色かったのが赤くなったのか、はたまた赤かったのが黄色くなったのかは、全人類気になることであろう。
正解は黄色が赤くなったのだ。もう半分以上赤くなってしまったが、もとは黄色だったのだ。
近付いてみた。
よーくみると写真中央部分にわずかに"な"が残っているのがわかるよね。
"小さなカレー家"の"な"だ。あとどれだけ、この"な"は残ってくれるのだろう?既に風前の灯火だ。
あと、Web検索するとまだいくぶん黄色が多かった頃や店名が読めた時代の写真もあって歴史を感じるよ。
こんな外観のお店だが、人気だ。
さっきのザーザー振りのときの写真では人は並んでおらず、店内にもお客さんは2人しかいなかった。そんなことは未だかつて前章の1回切りだ。
大体店の外に6・7人が並んでおり、20分くらいは待つことが多い。
時間をずらして行きたいところだが、11:00開店で売り切れ次第終了であり、昼過ぎには無くなってしまうことが多い。なかなかタイミングがシビアだ。
このときは店外に10人以上が並んでいた。
僕も並んでいたのだが、店主のおじさんが「もう今日は売り切れです!」と外に向かって呼びかけ、みんな絶望の声を出して散っていった。
時刻は13時をほんの少し過ぎたくらいであった。こんな時間に売り切れるとは…。
店内はちょっと暗く、そして静かだ。聞き取れるかどうかくらいの音量でラジオが架かっていたりする。
そしてカウンター席が一列あるのみであり、10席くらいの規模感だと思う。ちなみに椅子は座りづらく、カウンターは結構高くて僕の慎重だと胸の前くらいまである。
そんなダークトーンなカウンターにプーさんのハチミツの壺が置いてあったりするからかわいいよね。
持ち帰り用のスプーンが刺さっている。うん、このお店は持ち帰りもできるのだ。店内で食べる勇気が無い人は、初回は持ち帰りでもいいかもよ。持ち帰りは持ち帰りで、どのタイミングでその位置から頼むのか判断に迷うだろうけどさ。
カウンターの一番隅には"きたなシュラン人形"がある。
僕は見たことないからよくわからないけど、昔「とんねるず」のTV番組で汚いけどおいしい店を紹介する「きたなシュラン」というコーナーがあったらしい。そこで紹介されたそうなのだ。
Webで「きたなシュラン」と検索すると、今でも芳ばしい名店がいっぱい出てくるよ。
こんなお店がすさまじくおいしいのだから、ホントたまらんよね。
絶品すぎる牛すじカレー
改めて店内のメニューを見てみようか。
写真が下手すぎて見切れてしまって申し訳ないが、初訪問時はメインの牛すじカレーが550円だった。安い。これ並盛でも相当な量なんだよ。
あとはみそ焼きカレーやカレー付けうどんというのがあるが、僕は頼んだことないし頼んでいる人を見たことも無いので謎だ。
2023年現在は並盛600円だが、それでも安すぎだと思う。コールスローは50円だし。なんだよ50円って。
それと、トッピングで牛すじ追加や各種肉を乗っけることができる。いいね、盛り上がりっぱなしだ。
初訪問時、すぐにおじさんがカレーを盛りつけて提供してくれた。
ひと口食べて、それが衝撃のうまさなのだ。牛すじ以前に、カレールーがうまいのだ。
結構スパイスが聞いている。シナモンというかハッカクというか、そういう系の香りが強く、もしかしたら苦手な人もいるかもしれないが、とにかく食欲を刺激される。
もちろん牛すじもおいしくって、カレールーという名の暗い空に点々と並ぶ星屑みたいに美しくって、トロトロで飲み物だわこれ。マイルドすぎる。優しすぎる。
瞬く間に完食してしまった。
並んで並んでようやく入れたこともある。
10分並んでいるのに全く行列が動かないのでちょっと焦った。なんでだよって思った。
カレーなんて掻き込んで終わりだろ?
「CoCo壱」とかだってカウンター席だとみんなそうするだろ?
大人数やカップルで談笑するわけでもないし、座り心地悪めの椅子なんだから、もっと回転率が高くてもいいんじゃないかって思ったのだ。
かなりの混雑時間帯に初めて訪問した僕は、ガラガラだったときには感じなかった、そのお店の魅力を目の当たりにしたのだ。
基本的にはおじさんはオーダーされたらお皿にご飯とカレーを盛り付けるだけである。社員食堂とかであれば、ベテランのおばちゃんが10秒でそれをこなす。
しかしここは違う。おじさんが片手に持った大きな平皿に、丁寧に丁寧にご飯を盛り付けるのだ。そして静かにカレールーを掛けると、我が子を扱うがごとく繊細な手つきで牛すじを並べる。
正直これに時間がかかり、店内に入っても10分近く待つこともあるのだが、それだけに出てきたカレーは美しく愛おしいのだ。
ありがたい存在なのだ。何も考えずに「うまいうまい」と掻き込むのもいいが、味わいたい一品だ。
気付いたんだよ、僕は。行列で待たされて、そして店内で多くの人に揉まれて気付いたんだよ。
みんな「カレーは飲み物です」なんて顔はしていない。ゆっくりと味わっているのだ。このカレーと向き合う時間を大切にしているのだ。だから食事時間もやや長めであり、これが想像ほどには回転率が良くない結果となっているのだ。
僕も改めて食べて思った。待ちに待って食べて思った。
「このカレーに包まれている時間を永遠に味わいたい」と。なんて幸せなのだろう。満腹中枢が機能しなければ永遠にスプーンを口に運んでいたい。
ちなみに上2つの写真は調子に乗って大盛を頼んだときのものなのだが、ぶっちゃけ多すぎた。幸せが大きすぎてウップスってなった。
750円であり、並盛より150円高いだけなのだが、ご飯の量がなかなかにすんごいことになっていた。
調べたところ、このお店はご飯の量が並盛で450g・大盛で600g・特盛で1kgなのだ。
CoCo壱の普通盛300gでも多いと感じる僕なので、大盛はちょっと無謀だったかもしれん。
腹八分目のときの写真がこれだ。少食の人ならこれだけで満足するくらいにまだ残っている。おいしいのに既に満腹間際なのが悔しかった。
もちろん完食した。歩くのが少しシンドいレベルであり、スパイスがいつまでも腹の中で燃えていてちょっと心地よかった。
そうそう、機会があればトッピングも試してみて。
みそ豚・みそイカ・みそチキンでそれぞれ200円なのだが、全部少しずつ追加でも200円だ。
これはその3種ミックストッピングをしたときの写真である。お行儀よく3種が交互にライスの上に並んでいる。おじさんがわざわざ大きなフライパンで炒めてくれたものだ。
結論、これがバチクソうまいです。
「みそ豚って何…??」みたいに思ったけど、このみそ味がカレーにすごく合うのよね。豚・チキン・イカともにとろけるようにやわらかい。下処理しっかりやってるのかな。単体で食べても充分にうますぎる品質だ。
ボロくて小さくて暗い店だけど、カレーを食べるのにそれ以上の環境はいらない。
ただ目の前のカレーだけを見つめ、食べた時間が最高だった。
最後の会計時ににおばちゃんは必ず「お水のお替りはよろしいですか?」って聞いてくれる。食後の水もうまい。
いつも満足・満腹でこのお店を後にすることができる。
きたなシュラン、その称号は伊達ではないな。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 小さなカレー家
- 住所: 東京都新宿区百人町1-24-10
- 料金: 牛すじカレー¥600他
- 駐車場: なし。近所のコインパーキングを使用のこと。
- 時間: 11:00~14:00(土日定休)