有田町。誰もが一度が耳にしたことのある"有田焼"で有名な町だ。
そこで造られる陶磁器は世界に誇る日本の宝。
そんな有田の町には、鳥居も燈篭も陶磁器でできた神社があるという。
うむ、さすが陶磁器の町。でも斬新すぎやしませんか?気になって気になって、もう夜しか眠れない。
2023年秋、有田の町を訪れた。
目指すは「陶山(すえやま)神社」という、陶磁器であふれる神社。"有田焼陶祖の神"とも言われ、有田焼の職人たちが崇拝する最強スポットだ。
もう僕、今後プラスチックのコップで麦茶とか飲んだらここの神からの裁きを受けるかもしれない。
青い鳥居が清々しい
もしかしたら境内に入るシーンから時系列順にご紹介した方がわかりやすいのかもしれないが、今日の僕は違う。ショートケーキはイチゴから食べたいし、フレンチはメインディッシュを先に出せと言ってしまいそうな気分だ。
だからいきなりハイライトをご紹介する。
これが陶磁器の鳥居だ!!珍しい!
…といっても、上の写真だと逆光が激しすぎてよくわからないよな。あなたも「なんとなく白地に青い模様が舞っている、実家のシーツみたいなデザインなのかな?」程度にしか認識していない旨、YAMAさんはよーくわかっているからな。
逆光を順光にするため、鳥居をくぐってから振り向いた。ほら、これで模様が際立つ。それに向こう側は青空なので絵的にも綺麗になったろう。
陶磁器の鳥居。
当然有田焼きなのかなって思っているけども、明確に有田焼だって書いてあるWebサイトがほとんど見つからず、勝手な思い込みで書いて恥ずかしい思いをしたくはないので、当ブログでは"陶磁器の鳥居"と表現したい。
1888年(明治21年)に作られた陶磁器の鳥居。2000年には国の登録有形文化財にもなった。
その後さすがに経年劣化でヒビが入っていたりと大変なことになり、2020年に修復して綺麗によみがえったのだ。
僕も修復前の写真をWebで見てみたが、すっごく綺麗になったね。有田の職人たちの腕を思い知ったぜ。
よく見ると鳥居にはいくつもの接合部分がある。
当たり前だけど鳥居1つをまんま1つの焼き物として造ることはできないので、各ピースを繋ぎ合わせたそうなのだ。それにしてもこの淡いブルーの唐草模様、美しいな。
修復前は割れていた神額も、ご覧の通りバッチリ完璧な姿となっている。『陶山社』って書いてあるのかな?
鳥居とは基本赤いものだという固定概念に一石を投じる青い鳥居。
陶磁器の町、有田のシンボルにふさわしいと心から思ったよ。
境内はまさに陶磁器の展示場
陶磁器なのは鳥居だけではないぞ。いろんなものが陶磁器なのだ。この章ではその一部をご紹介していきたい。
まずは案内板だ。こんなところから早速陶磁器だ。ちゃんとこういう文字も陶磁器に打ち込むことができるんだな。なるほどなるほど。
燈篭も複数あるが、その一部は目を奪うような綺麗な青い陶磁器製なのである。
まずはこれは拝殿に向かい階段の下にあった燈篭の写真。
アップでは撮影していないが、描かれている風景画もなかなかに趣深いのだ。スゲーな。1本自宅の庭にブッ立てたくなる。そんな庭無いけど。
こうして階段に沿って点々と陶磁器の燈篭が設置されている。
聞いたところによるとね、こうやって境内の階段下から陶磁器の品々が設置されているのは、「足腰の弱いお年寄りであっても気軽に階段下の陶磁器を見られるし、見上げれば途中の陶磁器も目に入るように」っていう配慮らしいよ。ありがたし。
鳥居の近くの燈篭も、この通り青々しい。
ちょっと前までやや曇りがちだった空も青くなり、一層色彩が際立つ。
門柱も陶磁器だ。
いろんな時代に奉納された数々の陶磁器がある。古いものは江戸時代までもさかのぼるそうだ。
ここ、まさに陶磁器展示場なんじゃないの?世界的に歴史ある焼き物を無料で見られるし、しかも神社だから神様の御利益もあるしで、最高最強のスポットじゃないですか??
これは磁器製大水瓶と呼ばれているものだ。
高さは110cmほどあり、直径も90cmある。ここいらの土でここまで大きなものを作るのってとても難しいんだって。
あと、実はこの境内には陶磁器の狛犬がいる。それも楽しみだったのだが悲しいお知らせがあるのだ。
拝殿から振り返って鳥居を眺めた図が上記である。
狛犬は本来この写真の中に納まるはずだったのだが、いないのだ。ちょうどお散歩中だったのだ。だって犬だもん。
…というのは半分冗談ではあるが、半分本当だ。
狛犬は上の赤丸の中に座っているハズであった。
しかし2023年の春ごろに修復のために旅立ち、戻ってくるのはその半年後くらいだという。(2023年11月現在、戻って来たのかな??)
ちょっと寂しい気持ちで誰もいない台座を眺めた僕なのであった。
では、次は拝殿の中に着目してみよう。
拝殿に飾られた額。普通であれば絵馬的なものがポピュラーだと思うが、ここはもちろん陶磁器だ。お皿には『陶山社』って書かれているね。
何から何まで陶磁器尽くし。
日本には無数の神社があるだろうが、ここまで陶磁器にあふれた神社は他には無いのではなかろうか。
境内を列車が通過する
最後の章では今までとはちょっとテイストの違う、この神社の特徴について述べる。
時系列としては境内に入った最初に遭遇する事項なんだけど、テイストが違うのであえて最終章で触れることとした。
これは駐車場から境内に向かっているときに撮影したものだ。
階段の上に違和感がある。それにお気付きいただけただろうか…。拡大してみよう。
黒と黄色のストライプ、踏切警報灯がある。わかりづらいが、狛犬の一緒に左右一対で佇んでいてちょっとウケる。
そうなのだ。つまりあそこには線路があり、そこを列車が走るのだ。
線路の目の前までやって来た。
マジかよ、ここ遮断機がねーぜ!自分と列車との間に境界線が無い不安感。
しかもご覧の通り、相当列車の近くまで来れてしまう。階段の一番上の段とレールとの間の距離、数10cmしか離れていないのがわかるだろうか?普通の線路だとこんなのちょっと考えにくい距離だよね。
境内側の「止まれ」ラインから線路までは、まだちょっと余裕がある。これなら安心。
…とか言っていると、警報機が鳴りだすのだ。
おぉ、ちょうど列車が来るなんてラッキーではないか。僕は階段側にてカメラを構え、動画モードをONにした。
では、階段側からの列車スレスレのド迫力映像を見てほしい。たった14秒だから見ないと損だぞ。
はいすごーい。
列車のスピードは速くはなかったが、それでも列車が巻き起こした風が頬に当たり、ドキドキしたさ。
数10分後、神社の見学を終えて帰ろうとしたとき、再びまたタイミングよく警報音が鳴り響いた。次は境内側からの撮影にチャレンジしよう
「若干間に合ってなくね?」というヤボなツッコみはさておき、とりあえず両側から撮影することができて僕は満足だ。
この線路はJR佐世保線。
かつて、この有田の町の発展を手助けしたいと考えて、神社側が鉄道を境内に通すことを許可したのだとか。
車が通らない場所って踏切の遮断機を設置する必要が無いから、こういうスリリングなシチュエーションが生まれたという。
この神社、『境内を列車が通過する神社』として一部の人たちには有名であり、TV番組「ナニコレ珍百景」にも取り上げられたことがあるそうだね。
余談だけど、踏切の近くにいる狛犬は日本一大きいの青銅製の狛犬で、高さは180cmあるよ。これも国の登録文化財。
…なんてユニークな陶山神社。
恥ずかしながら僕は1・2年前までここの存在を知らず、SNSを通じて紹介いただき今回訪れることになった。情報提供に心からの感謝を申し上げたい。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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