週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.268【群馬県】建物グニャグニャ屋根バッキバキ!そんなドライブインを僕は愛そう!!

昭和レトロなドライブインが好きだ。

 

幼い日の夕暮れ、遠くまでドライブした帰りに父親と立ち寄って、ヤクルトを買ってくれたセピア色の思い出。

いや、それは僕の脳が勝手に捏造した都合のいい思い出なんだけど、誰もがそんなシーンを思い描いてしまうほどに、ドライブインはいいもんだ。

 

そんな昭和のドライブインがどんどん消えていっている。

今日ご紹介するのも、そんな絶滅危惧種の昭和ドライブインなのだが…。

 

その外観が結構ワンパクだぞ。

刮目せよ。

 

 

「ピーパック安中」

脳の奥底で不協和音が響きそうなデザインだ。

 

 

2017年、初訪問の思い出

 

このお店のことは10年ちょい前から知っていた。

当時に旅のノウハウや行きたいところリストを手書きで記した"旅○(たびまる)"というボロ手帳にも、行きたいところの候補としてピーパック安中の名前がある。

 

妙義山を見ながら安中市

そんなこのドライブインを初めて訪問したのは、今から6年前である2017年の桜の時期であった。

ワクワクしながら「妙義山」の脇を駆け抜け、安中市にあるピーパック安中に向かった。

 

ボロボロドライブイン1

百聞は一見に如かず!!

すげぇ!!

 

グシャッとウェーブ状になったその外観は、狂おしくも美しい。

大型ブルドーザーが両側からプレスしたかのような歪みだ。

 

ボロボロドライブイン2

そしてその屋根。

凶悪なまでのギザギザは、妙義山を根城に付近の村で1000回の強奪をした山賊の棟梁の持つノコギリ刀のようだ。そんな山賊知らんけど。

 

ただ、この振り回したら相当危険なレベルのギザギザ屋根だぞ。

この屋根は、斬られると縫合がうまくいかず、傷口から腐って死に至らすのであろうな。

 

そんな屋根の下では、おじいちゃんたちが座り込んでノホホンとトークしていた。

春うららな気持ちのいい日。

おじいさんの顔にもギザキザの影が投影されていた。

 

ボロボロドライブイン3

お店の中は自販機群。 一列にズラリと並んでいる。

そして簡素なテーブルとイスのセット。

なんだこのイス。どう形容したらいいのか僕は迷っている。

 

ボロボロドライブイン4

峠の釜めしを灰皿に二次活用している様は、「さすが群馬県!」って思った。

各テーブルにズラリとこの釜の灰皿が並んでいる様子はなかなか壮観だった。

 

ボロボロドライブイン5

さて、自販機群に話を戻そう。


ひときわ目を引くのはレトロな麺類自販機である。

うむ、かつての僕はこのレトロ自販機のあるスポットを探していて、このお店の存在を知ったのだよ。

 

貼り紙がしてある。

『お客様各位 都合により しばらくの間 休ませて いただきます』

 

今はこの自販機は稼働していないのだ。

この貼り紙だけ見るとしばらくしたら再稼働しそうであるが、実は少なくとも2009年には稼働停止している。

もう復活は難しいのかもしれない。

 

ボロボロドライブイン6

この建物自体もいつまで持つか…。

窓なんてこれ、建て付けが悪いなんて言うレベルじゃねぇ。

もう一生閉まらないぜ…。

 

これが見納めとなる覚悟で、僕はピーパック安中を後にした。

 

 

2022年、スタンスは貫く

そのエクステリア

 

2022年、同じく桜の季節である。

再び僕は安中市に来ていた。5年ぶりだ。

 

あのドライブインは今…。

 

誇り高く朽ちろ1

まだあった。

相変わらずのバキバキのロックンロールなスタイルを貫いていた。

 

コロナ禍とドライブインの衰退の凄まじい逆境の中、店を畳むわけでもなく、リニューアルするわけでもなく、何も変わらぬその姿。妙義山のようにギザギザの屋根。

おぉ、貴方がロックの神様か。

 

誇り高く朽ちろ2

5年前は建物の前のベンチにおじいちゃんが座っており、画角によってはおじいちゃんが入ってしまうため、あまり大っぴらに撮影が出来なかった。

 

でも今回は誰もいない。

ゆっくりといろいろ撮影させていただこう。

芸術的な屋根も見上げつつ撮らせてもらおう。

 

誇り高く朽ちろ3

どうやらこの建物、地盤沈下で歪んだらしい。

…まぁ普通に考えてそれくらいしか思いつかないが。まさかお相撲さんが激突したわけでもあるまいし。

 

だが、いつ頃からこんなグニャグチャのバキバキのサビサビになったのか不明だ。

Webをいろいろ徘徊しても、綺麗だったころのピーパック安中が存在しないのだ。

いったいオマエ、何歳なんだよ…。いつからその風貌なんだよ…。

 

誇り高く朽ちろ4

道路沿いに建つ看板も猛烈にサビびていて、チョコレートみたいな色になってやがる。

頭頂部の「歓迎!」もホントに歓迎しているのかって感じのサビっぷりだ。

 

だが青空にスクッと立つこの看板は、むしろ誇りをもって朽ちているようにも感じる。

かっこいいのだ。

 

洗車設備あるよ1

ちょっと角度を変えて撮影したこの写真。

敷地内にはもう1つ、このドライブインの大きな特徴がある。

 

それが、写真中央に映っている洗車機だ。

ずいぶん年季が入っているようにも見えるが、まぁドライブイン本体ほど深刻ではなさそうなので大丈夫だろう。

今まさに、1台の車が飲み込まれようとしている。

 

洗車設備あるよ2

近所の人が車でブーンとやって来て気軽に洗車し、車を乾かしがてらこのドライブインでドリンクや軽食を買って広い駐車場でくつろぐ。

そんなシーンを複数回見かけた。

なんだか心温まるシーンである。

春うらら、洗車してノンビリ休憩。いいじゃないか、いいじゃないか。

 

洗車設備あるよ3

大型車もウェルカムだ。

ジェット水流で頑固な汚れも吹き飛ばせ。

 

さて、再び建物に近づこう。

 

警告文1

相変わらずガタガタの窓サッシはさておき、今回ご注目頂きたいのはステッカーの警告文等だ。

『運転者不在の無断駐車お断りします』

『無断駐車禁止』

『防犯カメラ設置店 当店は24時間ビデオ録画中です』

『お知らせ 当店において不法行為をした場合 公表致します』

『ごみの持ち込み禁止 ドッグフードの空缶すてるな 紙おむつをすてるな』

 

猛々しいメッセージが並ぶ。

こんな万年隙間風の店舗だが、セキュリティと風紀には日本一厳しいぞ。

 

警告文2

紙おむつ捨てるな!【持ち帰れ】親の顔が見てみたい

『ゴミだけ捨てるのはお断りします』

 

ドチャクソにキレ散らかしている。

紙おむつで相当嫌なことがあったに違いない…。

 

懐かしい店内に足を踏み入れた。

 

 

そのインテリア

 

前項の続きで、まずは警告ステッカー関連をご紹介していこう。

 

警告文3

窃盗犯追跡中。

窃盗の内容は事細かに、そして秒単位で記述されている。

そして後日逮捕されたことまでキチンと報告されている。

右側のステッカーでは、たばこ1箱とスナック菓子1つを盗んだ犯人、無事逮捕だ。

 

新聞を読むかのように全容が把握できた。すごい。

 

警告文4

現在進行形の事件もある。

もし僕の家が近所であれば、ここに足しげく通いたいところだ。

そのうちこのステッカーの横に、犯人逮捕の知らせが掲示されるのだから。

 

次回の展開が気になるぜ、ここの連載。

 

汎用自販機1

興奮もやや落ち着いたところで店内を見渡そう。

何も変わらない、安定の景色。横川の峠の釜めしも各テーブルに健在だ。

イスもなんだかブリンとしたビニールを被っていて愛嬌がある。

 

どこもかしこも年季が入っているが、お店の人は綺麗に清掃していることがうかがえる店内である。

 

汎用自販機2

そして普通の自販機も数多くある。

前回はレトロ自販機のみにフォーカスしてしまったが、ドリンク自販機が主なのである。

…ま、今回もドリンク自販機にはこれ以上は言及しないがね。

 

汎用自販機3

レトロな麺類自販機は相変わらず動いていない。動かざること山のごとし。

『しばらくの間…』の紙が貼られたままだ。

 

もう12年くらい稼働していないのであろう。

「しばらくの間」に世界の人間が7分の1くらい入れ替わるほどに時間が経過しているぞ。

 

汎用自販機4

今回注目したいのは汎用自販機と言われている類の、レトロ自販機である。

 

僕は麺類・トースト・ハンバーガーなどの特化型のレトロ自販機が好きな人なので、今までのドライブインでこれがあっても大々的に取り上げてはいない。

しかし麺類自販機は「しばらくの間(以下略)」だし、1回くらいこの汎用自販機を取り上げてもいいのではないかと考えた。

 

汎用自販機5

売っているのは、ゆで卵・ヤクルト・プリン・チョコレートなどだ。

冷蔵機能がついており、このケースの中に入るものであれば何でも販売できる。だから汎用自販機。

 

お金を入れたら開けたい扉の横にあるボタンを押す。

そうすると数秒だけ扉のロックが外れるのだ。

その間に扉を開けて中の商品を取り出す仕組み。

 

僕はヤクルトにしよう。120円を投入する。

 

汎用自販機6

普段あまり「ヤクルトを買おう」なんて思わない僕。

なんだかウキウキして購入できた。

些細でもピーパック安中さんの売り上げに貢献できたことが嬉しい。

 

汎用自販機7

ヤクルトは、小さい頃に飲んでいたときと同じ味がした。

ドライブインもヤクルトも、今も昔も変わらない。

 

時代は変わるし僕らは大人になるし、今後もいろんなことがあるだろう。

そんな変化に疲れたとき、きっと僕はまだここに来てヤクルトを飲むに違いない。

 

最後にもう一度言おう。

ドライブインはいいもんだ。

 

とある、ひしゃげたドライブインの物語

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: ピーパック安中
  • 住所: 群馬県安中市郷原747-4
  • 料金: ヤクルト¥120他
  • 駐車場: あり
  • 時間: 24時間営業