インスタ映えという言葉が世の中にはびこっている。
…とか言うとSNSにドップリ浸かっている方々を揶揄するようにも聞こえてしまうが、インスタ映えはいいことだと思う。
国民全員がカメラを持ち、国民全員がアーティストになれる時代だ。
そりゃ僕だってできることならいい写真を撮りたい。
インスタ映えって言葉ができる前からいい写真を撮りたいと思っていたし、逆に世の中にカメラが登場してから今日に至るまで「いい写真を撮りたくない」と思った人は稀有な存在であろう。
旅をしていると風景写真を撮りたくなる。
しかし、そんな風景写真であっても人物が入ることで各段に映えるスポットもある。
そんな場所に1人で行ってしまったら、一体どのような悲劇が起こるのだろうか…。
僕はそれを検証する。
候補地は「父母ヶ浜」だ。
アイディール
まずは父母ヶ浜についてご説明したい。
父母ヶ浜は、"日本のウユニ塩湖"と言われているスポットだ。
ってことは、まずは原点である「ウユニ塩湖」を知っておいた方がいいかもしれない。
僕はウユニ塩湖には行ったことは無いのだが、ボリビアにある平原だ。
世界で一番平らな平原らしい。
雨季、その大平原に雨が溜まると、わずかな期間だが超巨大な水たまりが出現する。
波風が立つこともなく、天空を映す壮大な鏡が形成されるというわけだ。
はい、ここまでがウユニ塩湖。
次は、そのウユニ塩湖を彷彿させるという父母ヶ浜だ。
はい、まずはお手本の写真をWeb検索から持ってきた。
なるほどなるほど、ウユニ塩湖ほどの世界観の広がりはないものの、それでも広い鏡面が美しい。
2017年ごろからインスタ映えのスポットとして有名になったそうだ。
確かにこんな写真が撮れたらテンション上がるだろうな。
さぁ、僕はこんな写真を撮れるのだろうか?
行ってみようぜ、父母ヶ浜!
僕は「瀬戸大橋」を渡り、四国の香川県に上陸した。
アーリーモーニング
はい、僕がやって来た。
父母ヶ浜近辺までやってきた。
朝の6:30のことだった。瀬戸大橋から大体1時間だ。
実はゴールデンウィークの真っ只中である。
コロナも少し落ち着いており、3年ぶりとなる行動規制のないゴールデンウィークで、世の中は行楽客で溢れている。祭りだ。
つまり、日中ともなればここ近辺は渋滞・駐車場はパンク・浜辺は人だらけ・僕は一層孤独を感じる…と、いろいろとマズくなることが予想される。
渋滞回避と精神ダメージ軽減のため、早朝にやって来たのだ。
なるほど、YAMAはとても賢いね。
駐車場についた。
驚くほどにガラガラでどこに停めたらいいのか迷うほどの広大なフィールドだった。
さすが早朝。
とりあえず真ん中に停めた。
これだけで気分は爽快だった。
上の写真、実際は駐車場と海との間にバリケードがあるが、一見するとそのまま海に繋がっていそうな気もする。
世界は広い。そう感じられる朝。
見る限り、浜辺にも観光客はパラパラしかいない。
早速僕は浜辺に突撃した。
駐車場からはわずか数10秒だ。
さて、全容はこんな感じだ。
一見すると普通のビーチだ。
遠くに海があるのはわかるが、冒頭でご紹介したような神秘的な写真はどこでどうすれば撮れるのか、ちょっとわからないかもしれない。
しかし、着目すべきはこの浜辺。
海水が浜辺に残って水溜まりになっているのがおわかりだろうか。
これ1つ1つが、小さなウユニ塩湖だ。
これをいかに壮大に見えるように撮影するかが、ここでのテクニックだ。
求められる要素は以下の通りだ。
- 水鏡のように景色を反射させる
- 水溜まりの幅を、なるべく感じさせない
- 水溜まりの向こう側に、なるべく陸地を感じさせない
これを全て満たす撮影は、水溜まりギリギリまで接近し、そしたら水面ギリギリにカメラを構えて撮影する方法だ。
ちょっと近づき、ちょっとしゃがんでみた。
周囲のみんなも、水溜まりの縁のいたるところで変な格好でしゃがんで撮影している。
傍目から見るとなかなか愉快だ。
しかし少しコツがいるな。
そして、干潮と満潮のタイミング次第ではナイスなロケーションがなくなるし、1人で孤独にガンバっているのだが少し人目が気になるな。
でもせっかくなので、できる限り頑張ってみよう。
リフレクション
いいかい?
ここからは悪い例もいっぱい載せるから、ぜひ反面教師にしてほしいな。
水を怖がって、水溜まりの少し手前でしゃがんでしまった。
ほら、新品のスニーカーを汚すと、これ帰宅してからスゲー怒られるのよ。
だから靴が汚れることを懸念したのだ。
しかし「浜辺における小石の含有率」みたいな写真になってしまい、全然インスタ映えしない。大失敗。
じゃあせめて小石の少ないところで撮影しようかって思った。
でもそういう問題じゃないことに気付いた。
陸地はジャマなのだ。
ただ、手前の砂をないものとして考えれば、奥の方の水面の反射はなかなか綺麗かもしれない。
水溜まりに雲が映ってステキだ。
水だ。水がたくさんあるゾーンを目指そう。
うむー…、水が多すぎ&深すぎだと、さざ波が立っちゃうのかもしれないね。
リフレクションにならずにただ水溜まりを撮影した人みたいになった。
そして、気付いたんだけども浜辺だけでいい写真がなかなか生まれない。
冒頭の父母ヶ浜のWeb検索結果を思い出してほしい。
人間がいるのだ。
しかも何か小物を手にしたり躍動感のあるポーズをすることで、リフレクションした際の絵によりインパクトを与えているのだ。
じゃあ1人で来ている僕は一体どうすればよいのかと。
悩んだ。
この快晴の空に似つかわしくないくらいに悩んだ。
1人ではいい写真が撮れない、しかも"父母ヶ浜"なんていうファミリー感を前面に押し出した名前にしやがって、1人旅の人間をないがしろにしやがって…って、ちょっとやさぐれたりもした。
何か高さのあるものを設置すれば、人間代わりになるかな…。
一度車に戻って、車内を捜索してみた。
高さを出せそうなものは、ビニール傘くらいだった。
これはあまりに貧相だ。悲しみ。
これどうかな?
300円ショップのランタン。車中泊で大活躍。
高さは全然ないけど、それでも車内にあり地面に置いて濡れてもそこそこOKなものの中では大きい方だ。
浜辺にランタン。
なんかディストピア感のある、芸術的な絵にならない??
うん、なんかチゲーな。
いいか悪いかとかそういう問題ではなく、ウユニ感がない。
水溜まりの底が透けてしまっているからだろうか?手前側のリフレクションが甘い。
しかもランタンは強烈にずん胴なので、真っすぐに置くと鏡面反射と融合してただの長い柱になる。なんだこれ。
かといって斜めに設置してもイマイチだ。
まずは後々から見返すと位置取りがダメ。
そして所詮はプラスチックのランタン。砂浜に斜めに刺そうとしても軽すぎてしっかり刺さらずに、すぐにコテッと倒れる。
それをいちいち立て直す。
周囲から見ると結構変な人だ、僕。
周囲には1人だけ、僕と同じように1人で頑張ってしゃがみこんでいる女性がいた。
「お互い被写体になりましょう」なんて提案をできるほどの強いハートがあればよいが、下手をすれば不審者なのでそれは慎んだ。
なんだかんだで、そこいらの人をご迷惑にならない程度に写真に収めてしまうのが一番無難と気付いた次第で。
自分としては30点ぐらいの評価だが、それでもこの写真が一番成功だと感じた次第で。
そんなこんなで、もう僕はしゃがみ込むのをやめました。
アゲイン・サムデイ
父母ヶ浜の撮影タイミングにはいくつかコツがある。
ここまでにも触れた点もあるが、以下の通りだ。
- 干潮時
- 夕暮れ時
- 風のない日
つまり、水溜まりがいっぱいあってチャンスが生まれ、そして夕暮れ時の太陽が水面の反射をより強め、そして風のないことで水に風景がしっかり映り込む。
現地に掲示してあった、撮影のコツを掲載する。
ここでも夕方を推奨している。まぁゴールデンウィークの夕方では、調整してここに来たところで人が多すぎて駐車すらできなかっただろうが。
でも、いいのよ。
僕は芸術家ではないから。
「ちょっといい写真を撮ろうかな」って、できる範囲で頑張ってみる。
そんなアクティビティが旅の楽しさなのよ。
結果が成功とか失敗とか、そういうのはあんまり大事ではない。
実際に自分でやって、感じて…。それがどれだけ大事か。
コロナ禍で思うように外出できない日々が長かったからこそ、それを痛感している。
浜辺の風紋も綺麗だったしな。
多くの人が踏みしめる前の、この美しい紋様を見れたのも良かった。
早起きは三文の徳だ。
そして旅は課題が残るから楽しい。
またいつの日か、こんどか誰かほかの人と一緒にここに来る日を楽しみにしよう。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報