旅行に行ったら、その土地の食べ物を味わうといい。
その土地で獲れたものを食べられると最高にハッピーではあるが、「その土地にしかないメニュー」っていうのも面白い。
同じ日本だけど、ちょっとだけ文化が違うのだ。
あなたの住んでいる土地と、旅行先の土地とでは、少しだけ常識が違うのだ。
それがとても面白い。
旅先の駅だとか、旅先のスーパーを覗いてみると、"当たり前のように"それを使っている人がいる。
そりゃそうだ。それがその人の日常なのだから。
それを見て、「あぁ、自分は違う世界に来たのだな」と感じる。
そういうの、たまらくなく好き。
さて、今回は福井県の武生(たけふ)市とそのご近所だけで、"当たり前"と言われているグルメをご紹介したい。
待ってろ、ボルガライス。
総社大神宮
福井県の海岸線沿いを走っていた。
僕は「しおかぜライン」と名付けられた、この海沿いの道のドライブが好きであった。
しかし、途中で「この絶景にかまけている人生ではダメだ。何か新しいことをしなければ。」と思い立ち、急遽内陸部に向けてハンドルを切ったのだ。
ランチにしよう。
今までは「福井県は海が多いから、海鮮系を食べたい」みたいに単純な思考しか持っていなかった。
もちろん福井県はリアス式海岸の特性から豊富な魚介が獲れる。当然うまい。
毎回海鮮でもいいけど、ときには違う冒険も必要だ。
地元の人は毎日海の幸を食べているわけでもないだろうから、他にもきっとおいしいものはあるのだ。
『武生に来たらボルガライス』
今回のお目当てはこれだ。
ボルガライス。たぶん福井県外の人はあまりなじみのないネーミングだろうし、福井県民であっても武生市以外の人だと知名度はガクッと落ちるのではないかと考える。
だからこそ、武生でこれを食べてみたい。
というより、漫画家「池上遼一さん」が描いた、このポスターの顔の濃い人が気になる。
2021年現在から見ると、ここ数年は「○○を擬人化してみた」みたいな企画が多い世の中になっていると感じる。
ボルガライスを擬人化するとこんな感じの、顔の濃い人になるのだろうか。
だとするなら、僕もちょっと顔濃いめになるのだろう。それもいいかもしれない。
『ボルガライスが気になる方は… [武生に来たらボルガライス][検索]』
ポスターの標語と全く同じ内容を検索ウィンドウの中にも記載する、丁寧なお仕事。
ボルガライスも気になるが、今この瞬間はこの顔の濃い人の方が気になる。
だけどもやっぱり気にしなければならないのは、ボルガライスの方だ。
「総社大神宮」というところに辿り着いた。
ボルガライスを提供している「ヨコガワ分店」を目指してきたら、なぜか神社に到着したのだ。
ま、冷静に見渡したら神社の参道みたいなところにヨコガワ分店はあったんだけど。
お店は11:30~の営業。
しかし今は11:20。なので神社でもお参りしておこう。ヒマだし時間潰しだ。
"総社"というのは、「そのエリアの神様がここに全員集結する」っていうスポットなのだそうだ。
大化の改新とか勃発した今から1400年くらい前って、都道府県とかの概念はなく"国"っていう自治体が全国にあったんだけど、その国ごとの神様をまとめて祀っちゃうというありがたい神社。
だから「ボルガライスの店が開店するまでヒマだから時間潰しのためにお参りしよう」だなんて人はバチ当たりかもしれないからな。誰だよ、そういうことするの。
ヨコガワ分店
開店と同時に入ろう。
ボルガライス食べよう。
ここで、ボルガライスとは何なのかを説明しよう。
ボルガライスっていうのは、オムライスの上にトンカツを乗せてデミグラスソースをかけたもの。
最初に聞いたときは「根室のエスカロップに似ているな」って思ったけど、エスカロップにはオムライスの"オム"要素がない。
ボルガライスにはさらに卵が追加されているのだ。
ボルガライスは、「オムライス+トンカツ+デミグラスソース」なのだ。
なんというゴキゲンなコラボレーションよ。
洋食界の大化の改新かなって思った。
そりゃ日本海沿いからワクワクしながら内陸まで走ってくる意味もあるってものですよ。
ヨコガワ分店さん。
1969年創業だというからそこそこの老舗である。
…が、リフォームしているのかすごいかわいい外観。看板の文字など、大変エモい。
ところで、「"分店"とついているということは本店もあるのか?」 というところが気になるが、実は本店は無い。
かつては存在していたのだが、とっくに閉店してしまったのだそうだ。
店内は、開店直後なので僕1人。
カウンター席が厨房を取り囲んでいる。カウンター席のみのお店。カッコイイ。
ちなみに店内も厨房も恐ろしくピッカピカ。
料理は親子2代で実施しているそうだ。
僕がボルガライスをオーダーすると、オーナーさんと息子さんと思われる方との連携プレーが始まる。
カウンター越しに調理風景を見れていて楽しい。
オーダーを受けてから、カツを揚げ、そしてチキンライスを丁寧に炒める。
そしてフライパンの上で玉子にチキンライスをサッと包むのだ。
最後に、長年つぎ足しながら使っているという秘伝のデミグラスソースをかけてできあがり。
うん、このビジュアルでうまくないハズがない。
トンカツさんだってホラ、思わずオムライスにハグしているじゃないか。
あ、うまい。
ひとくち食べて、そう思った。
トンカツは揚げたてサクサク。
そんなにボリューミーではなく、やや薄めでサクッとした食感。
デミグラスソースもしつこくなく、ほどよい酸味なので食べ疲れはしない感じ。
玉子も生地が薄くて食べやすい。
オムライス・トンカツ・デミグラスソース。
一見バラバラのようにも見えるこれらのパーツだが、1つ1つがやや控えめであるからこそ、これらのコラボレーションが綺麗に完成しているように感じた。
結果、ペロリと完食だ。
満足感がほとばしる。
ごちそうさま。
お店の人の接客もとても丁寧で、好感の持てるお店だった。
人生初のボルガライス、100点。
ボルガライスとは
ボルガライスっていうのは、オムライスの上にトンカツを乗せてデミグラスソースをかけたもの。
それは前項で書いた。
しかし、どこでどう生まれたメニューなのだろうか?
改めて、冒頭で出てきた『ボルガライスが気になる方は… [武生に来たらボルガライス][検索]』を実施してみよう。
すると、「日本ボルガラー協会公式ホームページ」に行きつく。
ボルガラー…。
深淵を感じさせる単語なので、ここはスルーしておこう。
ボルガライスの起源について、このWebサイトに記載があるので、そのまま引用させていただく。
【名前の由来その1 ロシア料理説】
ロシアにたまごを使った「ボルガ」という料理があり、同じたまごを使った料理ということで「ボルガライス」とした。
【名前の由来その2 イタリア地方説】
イタリアのボルガーナという地方で食べられていた料理に似ているということがから地方名をとり「ボルガライス」とした。
【名前の由来その3 ボルガ川連想説】
ボルガライスのオムライスの部分がロシアのボルガ川でそこをわたるイカダがトンカツという見た目から連想して「ボルガライス」とした。
そのほかにもボストンライス説、ロシアの車「ボルガ」説、ボルガ店名説など様々な説が飛び交っており、そのためかYouTubeには、ボルガライスに関するわけのわからない動画までアップされている!
こんな感じで、ボルガライスの由来はとんでもなくフワフワとしているのだ。
あと、末尾の『YouTubeには、ボルガライスに関するわけのわからない動画までアップされている!』で噴いた。
由来も漠然としたボルガライスだが、そこからの派生もまた自由だ。
どうやらドリア風ボルガライス、うどんの上に具材を乗せる鍋ボルガ、ホットドッグにするパターンや押し寿司にするパターンもあるらしい。
概念ゆるゆるで素晴らしい。
もともと、「コレとコレを一緒にしたらおいしいのでは?」という理論から誕生したであろうボルガライス。
誕生後の進化の可能性もまた、無限大なのであろう。
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2021年8月現在開催されている東京オリンピックだって、きっとそうだ。
いろんな国・いろんな文化の集結、そしてそこからの進化。
こうやって世界は、次の時代を切り開いていくのだろう。
コロナに負けず、躍進してほしい。
…そして僕も、次の時代を切り開こう。
ここしばらく更新頻度に少し間隔があいていたのは、引っ越しをするためだったのだ。
この記事も、ダンボールの山の中で書いた。
もう間もなく搬出の時間だ。
僕自身の次の時代、楽しみだな。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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