モアイ。
この3文字には、人類が未だに到達できない無限の神秘と、それに対する飽くなき探求心が込められていると判断した。
僕ら人類はまだまだ、モアイのことを知らなすぎる。
…いや、そんな戯れ言はどうでもいい。
あなたがモアイと思いっきり触れ合いたいなら、うってつけのスポットがあるからご紹介したいだけだ。
サンメッセ日南へ
僕は、意を決してウインカーを右に出した。
「サンメッセ日南」の存在はずいぶん前から知っている。
日本1周目から、すぐ脇をドライブで通過していて、チラリと見えるモアイに心ときめいていた。
しかしな、実際に行ってみるとなると、そのハードルは途端に高くなる。
ましてや1人旅で、有料テーマパークに突撃するとなると、そりゃ相当なモアイ好きなのか、それともB級スポットマニアなのか。
ええい、ままよ!!
現実世界で聞いたことのないフレーズを脳内で叫ぶとともに、僕は愛車HUMMER_H3のウインカーを右に出した。
走りなれた海沿いの国道220号から、モアイの住む未知の世界へと、世界の軸が切り替わる。
あぁ、そうともさ。
僕はモアイ好きであり、B級スポットマニアでもあるのだ。
自分に嘘は、もうつけない。
日本5周目においてようやく、自分の殻を脱ぎ捨てようとしている僕がいる。
なんか奇跡的に僕の後ろに車が5台くらい続いてサンメッセのゲートをくぐることになった。
みんな、きっと僕と同じ気持ちだったのだ。
その一歩がなかなか踏み出せない。
だからこそ、誰かが入るとみんなそれに続くのだろう。
そんで入場料金は高速道路の料金所ゲートみたいな形式のところで払うんだけど、僕は左ハンドルだから、もちろんすぐに払えずにモタモタする。
車幅が広いので、左の座席から直接支払いもできない。
こういうときは料金所からおじさんに出てきてもらうか、自分が車から降りて料金所に行くかの2択。
もちろん、軽く後ろが渋滞。
大変に申し訳ない気持ちになった。
ちなみに運転席と助手席はこんな感じ。
結構な幅。2m近くある。
駐車場も混雑していることを予想。
料金所からしばらく進んだところの駐車場が便利だそうだが、もっと手前にあるガラガラの駐車場の方が良いと判断。
料金所のおじさんに聞いてみた。
YAMA:「このすぐ脇にある駐車場のほうが無難ですかね?」
おじさん:「いや、もっと先の駐車場も空きがあるので、そちらへどうぞ」
それに従ったら、もう駐車場への道が擦れ違いできないくらい狭いし、対向車来るしで大変。
ようやく駐車場に辿り着いたら、満車ギリギリでまた大変。
狭いスペースに何度か切り返してギリギリで停めた。
あぁー…、こういうの嫌だから、多少不便でもさっきの駐車場に停めたかったのにー。
そんなこんなで、来たぞ!
モアイ・ワールド!!
モアイの楽園
オール・ブラウンの急勾配!
ここがサンメッセ日南だ!
もっとも、訪れたのは年が明けてすぐのこと。真冬だ。
たぶんだけど、俳句で詠むならモアイの季語って夏だ。
冬は真逆である。モアイの本来のふるさとである「イースター島」っぽさはないかもしれないが、しょうがない。
まずは、一番メインとなるスポットの写真を紹介しよう。
7体のモアイ。
下は人工芝で、常緑だった。冬でも無敵な無機質な緑だった。
バックの青空に映え、「モアイ好きの聖地だな、ここは。フムフム。」と感嘆した。
彫が深い、イケメンたち。
南国の強い日差しが、顔の凹凸を際立たせている。
ノッペリ顔の日本人である僕は、こんな顔に憧れるぜ。
…とまぁ、モアイを吟味したわけだが、正直ここで僕の目的は大体果たした。
700円という入園料を払っておいてアレだが、この写真を撮ることが僕の目的だったのだ。
もうランチの時間だし、腹減ったし、あとは適当に流す程度でいいかなって思ってしまっている僕がいる。
とりあえず、見上げる斜面の頂上にある、あそこの展望台方面に行こうか。
「天空の塔」というらしい。
塔っぽく見えないけど、まぁいいや。行ってみよう。
途中でも、モアイに出会った。
1人斜面で日光浴していた。
野生だ。野生のモアイだ。
どうやらここサンメッセ日南には、全部で10体のモアイがいるらしい。
さっき見た通り海を背に綺麗に並んでいるのが7体。
その他に、このように自由奔放に過ごしているのが3体。
ここにも野生種。
寝ているのかなって思ったら、どちらともつかない斜め45度をキープしていた。
故郷イースター島にて、引き起こされる前の状態だったころを思い出しているのだろうか。
ここ、敷地は広いものの、芝生と散策路が大半を占めているな。
ゴーカートみたいのを有料で借りて園内を乗れるみたい。
ファミリーは、それでこの茶色い世界をブンブン「マッド・マックス」みたいなテンションで走り回っている。
僕は、1人で乗っても寂しいだけなのでパス。
あ、ブランコある。
モアイを見ながら、この丘でブランコを漕げるのか。
「モアイの見えるが丘公園」みたいなネーミングをできそう。
カップルでブランコ漕いで、いずれ「デートでモアイ見ながらブランコ漕いだね、ウフフ」とか言えれば美しいのかもしれないが、僕はロンリーなのでパス。
ちなみにいまさら書くまでもないかもしれないが、人口はファミリーやカップルが大半を占める。
1人で来ているのなんて、僕くらいである。クソ。
もう少し登って振り返る。
僕はモアイたちを見ているが、モアイたちも僕を見ている。
ホント、ここモアイと展望台と遊歩道しかないな。
逆に言うと、モアイに100%集中できる。
雑味の一切ない、モアイ・ワールドだ。
あと、海すごい綺麗。
日南の海って、僕は日本の中でも5本の指に入るくらいに好き。
日南の海は、モアイによく合う。
これは紛れもない真実であると悟った。
天空の塔のすぐ近くまで来た。
真冬だけども、この斜面を登るのは結構な運動だ。
そしたら、目がチッカチッカするようなカラフルな、おっさん群。
なんだこのスタイリッシュな7人のおっさんは。
これは「モアイと海を見るヴォワイアン」という芸術作品らしい。
調べたところ、ヴォワイアンとはフランス語で「見る人」という意味なのだそうだ。
「見る」部分が被っている気もするが、O型なので細かいことは気にしない。
モアイとおっさんの28の瞳が交錯するポイントを見つけて入りこみ、不可視のエナジーを浴び続けた。
天空の塔からも、モアイと海と斜面が見えた。
見えるものはおおむねどこも同じで、その角度が違う。
そして再び斜面の中腹。
「ふれあい牧場」というスポットが唐突にあった。
ロバ・牛・ヤギなどの牧場系の動物がいる。
まぁ写真の通り、ロバは僕にふれあおうとはさらさら思っていないらしい。
大丈夫、どこまでも僕は一人旅。
「種田山頭火」と同様、「咳をしても一人」。
敷地内にはレストランもあったが、ちょっと食指は動かなかった。
どっか別の場所で海鮮でも食べようかな。
モアイに別れを告げ、駐車場へと戻る。
長年気になっていたスポット。
個人的に一生に1回でいいかなって感じた。
しかしこれは「来なければよかった」と思ったがゆえの表現ではない。
一生に1回の貴重な経験にとどめておきたいと思ったからだ。
車に乗り込み、またまたメッチャ狭い駐車場と園内通路をギリギリで抜けて、僕は国道220号の南下を再開した。
なぜモアイはそこに立つ
なんで宮崎県の「日南海岸」にモアイが立っていたのか。
奇をてらったB級スポットだったのだろうか。
モアイ設置に至る経緯は、サンメッセ日南のWebサイトに詳しく書かれている。
要約してご説明しよう。
それは昭和の終わりごろのこと。
イースター島のモアイは内乱とか「チリ地震」の影響で倒され、見るも無残。
貴重な遺跡なのに。
残念がった四国のクレーンメーカーの人が、「このクレーンでモアイを起こす」と立ち上がり、いろいろ頑張ってモアイは修復された。
たぶんこの功績もあって、モアイは世界遺産に登録されたのだ。
イースター島の長老会は、これに感謝して世界で唯一、「日本だけモアイを復刻していいよ」って許可を出した。
サラッと書いたけど、この長老会の許可ってマジですごいことなのよ。
※たぶん、いつか宮城県の南三陸町のモアイのところで、また同じような話をすると思うが。
無事に長老会から許可を取れたことで、「日南海岸のあそこって、モアイに似合いそうじゃない?」ってなり、サンメッセ日南ができたのだ。
ヘンテコなスポットだと思われるかもしれないが、あれは正式なモアイだ。
正式なモアイは、イースター島と日本でしか見れない、メッチャ貴重なものなんだ。
それを数100円で堪能できたのだから、すごくありがたい話だ。
モアイマニアにとっては、感涙もののスポットだと思う。
もちろんマニアじゃなくっても、なんか面白い。なんか自慢できる。
そんなユニークなスポットだ。
最後に、2018年秋に交付開始された、宮崎県の「地方版図柄入りナンバープレート」をご紹介する。
おわかりだろうか?
一番左端に、7体のモアイがいることを。
もはやモアイは宮崎の象徴の1つである。
バッチリ市民権を得たと、これで僕は確信した。
イースター島と日本の友好の架け橋となっている、宮崎県のサンメッセ日南に今後も幸あれ!
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: サンメッセ日南
- 住所: 宮崎県日南市宮浦2650
- 料金: 大人800円(2020年現在)
- 駐車場: あり
- 時間: 9:30~17:00