昨年夏、衝撃のニュースが日本を駆け巡った。
「東海大学自然史博物館」・「東海大学海洋科学博物館」という隣り合う2つの博物館が、施設の老朽化などのために2023年3月末で閉館すると宣言したのだ。
非常にショックであった。
つい先日の2023年2月10日。
東海大学海洋科学博物館の方だけは、事前完全予約制ではあるが、2023年4月以降も入場者を受け入れると発表された。
みんなが「残念だー」・「続けてくれー!」と声をあげたからである。
海洋科学博物館は救われた。
ただ、悲しいかな自然史博物館は予定通り歴史に幕を閉じることとなった。
光と闇。
共に歩んできた2者の運命は、ここで大きく分かれてしまうのだ。
では残念ながら閉館となる東海大学自然史博物館について僕の訪問記をご紹介しよう。
閉館宣言と、焦る僕
導入文と被るが、今一度お聞きいただきたい。
2022年6月1日のことであった。
東海大学海洋科学博物館と東海大学自然史博物館が2023年3月31日をもって、一般公開を終了すると発表された。
海洋科学博物館は1970年オープン、自然史博物館は1981年オープン。
随分永らく営業を続け、特に海洋科学博物館(つまり水族館)の水槽が老朽化してきたことが要因だ。
2023年度以降どうなるのかというと、いきなり建物を解体するとかではなく、大学の研究施設としての活用は続ける方針だと発表された。
これはヤベーな。
僕もかつて海洋博物館・自然史博物館ともに行ったことがある。
とても楽しかった。
その施設が無くなってしまうのはとても残念だ。
最後にもう一度行きたい。
2023年になったら最後の駆け込みの人が激増しそうなので、夏のうちに行こう。
そう考えた僕は、夏のうちに海洋科学博物館・自然史博物館共に訪問する企画を立てた。
学生時代の仲間であり、日本1周目から5周目くらいまでよくドライブした仲間に声を掛けた。
ここ数年、特にコロナ禍になってからは遊んでいなかったので、とても懐かしい雰囲気の中、静岡県まで車を走らせた。
施設の前にケティオサウルスのオブジェがいた。
首の長さが実際よりもやや短めのような気もするが、壊れやすいデリケートなオブジェなのでリアルを追求しなくってもいいかと思った。
ふと僕は回顧する。
これ、以前はもっとデフォルメの効いたデザインだったし、もう1体いたよなぁと。
はい、過去のフォルダから写真を持ってきた。9年くらい前のものだ。
急に親しみやすいデザインになった。
特に右側。なんだオマエは。もしかしてティラノサウルスのつもりか?
もはや失笑しか生み出さないデザイン。好きすぎる。
あと、当時は敷地内にでっかい船があったよね。
海洋調査実習船「東海大学丸Ⅱ世」だ。
調べたら2016年の年末に老朽化に伴い解体されたそうだ。お疲れ様。
ところでこの記事、最新の自然史博物館をご紹介するのが目的ではないので、写真は多少新旧が入り混じる。ご容赦いただきたい。
建物内に入ると、まずは大地に埋もれたトリケラトプスの頭が出迎えてくれる。
少年の心を持つ僕は、もうこれだけでハートを居抜かれるってヤツだ。
いずれ自分の家を持つようになったら、庭にこれを造りたいなぁって思った。
そいて受付を通り、「恐竜の世界へ」と書かれた向こうのエスカレーターに乗る。
なんだか暗い空間を登るエスカレーターの横に、青いネオンが揺らめく不思議なテイスト。
よーし、盛り上がってまいりました!
恐竜時代にタイムスリップ
エスカレーターの辿り着いた先は3階だ。
どうやらここから展示を見ながら1階に戻っていくスタイルらしい。
まずはスクトサウルスの全身骨格がお出迎えしてくれた。
まぁでも基本は35億年前の生命の誕生から現代に向かって歴史を追いかける形式なので、小さな魚や植物や貝の化石が多かった。
スクトサウルスはそういうやや地味目なコーナーの目玉キャラ的な感じで、ちょっと歴史を無視して超古代エリアに足を踏み入れていた。
その後ろに着いてきているのは、ディメトロドンだ。
背びれのようなものが逆立っているのが特徴的なヤツ。
骨格を見るとすごいな。なぜゆえこんな進化をしちまったのだろう…。
さぁさぁ次行くぞ。
展示品を細かく紹介していたら、マジにこの記事だけで写真100枚超えるし執筆に3年かかるからな。
では、お待ちかねの恐竜全盛期エリアだ。
大展示室!
ここでは三畳紀あたりの恐竜を展示しているそうだ。
ダイナミックだなぁ。これ男の子みんな好きなヤツだ。
ひときわ大きく、中央に構えているのはディプロドクス。
全長26mの巨大な骨格である。踏みつぶされたら死あるのみだ。
真下に入って見上げると、肋骨がなんとも言えない広がりを見せていた。
デカといえばデカいけど、これで10~20tもあるマッチョな巨体を支えられたのだろうか。骨ってすごい。
ディプロドクスの斜め後ろにいるのは、ステゴサウルスだ。
背中に鉄板のような平たい骨をいくつも持っているのが特徴だね。
あ、ここで1つ豆知識なんだけど、実は「ゴジラ」のモデルってこのステゴサウルスなのだ。
パッと見では結構シルエットが違うけど、2本足で直立したステゴサウルスをイメージしているみたい。
そういえばゴジラにも背中に突起がたくさんある。
それがわずかに残るステゴサウルスの痕跡なのだろう。
みんな大好き、トリケラトプスもここにいるぞ。
草食恐竜でありながら3本の角を持ち、いざとなれば肉食恐竜とも闘えるだけのウェポンを備えた、魅力あふれる恐竜だ。
映画「ジュラシックパーク」の第1作では、大人気恐竜なのに病気でグッタリした1体しか登場しなくって、ちょっとショボンとしたよね。
もうちょっと日の目を当ててほしかった。
そしてタルボサウルス!
正直こういう肉食恐竜系はどれを見てもまずは「ティラノサウルスかな?」って思ってしまうし、タルボサウルスってここ以外ではお目にかかったことがない恐竜だけど。
それでもかっこいい。
説明板を見たところ、体調12m、体重5t。
ティラノサウルスと同じく白亜紀後期の肉食恐竜だが、ティラノサウルスが北アメリカにいたのに対し、コイツはモンゴルとかに生息していたそうだ。
…というより、1つの種を現わさずに「ティラノサウルス科」というさらに大きなくくりであれば、タルボサウルスもここに入る。
それに、ティラノサウルス科の中ではかなり巨大なクラスの恐竜らしい。
プロバクトロサウルス。
恐竜の名前って、ものによっては舌を3回くらい噛むものも多いけど、これは1回くらい噛めば発音できそうだ。
草食のカモノハシ竜の祖先にあたる。あの馬面が特徴的な恐竜の元祖ね、なるほど。
これもモンゴル出身。
天井にはプテラノドンが飛んでいた。
飛ぶために極限まで骨組を軽くしているので、骨格だけだととっても貧相。
この貧相な骨格に「空を飛ぶ」という夢をギュッと詰めている。
恐竜大ホールはここまでだ。
ちょっと紹介しきれなかった恐竜もいて申し訳ないが、実際の僕は当然全部見た。
では次に行こう。
そして哺乳類が栄える
階段で2階に降りてきた。
あ、まだ恐竜いた。プレシオサウルスだ。
時代は進むと思ったが、2階の最初のコーナー名は「中生代の海」だった。
さっきの3階大ホールは恐竜時代の陸地だったが、2階の最初は恐竜時代の海だ。
とはいえ、インパクトのある恐竜の全身骨格は冒頭のプレシオサウルスだけだ。
その他はアンモナイトだとか三葉虫・サンゴ・カニなどの小動物の化石がメインである。
…とはいってもアンモナイトデカかったけどな!
上の写真の左端にある巨大アンモナイトの化石は触ることもできる。
ちょっと実際に海では遭遇したくないほどの巨大さだ。
出ましたカブトガニ!
21世紀でも元気な、生きる化石だ。僕もコイツは大好きなのである。
表面のツルッとした造形美を楽しむも良し…。
裏っ返して足がウジャウジャついた部分を眺めて背筋を「ゾクッ」とさせるも良しだ。
キモかっこいい!キモかっこいいよ、カブトガニ!
君は、キモいまま進化せずにずーっとそのままでいてくれていいんだよ。
ゴンフォテリウムだ!ゾウさんの祖先!
2000万年くらい前のゾウさんなのである。
まだ「お鼻が長いのね」って程ではなく、下あごとキバと鼻が同じくらいの位置で長さを競い合っている。
イメージしやすいよう、ゴンフォテリウムの説明板も上記に掲載しておく。
このゾウとかサイとかカバ系の進化は僕個人的に好きで、いろいろ写真を撮ったのだが多くなってしまうので泣く泣く割愛することにする。
マンモス!
哺乳類ゾーンでひときわ目を引くのはケナガマンモスの全身骨格だ。
なぜかいい子に「おすわり」しているが、きっと立ち上がったら天井を突き破ってしまう高さだからだろう。
この上の3階、恐竜さんたちいるから天井壊してはダメだよね。
このキバの長さとカールっぷりが意味不明。ゆえにクール。
マンモスは、僕らのロマンを具現化した動物なんじゃないかな。そう思ってしまう。
その横にはオオツノジカだ。
角の広がりは2.5mもある。常軌を逸している。
狭い道とか通るのにすっごいジャマじゃないかな。だから滅んだのかな。
このオオツノジカの生まれ変わりが、明治時代の陸軍中将の「長岡外史さん」だと信じている。
オオツノジカの角は、長岡中将のプロペラ髭に通じる。
時代は流れ、ついに人間が人間らしく進化していくゾーンだ。
サルの脳味噌がどんどん大きくなり、直立姿勢になり、人間となった。
脳味噌の重さとか書いてある。
僕の脳味噌のサイズはちゃんと現代人に到達できたのだろうか?
『あなたの顔は祖先に似ていますか?』と書いてある。
その中に浮かび上がっているのはネアンデルタール人のホログラムだ。
ネアンデルタール人と顔が同一だとしたら、それって進化中じゃない?
ちょっとそれヤバいんじゃない??
自分の顔をネアンデルタール人に重ねて写真を撮れるようになっている。
なんかズレた。
でも、僕はネアンデルタール人よりはもう1歩くらい進化してそうだとわかった。
1768年に人間によって滅ぼされた、ステラーカイギュウの骨格がある。
とってもおとなしいし逃げ足も遅いし、傷ついた仲間がいると見捨てられないという社会性を持っていた動物。
なので船乗りが食糧確保のために1匹傷つけると助けるために群がってくるから一網打尽にできた。
そんなこんなで発見からわずか27年で乱獲されつくして絶滅した、悲劇の動物だね。
2階が終わり、1階に降りてきた。
時代は現代となり、静岡県の森を再現していてシカやクマがいたり、昆虫の標本があったり。
それらは写真には撮っていないのでお見せできない、すまない。
なんかコーナーの片隅の、海岸に流れ着いたものコーナーに興奮していたようだ。
懐かしいペットボトル飲料の蓋がある。
大陸から流れ着いたライターのコレクションもある。
あとは図書館コーナー、さまざまな岩石標本など…。
ここいらの写真が少ないのは、誤って写真データを消してしまったからだよ。
チクショウ、後悔してもし足りねぇ!一生の不覚!!
最初の入口に戻って来た。お土産コーナーを少し覗いた。
大体1時間弱。とても充実した時間であった。
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2023年3月末で、東海大学自然史博物館は閉館する。
もしあなたも予定が許せば、最後の見学に赴いてはいかがだろうか?
生物誕生から現代までの展示が並ぶ自然史博物館ではあるが、未来はもうない。
その最後の雄姿を目に刻んでほしい。
海洋科学博物館の方も事前予約制で相当にお客さんを絞るそうだから、こういうお土産物屋さんも継続が難しくなっちゃうかもね…。
昭和レトロな佇まいのお店、今後も頑張ってほしいけどな…。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 東海大学自然史博物館
- 住所: 静岡県静岡市清水区三保2407
- 料金: ¥1000(東海大学海洋科学博物館との共通券は¥1800)
- 駐車場: あり
- 時間: 9:00~17:00(原則火曜日定休)