まずはド素人目線で「西野水道」の良さを書き連ねる。
- 暗い洞窟に入るのがワクワクする
- 短時間でサクッと体験できる
- 24時間、天候に左右されず好きなタイミングで楽しめる
- 無料
そりゃ人類が「洞窟好き」と「洞窟ちょっと苦手かも」に二分されることは重々承知しているけどさ、少なくとも前者の人が行かない理由はちょっと見当たらないよね。
じゃあ前者の人、僕と一緒に後者の人にも布教してさ、こっちの世界(洞窟)に引きずり込もうぜ。

そんな野望への第一歩として、以下に僕の訪問時のご紹介をしよう。
2代目西野水道(暗いけど安全)
琵琶湖の北西部の田園地帯を突き進んでいた。

この先に西野水道があるそうだが、案内看板等もほぼなくって不安になる。カーナビを信じてアクセルを踏むしかない。とりあえず快晴だし周囲の見通しは良く、ドライブしていて幸せな気持ちにはなっている。

道の突き当りにダダッ広い空き地が出現した。ここが西野水道の駐車場らしい。
バイク数台、車が数台停まっていた。「仲間」って思って安堵した。しかし聞いてくれ。結論から言うとここにこのとき駐車していた人たちは、誰1人僕のこのあとの最大の目的地である西野水道の狭くて暗い洞窟には行っていないんだぜ。Why。

初代水道と2代目水道の分岐点だ。向かって左側に緩く降りて行った先に見えているトンネルが、2代目の西野水道。向かって右手、。建物裏手にさらに進んでいった先に出現するのが初代西野水道だ。
初代西野水道が僕の目指すワイルド&アドベンチャーなのだが、いきなりそこに突撃したり準備運動なしにプールに入るようなもんだと考えた。まずは無難そうな2代目を目指してみようか。

こんな立地だ。現役である3代目は入ることができず、初代と2代目は内部観光ができる。赤い線はこれからの僕の動線であり、やたらと行ったり来たりしているけども、その理由はおいおい話す。
ところで西野水道がなんなのかというと、大雨になったときの放水路だ。昔からここいらのエリアは、大雨になると集落や田畑が浸水して大変な事態になってしまっていた。水が集落や田畑に溜まらないように、どっかに流し去りたい。そうだ、琵琶湖に流し込むことにしよう。でも集落から琵琶湖までの間に1つ山があるから、トンネルでブチ抜こう。そんな江戸時代のプロジェクト。
…これが西野水道だ。

その苦悩と打開の歴史は歌にもなっている。メロディは知らないので僕は歌えないが、アツい思いは僕のハートに流れ込んできた。

2代目西野水道の入口。ひとことで表現するのであれば古めかしいトンネルって感じだ。
ツーリング途中と思われる人々が、ここのトンネル前にバイクを並べて記念撮影したりしていた。そういう記念になるスポットらしい。まだ中に入ってもいないので、それだけのポテンシャルを理解できていないけど。

内部に入った。全長245mのトンネルである。
カメラの性能がいいので明るく見えるかもしれないが、内部に照明は無い。結構暗い。トンネル内はまっすぐなので酩酊していない限りは事故になることはないだろうが、トンネルの真ん中付近はちょっと不安になるくらいの暗さだ。とはいえ、スマホのライトでも照らせば充分なのである。足元もしっかり整備されているしな。
3・4人の人とすれ違った。最初から最後まで視界に移るものはそんなに変わり映えせず、出口の光が大きくなるくらいの変化だったので、写真は上記の1枚のみだ。

2代目のトンネルの出口を出てから振り返ると、すぐ隣に巨大な水路があった。水がゴウゴウと流れ出ている。これが3代目、現役の西野水道だ。トンネルの銘板には『余呉川放水路 西野トンネル』と刻まれていた。

3代目のトンネルには絶対に入るなよっていう趣旨の看板もあった。
左が集落、右が琵琶湖だ。西野水道の用途がよくわかる看板だ。「急勾配」→「流れが速い」→「滑りやすい」→「非常に深い_琵琶湖」。侵入したら西野水道の用途を実体感出来てさらによく理解できるのを代償に、現世からフェードアウトしてしまうね。

せっかくなので、3代目西野水道が放出した水がどのように琵琶湖まで流れていくのか、追跡した。
ほんの2・300mで琵琶湖に到達するようだ。駐車場やトンネルの入口側とは世界が一変しているね。あっちはただ乾燥した台地が広がっていただけで水うもの気配がゼロだったのだが、こっちはザ・湖畔って感じだ。

琵琶湖、いい…!
こうして増水した水はいまも西野水道を通じて琵琶湖に流れ込み、集落に必要以上の水が溜まらないようになっているのだな。
インターバル(初代西野水道に向かうにあたって…)
この章では、2代目西野水道を通り抜けてから初代西野水道に突撃するまでの、インターバル的な僕の動向をお伝えしようと思う。特に「西野水道のご紹介に必ず必要だ」という章ではないので、あなたが2・3分の時間も捻出できないギリギリを生きている方なのだとしたら、次の章までワープしてほしい。

前章で琵琶湖から2代目西野水道の出口まで戻ってきて気付いたんだけどさ。
手前が2代目の出口だ。じゃあ奥は何だ?たぶんだけど、初代西野水道の出口だ。ならばそっちを覗いてみようか。そっちから駐車場まで戻れば、「行きは2代目、帰りは初代」と、無駄なく2つの水道を体験できる。

現在地はここだ。ま、上の矢印によってこのあとの僕の挫折がバレちゃっているかもしれないけど、そこはナイショな。

奥の方に、すごく狭いトンネルが見えた。高さは180cmくらい、幅はお相撲さんくらいのスケールだ。ドキドキするけども、入ってみようぜ。

内部も当然狭い。しかも漆黒だ。照明なんぞない。
こんな道が2代目と並走するように続いているので、最低でも200mはあるのだろう。入口から20mくらいは外界の太陽光が届くのだが、その奥は一体どのようになっているのであろうか…?

おっ、頭部ダメージ軽減システムだ。頭上にプラスチックのカバーがあることで、洞窟の天井部分に頭を削り取られる悲劇を回避できる、画期的なツールだ。背の低い僕には関係ないが、180cm以上の人にとってはありがたいよね。

あ、ちょっと待って。足元。足元がシャバシャバなのだ。水が流れているのだ。引退しているとはいえ、水道だからな。往時を思い出して流れているのかもしれない。これはマズいぜ。スニーカーの中がグッチャグチャになりかねない。
動画でも撮影してみた。写真と比べるとリアルな暗さがわかるので、見てほしい。僕、こんなところを1人で歩いているのだぜ。完全に怪しい人だ。
いや、怪しい人ではないな。「怪しい」ってのは、他人から見られて初めて起こる事態だ。今はここには誰もいないから、妖しいとすら思われない。ひたすらに孤独。1人。
僕は数10m進んだところでUターンした。決して初代西野水道に屈したわけではない。これは勇気ある撤退だ。僕にはすぐにでもリベンジする算段があったのだ。

冒頭でチラッと触れた、初代西野水道に向かう道の方面に小屋があったでしょ。そこには初代水道攻略のための装備が用意されているのだ。そのウワサを知っていたので、僕は2代目水道を引き返し、スタート地点間近にあるこの小屋までやってきたのだ。
ほら、ヘルメットがある。これで守備力が15ポイントくらいアップする。懐中電灯もある。視認性がバリバリに向上する。

長靴もある。これらは全部無料。ありがたすぎる。
そうなのだ。これはRPGのゲームと一緒なのだ。洞窟などのダンジョンに行く前には、装備を整えるだろ?さっきの僕はそれを全然実施していなかったのだ。装備が必要だったのだ。

僕は長靴を履き、そして懐中電灯を手に取った。ヘルメットはいらぬ。僕はチビなのできっと洞窟の天井に頭をぶつけないからだ。それに、正直に言うとヘルメットを被るには、あんまり好きではないからだ。

小屋の中には西野水道の説明アナウンスの流れるボタンもある。RPGでも、洞窟の近くの村で古老が洞窟の由緒とか注意点とか話してくれる。それと同じだ。
ボタンには大人用と小人用があった。僕は小人用にしよう。簡単な説明じゃないと理解できないから。…ちなみにアナウンスは小人用でもまあまあ難しかった。

長靴をペッタンペッタン言わせながら歩きだすと、「恵荘上人と村人の像」というのがあった。恵荘上人っていうのは、初代西野水道を作った人だ。完成し、村人が喜ぶという図だ。
このあと初代西野水道を制した僕も、左側のメンバーの一員となってバンザイしたいぞ。

ついてきているか?今はここだ。
いよいよ初代水道に向かうという緊張感、あなたにも伝わったか?

ダンジョン(初代西野水道)、登場だ…!!
初代西野水道(アドベンチャー)
ついに初代西野水道が僕の前に姿を現した。

2代目とは比べ物にならないほどの、おどろおどろしい雰囲気だ。
これ絶対にモンスターいるダンジョンだよ…。そういえばさっき看板に熊がいるとかハチがいるとか、書いてあったな。こっちは武器は無い。懐中電灯ビームくらいしか必殺技がない。心もとない。
初代西野水道の入口からの数10mを動画撮影してみた。この孤独感、閉塞感、ぜひあなたも一緒に味わってみてほしい。
ときどきカメラが大きく揺れたり足音が「ビタンッ!」って感じになるのは、足元がデコボコなのに暗くてよく見えないので、つまづきそうになったがためのものだ。これが初代のリアルだ。

『①水の流れを良くするために堀なおした所(ここより③へ27m)』って書いてある看板が出てきた。字体がとてもかわいい。
「知らねーよ!こちとら暗いし狭いしで怖いんだよ!」って言いたい気持ちになった。それに「②」はどこ行ったんだよ。あぁ、もう1人でビクビクしているときに、こういう突っ込みどころ満載な情報を出してくるの、マジやめてほしいぃ!

サザエ。海なし県の洞窟の奥で、で唐突にサザエの話が出てくるとは予想していなかった。
ここには工事用の灯りとして、サザエの貝殻を台座かなんかにしたのだろう。『灯しおいた所』の語感が絶妙にツボった。

一番天井が高いところは4.1mもあるそうだ。ただ、真っ暗な洞窟を目の前と足元のみを照らしながら進んでいるので、自分の身長以上の空間はあんまり興味ない。それに、ここをすぎるとまたすぐに圧迫感のある天井が頭のすぐ上に現れるんだからな。

「④」と降られた、トンネルの中心地店を少し過ぎた頃であった。進行方向から人の声が聞こえた。誰かがこっちに向かってきているのだ。
向こうは複数名のようだった。先頭の人とは、お互いライトを持っているのですぐに存在を確認しあうことができた。もっとも、向こうは脆弱なスマホのライトだったけど。逆打ちなので懐中電灯を持っていないのだな。
僕は洞窟の壁ギリギリまで避けて、「どうぞ」と道を譲った。

先頭の人が「すみません」と言って、僕の横を通過していった。
問題は2人目以降だった。僕の存在に気付いていないのだ。洞窟が狭すぎて、1人目の背中しか見えていなかったからであろう。「マジ暗いよなー」とか、3人目以降と話している。こっちが彼らの足元を照らしながら待ってあげているというのに。まぁいいけど。
ふと疑問に思ったのか、彼は持っていたスマホのライトで僕の顔を照らした。そして「うわぁぁ!!」と叫んだ。あぁ、そりゃ心中お察しする。洞窟の中で知らない人がいきなりライトの光の中に浮かび上がったら怖いもんな。それにしても、この人生で一番びっくりされたけどな。

彼らはその後、恥ずかしそうに「すみませんっ…」って言いながら僕の横を通過していった。ドンマイ、そういう日もあるよね。
再び洞窟の中は静けさに包まれる。彼らは逆打ちなので長靴も履いていない。大丈夫かな、彼らの歩む先は、それまでとは比べ物にならないくらいに水浸しなのだよ…。

そして道は左右が鉄柵で固められ、頭上には頭部ダメージ軽減システムが現れた。おぉ、これは僕自身が逆打ちで見た光景。ゴールは近いぞ。

正面から光が射し、空間がグニャグニャになるのは、次元の壁を越えて現実世界に帰れる証。どっかの映画でそんなシーンを見たから知っている。
こうして琵琶湖川に抜けた僕は、2代目西野水道を使って駐車場にサクサクと戻った。
駐車場の車の中で、僕は待つ。あの4人か5人組の、初代水道内で出会った彼らを。少し心配だったのだ。数分待つと、そのうち遠くから楽しそうな声と共に彼らがやって来た。
別に声をかける必要もない。駐車場の車の中に僕がいることを気付かれる必要もない。ただ一目、確認したかっただけだ。

僕はエンジンをかけると颯爽と青空の下を走り出した。
行きには気付かなかったが、右手を川が流れていた。あぁ、これが3代目西野水道に続くのだな。水の流れと逆行し、僕は進む。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 西野水道
- 住所: 滋賀県長浜市高月町西野
- 料金: 無料
- 駐車場: あり
- 時間: 特になし