秩父の「パリー食堂」と言えば、別に激渋マニアじゃなくっても知っている人の多い超有名食堂だ。
1927年に創業した老舗食堂であり、現在のオーナーは4代目にあたる。建物は登録有形文化財にもなっていて、圧倒的なインパクトを放っている。

バッキバキだろ?100年のオーラ、ビンビンだろ?
じゃあ僕がここを訪れたときのことを語ってみるね。
カレーライスのスプーンはグラスに刺さる
まだ夏の気配を感じる秋の日のこと、僕はパリー食堂を訪問した。「秩父神社」まで徒歩数分という、なかなかの市街地の一方通行の路地にその食堂はドーンと現れ、僕は圧倒された。

すごい。壁に直接打ち付けられた『パリー』の金色の文字が大正レトロっぽくてキュンキュンする。ところでパリーってどういう意味だろね?
そして、正面からしっかり撮影したいのだが、いかんせん路地が狭くて正面からではカメラのフレームに入りきらない。従い、このように斜めから撮影してみた次第だ。

店頭のショーウィンドウの食品サンプルも秀逸だ。これを眺めるだけでワクワクしてくるのは僕だけだろうか?普通の大衆食堂にありそうなものは大体ある感じかな?
下段の麺類のサンプルは経年変化でいずれも茶色くなり、あんまりおいしそうには見えないんだけど、それも含めて"歴史"なんだよな。

暖簾は右から文字が書いてある。暖簾自体はピカピカの新しいもののようだが、このデザインはきっと昭和以前から変えていないものだろう。
客席は満員らしく、店内のレジ前の待機用の椅子で10分弱待った後に客席に案内されたよ。まだ12時前だというのに満席なのは、このお店が人気の証だね。

客席は4人掛けのテーブルが6つだったかな?外から見えるほどには店内は広くはない。そしてコロナの影響がまだ残っているため、各卓にクリアパーテーションが設置されていた。

これがメニューだ。本来であればカツ丼を頼みたいところだ。僕は大体老舗食堂に行くと、カツ丼をオーダーしてそのお店の個性を探るのだ。
ただし今日はダメだ。実はちょっと前におやつを食べてしまったのだ。カツ丼を食べるだけのキャパシティがない。しかしなんらかのフードメニューは是非食べてみたい。
ラーメンか?麺類であればバキュームすることで満腹中枢を刺激する前に食べきれるか?いや、カレーだな。カレー食べたい。カレーは飲み物だって誰かが言っていたし。

割とスピーディーにカレーが出てきた。これぞ正解って感じの、王道なビジュアルだ。
あと、水のグラスにスプーンが刺さっている。これは超貴重なシチュエーションだ。昭和時代の食堂などで、このように提供されるケースがあったそうだ。理由はスプーンを濡らしておくことでご飯粒がスプーンにくっつきにくくなるそうだ。マジか?本当に効果あるか?
僕も人生において2・3回しか見たことのない提供方法。これを見られただけでもカレーをオーダーした価値があったと思うのだぜ。

うん、カレーライスは普通にうまいぞ。"普通"という言葉なんぞを使ってしまって恐縮だが、本当にそう思った。辛いわけでもなく、スパイスが効いているわけでもなく、特定の具材が主張しているわけでもない。
特徴はないが、ただただうまい。うますぎない程度にうまい。これぞ大衆食堂に求められるクオリティってヤツではなかろうか。
ペロッと完食。料金は700円だ。大満足。

食後、外に出ると7・8人の行列ができていた。時刻は12:30近く。やはり昼どきは混雑するよね。少し早めに入店して正解だった。
それでは、次来たときこそはカツ丼を食べるぞ…!
焼き肉丼とクリームソーダで贅沢に
昭和アピール大作戦
2025年の年の瀬、僕は再びパリー食堂を訪問していた。

以前よりも広角の撮影ができるカメラを持っているで、より正面からの撮影が成功した。
時刻は11:30である。お店の外にも人はいないので、これは余裕で店内に入れるかなって思ったら、無理だった。客席は既に満席であり、店内の待機用の椅子も待っている人で埋まっていた。
なので僕は外で待つ1人目のお客さんとなった。

待機中にちょっとお店の外観を眺めていた。
食品サンプルは相変わらずだ。以前と1ミリも変わっていないように見える。しいて言えば、麺類のスープの色が経年でよりセピア色になったようにも見える。

ちょっと変わった部分もある。こんな看板も出ている。
『昭和パリーのクリームソーダ (一口でタイムトリップ!)』
レトロさをウリにした宣伝だな。クリームソーダ、前回はなかったよね?よりSNS映えを意識させた戦略なのであろう。

暖簾は前回訪問時からの4年ほどで、結構ボロボロになってきていた。破れかけている。
待っていると小さい男の子を連れたお母さんがやってきた。
「クリームソーダ飲めるらしいよ!ここで待ってみようか!」みたいなことを話していた。食堂の外観に興味があったようなので、撮影しやすいようにちょっと場所を空けてあげたりした。「店内って何席くらいなんですか?」と聞かれたので、答えたりした。
しかしそのうち待ちきれなくなってしまったのか、母子は去って行ってしまった。うむー、小さい子にはハードル高そうなお店だよね、残念。
じゃあ、僕がその男の子の分までクリームソーダ、飲んでやろうか?なんか飲みたくなってきた。

店員さんが出てきて、「よろしかったらメニュー見ておいてください」と言われた。
ふむ、1名動けば僕も店内に入れるのだが、今回は回転率があんまりよろしくない感じだね。まだ12時前なのに、なかなかに詰まっているようだね。
さて、メニューであるが、前回に比べてレパートリーが増えている。デザートもあるしセットメニューもあるし、おつまみメニューもある。集客のために他訪問にアピールしていることを感じ取れる。
ところで僕はカツ丼を食べたかったのだが、それに類するメニュー名が"ソースカツ丼"となっている。あぁ…、食べたいのはソースカツ丼ではなく、玉子とじのカツなんだよな…確か前回は"ソース"の単語はなかったんだけどな…。どうしよう…?

20分ほどで1名動いたっぽい。中に案内された。
店内に一歩踏み込んだのが、これ。ここの待機用の椅子に座ってもう少し待つのだ。左に見えているレジブースの屋根部分が狂おしいほどにかわいいよね。レトロアメリカンって感じもする。

黒板には昭和のレモンスカッシュをおススメする記載がある。ガチャガチャマシーンも新設されている。やはり、先ほど外で感じた通り戦略の幅を広げているね。こういうの、嫌いじゃないよ。

ガチャガチャは1回500円。
大当たりはパリー食堂の食事券であり、3代目のおじいちゃんと2ショット写真を撮れる券もあるという。…3代目、なんだかマスコット化していないか??
そうこうしているうちに呼ばれた。さぁ客席に行こう。
頑張れ店員さんたち
先ほども触れた通り、ソースカツ丼は候補から外した。焼き肉丼にする。カツよりも提供時間が早そうだし。それと、食後にクリームソーダだ。カンペキなコースだ。

店員さんはホールだけでも複数名いるけど、忙しそうだ。店内は20名もいないのだが、配膳に会計にと、あたふたしてしまっている。退店した人の食器を下げるのもままならない感じだ。
ちなみにショックは写真中央の小窓部分に置くスタイルらしい。厨房担当の人もそれを受け取るだけの余裕がないらしく、小窓の半分くらいが食べ終わった食器で埋まっている。崩れそうで見ていてヒヤヒヤするぜ。
さらには出来上がったメニューも小窓から出てくる。でも既に食べ終わった食器も置いてあるので、小窓がすごくワチャワチャしてしまっている。
10分ほどで、小窓部分に焼き肉丼が置かれた。それ、順番的に僕のかな…?
しかし厨房の人はホール担当に声を掛けるわけではないし、ホール担当の人はその他のことで忙しそうで、焼き肉丼に気づかない。
わわっ、冷めるよ冷めるよ…!

2・3分で気づいてもらえて提供された焼き肉丼。甘辛いタレで味付けされた大きな豚肉が4枚ほど乗っている丼だ。あとはタマネギがちょろっと。
安定した美味しさだ、ご飯が進む。お店に到着してからここまで、なんだかんだで50分ほどかかっているのだ。まだ12:30ではあるが、いい具合に空腹なのだ。

近くの座席の人は、オムライスとクリームソーダを一緒に写真に撮りたかったらしく、オムライスのみが先に出てきたことに対し文句を言い、クリームソーダが出てくるまでオムライスに手を付けずに待っていたりした。
カップルできている人は、2名分を一緒に写真に撮りたかったらしく、相手の分が出てくるまで口をつけずに待っていたりしていた。
映えは大事だけども、こういうところで地味に店員さんの手間が増えたり、回転率が悪くなったりしているってのも要因かもなぁ…。新規のお客さんは取り込みやすくなったかもしれないけど、昔ながらの常連さんはもしかしたら渋い顔をするかもなぁ…。
そんなことを考えながら僕は1人で焼き肉丼をムシャムシャ食べた。

クリームソーダ、来た。
食後しばらく音沙汰なかったのて、店員さんに声を掛けたら来た。いや、別に催促しているというか、オーダー通っているか気になっていたので。それに、きっと僕の後ろにも並んでいる人がいるから、さっさと食べて退店した方がいいかなって思って。
うん、綺麗な緑色のクリームソーダ。オーソドックスなスタイルだ。…とはいえ、僕は外食でクリームソーダを食べたことはあまりないんだけどな。だからこそ気分が高揚している。

味は万人が想像する通りだ。食後に食べるアイスと炭酸シュワシュワは、清涼感最高でデトックスされたよ。ちなみに氷が大きめで、ソーダは見た目ほどは入っていない。いいけど。別に量が欲しいわけではないので。
焼き肉丼と合わせて満腹だ。前述の通りそもそもすごく空腹なわけではなかったので、これで120%満足したさ。ごちそうさま。
次の100年の存続に期待を込めて
「絶メシロード」というTVドラマがある。2020年にseason1が放送された、絶滅しそうな絶品メシを巡るドラマだ。その後は不定期だが2025年末にも新作が放送されている。
これのseason1にて登場したことで、パリー食堂をご存じの人もいるだろう。

このポスターは店内に掲示されているものだ。許可をいただき撮影した。
ところで上記はseason1のポスターなのだが、背景に写っているお店がパリー食堂であることにお気付きだろうか?パリー食堂は別に第1話に出てきたお店というわけでもないのだが、このように絶メシロードの顔となるポスターに使用されている。
それすなわち、パリー食堂の外観が最もドラマのイメージに合致していると判断されたからであろう。なるほど、ステキ。
ちなみに、season1で登場した絶メシ店については、上記の「特集」に掲載されているので、興味があったらドラマと共に見てほしい。ドラマでは、3代目のおじいちゃんが店主としての登場キャラになっているよ。
さて、このパリー食堂であるが、2025年はクラウドファンディングを実施していた。

建物の耐震性がヤバく、ところどころヒビが入っていたりしていたそうなのだ。それの補修費用として4000万円のクラウドファンディングを実施していた。
僕は現地で「そういやクラウドファンディングやっていたなぁ…」程度の情報しか持ち合わせていなかったのだが、なかなかにハードルの高い金額設定だよね。第1印象で思ったことは2つで、1つは「もうちょいお店側で出資しないと厳しいかも」という点。もう1つは「クラウドファンディングのWeb告知等で3代目をマスコットとして使いすぎかも」という点だ。
他のみんながどういう心象だったのかは知らないが、目標額には半分も届かなかった。…とはいえ半分弱でもすごいことだけど。

しかし老朽化が深刻なのは事実なのだろう。歴史ある食堂で知名度も高いが、それゆえの悩みもあるということだ。普段の利益からこれを捻出するのはなかなかに難しいってことも想像できる。
"絶メシ"というくくりとはいえ、僕もこのお店がなくなってしまったら悲しい。なんとか継続できる方法を撮ってもらいたいねぇ…。

お店を出ると、外にはズラリと人々が並んでいた。すごい人数だ。店内のメンバー一巡しても足りないくらいだ。僕もかなりの時間を待ったが、今ここにいる人はその倍くらいは待つかもしれない。
勝手ながら、この賑わいが次の100年も続くことを心から祈るよ。
では、ちょっと秩父神社方面にプラリと歩いてみようかね…。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: パリー食堂
- 住所: 埼玉県秩父市番場町19-8
- 料金: 焼き肉丼¥800他
- 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
- 時間: 11:30~19:00