福岡の中心地にある「西公園」には「今屋のハンバーガー」という、50年続くバカうまいホットドッグのキッチンカーがある。ホットドッグスタイルだけども"ハンバーガー"っていう名前だ。面倒なので以後は僕も"ハンバーガー"と呼ぶけども。
基準はよくわからないけど、2007年に全国3位に選ばれたほどの絶品らしい。
そこでハンバーガーを作っているのは、2026年で81歳になる小さなおじいちゃんだ。このおじいちゃんも含めて名物だ。

おっと、最初にご留意いただきたいのだが、今回の記事ではおじいちゃん本人も、この西公園のホットドッグも登場しない。ザックリ言うと「西公園に行ったけどもお店はやってなくって、近くにある支店で食べた」みたいな話だ。本店で食えなかった。

しかしな、僕は「結果」だけを求めてはいない。
「結果」だけを求めていると人は近道をしたがるものだ。近道した時、真実を見失うかもしれない。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は本店で食べられなかったとしても、いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな。違うかい?
…という、アバッキオの元同僚の警官の名言をいただいたところで、本編だ。
【1回目】雨の日の公園は切なくて
その何年か前から存在は知っていたのだが、僕が初めて西公園の今屋のハンバーガーを目指そうとしたのは、2019年のことである。

小雨が降って来た。しかも数日後には台風がやって来るという。そんな中、市街地に聳える西公園の丘の上に向かう道に入り込んだ。
さて、今屋のハンバーガーは営業しているのだろうか…。ウワサによると、雨の日は休業だという。さっきまでは雨ではなかったが、天気予報を見る限りでは朝から休業を決め込むのが賢明であろうな…。

丘の上の駐車場に到着。そして、海を見下ろす芝生の広場にやってきた。
カサをさすほどの雨でもない。雨が降ったとて、寒気を感じるような季節でもない。さて、待望の今屋のハンバーガーは営業しているのか…!?

はい、全然やってないよ。静か。
まぁ駐車場の車がガラガラ、そこからここに至るまでも人間1人もいない時点で察していたけどね。あなたもこの記事の冒頭で僕が『本店では食べたことが無い』って書いた時点でわかっていたろ?自他共に全然ワクワクしない展開、すまぬ。
ただね、確かめるのは大事なのだ。答え合わせ、必要なのだ。
1%でも営業している可能性があったり、あとから「実は営業していた」って知っていたら、悔やんでも悔やみきれないだろ?物事は効率性ではないのだ。自分で見聞するのが、"旅"。

それにさ、ここからの景色がどんなものなのか知ることもできたしね。
前方に見えているのは福岡都市高速の「荒津大橋」だね。あそこは何度も走ったことがある。そして左端に見えているのは「博多ポートタワー」だね?夜景が見える時間だったらさらに綺麗そうだ。

そんなこんなで空振りだ。でもいいや、また来れるチャンスはあるのだから。
【2回目】丘の規制線と六本松店のバーガー
西公園で何が起きている?
少し年月の流れた初秋の午前中のことである。僕は再び西公園を目指していた。目指そうかどうか迷っていたのだが、一応行ってみることにした次第だ。
どういうことかを説明すると、ここ最近の猛暑と今屋のおじいちゃんの高齢化に伴い、暑い時期は休業することとなっているのだ。確か営業再開は10月ごろ。9月現在は営業していない。
なので行ったところで100%営業していない。だから行く予定ではなかった。
…が、その日の朝にWebを調べて考えを改める。
どうやらラジオ番組かなんかで、今屋のハンバーガー本店を取材しているそうなのだ。本来であれば休業日なのだが、特別におじいちゃんが西公園に出向いているそうなのだ。
…ってことは、番組向けにお店を稼働させ、必要最低限であろうがハンバーガーを作っているかもしれない。食べられる可能性が極めて低いが、営業バージョンのお店を見られるかもしれないし、おじいちゃんもいるかもしれない。
たぶん現在はラジオ番組終了から1時間前後くらい。試しに行ってみよう。

…ん?なんだこれは。
西公園の丘へと上がる道がものものしいのだ。消防車やパトカーが停まっており、一般車両には警官が声をかけている。何か事件なのだろうか…?
とりあえず僕はそこまで突撃した。景観が「西公園のどのようなご用件で?」みたいに聞いてきた。僕は正直に「丘の上のハンバーガーをワンチャン食えるかもしれないのでやってきた」と言った。
警官はやや戸惑った顔をしたあと、僕に「今は丘の上にはあがれないのです。この先にいる警官に従ってUターンしてください」と案内した。
僕はダメ元で聞いてみた。「もしかして今屋のハンバーガー関連で何か起きているのですか?おじいちゃんの身に何かあったりしたのですか?」と。
当たり前だが、そこいらについては教えてもらえなかった。
いずれにもしても、今回今屋のハンバーガーに行くことは不可能だ。戻ろう。

僕はこの後SNSで尋ねた。この日に何があったのか。今屋のハンバーガーのおじいちゃんは無事なのか。
まずは結果だけ言うと、今回の件は今屋のハンバーガーとは無関係だったらしい。まずはおじいちゃんの身に何かあったわけではなくって安心した。
しかし、今度は事件関係者の人から問い合わせがきた。僕の見聞きした情報をお伝えするかわりに、差し支えない範囲でここで何が起きたのかを教えていただいた。プライベートなことなので、ここではこれ以上のことは書けないけどな。
今回、「訪問を完全にあきらめる」→「わずかな希望から目指す」→「事件で断念する」→「でもその情報がほんの少し誰かの役に立つ」…という二転三転する状況となった。でも、記載の通り無駄ではなかった。何かがどこかで繋がっているんだな。
六本松店で絶品ハンバーガー
前章の続きだ。あのまま福岡の町を撤退したわけではない。今回は予防策を張っておいたのだ。

今屋のハンバーガー六本松店!さっきの西公園からは直線距離で南に2kmくらいだ。西公園の本店で食べられる可能性はほぼゼロと踏んでいいたので、こっち側で食べることシナリオを組んでいたのだ。
本店で修業を積んだ人が2022年秋にOPENさせた支店だよ。

店内はピカピカのオシャレなカフェ風。持ち帰りもできるが、店内でイートインもできるスタイルだ。公園で外の空気を感じながらほうばるハンバーガーも最高だろうが、こういうシャレた店舗で食べるのも格別だな、きっと。
メニューは大体本店と一緒だが、六本松店オリジナルも2種類あるという。
…とはいえ、いきなり飛び道具的なメニューを頼むのは止めておきたい。ここは650円のミックスエッグにしようか。あと、350円のアイスコーヒーを頼もう。

ハンバーガーは1つ1つ丁寧に作ってくれるので、10分ちょいは待つ。肉の焼けるいい匂いを嗅ぎながら気楽に待とう。本店では週末は屋外で2時間待ちとか普通だそうだから、冷房の効いた店内で座り、スマホいじりながら待てるのは幸せだよね。

暴力的なまでにふっくらしたパティ。たまんねーな。
今屋本店のおじいちゃんは1970年代の後半に知り合いからキッチンカーを譲り受け、最初はホットドッグ屋を始めたそうだよ。でもマクドナルドが日本に進出してきてホットドッグが売れなくなってきたので、対向してホットドッグ用のパンにハンバーグを挟むことにしたのだ。
その作戦でマクドナルドに潰されることなく、50年経っても人気なのだからすごいよな。それだけおいしいってことだ。

待つこと10数分。ミックスエッグが出来上がった。焼き立てのアッツアツだ。
本店のおじいちゃんが作ったものではないが、キチンと修行した人が忠実に再現したものだ。味は折り紙付きであろう。マジいい匂い。

うまっ!!芳ばしく焼きあがったパンは外側はややザクッとした感じ。でも中はふんわりだ。そして肉汁あふれるジューシーなパティ。薄切りウインナーや玉子がさらにそれらを彩り、複雑で豪華な味わいに昇華させてくれる。

そしてこのソースがバカウマい。すべてをまとめ上げ、唯一無二の味わいにするソース。これはわざわざ福岡まで来て本店で2時間並ぶ人の気持ち、大いにわかるなぁ。
これだけ肉系が多いにもかかわらず、ヘビーな感じは全然しない。ペロッと食べてしまった。なんだったらもう1つ食べてもいいくらいのテンションであった。

で、食後にゆっくり飲むアイスコーヒーは至福だ。
本店に行けたら最高だったけども、前回に比べて大きな階段を1段上がったよね。着実に僕は本店に近付いてきていると思うのだぜ。

食後、許可を得て店内の写真を何枚か撮らせていただいた。ね、オシャレな店内でしょ。そしてメニューは"学生セット"っていうのもあるし、生ビールもある。店舗を満喫したいなら断然こっちだ。僕個人は本店派の人間ではあるけど。
で、右に飾っている大きなパネルを見てくれ。今からズームするから。

本店の店舗前に立つおじいちゃんのパネルだ。いい笑顔だ。
やっぱ本店、いつか行かないとな。ハンバーガーを味わうのではない、おじいちゃんの人生を味わいたい。ほんの一瞬かもしれないけども、おじいちゃんの人生と僕の人生とが交差する、その感覚を味わいたいんだよ。

そんな六本松店。いい思い出になった。ごちそうさま。
【3回目】夕暮れ空とキッチンカー
前章から約1週間後、僕はまた西公園に来ていた。
なぜなら、消防車やパトカーが来たりと事件になっていただろ?一応自分の目で見てみたいのだ。あのキッチンカーが以前と同じ状態なのかどうかを。

夕暮れ空を眺めながら丘を車で進む。すると通行止めの看板だ。「また由々しき事態か!?」と一瞬身構えたが、違う。ただの園内道路の整備だ。
あ、ちなみにだが2024年11月に本店のお店の場所は展望広場から東駐車場に移転したそうだよ。50年間同じ場所で営業していたが、公園整備のために止むを得ない移転だったらしい。

西公園中央駐車場。展望公園に一番近い駐車場だ。この駐車場の奥の方も、整備が始まっているね。
さて、営業していないことは知っているけども、今屋のハンバーガー本店を眺めに行こう。前回はチラリと見学して2・3枚しか写真も撮らなかったので、今回はじっくり見てみよう。

お店、ちゃんと存在していた。ホッとした。前回とはちょっとだけデザインが変わったか?店舗にあんなゴールフラッグみたいな白黒のデザインは無かった記憶なので。
店舗は営業していないが、自販機はちゃんと稼働しているのだね。

少し角度を変えてもう1枚だ。テーブルなどの備品が見える。営業中はこれを脇に設置する感じなのかな?
ところで、ちょっとわかりづらいけどもこれがトラックだと気付くだろうか?もともとはおじいちゃんはキッチンカーで市内を走り回って営業していたらしいんだけど、あるときからここでの固定営業に切り替えたらしい。
だからこのトラック、今はもう稼働しないよね?完全に地球と一体化している。

おじいちゃんも観光客もいないが、ネコならいた。パンのケースに丸まって入り、僕の方を警戒していた。
今屋のハンバーガーは福岡の老舗パン屋さん「唐人ベーカリー」に、今屋オリジナルのパンを開発してもらって、それを使っているそうだよ。

店舗には、目玉焼きを作るおじいちゃんの写真が洗濯ばさみで掲示されていた。
腰曲がっているので下を向いているし、帽子を目深にかぶっているしで、顔が全然見えていないけども、それがチャーミングだね。

店の裏の茂みの中には、ホットドッグのマスコットキャラクターがいた。
「あ、やっぱハンバーガーではなくってホットドッグじゃん…!」って言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。下手なことを言うとファンに背中を刺されるかもしれんからな。

静かな展望台のキッチンカー。お店が営業したら、ここは多くの人でにぎわい、お店は2時間待ちになるという。残念ながら、そんな光景を僕は想像できない。
でも、もうすぐ移転となるこの店舗を静かに眺められる、この瞬間は貴重なのかもしれないね。

空が暗くなってきた。じゃあそろそろ行くか。博多の屋台でとんこつラーメンでも食おうかな。
今屋のハンバーガー本店、次こそは営業中にアプローチできますように。
【おまけ】東京恵比寿店は成功ならず…?
2023年の年の瀬のこと、僕は東京の恵比寿駅付近にいた。
向かっているのは今屋のハンバーガーの恵比寿店だ。駅からはちょっと離れているが、恵比寿にもあるのだ。行かねば。

結構な路地裏で、道も細い。人もいない。そんなところにお店はあった。上の写真、中央の右手だ。
存在感が控えめだぞ…。食べログ等では営業中フラグになっているし、結構な深夜まで営業しているそうなのだが、どうにもここまで近づいても生気を感じなかった。

やっぱ営業していない…。おっかしいな…。
営業していない以上は諦めるしかないからそのまま立ち去ったのだが、その数ヶ月後には恵比寿店は閉店してしまった。お客さんがあまり入らず、この頃はかなり営業が不安定になっていたらしい。
そうかもしれないなって僕は思った。今屋のハンバーガーは間違いなくおいしい。でも、大都会東京の恵比寿では、知名度は無い。あの公園の雰囲気やおじいちゃんを知っていたら興味を密かもしれなけども、東京での知名度は控えめだ。
たとえ知っていも、東京の雰囲気の中で行きたいと思うかどうか…。サラリーマンのランチ、カップルのデート…。ちょっと馴染まないような気がするんだよな…。しかも路地裏だし。

僕個人の持論ではあるが、やっぱ現地で食べるのが最強なのである。
だからこそ、僕はまた福岡を目指す日を楽しみにしているよ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 今屋のハンバーガー六本松店
- 住所: 福岡県福岡市中央区六本松4-9-40渡辺ビル101
- 料金: ミックスエッグ¥650他
- 駐車場: 無し。付近のコインパーキングを使用のこと
- 時間: 11:00~15:00、17:00~23:00