木曽路の「奈良井宿」は渋くてレトロで大好きなんだけども、そのほんの少しだけ北に位置する「食堂SS」も渋くてレトロで大好きだったよ。
もちろん同じ"レトロ"と言ったところで、その規模も時間のスケールもだいぶ違うんだけども、僕の心の中の"好き"のスケール感はどちらも同じだ。

昨年である2024年の春に、従業員さんの高齢化を理由に長期休業状態が続いている食堂SS。60年続いたその歴史と魅力について、ほんの一端しか知らない僕だけども思い出を語らせていただきたい。
絶メシロード(Season1)最終回のお店へ
創業60年のドライブイン
僕は木曽路エリアはそこそこ走っているのでこのお店もきっと何度か視界に入っていたのだろうが、恥ずかしながらちゃんと認識するまでには至っていなかった。
始めて認識したのは「絶メシロード」という絶滅してしまいそうな絶品メシを出してくれるお店を巡るドラマで見たからだ。
僕はそれらを巡っているので、ほかのお店も気になるならば下記リンク先から参照してみてほしい。
2020年に放映された、その絶メシロードの最終回でこの食堂SSが舞台になっているのだよ。ならばぜひ行かねばなるまい。そう考えて爽やかな夏のある日、僕はこのお店を目指したのだ。

中山道を辿る国道19号沿いにそのお店を発見した。
広い駐車場には多くの車が停まっている。お店の側面には『安くてうまい 食事のデパート ドライブインSS』の文字。もうこれが目に入っただけでテンション上がるなぁ!
昔々は奈良井宿や妻籠宿・馬籠宿が中山道を行く旅人の休憩スポットだったのだろうが、昭和時代以降はこの食堂SSが中山道の中継地点なのだろうねぇ…!

敷地内に立つ看板。『大小宴会』の文字もある。
宴会とは言ってもここは贄川の町の外れに位置していて周囲に住宅地などないエリアなんだけどな。ほとんどの人は車で来るだろうから、宴会してお酒飲んだから帰る手段無くなるよね。
トラックドライバーの人が酒盛りしてそのまま駐車場で寝たりするイメージだったのだろうか…?そういう光景、何度か目にしたことはあるけど、すごく楽しそうだよね。

ここは1964年に創業したという、60年ほどの歴史を誇るドライブイン。今のオーナーさんのお父さんがOPENさせたのだそうだ。
ちなみにお父さんの名前がサトウススムさんなので、そのイニシャルから"SS"と名付けたんだよ。安易なネーミングのような気もするが、一周回ってオシャレ。
さて、それでは店内に参ってみよう。

うん、シンプルで無駄なものが無い造りだ。細長い店内で、大きな窓が国道側に開けており、国道の車の往来を眺めながら食事ができるスタイル。

奥には小上がり席もある。ドライブインのこういう小上がりって、なんとも説明しようがないけど風情があって好き。途端に田舎のおばあちゃんの家に来たような気分になるし。ここが大小宴会の会場となるのか?
そして、よく見ると小上がり空間に絶メシロードのポスターが貼ってあるね。

拡大してみた。食堂SSオリジナルバージョンのポスターなのだね。よく見ると右下にはロケ時の様子まで写っているのだ。オリジナルでがあるがゆえに、ここに来れた喜びが再度込み上げる。

これは、僕の席から振り返った状態でのロケーションだ。つまりは結構端っこの方に座ることになったの。入店時は混雑していたので。
一番端にトイレがあり、そしてちょっとした売店みたいなエリアがある。ガチめな洗面台もある。こっち側もこっち側でローカル感にあふれており、まさに往年のドライブインって感じだ。

売店エリアにはペットボトル飲料、タバコ、百草丸、そしてちょっとしたお菓子など。昔はカメラのフィルムが売られていた名残もあるね。いずれにしても、立ち寄った長距離トラックドライバーさんなどに嬉しいアイテムだなって思った。
白身フライ定食(600円)
では、食べるメニューを決めようか。壁に張ったるメニューを見る。

すごい。脳のキャパを超えそうなくらいの文字数。
メニューは150種類以上もあるそうだ。とんでもない数だ。週1回通っても、3年近く違うメニューを食べ続けられる算段なのだ。何を食べればいいのだろう。普通の人なら小一時間迷いかねない。
しかし僕、実は事前にX(当時はTwitter)でこのお店のオススメがなんであるかを質問済みなのだ。ハンバーグ定食・豚汁定食・野菜炒め定食・白身魚定食・オムライス・なめこ汁などの返答が来た。わわわ、やっぱ迷う…。この中でも迷う…。

手元のメニューに目を落としてみるが、もちろんこっちもすごい情報量。
確か絶メシロードの主人公は普通定食を食べていたよな…。普通定食ってどんなのだったっけ…?忘れた。でも、僕は白身フライ定食にしよう。白身魚が好きなのだ。しかも600円。安い。

来たー。ご飯はデフォルトでなかなかの大盛だ。
白身フライにはあらかじめタルタルソースがかかっているが、さらにマヨネーズがチューブごとセッティングされている。こいこれ、厨房にはいったい何本のマヨネーズがストックされているんだよ。マヨラーは存分にマヨネーズに溺れることができるね。

んで、メインの白身フライに注目してくれ。
…ん?なんか白身フライがブレているような…。乱視が悪化したのか…??
いや、ちげーなぁ!全然ちげーんだなぁ!!ちょっとここまでのカメラアングルがイケてなかったよね。物理的に動かすから見てくれ!

フライは「2枚」あったッ!!
すごいボリュームだ。なんて豪快なのだ。これで600円。もちろん揚げたてサクサクでクオリティも申し分ない。ここがドライバーに愛されるお店であるということを、言葉ではなく心で理解できた。

余談。食べる際に箸立てを見て気付いたのだが、なかなかに物騒な貼り紙がしてある。
『何処でもわが命を守るため食事の前には手を洗いましょう』
これは2022年夏。コロナ禍と言われた時期が過ぎ去りつつあったが、まだ世間はかなりビビッていたのだ。手を洗わなければ命を失っても不思議ではない、って思われていた時代なのだ。
未来を生きる人、どう思う?ヤベー時代っしょ。そこそこズボラな僕がこのコロナ禍を乗り越えたの、なかなかすごいでしょ。

退店時に撮影した1枚。
2025年現在は長期休業中となってしまっているので、このお店の前に「営業中」の幟が立てられている光景は、今のところこの1回きりしか見れていないんだよなぁ…。
広丘店での普通定食(740円)
2024年の春に食堂SSが長期休業してしまったわけだが、実は食堂SSというのはもう1店舗ある。絶メシロードには登場しなかった店舗ではあるが、塩尻市内、長野自動車道の塩尻北ICのすぐ近くという、かなりの街中にある。
木曽の店舗の件を悲しんでばかりはいられない。もう1店舗あるならばそこを尋ねてみよう。…ってわけで、2025年の夏にアプローチした。

あぁ、食堂SSの字体が懐かしいね。店も違うしロケーションも違うけど、確かに同じお店なのだなってことが外観からわかって胸アツな気持ちだ。
ところでここの駐車場に愛車を停めた瞬間、隣の車にいて退店するところだったイカついご夫婦が「すごい車っすね!」と気さくに声をかけてきて、いろいろ車談議で盛り上がった。
そのあと上の写真の通り店名の看板が見えるアングルから撮影しようと場所を調整していると、お店の前でタバコを吸っていたおじさん数人が「キミ!違う違う!入口はこっち!」って大声で声をかけてきた。「ありがとうございます、写真を撮りたかったのでー…」って返答した。

これはちょっとあと、退店時に撮影したものだが、別アングルだとこうなる。僕は個人的にはこれじゃなくってもう1つ前のアングルの方が好き。
入口のおじさんたちは遠目で僕の車のナンバーを確認し、「すごいね、そんなに遠くから!」みたいに驚き、僕は「2025年の夏はあまりに暑いんで信州の高原に逃避行しようと思ってですね…」と経緯を話し、盛り上がった。
って話している間にも、駐車場のイカついご夫婦が「車の写真を撮らせてもらってもいいっすかー!」と大声で呼びかけてきたりして、それに応答し。撮影後に車で立ち去るイカつい夫婦に入口のおじさんたちと手を振った。なんでおじさんたちも一緒に手を振っているのか謎だけど、塩尻の人たち、気さくでいい人だ。
おじさんたちには「一緒に座敷で飲むか?」って誘われたけど、こちとらドライブ中なので丁重にお断りした。

これが店内だ。17時という夕食には早すぎる時間なのでガラガラだ。店内はややレトロテイストではあるが、ピッカピカ。
そして左側にちょこっと写っているのだが、宴会エリアみたいなものがあり、たくさんのおじさんたちがにぎやかに飲んでいた。店員のおばちゃんたちはこのエリアに対し、忙しそうにお酒やおつまみを運んでいた。
…では、メニューを選ぼうか。

デジャブ。僕はニッコリした。
やはりここは食堂SSなのだ。ハンパない。いろいろ考え、今回は普通定食にしようと思う。普通とはなんぞや、っていうのをこの目で解き明かしたいのだ。

普通定食は740円。それが3年間の時の流れのせいなのか、街中の店舗だからなのかは知らないが、前回の基礎のお店よりも全体的に200~300円高くなっている様子だね。
まぁ今、お米が不足してアホみたいに高くなっているしね…。しょうがない。このご時世でこの価格なのは、むしろ嬉しいことなのだ。

あ、この席は窓の外の愛車が良く見える席だ。嬉しいねぇ。青空と、そしてその空の色と同じ色の愛車。今日は早朝からこのこと信州の高原を走り回っていたのだよ。
車を眺めている間に、普通定食がやって来た。ものの数分で提供された。

サバの醬油煮がメインの定食だ。それに冷やっこがついている。
あとから調べて知ったのだが、このサバの醬油煮は煮込んだ後にしっかり一晩寝かせることによって味がしみ込んだ名物メニューなのだそうだ。いいあんばいで甘辛く、ご飯が進むぞ。
普通定食という名前ながら、これは実はスペシャルではないか。なんて謙虚。
うまかった。このお店の存在を知り、訪問できただけでも今回の旅は大成功だ。
木曽のSSが再開する日は来るのかなぁ…
絶メシロードに取り上げられた木曽の店舗は、もともと従業員さんのほとんどが70代であったらしい。
2024年3月にそのうちの1人が退職することになり、それによって他の人に負荷が分散されることになってしまった。その状態が続くのはさすがにしんどいので、苦渋の決断として休業を選択したのだそうだ。
ただし、廃業ではない。「いつかお店を継ぎたいという人が現れたら、お店の味と共に引き継ぐ」と、オーナーさんは話しているそうだ。

先月、僕は食堂SSの前を通りかかったので、いったん車を停めて店舗を撮影した。
懐かしいしあのときと大差ないように思えたが、やっぱ静まり返った様子には心が痛む。休業から1年半が経過しているが、まだ再開に向けてのいい話は出てきていないようなのだ。

窓には『休業いたします』の貼り紙。カーテンが閉められて内部の様子はわからない。
なるべく早く再開しないと、機材も建物も劣化してしまうだろうから不安はぬぐえない。しかも、Googleマップだと「閉業」ステータスになってしまっているしね…。なんてこった。
かつては正月以外は無休で早朝6時から夜の21時まで営業していたそうだけど、それだとさすがにシンドいよね。いきなり休業ではなく、営業日や営業時間を圧縮することはできなかったのだろうか…。
あと、塩尻のお店の方から助っ人とか来てくれたらよかったのにね…。

安くてうまい食事のデパート。
またここがトラックドライバーでにぎわう日がやってくると心から嬉しいんだけどな。そう願いつつ、僕は休業中の店舗を出発した。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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