レトロなドライブイン「阿久津ベンディング」。そこにはレトロ自販機が設置されていることもあり、レトロマニアからの注目度も高い。
"レトロ自販機"と表記すると「おっ、知っているぞ、うどんやそばが出てくる自販機かな?」って思われる人も多いかと思うが、違うんだ。かつては麺類自販機も存在したのだが、2025年現在はレトロ自販機はトースト自販機のみだ。
…が、残念がっている場合じゃないぞ。

2025年4月にこのトースト自販機の運営方式がリニューアルされ、外部からの納品形式ではなくって店舗内で作ったものをセットする形式となったのだ。
そこからの阿久津ベンディングの熱量がすんごい。これらは本編で詳細説明していくが、その本気度は自販機に貼られた掲示物の文字数と比例していると分析する。

つまりは、自販機は古いのに運営は新しいのだ。これはかつて2回ほどここに訪問した思い出を持つ僕としても気になる。2025年にもう一度訪問しなければならない。
今回はそういうお話なのだ。
かつてのトースト自販機
日本5周目:「当店自慢のピザトースト」
過去と現在を対比させるためにも、まずは過去のことを書いてこう。
…それは春の夜、時刻は間もなく22時なろうとしていた。そんな時間だが、阿久津ベンディングが営業していることを僕は知っている。今日はここまで数100㎞を運転してきた僕。ちょっと休憩していこうか。

周囲は住宅地であり、目立っていろんな店舗があるわけではない。つまりはとても暗くてとても静かなのだ。そんな中に『自販機・ゲーム』を示す看板が現れた。これに沿って駐車場へと入る。

わぁ、控えめに言っても「暗い」。駐車場は暗いし、建物の外観も暗いし、ついでに中もほの暗い雰囲気だ。まさにアンダーグラウンドという言葉がしっくり来そうな雰囲気である。
初めての訪問なのでドキドキするが、すでにレトロドライブイン巡りには慣れている。入って行こうぜ、未知の世界!

これが店内だ。思ったよりかは明るい。30年前くらいのレトロなゲームが多いな。
そして、こういうドライブインってゲームエリアと飲食エリアで半々くらいの面積だったりするんだけども、ここはゲームの勢いがかなり強そうだ。飲食テーブルが見た感じ1つしかないし、それすらもゲーム機に囲まれている。
そして数人のお客さんが必死にゲームで遊んでいる。お客さんの熱量、すごい。

僕はゲームのことはよくわからないが、このハンドルを使うゲームはなんだか心を惹かれたので1枚だけ写真を撮っておいた。「ヒルクライマー」というゲームだ。知っている人、いる?
あと、右側に写っているタイルのような紋様が、何とも言えずレトロでカッコいいと思った。

そんなドライブインの自販機コーナーにあるのが、このトースト自販機。昭和後期のもので、今も現存するのは10数箇所のみ。西日本には高知県に1つだけという、相当なレアものなのだよ。

メニューは2つで、「当店自慢のピザトースト」と「昔からの定番ハムチーズ」で、どちらも220円。
僕の好み的にも、レア度から言っても、ここはピザトーストだな。ハムチーズは記載の通り定番で、他のトースト自販機にも大体存在するメニュー。ただしピザトーストはかなりレアなのだ。
お金を入れると内部で温めスタート。およそ1分で、触れないくらいアツアツのトーストがアルミホイルに包まれた状態でゴロンと出てくる。
本来であれば店内の飲食スペースで食べるのだが、ここは周囲のわりと近いところにゲームをしているお客さんが数名いる。すぐ近くで僕がパンをムシャムシャ食っていたり撮影をしたりしていては、お互い居心地悪いよね?だから今回は車内で食べよう…。

暗い駐車場の車の中でトーストの封を開ける。
自販機トーストっていうのはね、ペラッペラの16枚切りくらいの薄さのパン2枚に具が挟まっているもんだ。極限まで具が少ないのもこのトースト自販機の特徴。自販機維持費や管理稼働がハンパないだろうから、これもしょうがないし、むしろこれが醍醐味。
ただね、このピザトーストはチーズもソースも味がしっかりしているタイプ。だから少量でも満足。サラミも1枚乗っているしな。これがあると無いとでは、印象が随分変わるもんな。うまい。
日本6周目:「昔からの定番ハムチーズ」
日本6周目でここを再訪した。今回も春。だけども時刻は朝早い時間。ここは基本的に24時間営業なのだ。住宅地のオアシス的な存在なのかな?

『自販機・ゲーム』を示す看板も、そして建物自体も明るい状態では初めて見るのだ。看板、やはり少しくたびれた感じのデザインなのだねぇ。しかしそれがいい。一朝一夕では出せない無言の貫禄がこの看板に宿っている。

この外観を見て僕は思ったわ。「お前、本当は陽キャじゃないか。なんで夜はそんな無理して悪ぶっていたんだよ。」と。
そう思ってしまうくらいにかわいくポップな外観なんだもん。黄色いし、『GAME』の文字が楽しげだし。下手をすれば「ここはローカルコンビニかな?}って思って入ってしまいそうなくらいの雰囲気。なのに前章の夜は、なんであんなにもダーティだったのだろうね…。

なんだかよくわからないトラのキャラも、扉のところで「いらっしゃいませ」とかわいくフワフワした吹き出しでしゃべっている。
たぶんコイツさ、前回夜に訪問した際には牙むいて獲物を狩る猛獣の目をしていたと思うぜ。昼と夜とでは違う顔を持っているんだ。そうに決まっている。

そしてこれも前回は気付かなかったのだが、自販機トーストの存在を大々的にアピールするポップが貼ってあったのだな。最大のアイデンティティだもんな、いいぞ、もっとやれ。
では、店内に入ってみよう。

前回と全く一緒の構図で写真を撮ってしまった。
前回どんなアングルで写真を撮ったか、なんて全然覚えていなかった次第なのだが、記憶にないと人間ってまったく同じことを繰り返しちゃうものなのかな?それって、僕が人間として全然成長していないってことなのかな?それでもいいや、この際。

さて、今回も最大の目的はこの赤いトースト自販機なのである。パネルに描かれたコーヒーとトースト、そして傍らに添えられたモジャモジャのパセリがたまらなく昭和のオシャレさを醸し出している。「まんまこれを食いてぇ」と、強く思う。

メニューは以前同様に「当店自慢のピザトースト」と「昔からの定番ハムチーズ」で、どちらも220円だ。
前回から時間が流れたのに同じメニューなので、もうどっちも自慢だしどっちも定番と言っていいのだろうな。そういう優しい世界がここにある。
そしてなんか貼り紙が多い。でも内容はどれも『従業員は24時間いるわけではないので、もしトラブルが起きたらゴメンね』という内容だ。そりゃ当然だな。従業員さんだって人間だもの。自販機だってレトロだもの。僕らも優しい世界の一員にならねばなるまい。

ところで今回は、昔からの定番だというハムチーズトーストにした。なるべくいろんなメニューを食べたいのでね。
中身はハムにチーズにマーガリン。シンプルではあるが、このコラボレーションは最高だよなって、改めて思った。安定のうまさだ。
日本7周目:「スペシャル絶品チーーーーズ」
さぁさぁ、久々に来たぜ阿久津ベンディング!!

青空に凛とそびえる矢印看板、いい!!もうボロボロだけどもそれもいい!!
そして話は冒頭に戻るぞ。2025年4月にこのトースト自販機の運営方式がリニューアルされ、外部からの納品形式ではなくって店舗内で作ったものをセットする形式となったのだ。なら食う。答えはシンプルだ。

素晴らしい青空。素晴らしい黄色の建物。夏のドライブはこうじゃなくっちゃ、って思った。でもぶっちゃけ猛暑でツラいので、早く店内に入ろうね…。

ゲーム機をかき分けて進んでいく。
よくわからないけど、ゲーム機は全然新しくなっていないのな。ここもたぶん平成初期くらいで時間が止まっている。スーパーファミコンくらいで止まっている。プレイステーションって言葉をまだ知らない時代のものかもしれない。

スロットコーナーなのだ。『店内スロットほとんど6』なのだ。まったくわからないけれども、その堂々たる『6』に勇気を与えられたよ。僕も面接とかで「自分はほとんど6ですね」とか自慢げに言いたい。知らんけど。
ではでは、ゲーム機はこの辺にしておいてトースト自販機を見に行こうぜ。

るぉぉ!!見て見て、このテンション爆発している貼り紙群!前回よりもさらにいっぱい貼っているよ。寄せ書きみたいだ。ちょっと丁寧に見ていこうぜ。
『お金は1枚ずつゆっくり入れてくださいネ。』
『トースト中ランプ 65秒 お待ちください』
『おぐらマーガリン つぶあんとマーガリン 250円』
『NEW ハムチーズ ハムとたっぷりチーズ 250円』
『少々ブラックペッパー入っています。』
『← どちらか選んで強めに押してネ。 →』
『マーガリンにはトランス脂肪酸が極めて少ないものを使用しております。よろしくどーぞ。』
まだまだ序の口だ。情報量多いな!そして、リニューアル後のメニューは初めて知ったぞ。おぐらマーガリンはめずらしいな。
「昔からの定番ハムチーズ」も「NEW ハムチーズ」に進化した。同じ具材で時代の移り変わりをどう表現しているのか気になる。ブラックペッパーで令和を表現しているのか?

オリジナルホットサンドの名は伊達じゃあなかったな。
さて、小倉なのかハムチーズなのか…。迷いつつもその他の貼り紙を見て、僕はふと目を止めた。第3のメニューがあるのだ。この自販機、メニューボタンは2つなのに、3つ目のメニューがあるのだ。

『限定裏メニュー スペシャルホッとサンド 絶品チーーーーズ 300円 ご希望の方はスタッフまで 絶品チーズを自販機にセットいたします』
『溢れでるくらいの絶品のチ~ズ貼ってます』
『※本当にパンの下からチーズが溢れ出ちゃうので上手いこと食べてくださいね。』
『この限定絶品チーズはお手数ですがスタッフに声をかけてください。』
『チーズが多いので多めにブラックペッパーを入れております。』
『限定裏メニュー 絶品チーズ300円 300円 お求めの方はスタッフに声をかけてください。事務所冷ぞう庫よりお持ちして自販機のプレス部分に入れます。』
笑える。どんだけアピールしているのだろう。もう裏じゃねーだろ、裏の裏に行って表に出てきちまっているだろ。そのくらいのアピールだ。

まだまだ貼り紙は続く。
『スペシャル絶品チーーーーズ 限定ホットサンド300円 ハム抜いちゃいましたの巻 とはいってもハムより高級なチーズをぜいたくに2枚も入れております!!もはやパンにチーズを入れたのではなくチーズにパンを入れたような仕上がりです。よろしくどーぞ』
『チーズ好きな方 グルメな方 若い子にも 絶品チーズ ぜひ食べてほしい~』
『チーズはみ出し注意報!!!』
じゃあもう行くわ、絶品チーズ。
…こういうお店での一番のハードルは、店員さんを見つけることと、そのあと声をかける勇気であろう。でも僕はもうチーズのことしか考えられない。
スタスタと事務所に向かい、小さな事務所内に座っていたおばあちゃんに「絶品チーズを!」と声をかけた。

腰の曲がった小さなおばあちゃんが、「はい、今行きますね。セットしますね。」と絶品チーズを持ってトテトテ歩き、自販機にそれをセットする。最初に出てくる位置に絶品チーズをセットしてくれたのだ。
ドキドキしながら待つこと60秒。出てきたパンを大事に抱えてイートインブースに急げ。

窓際に2人掛けのカウンターがあることを発見。朝の気持ちのいい日差しが差し込むこの席で、絶品チーズトーストを開封してみようかねぇ。

焼き色、良し!!
…ただ、僕もあなたも気になっているのはパンの焼き色ではないよね?その中身。果たしてどんなチーズが隠れているのかが最大の関心事項だよね?
さぁめくるぞ!心の準備はいいか?深夜にこの記事を腹減っている状態で見ている人は、今のうちにブラウザをそっと閉じろよ。飯テロになるからな…!!

あけましておめでとうございますーー!!
思わずそう言いたくなるようなビジュアル!新年の幕開けと同じくらいに尊い。たっぷりのチーズが糸を引いている。ブラックペッパーも多めだ。
宣伝通り、あふれんばかりのチーズ。「ちょっとくどいかな…?」と予想はしていたが、そんなことなくって食べやすかった。ブラックペッパー効果か?でもチーズ濃厚。幸せの度合いってチーズの量と比例するんだなって気付いた。うまい。

ただやっぱ喉乾いたので、店外にある『ほとんど100円』という自販機でドリンク買って喉を潤すことにした。
『ほとんど』とか『ほぼほぼ』とか書くんだったらいっそのこと全品100円にすればいいのに、って一瞬思ったりもしたが、全部とか完璧っていうよりも若干ムラがあった方が魅力的に映るのかもしれないな。

カルピスソーダだ。真夏のカルピスは青春の味よ。たぶん。
テンション高めのトースト自販機の存在するレトロドライブイン、阿久津ベンディング。まだおぐら・NEWハムチーズという未知のメニューがあるので、僕も再訪するかもしれない。
そのときには裏メニューがもう1種類くらい誕生してそうな予感もするけどな。レトロだけども将来が楽しみなドライブインだ。

それでは夏真っ盛りを元気に駆け抜けますか!!
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 阿久津ベンディング
- 住所: 群馬県伊勢崎市平井町1225
- 料金: 絶品チーーーーズトースト¥300他
- 駐車場: あり
- 時間: 8:00~23:50