熱海の「野中山トンネル 」。この名前だけではピンとこない人は多いだろうが、その写真を見れば道路・隧道マニアは「あぁ…!あそこか…!!」って言うかもしれない。
そんな、一目見たら一生脳裏にこびりついて離れなくなるようなインパクトのトンネルが熱海駅から徒歩圏内にあるのだ。

狂おしいほどのカーブ。そして高低差。トンネル内から撮影する1枚の写真で、トンネルの入口と出口が収まってしまうって、どういう事態なんだろうね。
もう一度言うが、これが野中山トンネルだ。
そして今夜は、このトンネルを探訪した2025年の肌寒い日の朝の思い出を語る。
海付近から歩こうか
昭和時代に隆盛を極めたが、バブルがはじけて沈静化してしまったスポットの代表格として長らく語られていた熱海の町。しかし令和と共に活性化し、今や若者に大人気な観光地に返り咲いているのを、あなたはご存じだろうか?

特に熱海駅前の商店街での食べ歩きは大変に楽しい。だから僕も2025年の今年、熱海に宿を取ってこの町をしっかりじっくり観光したほどだ。「熱海サイコー!」って思った。
…そんな熱海、駅から徒歩圏内に本当にエグいトンネルなんてあるのだろうか?まずはGoogeマップを引用するので場所をご把握いただきたい。
留意点が2つある。
- スマホから見ている人は、熱海駅が地図に入っていなくってごめんなさい。右上に存在しているのでちょっとだけズラして存在を確認してほしい。ちなみに駅からトンネルまで徒歩14分ほどだ。
- 野中山トンネル自体は、2025年現在はGoogleマップに存在しない。上の地図にピンを置いた「道祖神」から北に入ったU字のカーブが野中山トンネルである。

さて、僕は訪問前にこのトンネル付近の地図を注意深く確認した。
トンネルはなかなかすんごいビジュアルなので、ちゃんと自分の足で歩き、いろんな角度から写真を撮りたい。つまりは車を停めて見学したい。だがトンネル近くにはコインパーキングはなさそうだ。ならばどこに駐車する…?
僕は用事のあった海付近の駐車場に愛車を停めると、そこからトンネルまで歩くことにした。10分ちょいくらいでトンネルまで行けるかな?
…それよりも、この街灯見てくれ。昭和時代っぽいデザインだが、たまらんねぇ。夜にこれが輝くところを見てみたい。令和には作れないデザインよ。…たぶん。

熱海は坂の町。海から駅付近までもすごい坂だけども、さらにその先はヤバいレベルの坂が連なっている、そういう感じの町なのだ。
ここは目指すトンネルまで直線距離で200mくらいの地点、「熱海七湯 小沢の湯」から北に入った坂道だ。肌寒い朝なのだが、いい感じの負荷が体にかかり、息が上がってきている。

「熱海市立図書館」の裏側。坂の下にあたる部分。車道はないが、徒歩だとこのすぐ脇を図書館の表側に出る階段があるので、そこを使わせてもらう。車に比べてショートカットができるのだ。
ちなみに写真奥に大きくそびえているビルは「ライフケア診療所」であり、その左手すぐに野中山トンネルが存在しているそうだ。

その図書館脇の階段をのぼりながら撮影したのがこの写真だ。正面には「藤森稲荷神社」の赤い幟が見えている。あの脇から入る小道の先、すぐのところにトンネルがあるぞ。あとちょっと。ワクワクしてきた。

階段を上りきったところで、熱海駅から来宮駅に向かう際にはみんな通るであろう、少し大きめの車道に出た。
僕の正面には藤森稲荷神社。冒頭のMAPでピンを置いた道祖神のある地点だ。そしてトンネルはというと、まさに写真の中央部。暗がりの中にググっと登っていく道がそれだ。
本来だったらこのあたりに駐車できればベストだったのだが、そういう感じの駐車場が無かったので歩いてきた次第よ。あなたがもしここを訪問したいのであれば、ご自身で探してみてほしい。僕より歩行距離短いコインパーキングはきっとどこかにあるはずだから。
野中山トンネルの中を歩く
藤森稲荷神社を右手に見ながら小道へと入った。

右手には藤森稲荷神社が見えている。両側は切り立った石壁だ。もともとこういう谷だったのか、それとも人的に掘り下げて”切通し”のような道を設けたのか…。
後者であればこの先のトンネルの向こうには、それだけの工事費をかけるだけの価値のあるものがあるのだろうが、どうなのかな…?

藤森稲荷神社の横を通過し終わると共にに現れるのがこの看板だ。1つ前の写真でも小さく映り込んでいた看板だ。
『走行注意 この先トンネルあり 道路幅員が狭い為、車両のすれ違いできません。 300m先 行き止まり』
よーし、高鳴る鼓動!!目的地は目前だ!!

改めてトンネルにフォーカスしたMAPを掲載してみる。熱海市立図書館もMAPの最下部に載っているので位置関係の参考にしてくれ。
野中山トンネルは赤丸で囲った部分であり、冒頭で記載した通りGoogleマップ上にはその名前は存在しないけれども、確かにここにある。すさまじいU字カーブであることが地図からも窺えるであろう。
その先を目で追うと、「リラックスリゾートホテル」にて行き止まりとなる。それが現在地から300m先の地点というわけだ。
リラックスリゾートホテルの口コミを見てみたら、案の定「行くまでの道がすんごかった…!」みたいな投稿がドバドバでてきた。そうだろうよ。トンネルを乗り越えた先のホテルでは、さぞかし緊張から解放されてリラックスできるだろうよ。

野中山トンネルがついに見えてきた。…っていうか、さっきの看板のところからも少し見えていたのだけども。今のところ、道幅に準じたやや狭めのトンネルっていう感じの印象しかないけどな。
ところでだ、もうちょっと工夫した角度で写真を撮っておけばよかったと思っているのだが、写真の右上に、コンクリの擁壁の上に少しせり出すように住宅の基礎部分があるのがチラッと見える。
トンネルのカーブと高低差のエグさをイメージするのにあたって重要なことなのだが、トンネルの出口はこの住居の表玄関の前の前だ。ちなみにトンネルの長さは21m。たった21mで、あそこの入口から、あの高さの住居の表側まで行くのだ。恐ろしい話よ。

御託はいいので、まずは入ってみるか。
あ、すごい傾斜とカーブ。マリオカートであれば、「ギャルギャルギャル…!!」とすさましいドリフト音を響かせながらミニカートが下りてきそうだ。そんな道が現実存在しているのだなぁ。

ワハハハハハ…!思わず微笑みのこぼれるトンネル中心部だ。なんてカーブ!なんて急斜面!立っているのがツラい!もしかしたら撮影の上で少しカメラを傾けてしまったかもしれなけども、この画角が決して大げさではないぞ…。
心から、徒歩でここに来てよかったと感じた。非力な僕の愛車では、ここの坂の途中で力尽きかねない。

そして出口。たった21mのトンネルなので、歩いても一瞬なのだ。
しかしその一瞬に込められたエナジーがすごすぎるのだ。出口から差し込む光が神々しい。このトンネルを抜けたものだけが見れられる栄光の光よ。知らんけど。

少し降格で撮影してみた。トンネルの入口と出口が同時に写る構図だ。
まるで巻貝の中にいるかのような錯覚。そして中央部分がもはやトンネルの壁というよりも"柱"のようにも思える細さ。さらにはそこに鎌を持った死神のようなかたちのシミまであって、雰囲気モリモリだ。
この柱のようなトンネル内壁の向こうに、先ほど触れた家が1軒建っているんだよ。

出口付近から入口を見下ろした図。もはや"振り返った"ではなく"見下ろした"という表現のほうが適切。ここからボールを転がしたらこれ、トンネルと谷間の道路を綺麗に辿りながら15秒後には図書館にぶつかると思うぞ。
動画も撮影した。15秒の短いものだけども、より立体的にトンネルを把握できると思うのでぜひ再生してみてくれ。
坂の町を振り返って…
こうして僕はトンネルの出口に到達した。

トンネルの出口がこれだ。入った瞬間にすごいカーブが始まっているのがわかるね。そして左側に見えているのが、入口の直前、つまり21mで遥か見上げていた住居の表側だ。
トンネル開口部の左側には黄色い看板で『上り車両優先』と書かれている。トンネル内のすれ違いは不可であり、もし対向から車が接近してきているのであれば上り側が優先して通行できるのだな。一気に上らないと、再発進できないことにもなりかねないからな。

トンネル脇の住居の駐車場と、その先へと進む道。この駐車場への駐車もなかなかのテクニックを必要とされそうだな…。下から上ってきた場合、どこでどのように車の向きを反転させているんだ…?
そして、この先200mほどでリラックスホテルがあって行き止まりだ。だが僕の目的は行き止まりまで行くことではなく、このトンネルを往復すること。なのでここで下界に帰ろう。

ほんの数分の探索だったのに、図書館前まで戻って来たときには緊張感から解放されてホッとした気持ちになった。あ、ところで僕が探索&往復している最中には、車は1台も通らなかったよ。
このあと、熱海七湯_小沢の湯をチラリと見学しながら、来た道を海まで戻る。

野中山トンネルは、1952年に出来たらしい。その目的は、トンネルの先にあるホテルや保養所へのアプローチロードとして造られたのだそうだ。
昭和時代に熱海が盛り上がる少し前のフェーズ、高台にそういった施設を造ればブランド力を得られる、そのためにはトンネルを造る価値がある。そう考えたのだろうね。

僕は行かなかったものの、確かに高台の解放感と眺望はすごいものだそうだ。
ただし、このトンネルのことを某SNSに掲載した際には、「用事で行ったことがるが、もう二度と行きたくない」とか「郵便配達を担当していたが、毎回カブがひっくり返りそうになった」みたいな貴重なコメントも結構いただいた。
トンネル自体も老朽化してきているし、気候によっては滑るしで、いろいろ課題があるらしい。とはいえ、整備のためにトンネルを封鎖してしまうとその先のエリアが陸の孤島になってしまうので、なかなかに歯がゆい状態だそうだ。

美しい坂の町、熱海。だからこその魅力もあるし、課題もあるのだろう。
それを象徴するかのようなトンネル、野中山トンネル。もう行くことはないかもしれないが、一度で充分に記憶に刻まれた。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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