麺類などのレトロ自販機は、レトロなドライブインや個人商店などに設置されているケースが多い。しかし、信州にはお蕎麦屋さんの店頭にこのレトロ自販機があるのだ。コイツはレアだぜ。

このように、お店の敷地内に自販機コーナーがあり、その1つがレトロ麺類自販機なのだ。
人間観察をしていると、蕎麦屋の店内で食事を終えて満足そうに出てきたお客さんが、「じゃあ自販機でドリンクでも買ってから出発するか」みたいなテンションでこのラインナップを眺め、「ここにも蕎麦あるやーん!」と驚愕する光景を短時間で数回見た。
別に彼らが実際そのようなセリフを口にしたわけではないが、表情と呼吸からわかるんだよ、僕には。僕、そういう系の能力者だから。

さて、冗談はさておき「そば処 ふじさと」。そこを目指したお話をしたい。
お店からわずか数分でこんな光景なのだよ。最高っしょ。
2017年の初訪問
最初に訪問したのは春うららな季節だったな。もう5月に入ってはいたのだが、さすが信州は気候が爽やかで、まだ山桜がチラホラと咲いているのが印象的であった。

これがふじさとだ。左側に写っているのが当時の僕の愛車だ。
お店は日本風のたたずまいの蕎麦屋さんで、もうこの店構えを見ただけで「おいしい蕎麦屋さんに違いない」って思ってしまう。…が、今回用事があるのはここじゃないんだよなぁ、申し訳ないんだけど。
冒涜だと思われかねないけど、用事があるのは自販機コーナーの蕎麦なんだよ。

話は反れるのだが、すごく小さい頃に母親と一緒にとある女子高の文化祭に行ったのよ。カフェみたいな店舗があり、メニューにケーキとカップラーメンがあったのよ。僕はカップ麺を選んだね。なぜならカップ麺を食いたいからだ。
母親は怪訝な顔で「お姉さんたちが作ったケーキがウリのお店なのになんでカップ麺なんかを…」みたいなことを言っていた。僕は甘党ではないのでケーキよりも、普段親が禁止しているカップ麺を食べれる方に価値を見出したのだ。そもそもケーキを食べてほしいのであれば、カップ麺なんぞ売るなや。
ちなみにカップ麺はおいしくなかったです。なぜならポットのお湯がすでに冷めていて、3分待っても面がゴワゴワだったからです。

そんなはるか昔の記憶をなぜ鮮明に覚えているのか。それは罪悪感があるからだ。
…しかし一度ダークサイドに堕ちた魂は永遠(とわ)に浄化できねぇよな。本格手打ちそばを入口の前をスルーし、僕はレトロ自販機に対峙する。食べ物も人生も、ジャンクな方がワクワクしちまうのだ。
メニューは天ぷらそばと天ぷらうどんで、どちらも250円。安ッ。

ここは蕎麦を選択した。蕎麦屋だもんな。この点は幼少期の自分には無かった粋な選択ができたと思い、ほくそ笑む。
10数秒でカウントゼロになると取り出し口から蕎麦が出てくる。

おぉ、いいビジュアルではないか。かき揚げが既製品っぽくなくって、なんだか生き生きとしている。後から調べたところ、これは店舗の方でちゃんと揚げているものなのだそうだよ。ありがてぇ。

ところでここには自販機麺を食べるためのテーブルスペースはない。
上の写真のように主にタバコを吸う人向けと思われるベンチはあり、そこに腰かけて食べることもできそうだが、ちょうど僕が食べようとしたタイミングでは別の喫煙者のお客さんで埋まってしまった。長々と昔語りなんかしてたからだな、なんてこった。

…というわけで、車内で食べることにした。窓を全開にして春風を感じながら食べたのだ。これはそれで風情があってよい。
蕎麦の麺はやや太め、ダシの味は濃いめ。元気が出てくる味だ。かき揚げがタマネギや小エビなど、具沢山。うまい。

なんか覚えていないけど、当時もう一枚写真を撮っていたみたいなのでせっかくだから載せておくね。たぶん1つ前のが中途半端に光が当たってしまったので撮り直したんだと思う。
食べながら自販機コーナーを見ていると、ツーリングの人たちなどもやってきて次々にレトロ自販機から麺類を購入していた。知名度もあり、かなり人気みたいだね。
ライダーさんたちは僕のように車内で食べるという手段がないので、そのまま座り込んで食べていた。あぁ、僕も外で座って食べてもよかったかな。なるべくこの地・この店の雰囲気を味わいたいのであれば、車内という選択肢は取らない方がよかったかな?
…まぁそれは次回に取っておこう。
2025年の再訪問
驚異の250円のままのそば・うどん
灼熱の2025年夏。僕はたまらずに信州に逃避行をしていた。「美ヶ原」とかの高原はすんごくいい風が吹いていて爽やかで最高だった。

さすがに高原から降りてくると汗ばむ暑さではあるが、それでもここ信州信濃町は都会とは暑さの質が違うね。不快感がなく、湿度も控えめのように感じられる。
さぁ、懐かしの店舗が左前方に見えてきたぞ…!

店舗も暖簾も幟も前回同様、変わらない安心感がここにあった。
ちょうど昼時とあってか、10数台は停められるであろう駐車場はほぼ満車であり、その隙間を縫って僕も駐車することができた。レトロ自販機を使用している人は1組しかいなかったので、店舗側が人気だということだね。店舗ももちろん気にはなるが、僕のターゲットは今回もレトロ自販機だ、すまん。

自販機の並びも大体一緒だが、わずかに違うね。レトロ自販機の右側のタバコ自販機がスリムになった。そのおかげで空間ができ、そこに缶類用のごみ箱が設置された感じだ。
麺類自販機はこの数年でややくたびれた感じもするが、屋外設置なのでそれもしょうがないであろう。ちゃんと稼働してくれていて何よりうれしい。

メニューボタンを見て驚いた。価格がそば・うどん共に250円のままなのだ。2017年から2025年現在に至るまで、値上げされていないのだ。
マジかよ、今は平成ではないのだぞ、令和なのだぞ。この物価高の時代に料金据え置きとはすごすぎる。維持費もバカにならないだろうに、大丈夫なのかな?それだけ店舗側が順調ってことなのかな?
なんにせよ、ありがたい話だ。

ただし500円玉を使う際には注意だ。
売切れ時に500円玉を投入すると、もうどうあがいても返却されないというバグが発生している様子だ。『返却できません』ではなく『返却しません!』という表現に、あらがえない運命を感じる。例え店舗の人に相談しようとも「返却しません!」なのかな…?

じゃあ、今回はうどんにしようかな…?
蕎麦屋さんだけども、うどんなのだ。食べたことがないうどんを食べてみたいのだ。
うどんもそばもうまかった
今回は前回に叶えられなかった野望がある。ちゃんと店舗に用意されている飲食スペースで食べるという野望が。ちょっと以下の写真に着目してほしい。

以前に対しバージョンアップしているのだ。ベンチはよく見ると前回と同じものなのだが、その前にテーブルが設置されている。めっちゃゴツくて、そしてベンチに対しやや小ぶりなテーブルだ。
コイツは2025年で一番うれしいニュースだぜ!これで器をテーブルの上に置いて食事ができるのだ。
あと、隣のたばこ売り場の窓口もいいよね。たぶんご時世から今は使われていない窓口だと思うけども、このデザインがとてもよい。
僕の到着時にはこのテーブル&ベンチを使用して1組の人が食事をしていた。数分待つことで入れ替わりのタイミングがやってきた。ご挨拶をし、僕は250円の天ぷらうどんを購入して席に着く。

細めで平麺で、美しいうどんじゃないか。
さすがにそばやうどんまでは横の店内で打ったものではないらしいが、それでも本格蕎麦屋が提供する麺なのだ。名を汚すような品であるはずがないよね。

天ぷらはポテッとした立体的なビジュアル。食べてみるとちょっと冷たい。…がこれもご愛敬だ。
そもそも自販機内は冷蔵庫機能があり、麺類は冷やされつつ提供されるのを待っている。僕ら購入者がボタンを押すと、丼に2・3回お湯が注がれつつ湯切りをされ、最後にアツアツのダシが入って出てくる仕組みだ。
立体的な天ぷらは、その2・3回の湯通しにおいて芯まで温まらなかったってワケだ。でもそれだけのボリュームがあるってことよ。

正面に駐車している愛車を眺めながらのうどん、うまい。
高原とはいえアツアツのうどんを食べていると汗ばんでくるような陽気ではあるが、時間の関係もあり飲食ブースが日陰であったこともありがたい。
さて、もう少しお腹の余裕があるな…。今日は朝からソフトクリームしか食べていないのだ。
では、そばも食べちゃおっか…?

天ぷらそばだ。天ぷらのかたちがワイルド極まりないのも、ハンドメイド感があっていいよね。そばは相変わらずうまい。
左端に写っているのは、そばと一緒に購入した缶コーヒーだ。間違ってホットを選択してしまい、この陽気の中で致命的なミスをしてしまったと悔やんだ。それでも飲んだけど。

こうして過ごしている中でもひっきりなしにお客さんがやってきて、レトロ自販機にて麺類を購入していた。
心地よい喧噪だ。こんなひとときが旅を豊かにしてくれるよね。
お腹いっぱいで大満足となった僕は、飲みかけのホットコーヒーを持ってドライブの続きを再開する。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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