焼きそばが好きなのである。
あのソースと青海苔の香りがたまんねーってのもあるが、幼い日に縁日の焼きそばが食べたくっても親が許可してくれずに食べられなかったというほろ苦い思い出もブーストしてくれていると思う。
よって今はご当地焼きそばがあれば食べに行くし、”焼きそば専門店"という言葉を聞けば胸がキュンとするほどの変態に成長した。

今回は栃木市名物のじゃがいも入り焼きそばの話をしたい。
小さなお店でストイックに焼きそばのみのメニューを提供しているお店、「焼きそば櫻井」。うめぇぞ。
2022年、闇夜の訪問
コーヒーを飲みながら焼きそばを待つ夜
なぜ僕がこのお店の存在を知ったのかというと、それは「絶メシロード」という絶滅してしまいそうな絶品メシを出してくれるお店を巡るドラマで見たからだ。
僕はそれらを巡っているので、ほかのお店も気になるならば下記リンク先から参照してみてほしい。
では、日本6周目の初訪問時から振り返ってみよう。
それは秋も後半にさしかかった18時ちょっと前であった。お店は18時閉店と聞いていたので、もうオーダー終了してしまっているかもしれない…と覚悟しつつ向かった。
この時期なので、18時前ではもう真っ暗なのだ。お店のある路地も完全に闇夜で静まり返っていた。

あ、でもまだ暖簾がかかっていた。店内に入りおばあちゃんに「まだオーダーできますか?」と聞くと、優しくOKしてくれた。ありがたい。
本来であれば店内で食べてみたいところなのだが、さすがに閉店数分前なので持ち帰りにすることとした。店内で食べるのはまたいつか機会があったらとしよう…。

メニューはシンプルで、じゃがいも入りの焼きそばのみ。サイズは大小の2種から選択できる。ここは無難に小にしてみようか。スパイシーソースも気になるが、持ち帰り時にオーダーできるわけではないので今回は謎のままだ。
2020年のドラマで見たときには小は350円・大は500円だったので少し値上がりしているが、コロナ禍とかでいろいろあるだろうから、それはしょうがない。むしろこれでも全然安い。

おばあちゃんは「コーヒーでも飲んで待っていてくださいな」と、インスタントコーヒーをサービスしてくれた。なんというありがたい心遣い。
1つしかないテーブル席に座り、コーヒーを飲みながら待つことにした。いつかこの席で焼きそば食べたいけどな…。

テーブルのすぐ脇に調理スペースがあり、おばあちゃんはそこの鉄板で焼きそばを作る。鉄板の目の前には窓があり、外から窓越しにテイクアウトを頼むこともできるスタイルのようだ。

店内の色紙を眺めながら過ごす。小さなお店だが、やっぱ知っている人は知っているのだな…。一番右が絶メシロードの主演さん紹介のためのチラシだね。
絶メシロードの番組ポスターもあったのだが、店外に掲示してあり闇夜でよく見えなかったので、それは2回目訪問時の章でご紹介しよう。

焼きそばは10分も待たずに出来上がった。いい匂いだ。
手に取ったプラケースは焼きそばの熱を通してホカホカであり、すぐにでも食べたい気持ちになったが、ここがガマンだ。後ほど食べよう。

…ってことで、次章は実食編だ。
じゃがいも入り焼きそばはうまい
翌朝になってしまったが、焼きそば櫻井で購入した焼きそばを食べることにした。
プラパックだからどこででも食べることは可能だったのだが、しっかり焼きそばに向き合いたかったので、明るい時間帯に落ち着いて食べられるロケーションを選んだのだ。

朝日に照らされる焼きそばのパックが尊い。そして1枚紙をセットしてくれていることで感じる丁寧さと特別感よ。あ、2つあるのは家族と食べるからです。

あぁ、パック越しでもわかるじゃがいものゴロゴロ感。栃木市特有のトッピングだ。
ドラマによると、ご主人が10数年フラッとどっかに行っちゃって、帰ってきても仕事しなくって、それを見るに見かねた近所の駄菓子屋のおばあちゃんが焼きそばの作り方を教えてくれたのだそうだ。
そこからこの焼きそば屋さんがスタートしたらしい。すごく老舗というわけではなく、2005年くらいの創業だそうだよ。

でも、僕が訪問したときはおばあちゃん1人しかいなかったなぁ。ご主人どこ行った?またフラッと出て行っちゃったのか?…いや、時間も遅かったこともあるだろうし、ご夫婦かわりばんこで店番をしていたのだろう。
ところで焼きそば、うまそうだな。上に魚粉みたいなのかかかっているのも特徴だな。
電子レンジで温めることも検討したが、あえてそのまま食べることにした。レンジだと風味が飛んでしまうかもしれないし。時間が経ってちょっとポソついた焼きそばも好きだし。

あぁ、うまい。じゃがいも以外に何か明確な特徴があるわけではないが、シンプルにうまくって毎日食べても飽きない味だなって思った。
他に具は少量のキャベツと…、わかりづらいけどもひき肉が入っていたよ。だからコクがある。

じゃがいも、大きすぎず小さすぎずの絶妙なサイズだ。ペロッと食べ終わってしまった。
またいつか、今度は店内で食べられる日を楽しみにしておこう…!
2025年、猛暑の再訪
少し時間は流れて2025年の暑い暑い夏、日本7周目の過程で僕はここを再訪した。ようやくイートインできるかもしれないぞ…!

あぁ、ところでこのお店の駐車場は店舗前に1台分だけ。店舗を覆いつくすように駐車しては失礼かなって思い、僕はギリギリ敷地に入るくらいの位置で駐車してみたよ。

『とちぎし名物 じゃがいも入り 焼きそば販売中』と書かれた幟が風に舞っている。
さて、営業中であることは確認できたが、店内のテーブルは開いているかな…?なにせテーブルは1つしかないので、先客がいたなら待機するかテイクアウトするしかない。
僕は今回はイートインする気満々だ。先客がいたなら食べ終わるまでプレッシャーかけつつ待機する所存だ。

だがラッキーである。店内は誰もいなかった。
あ、これは退店時におばあちゃんにお願いして撮影させてもらった店内の全容図。テーブルはこの1つのみであり、写真のすぐ右が1畳ほどの調理スペースとなっている。

奥からおばあちゃんが出てきた。そして「本当にこの夏は暑いねぇ。麦茶どうぞ。」と冷たい麦茶を提供してくれた。ありがたい。
今日はまだ落ち着いた気候であるが、2025年はかつてないほどの猛暑に見舞われた年であり、地球はどうなってしまうのかと本気で心配になる年であったのだ。

焼きそばの小は480円、大は580円でささやかな値上げ。この物価高の中でこれだけしか変動がないのは、本当にありがたい話だ。
焼きそばメニューのポップ内にまで『辛口あります(スパイシーソース)』と書かれており、アピールがさらに熱心になっている。気になる。
今回は大をオーダーしてみたよ。腹ペコだったのだ。

おばあちゃんが鉄板でチャッチャと炒め、想像以上に早いスピードで焼きそばが登場した。あ、そういえば今回もご主人いないな…。ご主人どこ行った?またフラッと出て行っちゃったのか?

しかしテイクアウトではなくイートインの焼きそばは、やっぱビジュアルがそそられる。食べてみると色は濃い目なのに味はそこまでしつこくなく、グイグイと食べ進めることができる。じゃがいももアツアツホクホクでうまい。
おばあちゃんは「昔、同じ量の焼きそばでもなるべくお腹いっぱいになるようにって生み出されたのがこれなの。昔は近所に揚げたじゃがいもを入れて焼きそばを提供しているお店もあったのよ。」と説明してくれた。

おばあちゃんに「スパイシーソースって何?」と質問したことで紹介してもらったのが、この2種だ。
向かって左はテーブルに備え付けのもの。「すんごい辛いから。辛いの大丈夫なお客さんが自信満々にかけて大変になったりしているから。」って忠告された。
向かって右はおばあちゃんにオーダーすることで、冷蔵庫から持ってきてもらえるもの。これはややスパイシーになる程度で、おススメなのだそうだ。
後半で両方試した。
後者の方はピリッといい感じに辛くなり、僕好みだ。少し多めにかけてスパイシー焼きそばにアレンジすると面白いって思う。
前者はマジ危険。ちょこっとかけただけでも口の中から炎が出る。おいしいけども慎重に使うべきだな。

食後、おばあちゃんは僕の対面に座ってくれ、ゆっくりお話ができた。
おばあちゃんは横浜観光をしたときの話などしてくれた。あぁ、横浜いいよね。僕の大好きな街です。僕はこの後新潟県を目指す話などをした。あと、このお店でイートインしたかった野望がようやく叶って嬉しい旨を報告した。
上の写真は絶メシロードのポスター。店外からしか見えないし、ちょっと隠れてしまっているけども、貼ってあることがうれしいぜ。

路地裏の名店、櫻井。
絶メシ店なので後継者はいないそうだが、おいしいじゃがいも入り焼きそば、いつまでも残ってほしいなぁ。無理せず末永く営業できることをお祈りします。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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