どこからどう見ても廃墟としか思えないようなドライブインがある。
結論から言うとかろうじて現役であり廃墟ではないのだが、個人的には廃墟と表現してしまってもいいんじゃないかと思うほどだ。
ゾンビになってしまった人にほんの少し理性が残っていて、かつての恋人が名前を呼ぶと一瞬襲ってくるのを辞めて涙を流した…と言っても、それってもうほぼゾンビじゃん…!っていうのと同じくらいだ。残酷な判断だけども彼、ほぼゾンビだよ。
こんなことを書いてしまうと、あなたは「現役で頑張っているドライブインに廃墟廃墟と連呼するは失礼だ!ドライブインは隆盛を極めて頃から数10年が経過しているから、古めかしく見えるのは当たり前だろ!」って思うかもしれない。
では優しき人よ、これを見てもまだ同じことが言えるか…?

バッキャバキャである。ゾンビの根城になっていそうである。この店舗内のどこでどうすればドライブの疲れを癒せるのか、悩み抜いた末に僕は考えるのを辞めたのである。
「ジョイフル24」。今宵はこの名前に震えて眠れ…!!
昼も静寂、人はゼロ
まずは基礎知識だ。今回ご紹介するジョイフルは2つで1セットのドライブインだ。世にも珍しい双子ドライブインだ。もしかしたら正確に言うと違うのかもしれないけど、とりあえずここはそういうことにしておいてくれ。

国道122号を挟んで2つある。南側のジョイフルはGoogleマップでそのままでは出てこず、スポット名で検索した後でそこにブックマークを付けて初めて地図上に登場するという、隠しキャラみたいな仕様だった。なんだそれ。
昼-南側
僕が初めて訪問したのは、南側だった。南側に先に入ったのだ。

なぜなら、巨大な「自販機」という看板があったし、その奥にドライブインの建物が見えたからだ。上の写真、建物までは写真に写っていないけども、車の右側にある。
で、上の写真を撮りながらよくよく看板を見ると「← 自販機」ってなってて噴いた。矢印、左なのかよ!国道を挟んで反対側、北側ドライブインを指し示していたのかよ!なんでなんで!?

引きで撮影してみた。どう考えても不思議な配置だ。まぁこのくらいで不思議がっていたら、この先のめくるめく世界感に泡吹いて卒倒するだろうから、このくらいでは動じないぞって気を持ち直す。

で、これがドライブインの建物だ。造りはしっかりしていそうだ。綺麗な長方形だ。前面がガラスで開放感もある雰囲気だ。
ただ、なんだか内部が暗いような気もする。自販機などが稼働していれば見えるであろうパネル類の照明がない。人の気配もない。そういえば建物の周りに軽く茂みが形成されつつあるし、アスファルトも経年劣化が始まっている。
ある種の人はそれを「廃墟っぽい」と表現する。敷地を取り囲むようにロープがあって立入禁止ならばしっくりくるが、そうではないことに逆に戸惑いを感じる。
でも、気のせいかもしれないしな。中に入ってみよう。

エキセントリック!!
なんだこれ。マッドマックスみたいだ。フィクションにしか存在しないようなディストピアな世界でマッチョな荒くれ者が酒飲んだり賭博したりしているドライブインみたいだ。天井がズルッズルに崩れてきているし。
とりあえずこのイスには座りたくない。座る理由もない。

そんな中で、僕の大好物の富士電機製のレトロ麺類自販機、そしてこれまたレトロなカップヌードル自販機があるのがいい。これが退廃的な空間に花を添えている。
…が、稼働していないけどな。少なくとも10数年は止まっている。うん、それは知っていたのでショックは無いけど。

あと、ポツンと両替機がある。メジャーな飲料自販機などはメーカーさんが採算取れないと判断して回収して無くなった可能性がある。ドライブイン自身が所有していたこの3台だけがここに残ったって感じなのだろうか…。
あなたはここまで見て「立入禁止になっていないだけで、実は廃墟なんじゃないの…?」と思い始めているだろう。僕もそう思ったが、現役である明確な根拠がある。
それは、照明が付いているという点だ。昼訪問時にはそこにフォーカスした写真は撮っていないのでわかりづらいかもしれないが、上の写真にも蛍光灯がチラッと写っている。通電しているのだ。生きているのだ。

一部は天井がベロベロに剥がれ、一部ではこのようにヘンテコなツタが這っているが、また一部では蛍光灯が輝いているのだ。なんて奇妙な店舗なのだろう。脳がバグる。

自販機全滅だしイスには座りたくないとあってはやることもないので、また外に出た。
そういえば、ここがジョイフルであることを示すのは、このガラス戸に貼られているステッカーのみだ。外も中も全然ジョイフルな雰囲気じゃないけど、名前だけはジョイフルだ。

他に名前を示すものは無いかな、そういえば看板みたいなものがくっついているな、って思って側面~背面に回ってみた。
確かに看板のようで過去に何か書いてあった様子だが、剥げてしまって全くわからなかった。てゆーか、なんで看板が大木に向き合って設置されているのだ?国道から全く見えないし敷地に入っても見えない。意味あるのか、この看板…。
昼-北側
次は北側だ。南側はあんな感じだったが、まさか北側も同様ってことは無いよな…?

北側にはちゃんと"ジョイフル24"と書いてあるし、店頭には電話ボックスもある。なんだかこっちの方が整備されている気がするぜ。
あ、ちなみに冒頭でも貼り付けたGoogleマップでは、この2つの店名が逆になっている。南の方が"24"になっている。でも間違っているところで鼻息荒くクレームいう人もきっといないのだろうね。

わぉ、綺麗!いや、たぶん一般的な感覚から言えばそうではないのだろうが、南側でハードルが下がり切っているので、ここに入ったときに感動したのだ。
剥がれていない天井!自販機!ゴミ箱!小上がりみたいなスペース!…100点!!
じゃあ、これらをじっくり見ていこうか。

レトロ麺類自販機はやっぱ故障して非稼働だ。いつまで生きていたのかは知らないが、当時は250円だったらしい。館林の「松本食品」の麺だからおいしいのだとステッカーが貼ってある。食べてみたかったな…。

ポッカのレトロな自販機。これも非稼働であり、ディスプレイもすべて撤去されてしまっている。
そしてこの建物内は設置されているイスは1つも無いが、上の写真のように片隅に積み上げられている。スズランテープで縛られているので、再設置する予定は無さそうに見えるな。

なんか片隅に紙垂が設置されている。空調の上に置いてある瓶の中にも詰まっている。なんでなんで?なんかこういうものが廃墟みたいな建物にあるのって、すんごい怖いんだけど…!?

水道にも注連縄が置かれている。どういうことだろう。
蛇口はグルグルに縛られていたので水を出すことはできなかった。水道は通じているのだろうか…?確認してみたかったけどな。

窓には鏡が吊り下げられており、風でフワフワと揺れていた。あ、これはフクロウのかたちの鏡なんだね。2つある鏡が左右の目なんだね。
わざわざここに鏡を設置するために竹竿を括り付けているという、仕事の丁寧さよ。
…と、ここまでは南よりかは若干綺麗とはいえ、やっぱ廃墟感が漂っていると感じる。ではここからは徐々に生きている証を説明していこう。

レトロ汎用自販機。これも非稼働だが、上部の古いタイルのようなデザインのラッピングがキュンキュンきたので撮影した。
そのおかげで半分切れてしまったのだが、見てくれその右側の自販機を!新しいデザイン!そして通電している!!ちゃんと販売され、そして販売されているということは定期的に販売員さんが来てくれているのだ。

なんて嬉しいことじゃないか。生命反応を100%確認するためにも、購入したさ。もちろんちゃんとドリンクが出てきた。
そして出てきたからには、このドライブイン内で飲むのが礼儀だろう。だって、ちゃんとドライブインを現役として楽しみたいじゃないか。このシチュエーションにエナジーも高ぶったし、パワーもはじけるぜ。

白い服なので畳の小上がりに座るのは辞めておいたけど、この廃墟系ドライブインで一休みするのは至高だ。
どうやら10年前にはテーブルタイプのゲーム機もギッチリ設置してあったし、自販機もたくさんもあったのだが、その後に急速に衰退してしまったようだね。それでも営業していることに意地を感じる。なんか辞めるに辞められてない状況が切ない。

ほぼ廃墟。そあと何年続くかわからないけど、そんな中でも利用できたことが嬉しかったりする。春の爽やかな風が通り抜けていた。

お店の入口のガラス戸には、ちゃんと今年である2025年のカレンダーも貼ってあった。業者さんのドリンク補充だけではない、ちゃんとオーナーさんの息遣いが感じられた。

あと、トイレが屋外なのだが開放的過ぎる。国道を走る車から丸見えだぜ。もうちょっと男性陣のプライバシーを守ってくれーって思った。こういう丸見え系の公衆トイレは今もちょいちょい見かけるが、僕は使用できない。

敷地内の国道ギリギリには、こういう小さな小屋もある。かつてはここでスナックなどを販売していたりしたのだろうか?南北でドライブインがあり、さぞや一体感があって賑わっていたのだろう。
かつての様子、ちょっと味わってみたかったなぁ…。
夜は世紀末、ヤバい
気になりすぎたので、その後に夜に訪問したりもしている。だってさ、このドライブインは夜の方が絶対に雰囲気あるもん。ならば夜に行かなきゃ。

ワクワクしすぎて、まだ暗くならない時間帯に着いちゃった。あと30分くらいでそれなりに暗くなるだろうか…?しばらく待つことにした。
国道を走る車が僕のことを「アイツどうしたの?」みたいな顔で見ているが、心配めされるな。ただ夜のとばりがドライブインを包むのを待っているだけだ。

そろそろいい感じになって来たな。まずは北側からだ。
この時間だと、煌々と照明がついていて現役感が増すでしょ。なんか田舎町の個人経営のファミレスでこういうのがありそうじゃないか。

内部だ。外の闇に負けないくらいにちゃんと明るい。治安がよさそうだとは言えないけども、この雰囲気は良い。例のドリンク自販機もちゃんと稼働している。

今回は水を買った。補充してくれている人、ありがとうございます。
南北合わせても1つしか稼働していない自販機。これが稼働していることが、ドライブインが存在している唯一の意義なのではないだろうか。だからこそ今回も大切に使わせていただいた。
それでは次は南側に行ってみよう。
木々に囲まれた南側は、さらにひっそりとしており人を寄せ付けないオーラを纏っていた。

それでも、昼訪問時には気に留めなかった電話ボックスが光り輝いているのに気付いた。南側は自販機全滅ではあるが、電話は生きているのだ。これは嬉しい情報だ。

電話ボックスを見て少し心がホクホクした状態で南側のジョイフルに対峙したのだが、一気に現実に戻らされた。コイツはなかなかの一品だなって思った。
全面ガラスだから、夜が来て照明が付くことで店内が丸見えだ。ヤバい部分が全部見えてしまっている。悪い夢に出てきそうな店内が。

ヤバイヤバイヤバイ…!!デートで来てしまったら戦慄しそうな雰囲気だ。ちなみに僕は全国の廃墟や廃村を1人で巡っていた過去があるので、全く恐怖などは感じないタイプだけども。
仄暗く、ところどころにしか点いていない照明と、そんな中でもわかるベロベロの異様な天井。人の手で作られたお化け屋敷も怖いが、これは天然ものだ。自然にこのように朽ちた建物は、やっぱ凄味が違う。

中に入った。すごすぎる。笑うしかない。こんな空間なのに、訪れる人のために電気をつけていてくれるなんて…!廃墟には廃墟の良さがあるが、廃墟一歩手前の現役ならではの驚きよ。
ファイトクラブかな?夜な夜なゴツい男たちが殴り合いでもしているのかな?

昼も夜も来た。さすがにここから盛り返してくれない限り、3回目の訪問は無いかもしれない。ただ、あなたが興味あるなら今のうちだと思う。特に南側は本当に天井が崩れそうで危ないし。
またここから綺麗に整備されたらドラマチックで面白いけどね。あるいは、貴重なレトロ麺類自販機だけでも救出してほしいけどね。ドライブインは、どこも苦しい時代になったよねぇ…。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報