乙部町の「滝瀬海岸」。
「シラフラ」と呼ばれる白い岸壁が連なる姿は、ドーバー海峡の「ホワイト・クリフ」にも例えられるという。さらには「くぐり岩」というフォトジェニックな岩もあり、SNS映え間違いなしのスポットだ。

僕は恥ずかしながら、ここの存在をつい最近まで知らなかったのだ。
僕の情報源ってツーリングマップルか旅人たちからの口コミかのどっちかって感じなんだけど、少なくとも僕の所持しているバージョンのツーリングマップルには掲載されちなかったんだよね、ここ。
そんな折、ニセコで一緒に飲んでいた旅人が「これからあそこは有名になるだろうから要チェックだよ」と教えてくれたので、「ありがとう。行く。明日行く。」と宣言して今回にいたるってワケ。
2024年で初訪問。いやぁ、初めてのスポットってワクワクするよねぇ。まだまだ知らないスポットがあるって、幸せだよねぇ。
駐車場はどこなんだ?
海沿いの国道277号で、乙部町の中心地を少し南に通り過ぎたところまでやってきた。これまで何度も走っている道だ。目指す滝瀬海岸は、この国道をほんの200mほど反れたところにあるらしい。Googleマップで確かめながらやってきた。

住宅地をウロウロと車で徐行していると、上の写真の通り「シラフラ展望スペース」と書かれた看板が出てきた。
"シラフラ"とは、"白い傾斜地"っていう意味を持つ言葉なんだって。つまりは僕が行きたい滝瀬海岸の白亜の岸壁がまさにここだってこと。ところでまだ観光地化されきっていない、粗削りな看板だな。そういうの、好き。

うん、現地はもっと粗削りだったぜ!全ッ然観光地化されきっていない!!
大丈夫なのか?これ、工事現場みたいな気配だけども入っていいのか?案内看板あって矢印もあったんだから、これで叱られちゃったら少し不本意だよね…。
でもガチに工事している気配なので、奥の工事現場までは車を突撃させずに少し手前に駐車した後、歩いて奥へと向かった。

なんか展望施設を作っている。数人の人が黙々と作業をしていた。こっちを見て「ん?」みたいな顔をされたが、僕だって彼らを見て「ん?」って思っている。なんだなんだ、この状況はなんなんだ…??

当然と言えば当然だが、その展望施設からの眺めが最高っぽい。
でもその展望施設は絶賛建築中だし、じゃあそのすぐ横から眺められるかというと、それは僕も空気読んじゃうオトナだからためらわれる。作業している人の近くまで行くのはあまりよろしくないと考えたのだ。
だから作業員さんたちの視界に入らない程度の場所からシラフラを見下ろそうとしたら、こんな感じね。ダメだね、茂みとかいろいろあって全然景色が見えない。
あと、ここから海岸まで降りれる遊歩道も造っているっぽいけども、これまた建造中なので、このエリアにてこれ以上行ける場所は無いぜ。

シラフラ展望スペースを出てウロウロ歩いていたら、上のような案内板を見つけた。
『シラフラ展望スペースは工事中のため、立入禁止となっております。シラフラを見る際は、くぐり岩から海岸を通行してくださいますようお願いします。』
マジか。立入禁止だったのかよ。じゃあ入口にそう書いてほしかったぜ。ご丁寧に展望スペースを案内する看板があるんだもん、入っちゃうじゃないかよ。

そして、シラフラを見るにはまずはくぐり岩を目指せって…?
調べてみると800mほどありそうだ。車で行こう。
車に乗り込んでちょっと走ると、国道いでる直前でこんな看板があった。ここから400mだそうだ。よし、行こう。
フォトジェニックなくぐり岩
くぐり岩の駐車場に到着した。

ちょうど僕が訪問したときには車が少なくってすんなり駐車できたけど、戻って来たときは満車でさ、新たに来た人が困っているくらいな状況だったよ。10台くらいのスペースしかないから、行く人は注意ね。

ここからくぐり岩までは100m。シラフラは海岸を600m歩いて、さっきの建築中の展望台方面に戻らねばならないそうだ。
結果論から書いてしまうが、これはなかなかにハードな行程だったよ。くぐり岩までの100mも遠く感じたし、シラフラまでは足場も悪いし炎天下で直射日光にさらされて、汗だくのフラフラになった。あなたも夏に行くなら、ある程度の準備をしてから歩行開始することをおススメする。
さて、ちょっと位置情報が複雑になってきたので、ここでザックリとMAPを書いてみよう。

前章ではシラフラ展望スペースと表記されていたところは、2025年現在はシラフラ"眺望"スペースという名称だったのでこれに合わせた。そして、今いるのは滝瀬海岸駐車場にあたるところだ。
繰り返すが、ここから徒歩でくぐり岩付近まで降りた後、海岸をシラフラまで歩くこととなる。

炎天下を海岸に向かって歩く。北海道だけども、暑いのだ。最近の北海道は容赦ない。クーラーが不要だった時代はもうかなり昔のものとなってしまったようだな…。さっそく汗かくわー。

2艘の小船の間を下って砂浜に行く道、なんか絵になる。そして正面には鋭く尖った奇岩だ。
砂浜ではカップルが、よくいるお節介おじさんのエンドレスな世間話に捕まってゲンナリしていた。僕がそのおじさんを代わりに引き受けてあげようかって一瞬思ったけど、炎天下でエンドレスは心身ともに持たなそうなので、かわいそうだがカップルを見殺しにすることにした。

それはさておき、くづり岩なのである。おぉ、すんごい美しいぞ…!白い岩肌に綺麗な円形に空いた洞門。抜けるような青空をバックにして、実に映えるじゃないか。
実はくぐり岩の穴って人工的なものとのことだ。
ここの岸壁って、このように海岸をいい感じにバッサリと両断してしまっていたのだ。海岸をあっちとこっちで行き来できない。もどかしい。ここを通れないと、ニシン漁のパフォーマンスが著しく低下してしまうので、今から400年以上も前の1600年ごろ、穴を開けたそうなのだ。

それが今日までこうやって綺麗に残っている。当時の人、まさかこの穴がSNS映えになっているとは思いもよらないであろう。僕が眺めている間も、観光客が出たり入ったりしていたよ、この穴。

ではシラフラに向かおう。
…ん?しれっと距離が100m伸びて700mになっている。なんてこった。
汗だくで眺めたシラフラ
ハイライトであるシラフラに向かって、海岸を歩き始めた。

写真で見ると清涼感があるかもしれないけど、実際はキッツい。空気はモワッとしているし、海や砂浜からの照り返しはきついし。砂に足を取られるし。
あの海ギリギリまで知りだした岩の向こうの景色はどうなっているんだろう…。目指すシラフラが目の前に広がっていればいいけど…。

ギリギリのポイントまで来た。こうして見ると少し余裕があったわ。3mくらい砂浜の幅がある。でも、満潮時にどうなるのかは知らないけど。今が満潮か干潮かも知らないけど。
もし満潮時に通れなくなるようであれば、ここもくぐり岩と同じように穴を開けなきゃいけなくなるかもね。砂浜が瘦せる現象は日本各地で勃発しているから、ここもそうならないように祈ろう。

ギリギリのポイントの先も、見通しが効かなかった。シラフラはどこかなー?あとどのくらいかなー?
…ところでだ。2025年7月現在はくぐり岩からシラフラに至るこの道が落石などの影響から通れなくなってしまったそうだ。当面の間、通行止めは続きそうとのことだ。多くの人に僕と同じ苦痛を味わってもらいたかったのに、少々残念である…。

延々続く、狭い砂浜。観光客は全然いない。静かで孤独で、ちょっと退屈なのだ。
シラフラ展望スペースさえ完成していれば、その脇の歩道からシラフラの目の前まで簡単に歩けていただろう。そっちの方がずっと楽ではあるが、でも逆に言えばこの道をテクテク歩くのは今回だけなのだ。その思い出を大事にしよう。

シラフラ、見えてきた!!
そしてその手前に見えているコンクリートのスロープは、シラフラ展望スペースの脇から下に降りれるように設置されているものだ。ようやく最初に訪問したシラフラ展望スペースの真下まで歩いて戻ってきたのだね。

スロープから上を見上げる。すんごい青空。
…ところでだ。僕が訪問したおよそ1ヶ月後の2024年10月頭にシラフラ展望スペースは完成している。めでたいね。…だが、その後に崖崩れがあってこのスロープは通行止めになってしまっているそうだ。なんてこった。

…ってことは、くぐり岩からも展望スペースからも、シラフラの前まで行けないという音。つまりは海岸からシラフラを眺めることはできないということ。そりゃあ残念だね。
上の写真の通り、シラフラ近辺の岩肌はかなり脆そうだ。乙部町のWebページにはここのことが『約500万年前の火山噴火で噴出した軽石が海底に積もって出来た地層が隆起して出来たもの』と記載されている。
軽石なのだ。そりゃあ崩れるかもしれんねぇ…。

では、気を取り直してシラフラを見てみよう。ようやく対面できたのだから。汗だくで。
冒頭付近でも述べたが、白い傾斜地という意味の言葉、"シラフラ"。滝瀬海岸に面して500mにも渡り、高さ20mの白い断崖が連なっている。美しい…!ドーバー海峡のホワイト・クリフにも似ているので、"東洋のドーバー"と呼称されることもあるのだそうだ。僕はドーバー知らんけど。

写真では見づらいかもしれないが、ずーっと向こうの方に緑の丘があり、そこで風力発電プロぺラが回っている。その光景は確かに異国情緒だ。ヨーロッパのどっかの田舎みたいな光景だ。
これ以上もう歩きたくは無いが、ここで佇んで眺めるだけでもいい光景だ…。

ズームしてみると…、あ、人間がいた。写真の右端あたりに1人いる。こうやって人間と対比すると、岸壁のダイナミックさがわかるでしょ。
同時にズームしたことで、岸壁の脆さもなんとなくわかった。アレは手で触るだけでポロポロ崩れるヤツだな。風雨や波にさらされ、これからもかたちを変えていくのであろう。

あまり歩いてないので画角が同じような写真ばかりで恐縮だが、迫力あって絵になるシラフラ。
あなたもこの夏に北海道に行くのであれば、ブックマークしておいてはいかがだろうか?まだそんなに有名ではないが、数年後には爆発的な知名度を誇るかもしれないぜ。

海も綺麗だった。ちょっとだけ触った水も気持ちよかった。眩しくって目はあまり開けられなかったけど。
じゃ、また汗だくになって駐車場に戻るかーー…。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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