週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.488【北海道】崩壊前に行け!!「タウシュベツ橋梁」に限界まで近づく方法とは…!?

おい。「タウシュベツ橋梁」、そろそろマジでヤバくないか?いい加減もう崩壊するんじゃないか?今年がラストイヤーなんじゃないか?

…何年前からそう言われているだろうか。もう"崩壊するする詐欺"みたいになっている。2025年現在もかろうじてヤツはご健在だ。

 

10数年前のタウシュベツ1

とはいえ、年々崩壊が進んでヒヤヒヤものなのは事実。僕は10数年前にタウシュベツ橋梁の目の前まで行っているが、このときはまだ結構綺麗だった。だかここ数年で見違えるほどにボロボロだ。

 

達人だらけでなかなか終わらないジェンガみたいに、「うおぉ、ここのパーツを抜いてもまだ立っていられるのかよ!!」みたいなのが永遠に続いている、奇跡の建造物がタウシュベツ橋梁だ。

 

10数年前のタウシュベツ2

昨年である2024年、僕は「もうさすがにヤバいっしょ、タウシュベツ!だから絶対に見に行く!」って鼻息荒く見に行った。ラストイヤーのつもりで見に行った。

あ、タウシュベツ橋梁は近くまで行けずに遠望しかできないと思っている方々もいるかもしれないが、近くに行くための鍵が存在するの。その争奪戦がなかなか激しいんだけどさ、テルモピュライの戦いギリシアVSアケメネス朝ペルシア)と同じくらい。

 

そこいらの体験記を書くわ。(注:"そこいら"にテルモピュライの戦いは含まれません)

 

 

タウシュベツにはもう近づけないのか?

 

2008年までは、誰もが「糠平三股林道」を通ってタウシュベツ橋梁のすぐ手前まで行けたんだ。だけどもアレやコレやの事故が多数起きてしまい、2009年からは一般人が気軽に橋まで行けないように封鎖されてしまったのだ。

 

タウシュベツ川橋梁展望台1

代替案としては、タウシュベツ橋梁の架かる「糠平湖」の海岸に造られた「タウシュベツ川橋梁展望台」から遠望するように告知された。

車道から180mほど森を分け入ったところに展望台がある。ヒグマ注意なんだってさ。北海道の森はどこでもヒグマの恐怖に怯えなければならないのだ。

 

タウシュベツ川橋梁展望台2

遊歩道の行き止まりの広場が展望台だ。僕はここには3・4回ほど来ている。当たり前だけど、いつぞやタウシュベツ橋梁の目の前まで行った興奮と迫力に比べると、大いに見劣りしてしまう眺望である。

 

タウシュベツ川橋梁展望台3

いかんせん、タウシュベツ橋梁まで700mもあるのだ。相当に遠い。

肉眼でもそれなりに見えるし、カメラをズームすれば最近のカメラの性能であればなかなかの写真を撮れるであろう。それでもちょっと遠すぎるよな…っていうのが本音だ。

上の写真に写っているのがわかるかな?これでもややズームしているのだよ。

 

タウシュベツ川橋梁展望台4

ちなみにこの章で掲載しているタウシュベツ川橋梁展望台は、すべて昨年2024年のものだ。

理由としては一番高性能なカメラを使用しているのでズームした状態での見栄えがいいってことと、かつてないほどに水位が低くて橋全体が見渡せたってことだ。

 

タウシュベツ川橋梁展望台5

思いっきりズームすれば、700m離れていてもここまで見れる。液晶画面の向こうなので迫力は感じられないが、橋の真横近くからの写真を撮れるのは嬉しいかもしれない。

橋の一番ヤバい部分にフォーカスしてみた。もうギリッギリだ。バッキバキだ。むしろ「なんでまだ繋がっているの?」ってくらいなのだ。

 

…話を元に戻そう。

タウシュベツ川橋梁展望台からしか見学できない…と思われて僕も一時は失意に沈んだが、橋に近づける裏技があった。

 

林道ゲート1

林道はゲートで閉ざされ、さらにそれが施錠されている。

2021年までは平日限定で「十勝西部森林 管理署東大雪支署」に直接出向いてこの鍵を借りるスタイルだった。もちろん本数は限られているので運も必要だが。

 

kamishihoro.info

 

2022年からは、事前予約ができるようになった。そして鍵の貸し出しはタウシュベツ橋梁から40kmほど離れた「道の駅かみしほろ」にて実施されることとなった。あと、これまで無料だったのが協力金として1000円必要となった。

 

カギ争奪戦1

鍵の予約は30日前の10:00から実施可能だが、少なくとも夏季は一瞬で予約が埋まる。10:30までには予約しとかないとアレだぞ。

僕は夏季休暇取得よりも、フェリー予約よりも、宿の確保よりも、なによりもこの鍵の確保を最優先した。まずは鍵を手に入れた。ちなみに昼には余裕で予約埋まっていた。

 

カギ争奪戦2

いろいろと留意点がある。鍵は当日中に返さなければいけないので、9:00~14:00までに借りなければならない。

鍵を借りてからタウシュベツまでかなり時間がかかるので、しっかり予定を練らなければならない。なにせ片道40kmだ。往復しなければならないのが相当な時間ロスで悩ましいが、誰かの車に便乗させてもらえるだけの友情は誰とも育まれていないので、この時間を込みでスケジューリングするしかない。

 

あと、なんか予約時に「長靴レンタルしますか?」みたいな画面があった。よくわからないけど一応申し込んだ。その後に「戸外炉(トトロ)峠」のときの「BLUEayさん」が教えてくれたのだが、どうやら行動範囲が広がるらしい。そっか。なら履こう、長靴。

 

こうして僕はXデーを待つ。

 

 

林道ゲートの封印が解き放たれる

 

当日の9:00ちょっと前、僕は道の駅かみしほろに来ていた。ここに来ることを前提とした場所で車中泊していたのよ。やる気すんごいんだぞ。

 

道の駅かみしほろ1

2020年にできた、新しい道の駅だ。

この付近は士幌・士幌温泉・鹿追・足寄と道の駅が車で10数分圏内に密集しているというとんでもないエリアなんだ。2022年までは足寄湖にも道の駅があったので、さらに密集度が高かったな。

…だから今さら上士幌に道の駅なんて…、いや、必要だね。ここのおかげで土日だろうと鍵を借りれるようになったのだから。

 

道の駅かみしほろ2

すごく綺麗な売り場を経由し、オフィススペースの受付に行き、自分がタウシュベツゲートの鍵の予約者であることを告げる。ちょっと誇らしい瞬間だ。

 

スタッフさんの対応はメッチャ丁寧だった。ゲートの場所を詳しく教えてくれ、鍵の開け方もコツがいるそうでレプリカで練習させてくれた。しかも予約している長靴も「1周り小さいサイズの方がシックリ来る人が多いのですが、試してみますか?」と提案してくれ、ジャストフィットな大きさに変更してくれた。

「クマ避けの鈴もいりますか?」と聞かれたので、もちろんレンタルした。

 

道の駅かみしほろ3

そういやね、今日は直前でキャンセルが出たためか、ゲートの鍵が1本あまっていた。

そういう場合は11:00から抽選会をするらしい。なのであなたも予約を取れなかったら当日道の駅に突撃してもいいかもしれないが、「11:00に」っていうのがクセモノだよね。僕だったら北海道を1分も無駄なくエンジョイしたいので、待たずに諦めてしまうかもしれない。よって予約こそが正義…って思っている。

 

道の駅かみしほろ4

車のカーゴスペースに鍵付きの通行証・長靴・クマ鈴を積み込んだ。

そういえばスタッフのお姉さん、「もし長靴は汚れてしまっても気にせずに…。洗わなくていいですから。」って言っていたな。女神かな?なるべく丁寧に使おう。

 

道の駅かみしほろ5

はい、案内地図も写真を撮っておいたので、気になる人は拡大してみてね。丸山橋の右折と駐車場からタウシュベツ橋梁までの遊歩道入口がちょっとだけわかりづらいと思うよ。

僕はかつて走っているのでなんとなくイメージはついているけども。

 

タウシュベツへ…1

タウシュベツ橋梁のある糠平湖へと向かう。

雲で覆われていた空であったが、明るい兆しが見えていた。今日、天気悪いと聞いてションボリしていたのだが、これは奇跡だな。やった。

前章のタウシュベツ川橋梁展望台の一連の写真は、この直後のものだよ。

 

タウシュベツへ…2

時間は少し飛んで、糠平三股林道のゲートの前までやってきた。

これが2009年に設置されたゲートなのである。ここを突破できるのは、選ばれし者のみなのである。すなわちそれは僕のことだ。

 

タウシュベツへ…3

高揚感が空回りし、鍵を開けるのがちょっともどかしかった。丁寧にチェーンを解いてかんぬきを外し、重い扉をギギギ…と全開させた。

 

タウシュベツへ…4

ちょっと誇らしくて後ろを振り向いたが、誰もいなかった。車に乗り込んでゲートを通過したら、またゲートを閉じてチェーンを巻いて鍵を閉め直す。

それではここからは橋梁の間近までの4kmちょいの未舗装路だ。ヒグマも出るからビビリながら行くぜーー!

 

タウシュベツへ…5

林道はまぁまぁ狭くて砂利が多めな部分もある。とはいえ、四輪車であればどんなタイプでも走れるよ。バイクだとどうなのかは知らないけど。

あと、思ったよりも対向車多かった。3台くらい来た。道の駅での鍵のレンタルは、僕が一番早い9:00ちょうどだったので、この時間に対向車が来ることは少し意外。たぶん、ツアー業者など独自に鍵を持っている人々だったのだろう…。

 

タウシュベツへ…6

終盤はご覧の通りの一本道となる。遥か彼方に木々で形成された緑のトンネルが見えている。あそこがゴールであろう。

そして思い返せばこの直線道路はかつての鉄道線路、旧国鉄士幌線だったに違いない。この線路があの緑のトンネルを突っ切り、タウシュベツ橋梁の上を通過していたのだ。

 

タウシュベツへ…7

緑のトンネルから200mほど手前。このような空き地がある。ここが駐車場だ。

車、なかなかに多いんだな。朝一なのに。でも仲間が多くて安心だ。人間が大勢いればクマは出にくいし。

 

 

崩壊間近のタウシュベツ橋梁を見学する

 

駐車場で長靴に履き替えてクマ鈴をセットした。準備万端だ。

 

橋梁への歩道1

長靴、安心感が違うよな。レンタルしておいてよかったぜ。バッグに取り付けたクマ鈴をチリンチリン鳴らしながら歩き始めた。

 

橋梁への歩道2

ここ、微妙に間違えやすいポイントね。車道は左に大きくカーブしているが、タウシュベツ橋梁は正面だ。正面に見えている緑のトンネルに入らねばならないのだ。これ、覚えておくといいですぜ。

 

橋梁への歩道3

倒木がすんごいある。そこを利用してタウシュベツ橋梁での注意喚起の看板が立てかけられている。

…なるほど、この倒木はあえて撤去していないような気がする。オフロード車がここに突っ込んでタウシュベツ橋梁近辺をブイブイ走り回らないような措置として、倒木を置いているのではなかろうか…??

 

開けた!!

緑のトンネルを抜けると、とたんに視界が開けた。緑の絨毯。切り株だけ残った枯れ木。そして山々と低い雲。なんだここ、この世界のものとは思えないような光景だな…!!

糠平湖の水位が少ない時期だけの光景なんだと思う。以前来たときは水で全てが埋め尽くされていたもん。

 

ついにタウシュベツ橋梁

 

タウシュベツ橋梁!!

 

 

再びここに立てるとは、感無量だ…!そしてこれがきっと最後になるであろう予感もしている。

ちゃんと目に焼き付けるぞ!悔いの内容な写真も撮るぞ!

 

崩れゆく橋1

空も少し晴れた。快晴もいいけども、このくらい雲があった方がドラマチックだ。タウシュベツ橋梁の歩んできた道も、僕の旅路もドラマチックだから、こういう天気がいい。

 

国鉄士幌線、それは1925年に運用開始し、1987年に廃線となった鉄道の路線。

1939年に路線延長した際に、このタウシュベツ橋梁も造られて、この上を列車が通るようになったんだ。

 

崩れゆく橋2

1955年、糠平湖に「糠平ダム」が建造されることとなった。そうなると湖の水位が今までと変わることになる。季節によってはタウシュベツ橋梁が水没することになったのだ。だから、線路を別の場所に移設する必要がある。

こうして鉄道のルートは変更され、タウシュベツ橋梁は役目を終えたのだ。1939年~1955年しか使用されなかったから、ちょっと短めの活躍だったね…。

 

youtu.be

 

まずは糠平湖側からの動画だ。

奥から3本目の橋脚、V字に崩れているところに目が行くけども、それよりも足のヒビが気になる。このヒビは向こう側からよりもこっち側から見た方が顕著だ。2026年くらいにここから崩壊するんじゃないかってハラハラする。

 

崩れゆく橋3

次に反対側から橋を眺めるために橋のたもとを通る。そのときに橋の上の様子を見ることができる。こんな感じだ。ボロボロであり、線路は存在していない。1955年のルート変更時に線路は撤去されてしまったとのことだ。

 

当たり前だけど、橋の上を歩くことはできないよ。崩れる危険がムンムンなので立入禁止だ。

 

崩れゆく橋4

こっち側はまだ陸があり、橋の周辺を歩けそうだ。ここで長靴の出番ってことだ。

先ほど少し触れた通り、ダムができたことで水位が変化するようになってしまった。基本的に1月~5月に姿を見せ、その後は徐々に沈んでいく。年によってこのペースは違うのだが、お盆頃には全く見えなくなってしまったりするのだ。

 

崩れゆく橋5

僕が今回ここを訪問したのは、2024年の8月下旬。まだこれだけ橋が見えているのはとてもありがたいね。

本当はもっと早い時期に来たかったんだけど、仕事の調整が困難でこのタイミングだったのだ。ヒヤヒヤしたのだが橋は充分に見えていた。嬉しい。

 

写真に写っている川。あそこをザブザブ渡ることでもっと橋に近づけるぞ。

 

崩れゆく橋6

長靴ごしに水圧でギュッと足首が締め付けられる感覚と、水流の冷たさが伝わってくる。ふふふ、面白い。

ちなみにさっきの写真に写っていた人は川の中で「うわぁ!」って言っていた。たぶん靴が水没したのだろう。ご愁傷様だ。

 

youtu.be

 

陸側からのタウシュベツ橋梁の動画を見てほしい。特にギリッギリのアーチだけ残っている部分はスリル満点だ。2003年の十勝沖地震で大きくV字の切れ込みが入り、2017年くらいにアーチ部分を残して橋の上部が崩れたと記憶している。

僕の訪問2ヶ月前の、2024年6月にここがさらに崩れたりして、本当にヒリヒリするような棒倒しゲーム状態だ。

 

崩れゆく橋7

夏から真冬までの水没期間、橋にはとんでもない負担がかかるらしい。

ただでさえ水圧でギチギチになる上、ここは北海道なので湖が全面凍結するのだ。水が凍りになることによる膨張で、ダメージはさらにUP。氷の物理的な氷により、もっとダメージUP。

 

崩れゆく橋8

そんな中で、今日までこの橋がかたちを保っているのが奇跡なのだ。「もう今年が最後だろう」と毎年言われるのは、この水没時のダメージがえげつないからなのだ。

 

道の駅のパネル展示

道の駅かみしほろのパネル展示を撮影した写真をお見せしよう。

平成9年なので1997年だ。30年弱でここまでボロボロになるとは…。軽くショックを受けた。

 

崩れゆく橋9

斜めから撮影すると、山口県の「錦帯橋」みたいにも見える。

「保存したい」という声もあるが、こうやって少しずつ変化して崩れていく様子を見守るのも芸術の1つだと思うよ。人も物も、永遠ってのはないのだ。そういうのを感じるのも大事なのだ。だからこそ、しっかりと記憶に焼き付けようっていう思いになる。

 

崩れゆく橋10

名残惜しいけど、そろそろ戻ろう。おそらく間違いなく、我が人生で最後の繋がっている状態でのタウシュベツ橋梁。次来るときにはきっと崩れてしまっているだろう。晴れ空になってくれて本当に良かった。

 

今年である2025年は、6月時点ですでにこれよりも水位が高いよ。徐々に沈んできているから、行きたい人は早めに行くといいよ。もちろんWebからの鍵予約も合わせて、だ。

 

崩れゆく橋11

最後に橋を振り返る。さよなら、タウシュベツ橋梁

そして車に乗り込み、またゆっくりと林道を戻った。帰りは結構な台数の車とすれ違った。7・8台くらいいたかな。崩壊が進んできてからさらに大人気で、鍵争奪が激化しているとのことだ。

 

ゲートを閉じる

林道を走り終え、ゲートを閉じた。これで僕の物語もおしまい。

さて、道の駅にて鍵と長靴とクマ鈴を返却したら、次のスポットを目指そうか。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

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