和歌山県には鍾乳洞が1つしか存在しない。しかもそれは延長でも100mしかない、ミニマムな鍾乳洞だ。
ダイナミックなものも魂が震えるが、小さなものだって心に刺さるよね。日本人てそういう文化を大切に歩んできただろ?
だから僕は何度かその「戸津井鍾乳洞」に足を運んでいる。すぐ近くにあるダイナミックな「白崎海洋公園」もいいが、やっぱり戸津井鍾乳洞が好きなんだ。

もっとも、僕は戸津井鍾乳洞よりも白崎海洋公園のほうが遥かに数多く訪問しているんだけど、そのことはナイショな。今回は戸津井鍾乳洞の方を立てたいから。

じゃあ過去の訪問記録から2回分ほどを織り交ぜてご紹介しよう。
…ってか、道狭ッッ!!
アプローチには気をつけろ
訪問前に注意したいことは2点ある。まずは営業日を確かめておこう、ってことだ。大事。入れないと話が始まらないもんな。

僕もちゃんとそういう苦節は経験済みだ。これは日本3周目のときのもの。ガックリとうなだれたさ。
戸津井鍾乳洞は本当に小さい施設であり、そんなに観光客がワラワラと来ることもないためか、基本的には土日祝日しか営業していない。あとは、町内の小中学校が春休み・夏休み・冬休みの期間だ。地元に優しいのっていいよね。

2点目は、物理的に道がシンドい。まぁそれでもここ10年かそこいらで近くの県道24号が広くてスムーズに走れる道になったのでだいぶ楽だが、それでも最終盤はワンパクしてくれる。
写真のところ、ラスト800mが勝負の始まりだ。

南から来ると、写真のところで150度くらいのウルトラヘアピンカーブがある。しかもエグいくらいの急斜面で狭路だ。初めてここに来たのは日本1周目のときだったが、「マジかよ!?」って思った。

序盤は民家の畑の合間を縫うように激坂を上る。
日本1周目のときは友人らと一緒だったんだけど、使用した車が軽自動車だったにもかかわらずギリギリで、ガードレールもなくって怖くって、助手席に座っていた僕は左側を脱輪しないか確認しながらで、ソロソロ進んだんだよね。
当時の運転手は「軽自動車でもこれだから、普通車は絶対来れねー!」って悲鳴を上げていた。

狭いことは狭い。ただ、あのときから道路が整備されたのか、またまた僕の経験が豊富になったからなのかは知らないけど、そんな大騒ぎするほどではないと振り返って感じている。
まぁあのとき運転したのは僕じゃないしな。僕含め免許取ってそんなに月日の経っていないメンバーだったからビビッたよな。
ちなみににこの道で万一対向車が来たら、今の僕でもひとしきり大騒ぎするけどな。

道はどんどん高度を上げ、山の中へと入って行く。
そして行き止まりに現れるのが戸津井鍾乳洞の駐車場だ。ほっと一安心なのだ。駐車場はとんでもなく広いよ。そして車はあんまりいない。観光客少ないから。

では本題の鍾乳洞に戻り込む前に、この駐車場からの眺めをご紹介しておきたい。
かなりいい眺めで、日本1周目の頃から毎回景色を楽しんでいるのだ。

こんな感じ。遠くに見えているのは「戸津井大橋」と「十九島」だ。
戸津井大橋は、このクネクネの狭路ばかりのエリアにおいて海上をスイッとトラバースできるので毎回お世話になっている。
手前のテーブルとイスはもうボロボロだったので、このちょいと後に撤去されたと思う。テーブルの高さ、もう一声ほしいところだよね。猫背になっちゃう。

ズームしてみた。十九島の内側にはなんかの養殖いかだがある。砂洲で陸続きになっている十九島があるお陰で戸津井の集落は深い湾みたいな形状で、天然の良港なのだね、きっと。

春に訪問したときは菜の花に彩られていた。ステキ。
鍾乳洞内を探索する
鍾乳洞エリアへ
では、鍾乳洞に入ろう。
ところでさ、洞窟に入るのにこんなに眺めのいい丘の上まで来るのって結構珍しいパターンだよね。洞窟って地底あるいはそれに近いところにあるイメージなのに。

おぉ、鍾乳洞というよりも田舎で豪農やっているおばあちゃんの家を訪問したときみたいな感覚だ。僕にはそんなばあちゃんはいないけど。
受付の建物が古民家の長屋門みたいにも見えるね。屋根の上のボコッとなっているところとか、囲炉裏の煙を逃したり採光レベルをUPさせる越屋根みたいのがついているし。

受付ではおばあちゃん2人がお茶を飲んでくつろいでいた。うむ、イメージ通りだ。ほんわかした鍾乳洞、すごくいい。きっと今現在僕以外に敷地内にはいないのだろうな。
ただ、おばあちゃんはここまで来ているってことは、車の運転テクニックはバチクソ高いのであろう。かっこいい。

初回訪問時の料金はたったの200円であった。近所の子供がお小遣いで来れる金額だ。優しい価格設定。2025年現在はどうやら400円らしい。倍額になったが、それでも安いね。
洞窟の入口は重たい鉄の扉。営業時間が終わったら外から施錠するのだろう。閉じ込められたら次の週末まで洞内か、ヤバいな。…っていう、良からぬ妄想をしてしまう。

鍾乳洞ゾーンまでは、ガッチリしたコンクリートの階段をぐんぐん下がって行く。一足ごとに冷気が体を包み込むよ。洞内は年間15℃で一定なのだ。夏は涼しいし冬は暖かい。

階段を降り切ったらいよいよ鍾乳洞ゾーンだ。
ところでこの鍾乳洞、1913年から1945年までは石灰石の採石場として稼働していたそうなのだ。そもそも鍾乳洞って石灰石だもんな。だからここが鍾乳洞であることは周知の事実であったらしい。
ここで発掘された石灰石はトロッコでしばらく運んだあと、インクラインにてさっき見下ろした港まで運んでいたそうだよ。
その後、1980年くらいから観光化に力を入れて洞内を見学できるようにしたとのことだ。

ここが最初の大ホール。僕の頭上に大亀岩という鍾乳石がある。
ところでここの鍾乳洞さ、ずーっと前にはガチ亀の形をした人の手で成形した岩があたっと思うんだけど、あれは無くなっちゃったみたいだねぇ。

右手の天井付近にはさざ波岩というのがある。
鍾乳洞って各所各所の岩にナイスなネーミングをしていくのが業界の文化だ。だが、正直この戸津井鍾乳洞は全国の名だたる鍾乳洞の岩に比べて、「これは本当に鍾乳石?」というものが多く、ネーミングプレートを見てもピンと来ないものも多い。
もちろん見る側である僕の感性が乏しいってのが最大の理由なのだろうが、まぁそう感じましたよ、ってこった。
狭路を進め
んじゃ、深部に向かって歩いていこう。

しばらく狭路を進んだ後、石柱の間と名付けられた空間に出た。
石柱の間!見てくれ、その石柱が画面右側に写っている。ゴチゴチに人工の、綺麗な円柱のコンクリ柱だ。人工物をスポット名称にしちゃうのは珍しいな!好き。

その後は数10m見どころのない狭い道が続く。擦れ違いは困難だし、ところどころは頭を下げて歩くような極狭空間だ。
こういうのは面白い。狭いところは割と好きだ。緑色の空間なのも、なんだか良い。訪問したうちの1回は梅雨時期だったのだが、外のムシムシした感じとは全然違ってヒンヤリしており嬉しくってしょうがなかった。

次に出てきた少々広めの空間は、平静の間と名付けられていた。横には蜂の巣岩というのがある。たぶん表面が細かくザラついていて蜂の巣みたいに見えるからなんだと思う。

さらにその横には盾岩だ。たぶん盾のようにプレート状だからこのように名付けられたのだろう。これって鍾乳石であるがゆえの形状?それとも長い歴史の中で割れたりしてこうなっただけ?
どっちでもいいが、ちょっとチープな感じがするのは嫌いじゃない。

影観音の間だ。影観音は、どうやら上の写真最奥の黒い部分らしいね。あそこのかたちが観音様に見えているとのことだ。うーむー…。

昇り龍だ。これは縦に割れた岩の奥の影が龍に見えるということだろうか…?なんかここに来て影の話ばっかになってきたな。鍾乳石はどこいった?
そしてそのすぐ先の玉石の間でゴール。Uターンして引き返すことになる。

ここには"飛燕"というプレートが2箇所に設置されている。ご丁寧に矢印までついている。
その先に飛燕という岩があるのだろうが、どうにもこうにもわからん。僕は発想力が貧困なのだろうか…。この洞窟内で、だんだん自分に自信が持てなくなってきたよ。助けて。

玉石の間という名前の通り、ここには玉石がある。
ご丁寧に『これは後から置いたもので鍾乳石ではありません』という意図の掲示がしてある丸い石を見て、ちょっと変な笑いが出たわ。最高。

で、ここでUターンするわけなのだが、帰り道でちょいと脇道に入ろう。この脇道は先ほどの洞内MAPにも示されていたので、もしピンと来てなかったら戻って確認してほしい。

蟹の横洞っていう、人が1人ギリギリで通れるくらいの横幅の洞内を進む。たぶん今までで一番狭い。
でも僕は極力腰をかがめずに、洞窟のかたちに合わせてのけぞりながら進むね。そういう無意味なプライドだったら持っている。

辿り着いたのは針天井の間。ここで行き止まりだ。
名前の通り天井から数㎝ほどの無数の鍾乳石が伸びる空間。決してダイナミックではないが、この鍾乳洞のメインの1つであろう。

天カーテン。シワシワの岩。
先ほどは「この鍾乳洞には鍾乳石っぽい鍾乳石がない」って書いたけど、この空間にはそれっぽいものはいくつかある。確かに鍾筍・鍾柱といった、大きなトゲが生えてきているようなものはないけど、このシワシワは間違いなく鍾乳石だ。

白蝋の滝。このシワシワも鍾乳石だ。
僕はこれまで日本各地の名だたる鍾乳洞を見てきた。それらに比べると、お世辞にもすごいとは言えない規模。それでも、それぞれに特徴があり楽しめる要素がある。それを探し出すのが好きだよ。

延長でもたった100mのアドベンチャー。ちょっと不思議な、海を見下ろす高台の鍾乳洞。
だがここは3億5千万年以上前の貴重な石灰岩の洞窟。
洞窟を出た僕は、受付のおばあちゃんに挨拶をし、車に乗り込む。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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