週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.470【兵庫県】日本一安くて日本一ヤバい!?勇気を出して「三和ホテル」に宿泊した!

寒い・固い・臭い・狭い…。

寝てもすぐに目が覚めてしまう。朝はまだか。

僕は1泊1100円のホテルの一室で身を丸め、遠い朝を待ちわびていた。

 

では、今日は「三和ホテル」の話をしようね。

物価高の影響で、都市部では素泊まりのホテルであっても繁忙期の宿泊料金は15000円とかするという。すごい時代になったものだ。だけども三和ホテルは県庁所在地である神戸駅の徒歩圏内にあるというのに、いつだって1100円だ。神。

 

 

もちろん安いのには理由があったり、ホテル側ももうちょっと是正したいのに止むにやなれぬ事情があったりするのだが、それは追って説明していきたい。

 

ここに純粋に宿泊するのは一部の物好きユーチューバーくらいであり、そういう人であっても朝まで耐えきれずに脱落している人が散見されるが、僕はちゃんと朝を迎えた。

ホテルってのは泊まるためにあるんだかんな。泊まらなきゃ。

 

…では、僕のその日の長い長い夜を振り返って行こう。

 

 

最凶ホテルは黄色いオーラを纏う

 

駅で言えば神戸駅と新開地駅の真ん中あたりだろうか…。静かだけれどもイルミネーションの美しい商店街に、そのホテルは存在する。

 

最凶ホテルへ1

あなたにも見えるか、右手奥の三和ホテルを示す看板が。

普通に存在し、なんだったら神戸観光する人がチェックしたり、終電を逃した人がフラリと入るにもうってつけの立地だ。徒歩2分くらいでコンビニもあるしな。

 

しかしその実態は、Webによるところ終電を逃した人が「ネット喫茶の方がずっといい」だとか「ファミレスで朝まで耐えた方がマシ」と言って逃げ出すレベルだ。

 

最凶ホテルへ2

これには僕も完全に同意である。ファミレスで徹夜していた方が幸せに決まっている。

だが、今回の僕の目的は「三和ホテルに宿泊すること」なのだ。「朝まで快適に過ごすこと」ではない。だから三和ホテル以外は目に入らない。

 

ホテルの目の前まで来た。年季が入ってはいるが、ちゃんとした鉄筋コンクリートの建物だ。2階と3階の窓がやたら暗くて「大丈夫かな?」とは思ったが、そこまでの危機感は覚えない。

 

最凶ホテルへ3

歩道の向かい、ホテルの入口までやってきた。

『テレビ付 1550円』。テレビ付きの部屋は少しお高いのだ。って言っても1550円だけど。

 

僕はテレビを見るつもりは無い。テレビをほとんど見ないタイプの人間だし、そもそもテレビが付いていたところでそのテレビがちゃんと映る保証があるのか気がかりだし、一番お安くシンプルな部屋に泊まりないからだ。

 

最凶ホテルへ4

…ところでだ。このホテル入口の時点で僕は異変を感じた。

建物内部からワイルドなスメルが漂ってきているのだ。人間の生活臭を煮詰めたようなにおいだ。色を付けるのであればちょっと濃いめの黄色のようなにおいだ。

 

歩道のこっち側も歩きたくない人も多かろう。ましてや建物内に足を踏み入れるにはそれなりの度胸が必要だろう。そんなにおいだ。

「ヤベーな…」。建物を見上げ、そうつぶやいた。

 

最凶ホテルへ5

建物内に1歩だけ入った。

全館個室であり、テレビのない部屋は1100円であるのと情報がここから得ることができる。『お気軽に御利用下さい』と書かれているので、こうやってアポなしで1人で突撃しても大丈夫だよね?気軽にフラリと来てやったぜ。

 

最凶ホテルへ6

ここが建物に入った直後に現れる1階部分だ。受付があるのは2階なので、チェックイン前にこのエリアには用はない。

 

…が、ウワサによれば三和ホテルには数名の常時滞在の高齢者の方がおり、その方々の多くは1階に住んでいるそうだ。あと、三和ホテルにはお風呂はないのだが、1階には比較的広い洗面台があって、そこで体を拭いたり頭を洗ったりできるそうだ。

結論として、僕は1階の宿泊スペースには足を踏み入れなかったので、まともな1階の写真はこれだけだ。

 

最凶ホテルへ7

2階の受付へと行くのだ。階段はヤバいくらいの斜度である。一歩一歩、カクゴを決めながら登るのにちょうどいい。その頂には、ほら、受付の小窓が見えている…。

 

 

受付ではハサミを渡される

 

急な階段を登り、受付前までやってきた。

 

チェックイン1

小窓から奥を覗くと、そこはあんまり事務室的な雰囲気ではなく、2畳ほどのワチャついた生活空間だった。布団とかあった。そこで、肌着姿のおじさんがグーグー寝ていた。

例えると、暑すぎる夏の休日に「誰も見ていないからこのくらいダラダラしてやれ」って思って実行するような姿でおじさんがくつろいでいた。今は真冬だけどな。寒くないのかな?すごい世界を垣間見たと思った。

 

とりあえず「すみませーん」と声をかけた。おじさんが目をこすりながらこちらにやってきた。

 

チェックイン2

「1泊したいんでんですけど、一番安い部屋でお願いできます?」って言った。

スイートルームは2100円であり、そちらの方も気になったが、まずは国内トップレベルに安い1100円を体験しなけりゃスイートには進めないもんよ。

 

おじさんは僕からお金を受け取り、「はい、じゃあ1つ上の階の〇号室へどうぞ」と言いながらハサミを手渡した。もう一度言うね。おじさんは僕にハサミを手渡した。理由は後で話す。

 

チェックイン3

受付の背後はこんな感じ。

ここの階段から3階へと登って行く。この階段も転げ落ちそうな急角度だね。脇にはお酒の自販機があるが、稼働していないよ。

 

チェックイン4

3階も大層なにおいが充満している。

僕の部屋はどこだ…。似たような無機質な部屋のドアが延々と連なる、ダンジョンのような空間。僕は不安な気持ちでグルグルと彷徨った。この階には、人が住んでいそうな気配の部屋が2つあった。その人たちをあまり刺激しないように気を使い、静かにヒタヒタと歩き回った。

 

なにせ、このホテルには部屋が138もあるというのだ。この階には何部屋あるのか知らないが、軽く見積もっても50はあるだろうって感じだ。しかもどういう順番で番号が割り当てられているのかよくわからない。

 

チェックイン5

ようやく部屋を見つけることができた。そこで登場するのが、先ほど手渡されたハサミなのである。

ところでこのハサミ、このホテルで僕が目にした物の中で最もまともで性能がいいものだったと思う。このホテルにある他のすべてのものは、もう年季が入りすぎてくたびれてしまっているからな。

 

チェックイン6

ハサミはこう使う。各部屋のドアは結束バンドで止められている。それをハサミで切ることで入室できるのだ。あっと驚くセキュリティシステムだ。

まぁだから何か用事があって部屋の外に出る場合、自分の部屋の施錠はできぬよ。

 

薄っぺらい木のドアをギィ…と開けた。

真っ暗で何も見えない。ドアのすぐそばに照明のスイッチが見えたので、押してみた。しばらく何も起こらなかったので一晩を暗闇ですごすカクゴを決めたあたりで、ようやく照明が灯った。

 

チェックイン7

む、狭い。1畳弱くらいだろうか?床の全てが布団だ。まだ部屋に足を踏み入れていない状態で撮影してこれだ。公衆トイレの個室を少し狭めたくらいだろう。

 

なぜか一番安い部屋なのにテレビがあったが、これはつかない。左上に窓が見えているが、曇りガラスで全く外は見えない上、開けたところで冷たい廊下しか見えないので実質意味はない。

あと、においがすごいんだな。人間のにおいの歴史がここに詰まっている。

 

チェックイン8

僕はいったい、これからここで何をすればよいのだろう…。

 

コートやマフラーを取るには寒すぎる。座るにしてもこの状態で布団に腰を下ろしたくないし、降ろしたところで何をすればいいのか案が思い浮かばない。まだ21:30だから寝るにも早い気がするし。

外への音漏れを防ぎたいので、動き回ったりもしたくない。電源がないのでノートPCやスマホの乱用も避けたい。

えっとー…。数分立ちすくんだ。

 

 

ここはダークなラビリンス

 

部屋でやることもないし、気持ちを落ち着けるためにも、僕は一度外出して近くのコンビニでコーヒーを購入した。

ホテルを眺めながら温かいコーヒーを飲んでいるうちに、気持ちが穏やかになっていくのを感じた。早い話、カクゴが決まった。

 

ランドリー1

三和ホテルをさっきとは少し別角度から撮影した。

向かって右手はホテル入口。左手にはコインランドリーがある。一般人も使えるようだが、宿泊者などが使うための設備だろうか。

 

ランドリー2

コインロッカーもある。こっちはなかなか新しそうだぞ。

ただし洗濯機は「動くのかな?」ってくらいのビジュアルだ。マッドマックスの世界の洗濯機みたいだ。一周回ってカッコいい洗濯機だ。

 

ランドリー3

三洋電機製の洗濯機だ。三洋電機は2011年にパナソニックに吸収合併されたから、それ以前の製品だね。もっと古い洗濯機もあったが、それらは写真を撮り忘れたのでもう分析はできない。

ひとまずここで木枯らしを凌ぎつつ飲んだコーヒーがうまかった。

 

ランドリー4

あと、洗剤の自販機が珍しくって撮影した。1つ30円だそうだ。

お金を入れてレバーを下に引くと出てくるらしい。この仕組みの自販機、昔々駅の公衆トイレのトイレットペーパー自販機として存在していたよね。

 

では、そろそろ部屋に戻ろうか。

そしてそのついでに自室のある3階を静かに歩き回ってみた。その様子をご紹介したい。

 

youtu.be

 

見返すとまるでバイオハザードみたいな緊張感のある動画となった。実際、僕もドキドキしながら歩いていたしな…。ダンジョンのように複雑で、同じような部屋が並ぶので現在地を見失いがちなのだ。

 

あと、あなたもこの動画や他の三和ホテルの動画を視聴して「スゲーな」とかって思うかもしれないが、どうしても伝えきれない部分もある。それは、建物全体を覆う冷気やにおいだ。こればっかりはもう、画面からでは伝わらないよね。すごいんだから。

 

3階探索1

外に面した窓が開いている。

うむ、そりゃ寒いはずだ。少なくとも廊下などの共用部分は外気温と限りなく同一ということだ。

さらには廊下と自室は薄いドア1枚で隔てられているだけであり、建付けも良くないので隙間が空いている。もちろんエアコンなんぞ無い。自室もこのあと底冷えするに違いないぞ…。

 

3階探索2

これは2階の受付から3階に登ってきたところで撮影。写っている登り階段は、さらにそこから4階へと登るためのもの…に違いない。

 

…というのも、執筆時に気付いたのだが、このビルは3階建てだ。じゃあこの階段は…??

階段の先を見上げると漆黒の闇だったので、このときの僕は階段に足を踏み入れなかった。もし登っていたら違う世界に言っていたかもしれない。

 

3階探索3

2階・3階・4階を繋ぐ部分を別角度から撮影した。

ベニヤ板で覆われた部屋も散見される。今は宿泊者が極めて少なくなっちゃったみたいだから、傷んだ部屋などを封印しているのかな…。

 

3階探索4

廊下の途中には、私物を置いてある小さな棚がある。生活感を感じられる数少ないスポットであり、ほっこりする。

3階の、居住者がいると思われる部屋の前にはワゴンタイプの棚が置かれていて、生活用品や食料品などがそこに乗っかっていた。そういったものを部屋の中に持ち込むだけのスペースが無いので、長期滞在者は廊下もテリトリーにしているのだろう。

 

3階探索5

トイレ。この周辺はにおいがもうヤバい。そして小便器の中の色はみなさんにはお見せできない。クレーム来ちゃうかもしれないから。

 

後述するが、僕は滞在中はトイレ使わなかった。

このトイレ、男女の区別もない。個室もあるから女性も使用はできるが、たぶん女性が宿泊することは基本的に想定されていないホテルだと思われる。

 

3階探索6

部屋に戻ってきた。今さらながらだが、ドアがしっかり閉まらない。どうしても数cm開いてしまう。最初は結束バンドでガッチリ留められていたのでドアは閉まっていたが、一度開けるとゆるゆるなのだ。

上の写真、見づらくて恐縮なのだが、幸いなことに備え付けのゴムバンドがあった。ドアノブ部分と壁のフックをゴムバンドで留め、なんとか開くことを抑制できた。

 

 

とにかく防御を固めろ

 

じゃあ寝る準備をするとしようか。

お風呂はホテル内には無い。そんなこともあろうかと、先ほど銭湯で済ませてある。トイレも使いたくないので、先ほどコンビニで済ませてある。

歯磨きも銭湯で済ませてある。…にもかかわらず先ほどコーヒー飲んじゃったけど、ここで歯磨きするよりも、コーヒー飲んで歯磨きせずに寝る方が平和的な選択だと考えた。

 

睡眠は試練1

敷布団が一部めくれているのは、めくった部分にスーツケースや靴を置くためだ。なにせこの部屋、布団以外のスペースが無いからな。床に物を置くのであれば、布団のスペースを犠牲にするしかない。

テレビの乗っている棚の下も布団が続いているんだよ。ある程度身長がある人は、棚の下に足を突っ込んで寝るんだ。そのくらいに縦のスペースも狭い。

 

敷布団の下、ありとあらゆるゴミが残っているな…。ホコリとか毛とか。敷布団をどかして掃除をしたりとか、敷布団自体を干したりだとかはしていないのであろう。

 

睡眠は試練2

それは同様に掛け布団にも言えることだ。この写真ではわからないと思うが、シミやタバコの灰によるコゲが多く、何よりシットリしている。

布団も部屋自体も、タバコと体臭が入り混じって発酵したようなにおいなのだ。日本一治安が悪いという大阪西成の格安ドヤにも泊まったことはあるが、ここより遥かに寝やすかったぜ…。

 

前述の通り、コートを着ていたとしても布団に腰を下ろしたくない。布団を直接掛けて寝たくもない。

僕は皮膚が弱いこともあり、トコジラミの被害を受けやすい。長旅をしていると、清潔そうな宿に見えてもどっか一箇所くらいではトコジラミにやられる。激しくやられて現地の医者に行ったこともあるほどだ。

つまり、真冬とはいえここでの睡眠に危険を感じている。対策を打たねばならない。

 

睡眠は試練3

そんなこともあろうかと、事前に巨大なポリ袋をたくさん買ってきている。これを布団などに掛けて、直接僕が触れないようにしよう。

ポリ袋を広げるのに、受付でもらったハサミが大活躍だ。これはありがたい。

 

掛け布団にもポリ袋を被せたのだが、形状的にこれを掛けるのは困難だ。

うーん、しょうがないので掛け布団は使用しないことにしよう。コートとマフラーを着たまま寝れば、なんとか寒さを凌げるかもしれない。

あ、もともと部屋着に着替えるつもりはなかったのよ。ここで着替えるの自体、なんか嫌だったので。それに部屋着の生地は柔らかいから、においを吸収しやすいので。

 

睡眠は試練4

枕も使用しない。かわりに愛用のバッグにタオルを被せて枕替わりとしよう。

いろいろ不安要素はまだあるが、これでようやく僕は部屋の中で座ることができた。ポリ袋を掛けた敷布団の上に。

 

睡眠は試練5

それでは、少し残ったコーヒーをチビチビ飲みながら部屋の様子を改めてご紹介しよう。

 

テレビは通電自体はしているようで、鈍く赤いランプが灯っている。だけどもつかない。しかしブラウン管テレビ、久々に見たな。

部屋の壁は各所をダンボールとガムテープで補修されている。経年劣化で剥がれたり、誰かがパワフルな寝返りを打って破壊したりしたのだろうか。ただでさえペラペラに薄い壁が、さらに薄くなっているぞ。

 

睡眠は試練6

部屋の外から撮影した、部屋の全体像。左側に廊下と部屋を隔てる壁が写っているので、あなたもその狭さを実感できるであろう。

ご覧の通り荷物を室内に入れるため、ただでさえ狭い敷布団のスペースが狭くなった。でも車中泊だと思えば大した問題じゃない。

 

睡眠は試練7

最初なかなか反応しなかった、部屋の照明のスイッチだ。最近ではあまり見かけないレベルで渋いデザインのスイッチだ。ちゃんと動作してくれて本当によかった。

 

睡眠は試練8

扇風機は1つある。プロペラにけっこうホコリが絡まっていて、起動させたらいろいろ飛んできそうだ。真冬だから関係ないけど。

 

しかしね、ここ真夏はマジにヤバいそうなのだ。風通しほぼゼロの室内で、あるのはガタガタの扇風機1つ。熱中症になるかもしれない。だったら寒い方が対策を取りやすい。そういう理由から、僕は冬にここにやってきた。

 

睡眠は試練9

しっかし部屋にコンセントが無いのはツラいな。生活者たちはスマホとか家電を持っていないのかな?そんなこともあろうかとモバイルバッテリーを持って来ているのだが、これも大事に使わなきゃ。

あと、カイロも念のため数個持って来ている。今夜活躍することになりそうだ。

 

youtu.be

 

こんな感じに室内を整えた。室内をグルリと動画撮ったので見てほしい。狭すぎてカメラの動きで酔ったら申し訳ない。

 

 

朝までの静かなサバイバル

 

よーし寝るぞ。前述の通り掛け布団は使用しないつもりなので、上着をしっかり着込んでマフラーもして、カイロも2つ貼って寝るぞ。

 

夜明けは遠い1

無事に朝を迎えられることを祈り、自撮りしてから寝た。

 

…少しウトウトしたのであろう。深夜に目を覚ました。理由は2つある。

まずは寒い。やっぱシンシンと冷えてきた。特に下半身が寒い。真冬に窓の開いたコンクリの建物で布団も掛けずに横になっていること自体、やっぱ無理があったのだ。

そしてもう1点は床の固さだ。カーペットの床に極めて薄いペタンペタンの敷布団が敷いてあるだけだ。マットレスなんぞない。すごく肩と背中が痛い。

 

夜明けは遠い2

荷物をあさり、服をさらに重ね着した。靴下も重ね履きした。

肩と背中の痛みはどうしょもないので、寝返り打ってダメージを分散させるしかないな…。寝返り打てるスペースもあんまりないけど。

 

次は深夜3時くらいに起きた。寒いし痛い。足腰が深刻なほど寒い。ガバッと起きた。

 

夜明けは遠い3

まずは予備にとっておいたカイロも全部使う。さらに下半身を余ったポリ袋に突っ込もう。これでちょっとは保温が効くに違いない。

あと、体の上にポリ袋を掛け、さらにその上にテレビ棚に置いてあった毛布を掛けた。毛布もあまり使いたくはないが、背に腹は代えられぬ。

 

…というのも応急処置にしかならず、夜明けまで何度も寒いやら固いやらくさいやらで目が覚めた。あと、住民がわりと廊下を歩いていてさ、その音が響くのだ。ドキドキしながら遠い夜明けを待ちわびた。

 

夜明けは遠い4

朝7時。部屋の中から外の様子は全くわからないが、そろそろ日の出の時間だ。

僕も起きた。体は痛いし頭は少しボーッとするが、ちゃんと朝を迎えられたことが誇らしい。

 

部屋の中は僕が苦しみながらのたうち回ったのでポリ袋でグチャグチャになったが、基本的に室内のものには触れずに過ごすことができた。

厳密には、この建物内の物はハンガーと照明スイッチとドアノブくらいにしか触れなかったかもな。

 

朝の到来1

片づけた。改めて、すごい部屋だな。寝ることに特化しており、それ以外の機能はほぼない。ホテル内にどれだけ多くの宿泊者を招き入れるかということに重点を置いた設計だ。

それはまるで独房のようだ、とも言える。独房には入ったことないから知らないけど。

 

朝の到来2

廊下には大きなポリバケツがあり、ありとあらゆるゴミを受け入れてくれる感じであった。今回使用したポリ袋はそこに捨てさせていただいた。

トイレや洗顔はしばらく我慢し、どっかこの先で立ち寄る道の駅を使わせてもらおうかな。

では、さよなら三和ホテル。

 

 

エピローグ:三和ホテル、栄枯盛衰

 

三和ホテルは1969年にオープンした。

もともとこの神戸・新開地は戦後に多くの労働者が集まる一大繁華街だったのだ。町は日雇い労働者であふれるほどの活気があった。

もともとこの地でお好み焼き屋さんをやっていた当時のオーナーさんが、そんな日雇い労働者向けの簡易宿泊所、つまりドヤに営業形態を転換したのが三和ホテルの始まりだ。

 

栄枯盛衰1

しかし、バブルが崩壊したり阪神大震災が起きたりして、労働者は他所へと離れて行ったのだ。そもそも若者がこういうドヤに宿泊して毎日日雇い労働に出かける…という文化自体がもうないよね…。

 

こうして当時のオーナーさんの孫の代になっているが、ホテルは一部の高齢者が居住しているだけでガラガラの状態である。従って赤字続きであり、設備をメンテしたり備品を交換したりする余裕もないのが実情だそうだ。

 

栄枯盛衰2

オーナーさんは廃業することも何度も検討したそうだが、常時宿泊している高齢者の方々のためにもおいそれと廃業するわけにもいかず、苦しい営業形態のまま今日に至る…といった具合らしい。

従業員さんも、オーナーさん含めてたった2人であり、その2人で24時間このホテルを管理しているそうだ。

 

お金もないし稼働もないしでは、そりゃあホテルもくたびれてくるよね。

つまりは「1100円なんだからこのサービスで妥当でしょ?」ではなく、「もっとどうにかしたいけれども首が回らない」が、このワイルドさの要因なのだ。

そこが西成などのドヤとの決定的な違いだ。

 

栄枯盛衰3

そんなどうしょもない状態だけど、どうにもできないからとりあえず宿泊者を受け入れている三和ホテル。僕が望まざる客だったのかどうかは知らないけど、いつどう転ぶかわからないこのホテルを一度見てみたくて今回のリポートに至った。

 

荷物をまとめた僕はハサミを返そうと受付に行くが、受付は開いてはいなかった。スタッフさん、寝ていたのかもしれない。そこに挟まった今日の読売新聞が、やたらと神々しく見えた。

ハサミはそっとカウンターに置いておいた。

 

栄枯盛衰4

外の空気はとてもおいしく感じた。

三和ホテルを振り返る。正直、もうここに僕が宿泊することはないであろう。

このホテルが令和の時代にあとどのくらい生き残れるのか、どんな道を歩むのか、僕にはわからない。だけどもオーナーさんに穏やかな日々が訪れることを願ってやまない。

 

以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 三和ホテル
  • 住所: 兵庫県神戸市兵庫区新開地5-2-11
  • 料金: 1泊¥1100~
  • 駐車場: なし。付近のコインパーキングを使用のこと。
  • 時間: 16:00チェックイン、10:00チェックアウト