岩国市、全国的に有名な景勝地「錦帯橋」の近くに「欽明館」という自販機コーナーがある。
これまた(レトロ自販機マニアにとっては)全国的に有名なスポットなのである。今は残念ながら錦帯橋には知名度も価値も今一歩届かないが、あと数100年欽明館が存続しレトロ自販機営業を続けるのであれば、錦帯橋をしのぐこともできると思っているぜ。
「仲よくしてネ」。
このひとことに、僕らが人生で学ぶべきことの大半が含まれている。そう思わないかい?
僕には聖徳太子の名言「和をもって貴しと為す」くらいに響くのだが、あなたもそう思わないかい?
まぁ思っても思わなくても、このレトロ自販機から出てくるうどんを食べてひといき付きましょうや。
プロローグ:計画なき迷走
最初は今からもう10年以上も前のことなんだけど、この欽明館を目指そうとしていたのよ。結論から言うと到達できなかったんだけど。
突然雨が降ってきたり、また晴れたりの激動の天気。そんな中、お昼ご飯を自販機メシにしたいと考えて欽明館を探す。…だけどもなかなか見つからないんだぜ。
ちょっと令和の現代じゃあ信じられないかもしれないが、当時の僕はスマホを使って現地で地図検索ってことは行わない主義の人間であった。
事前に調べるか、ツーリングマップルをパラパラめくって確認するかのどちらかだ。しかしツーリングマップルに欽明館は載ってない。
事前に調べたときのなんとなくの記憶を頼りに岩国の町中を走っているのだ。
僕の車にはカーナビはついている。しかし東日本版しか搭載されていない。西日本版は持っていないんだよ。だから無意味。
賑わう西岩国駅付近を通過。
欽明館、県道15号にありそうな気配なんだ。だけどもその県道15号が複雑で、なんだか複数本ありそうな感じ。新旧で2本あるのだろうか?わからん。迷う。
しばらく同じようなところを行ったり来たり、路地裏に紛れ込んだりした。そして諦めた。
しょうがない、もういいや。お昼は別のところで食べよう。有名景勝地の錦帯橋のすぐ近くにいるので、とりあえず錦帯橋を見て心を落ち着けるか。
欽明館はまた機会があったらアプローチだ。大丈夫、いつかきっと行くことができる。
レトロ自販機と仲よくネ
それから2・3年の月日が流れたころだった。再び僕は岩国市に来ていた。あの日をなぞるように錦帯橋を渡ったところだ。
今回は大丈夫。もう欽明館の場所は脳内にバッチリとイメージできているから。お腹もちょうど空いてきている。
県道15号、川西駅の西側数100mのところにそのスポットはあった。錦帯橋からは車で5分足らずの場所だったのだ。前回も僕はここから1kmくらいのところまでは接近していた。しかし調査不足だったのだ。悔やまれる。
改めて欽・明・館!! 見てくれこの圧倒的なエクステリアを!!
ちょうちん・紅白幕・昭和的なセンスの光る看板、そして色とりどりの自販機群…!日本をあまり知らない外国人なら、これを見てきっと「今日はお祭りですかな?」って言うね。
そしたらさ、「そうだよ、ここはいつだってお祭りなんだよ」って胸を張って言いたい。
本題のレトロ自販機だ。富士電機のレトロ麺類自販機が2台ある。片方がベージュ色のパネルなのもオシャレでいいね。ここでも紅白を実現しているのか。
そして最高に胸キュンポイントなのが、自販機の間の『仲よくしてネ』だ。なんて心が温まるフレーズなのだろう。
じゃあ食べようか。
今回選んだのは天ぷらそば。金額は300円。
小銭を入れてボタンを押すと、20数秒で取り出し口からアツアツそばが登場なのだ。何度も見てもこれはワクワクする。
1つしかないテーブル席は別の人たちが座っているので、ベンチで食べようね。
そば、関西だけあってダシは薄味。そして麺はやや太めだろうかね?ややジャンク感のある天ぷらもダシを吸ってうまい。
ちょうどお昼どきとあって、工事現場とかで働いているっぽい人もやってきて、ここでお昼にしていた。
同じ敷地内にはおにぎりなどの軽食を売っている売店もあり、自販機麺とおにぎりで手軽にランチにしているようだ。いい光景。今も地元で愛されているレトロ自販機。今後も長く続いてほしいな。
食後、欽明館の周りを一周歩く。ここは今は自販機しかない建物だけど、かつては食堂もあったドライブインだったのかなぁ?
新聞の自販機。ニュースくんというらしい。明朝体の字体がレトロ感を押し出してくれているね。
これは初めて見るタイプの自販機だ。相当年季が入ってそうだ。やっぱ昭和のものなのだろうか?
『小便は便所にお願いします』と、幼児も知っていることを書いた看板がトイレのすぐ脇にある。岩国にはフリーダムな人が多いのか?
では、またいつか来れることを楽しみにしているよ。
夕暮れの霧雨の中で
日本5周目、僕は再びここを訪れた。夕暮れが迫り、そしてサラサラと霧雨の降る日であった。
普通であればこんな天気の日には気が滅入ってしまうのだが、これから再訪する欽明館での自販機メシのことを考えると、テンションがグイグイ上がってしまうのだ。
夕暮れの時間のドライブインって、ちょっと切ない感じで最高にエモいよね。そんなシチュエーションの欽明館に出会いたい。
あぁ…!想像以上にいいーー!!
前回は「年季が入ってちょっとくすんでいるな」って感じた看板たちが、ギラギラに輝いている。電気、点くタイプだったんだね。
これが欽明館の本気か…!コンビニの無い時代、夜間にここを走るドライバーさんがこんな光景を目にしたら、思わず立ち寄ってしまうだろうなぁ…。
『あなたのステーション』のフレーズがすげぇ刺さるよ。
以前は気付かなかったけど、立てに長細いUCCの自販機もあったのだね。これもなかなかのヴィンテージものだと思う。
前回ここで食べたのは天ぷらそば。他にはメニューはラーメンと天ぷらうどん・肉うどんなどがある。じゃあ、今回はラーメン食べようかね。
今回の旅では中国地方のレトロ自販機店を何店舗か巡っているが、まだ自販機ラーメンは食べていないのだ。中国地方ではなんとなく肉うどんばっか食べてしまっているし。
ここでラーメンなのだ。自販機麺の中ではややレアなメニューなのだぞ。ちなみにお値段は350円だった。
具は湯切りのときに落下しないように全部麺の下に潜んでいるので、食べる前に上の方に引っ張り出したよ。
チャーシュー・もやし・ネギ・メンマ。あぁ、なかなかゴージャスなんじゃないですかね。チャーシューがデカい。
麺は美しいストレート。スープは誰もが想像できるであろう、キリッと強めの醤油味だ。
何か特筆するような飛び出たおいしさがあるわけではない。だけども、この世の中のラーメンの概念のど真ん中を行くかのような一品だ。誰しもが通ってきた道が、今僕の目の前にあるよ。
サクッとラーメンを完食したが、量は少なめなのでおかわりできるぞ!よし、次は天ぷらうどんにしよう!
天ぷらうどんは300円。かたちの整った小エビ入りのかきあげが乗っている。麺は太麺。噛みごたえあり、そして食べごたえありだ。関西の自販機うどん、基本的にハズレはないな。うめぇうめぇ。
でさ、ベンチで食べながらふと思いつくんだけど、ここから錦帯橋までは車で5分くらいの距離なのだ。
錦帯橋はもう何度も訪問しているし、雨だしもう暗いしで行かなくていいやって思っていたんだけど、そういえば夜の錦帯橋って行ったことが無い。
この夕暮れの霧雨の中でライトアップされる錦帯橋って、もしかしてすごく幻想的だったりしない…??
だしを飲み干し、僕は立ち上がった。錦帯橋、また行こう。
この後に行く錦帯橋は、2024年現在の日本7周目までを総合してもトップクラスにカッコよく思い出深いものとなる。
まぁでも今回は欽明館のお話なので、その件はまた機会がございましたら。
あなたも岩国市を訪れることがあるならば、錦帯橋と合わせてこの自販機たちと仲よくしてあげてほしい。
彼らは24時間、あなたの訪問を待っているだろうから。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 欽明館
- 住所: 山口県岩国市川西3-11-6
- 料金: ラーメン¥350他
- 駐車場: あり
- 時間: 24時間営業