伊良部島には一般的には公開されていない「三角点」・「イグアナ岩」という2つの景勝地がある。どちらも海抜70mくらいから最強レベルに美しいサンゴ礁の海を見下ろせるスポットだ。
しかしここ、断崖絶壁の上にオフィシャルな観光地ではないがゆえに整備されておらず、勢いあまって足を踏み出すと致死率10000%なのだ。大変に危ない。
そんなことから、2021年に立入禁止のプレートが設置されてしまった。
2024年現在は封印されてしまったスポット。そこに僕がかつて訪れたときの写真をご紹介したい。
三角点は曇天に輝く
僕が最初に訪れたのは三角点であった。
なんで三角点というのかというと、リアルに測量のための三角点があるから付いた通称なのだそうだ。僕は三角点に興味がなさ過ぎて三角点があるかどうかなんて1ミリも確認しようと思わなかったけどな。
三角点よりも絶景の方のインパクトがすごすぎたってのが最大の理由だけどな。
三角点の詳細な場所はここでは記載しないが、車道から30mの距離だと思う。しかしその30mがなかなかにワイルドだ。深い森の中のようだ。
唯一の救いは、これまでで訪問した人々によって踏み跡がしっかりと残っている点だな。
『注意 絶壁先端付近での危険行為は絶対に行わないでください。』
そんな看板が立っていた。三角点はとんでもない断崖絶壁なのだ。しかし柵などは一切なくギリッギリまで断崖に近づける。
絶景なのでSNSやYouTubeにUPするために自撮りなどで限界まで断崖絶壁に近づこうとしたり、テンション高めなアクションをする人もいる。そういうのはマジに危ないよね、っていう意図だ。
密林をかき分けながら進む。最後は小さな上り坂で、グッと膝に力を入れて岩を上ると左右の茂みがなくなり、一気に目の前に海が開けた。
その光景がこれだった。
…すっご!!
息を飲むとはまさにこのこと。ここまで離島の綺麗な海をずっと見て来た僕であったが、一瞬息をすることを忘れた。
もう少しだけ足を踏み出してみた。足元に近づくほどサンゴ礁の色は輝きを増しているが、それと比例して命の危機が加速する。あまり調子に乗ると滑落するぞ、これ。
そしてここは切り立った断崖の真上であり、足元の海までは70mほどあるらしい。つまりはビルの20階だ。しかも柵などはない。
柵の無い20階建てのビルの屋上にいるのだと想像してほしい。危ないでしょ?
ちなみに今日は曇天なのだ。パッとしない天気なのだ。なのにこの海の青さ。
これで晴天だったら、いったいどうなってしまうのだろう。恐ろしいレベルのクオリティだぜ、これ。
現地のおじさんが「ほら、見てごらん。ウミガメがいるんだよ。あそこをウミガメが泳いでいるんだよ。」と興奮気味に僕らに言う。
確かにここはウミガメを遠望できるスポットの1つだそうなのだ。しかしおじさんがウキウキしながら断崖のギリギリまで行って下を見下ろしているので、一堂ハラハラするのだ。
「ウミガメもいいけど、おじさんマジに気をつけてくださいよぉぉーー!!」ってなるのだ。
しかしウミガメのことも少し気になる。恐る恐る足元の海面を見下ろすが、70m先のウミガメをしっかりと視認できるほどには視力も良くないし度胸も足りないらしい。
ひとまずなんとなく黒い点のようなものにフォーカスさせて腕を伸ばし、写真を撮ってみた。
うん、ブイじゃねーか。ウミガメじゃあねぇ。
おじさんの目には確かにウミガメが写っていたらしいが、僕は見つけられたなったようだ。まぁいいけどね。きれいな海を眺められたのだから。
イグアナは海に吼える
とある快晴の日だ。僕はイグアナ岩の入口に到達した。場所は三角点から1kmも離れていない場所であった。
三角点もそうだけど、イグアナ岩も目印はほとんどない。まぁないわけでないけど、ここに書くのは辞めよう。
「Googleマップで検索したら出てきましたけど?」みたいなことを言う人もいるかもしれないけど、もう立入禁止だからここでは場所は非公開にするね。
短い距離だけれども茂みはすっごい。かといってスニーカーであれば危険を感じるレベルの道ではない。
女子2人組は「この先は大丈夫でしょうか…?」と不安気であった。僕が距離や状況を説明するとリタイアしていった。2人ともサンダルだったしな。全然不可能ではないが、ケガのリスクはあるし断崖で滑ったらヤバしな…。
獣道を辿る。身の丈を超すほどだった茂みも、断崖が近づくにつれてやや落ち着いてきた。
そんな先にある、これまた断崖から海を見下ろす景勝地がイグアナ岩なのである。さぁ行くぞ…!!
おぉ、なんという綺麗な青!!
乳青色っていうのかね。少し濁った感じのこの色も、いいではないか。心が落ち着く感じの青だ。
自分でここに立っているとよくわからないのだが、イグアナ岩っていうのは断崖に突き出すような形状の岩だそうなのだ。だから僕のこの足元の岩も空中にあるのかもしれない。
これを横から見るとイグアナの頭のようなので、こういうネーミングになったそうだ。
断崖から空中に突き出たイグアナの頭に乗り、「わーい」みたいなポーズを取って横から誰かに撮影してもらえればベストショットだ。
ただな、撮る方も撮られる方もキケン。そもそもどこから見ればイグアナに見えるのかわかる人がいないし、わかったところで数mであろうもと、そこまでに行こうとも思わない。わざわざこんな断崖の上でポーズを決めたくもない。
僕は決して高所恐怖症ではないが、かといって高所が全然平気と言うわけではない。人並に危機感は感じるタイプだ。
そんな僕は、ここで最低限の写真を撮る以上のアクションができないように脳のストッパがかかっていたよ。横にいるお姉さんはヒラヒラのワンピースでヒールを履いていた。すげぇな、バランスもメンタルも。
ところで、ここまでの写真でちょいちょい写っている海の中の遺物、気になる?
これはかつて座礁した船だね。サンゴ礁に抱かれてゆっくりと朽ちて行っている。2013年の1月にシンガポールのタンカーがここで座礁したのだ。そのときの残骸なのだよ。
最後に短い動画を掲載しよう。数秒だから見てみて。
「オマエ、足元を覗き込もうとしてから躊躇しただろ?」みたいに思われるかもしれないが、まぁそうだ。そういうこった。
青さほとばしる三角点
伊良部島の知られざる絶景スポットである三角点とイグアナ岩。
たぶんだけども2000年代1桁くらいまでは、地元の人と超マニアな人だけが知る秘密のスポットだったらしい。
たぶん転機は2つなのだろうな。そしてその2つは時間を置かずにやってきたのだろうな。
1つは「伊良部島大橋」の開通。宮古島と車で行き来ができるようになり、観光客も増大したのだろう。そうするとこのスポットに行く人もドカンと増えただろう。
僕のときも、代わる代わる2・3人ずつ人が訪れていた。
イグアナ岩は5人ほど、三角点は3人ほどが絶壁のビューポイントに立てる妥当な人数だと思う。それ以上は何かあって体がぶつかってよろけたときなど、命に係わる。
秘境の景勝地としては、橋ができた時点でオーバーツーリズムだったのかもしれない。
もう1つはSNSの流行。写真映えするこのスポットは、きっとこのタイミングで多くの人の知るところになった。
世界的にもSNSの危険な自撮りなどが問題視されたりしたし、ここも例外ではなかっただろう。
僕もね、別に伊良部島にゆかりがあるわけでもないし古くから通っていたわけでもない。橋とSNSがなかったらきっとこの光景を知ることもなかったし実際に出会うことも無かったろう。だからとやかく言う資格はゼロだ。
しかし、ここはマジに危険なのでお年寄りや子供には絶対に勧められないし、でも「伊良部島行くなら一目見ておけ!」って言いそうになるという、矛盾したスポットだ。
このままだといつかきっと誰かがふざけて滑落するだろうし、そうでなくてもいつか足元の岩が崩れないとも限らない。そうなる前に立ち入り禁止措置をするのは妥当な判断だろう。
だけどもこの海は一生忘れられない、日本の宝だよ。いや、地球の宝かもしれない。
せめて安全なところに展望台を作ってくれて、有料でもいいからそこに登れるようになればWin-Winな気がするんだけどなぁ。
どうにかして、いつかそんな未来がくるといいね。
勝手な理想だけ言って無責任な1旅行者であるが、それが何も考えずに出てくる率直な思いなのだよ。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報
- 名称: 三角点&イグアナ岩
- 住所: 非公開
- 料金: 無料
- 駐車場: 無し
- 時間: 特になし