レトロ自販機の、西日本エリアの聖地といえば「観音茶屋」の名前が絶対に上がってくるであろうな。
まるで登山しているときに出てくる峠の茶屋のような雰囲気で、緑深い山中をドライブしている僕らの前に登場してくれるドライブインだ。まさに山間部のオアシス。

こんな並びに昭和の麺類自販機が現在もあり、稼働しているんだからもうたまらないよな。令和時代の光景ではないよ。ここはきっと昭和99年。そういう世界線。
僕はその観音茶屋を日本4周目から6周目にかけて合計3回訪問している。今宵はその思い出をここにしたためようと思う。
出会いは肉うどんから
観音茶屋に初めて訪れたのは、冬も間近な晩秋のある晴れた日だったなぁ。日本三奇橋の1つである「錦帯橋」を観光した後、国道187号でさらに内陸部にグングン入っていたんだよな。

辺りは一気に山深い山間部の景観となった。
錦帯橋では突然の雨に降られて冷たい思いをしたが、その後に一気に晴れ渡って紅葉が輝きだした。いいぞ、運が向いてきた。

山間部を10kmほどさかのぼっただろうか?何にもなさそうな山の中に突如として自販機コーナーが現れた。それが観音茶屋なのである。
"茶屋"といっても自販機しかない。でも、自販機群の間には閉じられたシャッターが見えている。昔はここから店内に入って食事などができたのだろうか…?

ほら、これがシャッター。
Webなどを見ても内部に入った人の情報は見たことがない。もし何かご存じの方がいたらこっそり僕に教えてほしい。
レトロ自販機として有名なドライブインだけど、そうじゃなく普通に営業していた頃の顔も知りたいんだよ。
看板にはソフトクリーム・アメリカンドッグ・ラーメン・ちゃんぽん・フライドポテトなどのフードメニューの文字がズラリと並んでいる。
昔はなんでもありの食堂を保有するドライブインだったのだろう。そんな姿を見てみたかった。

このソフトクリームの少女なんて、センスが爆発しているよね。なにもかもがおかしい。
でも、そういう歪みも優しく包み込んでいたのが昭和という時代だったんじゃないかなって思う。令和時代だったらこんな絵を店舗の看板に採用はされぬよね。
では、ここでお昼にしようと思うのだ。富士電機製のレトロ自販機があるので、そこでうどんを食べるのだ。

メニューはラーメンと肉うどんがあるが、僕は肉うどんにする。
自販機の全容がわかる写真を撮り忘れてしまったが、それは次章で掲載するので待っていてほしい。
この自販機で購入するとな、写真のようにアツアツの麺が登場するのだ。気をつけて丼を抜き取る。
自販機前の屋外スペースにテーブルやイスがあるのだが、雨上がりで濡れているし冬も間近で寒い。ここは車内て食べるとしようか。

おやおや、他のレトロ自販機の肉うどんと比較しても、肉の量がかなりゴージャスなのではなかろうか。しかもカマボコ2枚にゆずもですか。バランスもいいぞ。
ひとくちダシをすすった。あぁ、温かい。麺もしこしこしているし、肉もジューシーだ。ダシはあっさりしていて肉のインパクトを邪魔していない。極上の一品。
自販機コーナーとなってしまった茶屋ではあるが、今もここはきっとドライバーにとってのオアシス。
うどんを食べながら外を眺めていると、みんなひっきりなしに立ち寄ってドリンクを買ったりカップ麺を食べたりしていってるのだ。
こういうスポット、ずっと残っていてほしいな…。
真冬のラーメンを食べに
その2年後、年の瀬も迫る真冬。僕は再び国道187号で山間部を走っていた。

なんだか冬っぽくない緑の多い写真が撮れたけど、正真正銘の年末。
緑が多いのは、それだけ山深いから。夏だったらきっとこれの3倍モジャっている。あとは天気が良いのが要因かな。冬でもこれだけ晴れると車内ポカポカで気持ちいいよな。

途中で車を停めた。国道の脇を流れているのは「錦川」だ。
この錦川が山間部を蛇行しながらずーっと続き、その下流に錦帯橋が架けられているんだよ。観音茶屋の脇も、ちょっと見えないけど錦川が流れている。つまり観音茶屋と錦帯橋は、錦川で繋がっているのだ。

今回はね、観音茶屋でやりたいことが2つある。
1つ目は、ラーメンを食べることだ。前章で書いた通り、レトロ自販機のメニューは肉うどんとラーメンの2つ。2回行くなら別のものを食べてコンプリートしたいじゃない。
2つ目は、屋外のテーブル&ベンチを使って食べること。前回は雨上がりで濡れていたし、僕がまだ駆け出しのレトロ自販機ハンターだったので、なるべく店舗の雰囲気を楽しもうという心構えが足りていなかった。
備え付けのテーブルやイスがあるのであればそれを使い、麺だけではなく店舗全体を味わうのが礼儀ってもんでしょ。

着いた。前回は撮影しなかった、敷地の隅に出てくる巨大看板を撮影した。なるほどなるほど、かつてはここには日替わり定食もあったのか。てゆーか、文字の配列が独特だね…。
あと、看板下部に描かれているレトロ自販機の実物大パネルがすごくいい。

パネル部分のデザインは本物と一緒。詫び寂びテイスト全開の観音茶屋を2匹の犬が眺めているという絵図で、ここの自販機のオリジナルデザインなのだ。これすっごい好き。
そして「はし・やくみ」の取り出し口、メニューボタンやコイン投入口なども描かれている。細かくっていい。持って帰って自室に飾りたくなるほどだ。

観音茶屋本体。相変わらずの渋さなのである。クッタクタに煮込まれたみたいな軒がいい味出しているだろ?昆布みてぇだ。
これでこその観音茶屋。仮にこの大看板と軒がリニューアルされてしまったら、それはもう観音茶屋とは呼べないかもしれない。

レトロ自販機の全容。さっき道路沿いに立っていた自販機を模したパネルと対比してみてくれ。どちらの犬もかわいすぎるよね。
では、先ほども書いた通り今回食べるのはラーメンだ。
この手の自販機は、そばやうどんは多くあるけど、ラーメンって珍しい。きっと日本全国でも10箇所あるかないかじゃないかな?

ちなみにラーメンも肉うどんも350円。ボタンを押して24秒で完成だ。この自販機から丼が出てくる瞬間が、旅のハイライトよ。
寒い冬の日、丼ごしに手に伝わるラーメンの熱が愛おしい。

前章で書いた通り飲食できるテーブルは屋外。こういうレトロ自販機店は屋外であっても雨をしのげるように軒下に飲食ブースがあることが多いけど、ここは完全に露天。
山間部ということもあってちょっと寒いけど、これからラーメンを食べるんだもん、そのくらいでちょうどいいわ。

…というわけで、自販機を間近に眺めるアリーナ席でラーメン食べるのである。
麺はストレートでやや太め。自販機内で行われる湯切りのときに落ちないように、具は最初は麺の下に入っているのだ。メンマやチャーシューが下の方に隠れている。掘り出してみよう。

うん、いい。自分へのちょっとしたご褒美に最適なサイズだ。
スープはオーソドックスな醤油味だが、ちょいと塩分が強めで遠慮なくガツンとくる。強制的に元気になれる系だ。麺はやや柔らかく、すすりやすい。チャーシューはとろけるうまさ。
どうしてもレトロ自販機のラーメンってチープさを感じてしまうが、それも醍醐味だと思う。カップ麺とはまた違った庶民的な魅力があるんだぜ。でもそれをうまく表現するボキャブラリーが無いんだぜ。悔しい。

食後、改めて観音茶屋を見上げた。この貫禄よ。これを目に刻め。
2種類あるメニューをこれで両方食べたので、もうここには再訪しないかもしれない。それでもこの2回分の思い出は、僕にとって忘れがたいものだ。
新緑の中で見た姿
2022年の5月のことだ。僕は久々に国道187号を走行していた。新緑が目にまぶしい快晴の日であった。

実は今回は観音茶屋に立ち寄ることが目的なのではない。そこよりもさらにずっと山奥にある、「地底王国 美川ムーバレー」っていう一風変わったテーマパークを目指していたのだ。その道は、ちょうど観音茶屋の前を通ることとなる。
あぁ、なんか道が広くてきれいになったね。時代は変わりつつある。

しかし観音茶屋は変わらない。ずっとあのときのままだ。
ただ、僕のお気に入りだった敷地の端の看板が無くなってしまった。あの、レトロ自販機を模したパネルが取り付けてあった看板だ。それがとても悲しい。
ただ、ここ数年でレトロ自販機ブームに火が付いたためか、車はギッチリといた。相変わらずのにぎわい。むしろ盛り上がり続けている観音茶屋。

よく見れば店舗に掲示してある赤い大看板は以前と比べてハゲてきてしまっている。
そろそろ補修時期かな?これはこれで味があるが、若干亀裂が入ってしまっている部分が気になるぜ…。
今回は僕は空腹ではないのでここでは何も食べない。
だが少しのあいだ爽やかな風にあたりながらこの光景を眺めることに幸せを感じたよ。
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そのちょっと後、2022年9月のことである。台風14号この地に大きな被害をもたらした。
降り続ける雨の影響から、錦川のダムがヤバい状態となって緊急放水をした。結果、錦川の水量がとんでもないことになった。

国道187号は各所で水没したし錦帯橋もあわや飲み込まれそうなくらいまでの水量となったのだ。
上記は今年の3月に撮影してきた錦帯橋なのだが、当時はこの橋脚のブロック部分がほぼすべて水流となったのだよ。マジで貴重な建造物が失われる一歩手前の状態だったのだ。
しかし観音茶屋は致命的なダメージを受けた。
およそ1mほど店舗全体が浸水し、あのレトロ自販機もした半分くらいが水に浸かって壊れてしまったのだ。
全レトロ自販機ファンが絶望しかけたが、2022年11月に修理されてなんとか復活。中国地方のレトロ自販機のメンテナンスを一手に引き受ける凄腕の職人さんあってこその復活劇であった。

敷地の隅に立っていた、ゆるい顔のお地蔵さんはご無事だろうか…。
前述の通り2024年の3月に錦帯橋まで訪ねていながら、気になる観音茶屋には再訪していない。
またいずれ、あの国道187号をさかのぼって観音茶屋に行かねばね。
以上、日本7周目を走る旅人YAMAでした。
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