週末大冒険

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ちょっと出かけてみないか。忘れかけていた、ワクワクを探しに。

No.243【神奈川県】70年続いた老舗肉屋「不二屋」の最終日!!僕はお弁当を買いに行く!

さよならを、言わねばならない。

言える日は、きっと今日しかない。

 

誰に対して?何に対して?

 

それは僕の心が知っている。

だから僕は服を着替え、車に乗り込む。

 

…少し濁った空。もう冬が来るとは思えないほどのぬるい風。

2022年秋の最後の日が幕を開けた。

 

 

なぜ僕はその店を目指すのか

 

「不二屋」。

横浜市にて70年に永きに渡って営業してきた個人商店のお肉屋さんらしい。

僕がこのお店の存在を知ったのは、2022年11月も下旬に入ってからだった。

 

不二屋1

普段の僕は、わざわざ車で遥か遠方のお肉屋さんを訪問するような人間ではない。

お肉は近所のスーパーで買えばよい。

しかしこの不二屋には、行ってみよう、いやむしろ行きたいと思わせる理由が2つあった。


1つ目は、お弁当も販売しているという点。

お肉屋さんだけに、カツやフライを中心としたメニューであり、なかなか安価なようだ。

あ、ちょっと気になる。

 

2つ目は、2022年11月末で閉店し70年の歴史に幕を下ろすという点。

うわっ、めちゃ気になる。

 

不二屋2

しかし僕だって仕事をしている人間だから、11月下旬の今となっては訪問チャンスはもうほとんどない。

結論から言う。

11月30日、つまり最後の営業日にどうにか訪問できることとなった。

 

老舗の最後の日だ、お客さんが殺到するかもしれない。

少なくとも昼時は弁当ラッシュで売り切れを見込もう。

昼前も混雑するかもしれない。

朝の営業開始から間もない時間がよいかな?

 

アプローチ1

ほどほどに朝の時間。

それを目指して、僕は1人車を走らせた。

 

 

最初で最後の不二屋訪問記

オーダーする

 

不二屋は大通り沿いにあった。

国道16号…ではないのだが、直前まで国道16号であった道路の延長線上だった。

 

アプローチ2

上の写真で言うならば、T字路を左に曲がってすぐのところだ。

乗用車もトラックもバンバン走りまくっている道路。

 

運転席からすぐにお店の存在は発見できたが、どうやらお店の駐車場はないっぽい雰囲気。

お店の前に路駐している車もいたが、この大通りでは路駐したくないと考えた。

 

アプローチ3

100mほど先のコインパーキングに愛車を入れた。

お店のすぐ隣もコインパーキングだったのだが満車だったので、ここになった。

まぁ100mくらいは一瞬だ。何の問題も不満もない。

 

アプローチ4

歩きついでに、不二屋の前の通りを改めてご覧に入れよう。

こんなスケール感である。

 

そしてもうこの位置からお店は見えている。ちょっとズームしてみるね。

 

アプローチ5

あそこだ。すでに3人ほどの人が店頭にいる。

弁当待ちかな?

僕も早くあそこの一団の仲間入りをしたい。

 

不二屋でお弁当を1

ほぼお店の前までやって来た。

歩道までの全てを覆いつくすダイナミックなひさしが特徴的である。

 

店舗の上の壁面には「不二屋牛肉店」と書かれている。これが正式名称だ。

もっとも、牛肉以外にもいろんな肉を売っていたし、お弁当もあるけど。

 

不二屋でお弁当を2

店舗脇の黄色い看板に、お弁当類のメニューがズラリと書いてある。

メンチフライ・アジフライ・からあげ・しょうが焼き・ロースかつ・イカフライ・各種カレー…。

 

おいおいおいい、マジかよこの肉屋。

こんなにもお弁当ラインナップが充実しているとは。

もし近所で働いていたなら毎日通っちゃうよな、これ。

 

不二屋でお弁当を3

あ、ところがだ。

店頭のメニューボードを見ると貼り紙がしてあるぞ。

圧倒的にメニューが少ない。

そっか、最終日だもんな。ミニマムな形態での営業をするのだね。

 

そして既にそのいくつかは赤線が引かれている。

焼き肉弁当ともも唐揚げ弁当・唐揚げ弁当はない様子だ。

残っているのはしょうが焼きとチキンカツの弁当なのかな?

 

不二屋でお弁当を4

ショーケースも覗いて見た。

朝一の段階であったかどうかはわからないが、カツ類の単品も無し。

『コロッケは、終了しました。ありがとうございました。』の紙札もある。

 

受付の小窓から、お店のおばちゃんに「もうお弁当で残っているのはここに書かれているだけですか?」って念のため聞いてみた。

おばちゃんは「えっと、そこのプレートになんて書いてある?うんうん。あとはメンチカツあるわー。」って答えた。

あ、まさかのメンチカツ登場。

 

お弁当は2つ買おう。

メンチカツとしょうが焼きをオーダーした。

 

ちなみにこのお店、オーダーしてからお肉を調理してくれるそうだ。すごい。

それまで店頭でちょっと待機。

 

 

受け取る

 

僕の前には3人組の人がお弁当を待っていた。

しばらく時間がかかりそうなので、その間にお店の様子を見学させていただこう。

 

不二屋でお弁当を5

『11月30営業を終了させていただきます。70年間誠にありがとうございました。』

 

本日の日付。

悲しいメッセージだ。

 

こんなひとことでは表しつくせないほど、いろんな歴史があり、いろんな思いがあるのだろう。

僕ごとき、そんなことを理解できるはずはない。

だけども少しだけ胸の奥がキュンとする。

 

その貼り紙のすぐ下の受付から垣間見える店内調理スペースでは、おばちゃんとおじさんがお弁当作りにバリバリと勤しんでいた。

 

不二屋でお弁当を6

もう1つある、お肉用のショーケース。

ここにはもうお肉類は無かった。歴史の終焉はもうすぐそこまで来ている。

 

僕の前にいた3人組が、それぞれお弁当を受け取った。

「ここが無くなると寂しくなります。」・「ありがとうございました。」とおばちゃんに挨拶し、去って行った。

 

不二屋でお弁当を7

店頭に誰もいなくなったので、改めてお店をほぼ正面から見た図をご紹介しよう。

 

『健康は不二屋の肉で』

 

なんと迫力のあるお店の外観、そして力強い看板のフォントよ。

一朝一夕では醸し出せない、年月を積み重ねてきたものにしか持ちえないオーラがある。

 

不二屋でお弁当を8

おばちゃんとやりとりをする受付は、写真中央の小さな小窓だ。

これもまた良い。

 

となりには数個、小さな花が置かれていた。だれかが閉店をねぎらって寄贈したのだろうか?

かわいいお花だ。そしてちょっと泣ける。

 

不二屋でお弁当を9

ベビーカーを押したお母さんがやってきた。

既に予約済みだったのか、すぐにお弁当4つを受け取ると、おばちゃんと感慨深げにしばらくお話をし、去って行った。

 

長年の常連さんなのだろうか?

ご家族で食べるのだろうか?

最後のお弁当、きっと格別な味になるのだろうな。

 

不二屋でお弁当を10

「できましたよー」と小窓から声がかかった。

アツアツのお弁当が出来上がっており、僕はお金を払う。

2つで1000円だ。安ッ。

 

おばちゃんに「袋、持っていますか?」と聞かれたので「持っています」と答え、僕は慌ててカバンから袋を取り出した。

レジ袋とかをあらかじめ用意しておけばよかったが、カバンに入っていたのは何か不測の事態があったとき用に常に持ち歩いている、やや小さめの不織布の袋。

 

「えっと…」って感じで、やや高い位置にある受付でモタモタしながら袋に詰めようとしていると、おばちゃんがニッコリ微笑んで「私がやるわ」と言ってくれた。

 

不二屋でお弁当を11

マチのない袋なので、お弁当を横にして丁寧に入れてくれた。

よって取っ手は使えないが、すぐ先にある駐車場までの持ち運びなので問題ない。

あと「NEXT DOOR」の袋だが、気にしないでいただきたい。

 

手に持つとジンワリお弁当の熱が伝わり、出来立てのありがたみを感じた。

 

不二屋でお弁当を12

僕はおばちゃんに「最後に来れて良かったです、ありがとうございました。」と伝えた。

おばちゃんは僕がどこから来たのかを聞き、「遠くからありがとうね」と言ってくれた。

店の奥からおじさんの「ありがとうございましたーー!!」という声も響いてきた。

 

また僕の後からのお客さんが来た。

今日は時短営業で14時までだそうだが、こうしてお客さんが途切れることは無いのだろう。

そして別れを惜しむ声が常に聞こえるのだろう。

 

不二屋でお弁当を13

車を発進させてから気付いた。

なぜ閉店してしまうのかを聞いていなかったと。

 

おじさんもおばさんも、体力的にはまだいけそうな年齢だと感じたが。

もっと他の諸事情があったのだろうか?

 

…しかし、車を走らせながら考えを改めた。

聞けなかったなら聞けなかったで、それも運命。

大事なのは閉店理由ではない。

「閉店するという事実を掴み、そして最後に訪問できた」、それだけでいいじゃないか、と。

 

 

お弁当を味わおう

 

自宅でお弁当を食べてみることにした。

ほとんど受け取った瞬間に不織布の袋に入れてしまったので、お弁当をまともに見るのは僕もこれが初めてだ。ワクワク。

 

実食1

左がメンチカツ、右がしょうが焼き。

なるほど、「肉屋の弁当!」って感じのビジュアルだ。全体的に茶色い。

僕好みの色使いだ。

 

実食2

しょうが焼き弁当。

 

敷き詰めたキャベツの上にしょうが焼きが載せられている。

あまりお肉の量は多くないかな…と思いきや、向かって奥の中サイズのスペースにも同じラインナップがある。

枠を超えたコラボレーションだ。

一番奥の小サイズのスペースには、ちょろっと味付けモヤシが入っていた。

 

肉は柔らかく、味付けもバツグンだ。

ご飯があっという間になくなるぞ。このご飯ドロボウの肉め!悪いヤツだ!

 

実食3

こちらはメンチカツ弁当。

巨大なメンチカツが2つ鎮座している。

中サイズのスペースはソースの袋で占められている。

 

食べてみた。

冷めてはいるが、それでもシャクシャクの揚げ方はさすがだ。

肉屋のコロッケやメンチカツってとんでもなくうまいよね。

肉の処理で出た新鮮な牛脂を使って揚げているからと言われているよね。

 

実食4

理屈はさて置き、とにかくうまい。

肉汁が口いっぱいに広がるのだ。肉汁、すなわち幸福。

 

最後に行けてよかった。

後悔はもう無い。

ごちそうさまでした。そして、ありがとうございました。

 

*-*-*-*-*-*-

 

…さよならを、言わねばならない。

言える日は、きっと今日しかない。

 

誰に対して?何に対して?

 

それは僕の心が知っている。

だから僕は黒いスーツに着替え、車に乗り込む。

 

コロナ禍の直前以来、ばあちゃんに会えなかった。

会おうと思えば会えたけど、あと2ヶ月あれば会えたかもしれないけど、間に合わなかった。

もしかしたらそんな後悔が、今朝の僕の原動力だったのかもしれない。

 

…もう冬が来るとは思えないほどのぬるい風。

2022年秋の最後の日はこうして終わりを告げようとしている。

 

 

以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。

 

 

住所・スポット情報

 

  • 名称: 不二屋牛肉店(閉店)
  • 住所: 神奈川県横浜市磯子区原町3-19
  • 料金: メンチカツ弁当¥500他
  • 駐車場: なし。近所のコインパーキングを使用のこと
  • 時間: 9:00~17:00(日祝定休)