柱状節理。
それは地球の生み出した芸術作品である。
旅の途中でふとそんな芸術作品を見つけ、しかもそれが天気のいい日であり、公園を散歩しながら眺めることができたら、最高だと思わないかい、あなた。
…かなり一方的な趣味嗜好の押し付けになってしまったが、そう思われても仕方がない。
ただ、春のある日の「やくの玄武岩公園」はとても気持ちのいい空間だったのだ。
純粋にそれをご紹介したいのだ。
緑の中の散策路
そう、あれは春うららな日であった。
国道9号を使って、兵庫県の山間部である朝来市を抜けて、京都府の福知山市に入ったのだ。
すぐ10㎞くらい西に"天空の城"として有名な「竹田城跡」があると言ったらピンと来るかな?
雲海に浮かぶ竹田城跡を訪ねた話は、近々別途しようね。
閑話休題。
京都府に入った直後のことだった。
国道9号の沿いで警察官と地域の子供たちが『安全運転してね』的な旗を掲げていて、ちょっとほっこりした矢先、看板が目に入った。
『⇐すぐそこ やくの玄武岩公園 ごゆっくりお楽しみください』
なるほど。
興味を惹かれたのは"玄武岩"のワードだが、ハートにぐっと来たのは"ごゆっくりお楽しみください"だ。
よーし、ゆっくりするかー。
国道を反れて300mほどで、玄武岩公園の駐車場に到着した。
愛車の日産パオを停め、緑にあふれる空気を胸いっぱいに吸い込む。
駐車場から見た公園。
結論から言うと、この写真に納まっているのが大体公園の全部だ。
道路を挟んであっちとこっち。道路に沿って、200mほどの敷地。
一周サクサク歩けば5分とかからない規模。
なんにせよ、ポカポカと暖かい新緑の季節に公園を散歩できるワクワクが止まらない。
普段運動不足の僕は散歩をしていると「自分、イイコトをしているな」って自画自賛できるシステムなのだ。
お年寄りとかは、そういう動力で散歩しているのだと僕は推測している。
天然物の小川に沿って整備された公園のようだ。
調べてみると4月中旬には桜も咲くぞ。あと、季節を問わずに夜はライトアップもしているそうだぞ。いいじゃないか。
「京都の自然二百選」の1つなのだそうだ。
ちなみに"やくの"というのはここの地名で、夜久野町から取っている。
そして恥ずかしながら、京都の自然二百選自体を初めて知ったかもしれない。
あるいは、過去にいくつか遭遇しているかもしれないが、記憶喪失になっている。
いずれにしても、200も選定する時点で京都すごい。
古都だけじゃないぜ京都は!…ということなのだ。
一般の人がイメージする"京都"は、マジ京都のほんの一部だもんね。
京都府はやたらと南北に長くて、いろんなスポットがあるのですぜ。
気分のいいときの僕は、頭上の青空を撮影する。
このときの僕も、気分が良かったに違いないと振り返る。
2022年春。最高の天気がずっと続いていた春の旅。
この新緑の季節が好きな僕は、きっと有頂天だったのだ。
僕以外に観光客はカップルと老夫婦のみ。
普段1人旅をしていてカップルを見ると「爆発しろ」と念じる僕も、このときはほのぼのとしていたさ。
玄武岩と柱状節理
本題に入ろう。
そしてこの遊歩道を散歩しながら眺められるのが、柱状節理の岩だ。
それがこの公園のアイデンティティ。
そこそこダイナミックな柱状節理である。
福井県の「東尋坊」で有名な柱状節理。あんなダイナミックなものではないものの、ほどほどのスケールである。
…って、もしあなたが柱状節理をご存じでない場合は、この記事も全く面白くないものとなるので、ちょびっとご紹介しよう。
柱状節理とは、上の写真の向かって左側のような、岩が石柱を束ねたようなかたちになっている状態を指す。
これ、古代の人が神殿を造ろうとしたけども途中で飽きて辞めた…のではなく、自然に作り出されているのだ。
作ったのは古代の石工職人さんではなく、母なる地球。
どうやってこんなことになるのかと言うと、まずは火山があることが前提。
流れ出た溶岩が冷えて乾燥して固まると、体積が減る。
堆積が減ると歪みが生じて、亀裂が入る。
難しい理屈は知らないけど、その亀裂は縦に真っすぐ、しかも断面が六角形か五角形か四角形になるように入るというのだ。不思議だよね。
柱状節理をご家庭でお手軽な再現するには、水と片栗粉を1対1で練り込んでカマンベールチーズみたいな形に仕立て、1日乾かせばいいらしい。
乾いた片栗粉は軽く衝撃を加えると、縦に綺麗に亀裂を入れながら、端から崩れ落ちる。
これを「ブラタモリ」の知床の回でやっていて、スゲーと思った。
ここのは六角形の柱状節理らしい。
本当に六角形なのか僕にはよくわからないが、垂直にズバッと切れたこの様はカッコイイと思う。
小川の向こうに聳えているのも絵になるな。
ちなみに小川のこっちの部分も柱状節理の一部となっている点にご注目いただきたい。
公園や道路で整備されているが、もともとはここいら一帯の全てが柱状節理だったのかもしれない。
気になるのが、じゃあ溶岩はどこから流れてきたのかということ。
まぁ答はこの説明板にあるのだが、「宝山(別名:田倉山)」というここからわずか2kmほど北にある山のものなのだそうだ。近ッ!
この宝山は標高はたったの350mほどだが、京都府で唯一の火山。
今から30~40万年前に噴火し、ここまで溶岩が流れたのだ。
すごい昔。
以下の宝山はハイキングや紅葉スポット、バードウォッチングのスポットになっているらしいぞ。
残念ながら僕は行ったことないので、これ以上に詳しい説明はできかねる。
小学校とか中学校の理科で習ったと思うけど、その溶岩が固まったのが玄武岩ね。
地中深くでゆっくり冷えて固まると斑糲(はんれい)岩だけど、地表で急速に固まると玄武岩。
柱状節理の天井部分の、スパッと水平に切れているところを板状節理とか平行節理とか言ったりもするよね。
上の写真では、そんな断面を見ることができる。
複雑怪奇な石畳。
立入禁止だけども、もしワンパクな僕があそこを歩いたら1秒に1回はつまづく自信がある。
…??
写真の左端に白い紙が落ちており、それが気になった。
ぶっちゃけ玄武岩公園には全く関係がないことなのだが。
日常に潜むバグを見つけるのが、僕は好きだったりする。
だからあえてご紹介する。
もう少しだけズームし、そして上下を逆転させよう。
犬のフンの持ち帰りを促すポスターが落ちていた。
何か柱状節理について重要なことが小さく書かれていたと思ったら、違っていた。
京都の自然二百選なのだ。
犬のフンで汚してはならない。
…ちょっと地味でしょ。
いや、失礼だが僕自身、興奮の坩堝(るつぼ)と化すようなスポットではなかった。
だけどもね、1人で少々長めの旅をしていていろんなスポットを見ていると、こういう光景を見たときにすっごく心が落ち着くのだ。
国道9号をタラタラと走っていたところ、ふとこのスポットを発見できたことが嬉しいのだ。
そういう思いで書いた。
こういう偶然の出会いを大切にしたい。
それはスポットとの出会いであっても、人と人との出会いであっても。
だからさ、いつかあなたも僕を見かけたら勇気を出して声を掛けてみてね。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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