青空・海・花・ハンモック・ブランコ・ジェラート…。
1つ1つが魅惑的な単語だが、それらを掛け合わせればさらに魅力が増すのは想像に容易い。
そうなのだ。
これらを全て網羅させたスポットが、山口県にあるのだ。
名前を「棚田の花段(はなだん)」という。
僕は存在すら知らずに車でローカルな道をダラダラと走っていたのだが、そんな折に偶然遭遇したのだ。
今回は、そんなひとときの夢の世界の話をしたい。
突如出現する夢空間
僕は「元乃隅(もとのすみ)神社」を目指して車を走らせていた。
元乃隅神社とは、日本海をバックに無数の鳥居が立ち並ぶ、インスタ映え間違いなしのすごいスポットだ。
このスポットについては、またいずれ機会があったら執筆しよう。
その元乃隅神社から3km弱手前(西方向)の、県道66号沿いであった。
対向車が来たら擦れ違いギリギリだな…と思われる山間の道を走っていたところ、ふと左手に目を奪われた。
海・広場・ハンモック・売店…。
冒頭に記載した単語とはとはちょっと異なるが、ハンドルを握りながらの最初の1秒で理解したパーツはこの通りであった。
…で、車を停めた。
どんなスポットかわからなかったので停車すべきかどうか2秒迷ったが、眺めは良さそうだし、風景写真を撮るくらいの余裕はある。
ドライブをしているとなかなかアドリブで急に立ち寄るのは難しいかもしれないが、できる限り足を止めたいとは思っている。
ちなみに上の写真、背後に映っているのは「東後畑棚田」と呼ばれる、丘陵地帯に造られた棚田だ。
駐車場の隅にあった、このポール。
主要スポットやそこまでの方位・距離を掲示しているこのポール、景勝地でときどき見るけども正式名称はなんていうんだろな。
ここには『棚田の花壇』と書かれているが、正確には『棚田の花段』だ。
公式Webサイト等で念のため確認した。
2つ前の写真には、このポールの後ろに小さな小屋が写っている。
どうやら薪やもみ殻などを売っているようだが、まだ朝のためか営業していなかったし、営業していても一人旅には不要だな。
そしてこれが、棚田の花段のメインフィールドである。
快晴の空の下に、真っ白い広場。その向こうに青すぎる海。
最高だろ。連日こんな快晴続きなんだぜ。
ちなみに2022年8月現在、Googleマップのストリートビューではここは2014年までの情報しかない。
その当時はただの深い草むらであった。
詳細は後述するが、このように綺麗に整備されたのは、ほんのここ数年であるのだ。
ハンモックと絶景ジェラートショップ
ハンモック
では、ロケーションを順にご紹介していこう。
うん、いきなり1枚目からブレた写真で申し訳ない。
お恥ずかしい限りだ。ぜひ薄眼で見てほしい。
広場には点々と、このようなハンモックが設置されている。
僕の訪問時は、朝夕がまだ少し涼しくて過ごしやすい時期。かつ快晴。
ハンモックに揺られるにはベストシーズンだ。
僕以外にはチラホラと観光客がいる。
しかし雰囲気だけの憶測だが、ここを知ってきたというよりも、僕と同じようにたまたま目に入って立ち寄ってみた…という感じだ。
そして、ここにはスタッフさん的な立場の人が少なくとも現時点ではいない。
なので、人々は「えっと、このハンモック使ってみていいんだよな…。よいしょ…。」と、どっか遠慮がちで、ぎこちない。
例えると、家に迎え入れた初日の犬が緊張しながらも与えられたベッドやクッションに身を沈めるような感じだ。ペット飼ったことないから知らんけど。
結論から言うと、僕はこれらのハンモックは使わなかった。
この位置は県道から丸見えであり、そんな中で1人で使用するのはなんだか恥ずかしかったのだ。
なるほど僕が犬だったら、引き取られた家庭に馴染むまでは数日かかるな。
ただし、後述するがブランコやベンチは使っているので、ちゃんとこのスポットを楽しんでいる。その点はご安心いただきたい。
あるハンモックの前には、花が添えられていた。
すげーいい。
この時点でスタッフさんはいなかったが、きっと朝誰かがセットしてくれたのだろう。
ジェラートショップ
広場にはジェラートショップがある。
僕は食べなかったが、とりあえずできる範囲でご紹介をする。
このお店の名前は「むかつく」だ。
すげーネーミングセンス…と、一瞬思うかもしれない。
しかしこの半島の名前が「向津具(むかつく)半島」なので、納得だ。
それであっても、あえてひらながで店名をつけるところにアグレッシブさを感じるね。
週末のみで11:00~の営業だそうなのだが、僕がここを立ち去る10:00ちょいすぎくらいには営業開始した様子だった。
この日のジェラートの種類は、抹茶・ハッカチョコ・デコポン・ミルク・レモングラスミルクティー・きなこ。
食べようか悩んだが、空腹なわけでも暑いわけでもないので、今回は辞めておいた。
絶景の前に立つ、顔はめパネル。
『むかつく ― 探さないといけないジェラート店 ―』と書かれている。
このお店は2019年に創業し、当初はこのサブタイトル通りに山口県長門市の各所を移動販売していたとのことだ。
しかしそれだとお客さんもなかなか訪問できずにハードル高すぎ状態となってしまったので、2022年現在はここ棚田の花段に落ち着いているそうだ。
『むかつく顔をどうぞ。』・『【!】自己責任において、ご使用ください。利用者の顔による事故は責任を負いかねます。』
…って書かれている。そりゃそうだ。
あなたもここに行かれた際には、むかつく顔をしてみてほしい。
あと、店舗には『ご自由にお使いください』と日傘が置かれていた。
ありがたい。
これで今年のような猛暑であっても凌ぐことができるかもしれない。
棚田再生プロジェクト
僕が各Webサイトで入手した情報を基に、棚田の花段の全容を見ていきたい。
棚田再生プロジェクトの結晶。
このスポットをひとことで表現するなら、こうなるかもしれない。
昭和の後期頃、ここ向津具半島には2万5000枚もの棚田が広がっていたそうだ。
ちょっとピンと来ないほどのビッグスケールだ。
ただ、高齢化や過疎化で人手不足となり、かつ後継者の確保も難航した。
こうして耕作放棄された棚田が目立ってきたそうだ。
そこでどうしようってなった。
せっかくのこのロケーションをうまく活用して、集客効果を狙えないだろうか、と。
そんな経緯から2019年にこの棚田の開墾作業が開始され、棚田の花段となったのだ。
メインフィールドから一段降りてみよう。
さらに下の方にブランコやステージのようなものが設置されていることに気付く。
みんなメインフィールドのハンモックに夢中で、下界の存在には気付いていないっぽい。
ブランコに座って、軽く漕いでみた。
人もいないし眺めもいいし、いいなここ。
眼下はこの絶景よ。
しかし眺める分にはいいが、これ1つ1つが水田だった時代はさぞかしハードワークだったろう。
単純な昇り降りもそうだし、トラクターも入れなかったりするだろうし、入れたところでトラクターの水田間の移動も大変だし、水の管理とかも…。
そんなこんなで、全国各地の棚田が深刻な継続危機だと聞いたことがある。
今はこの棚田を利用して、40種類ほどのハーブを栽培しているみたいだ。
あ、死角になんかある。
なんていうの、これ?ベンチ・ハンモック・ブランコ、3種の長所を掛け合わせたようなものだ。
ホールド感がとても心地良かった。
次回また来る機会があったら、ここに座ってジェラートを食べたい。
このメインフィールドから一段下がったところにも、ハンモックがあった。
誰も気付かず、使い放題。
あなたも訪れることがあったら、ぜひ下界に目を向けてほしい。
階段を昇って、再びジェラートショップのあるメインフィールドに戻る。
なんか結構車も人も増えて賑わっていた。
ジェラートショップもオープンしていた。たぶんこの日は10:00のオープン。
キャッキャと賑わう声を聞きながら、僕は車に乗りこんで、改めて元乃隅神社を目指すのだ。
最後に余談である。
元乃隅神社はここから3km弱と書いたが、この道のりが結構キツかった。
駐車場のキャパが狭く、完全にパンクしていたのである。
僕はエアコンの効かない車内で「アチーアチー」と言いながら10数分待った。
それでも10数分で良かった。朝なのでまだそこまで混雑していなかったのだ。
昼過ぎには2時間近くの渋滞になったと聞いている。地獄だね。
だからあなたも週末に元乃隅神社に行く際には、充分な体力と時間を確保しておくとよいだろう。
僕は直前に棚田の花段に立ち寄れたおかげで心が満たされており、そこまでこの渋滞を苦にすることなく乗り越えることができた。
ありがとう、棚田の花段。
いっときの清涼剤のようだったが、今も爽やかな記憶として僕の心に残っているよ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
住所・スポット情報