2ヶ月近く前の話で恐縮だが、書いておきたいことがある。
石巻市にある思い入れのあった鮮魚店が2022年3月末で閉店してしまったのだ。
そのお店の名前は「プロショップまるか」。
市場のようなロケーションであり、買った魚をその場で捌いてもらって簡素なイートインスペースで食べることもできる、ようするに"勝手丼スタイル"のお店であった。
質素なスタイルの店構え、素材のみで勝負するその潔さに感銘を受け、僕は何度もこの店を訪問した。
合計7・8回は行ったであろうか…。
今回はそのうちの3回ほどの訪問記録をマージし、プロショップまるかの思い出を語りたい。
石巻は魚とマンガの町
このお店は、石巻駅から徒歩でも行ける距離にある。
石巻駅、ご存じだろうか?
あの漫画家「石ノ森章太郎」のゆかりの町であり、そこかしこで石ノ森キャラが出迎えてくれる。
…とはいえ、僕は世代ではないのでキャラのことはよくわからない。
赤ばかりの戦隊もののゼロゼロなんとかが代表作の1つであることはかろうじて知っている。
仮面ライダーはいろいろ種類がいるようだが、名前は何1つわからない。
でもどれもデザインは秀逸で好きだ。
着物のおじいさんと思われる人が、炎天下で杖にすがっているので「大丈夫か!?」と心配になった。
しかしこれも石ノ森キャラの像であり、生身の人間ではないのだそうだ。
そんなこんなで、プロショップまるかである。
「おさかなの店」と、シンプルイズベストなアピール文が看板にくっついている。
石巻港は、日本有数の水揚げ量を誇る港だ。
そして水揚げ岩壁の長さは1.2㎞もあって世界一の長さだし、魚市場も875mもあって殷洪一の長さなのだ。
このような最強ステータスをことごとくモノにしている石巻にて「おさかなの店」と掲げているのだ。マズいわけがない。
このお店は、鮮魚を市内外の和食店や寿司屋などに卸している。
最盛期には取引先が250店舗もあったのだそうだ。
しかも一般の人も鮮魚などなど購入できる。
東日本大震災で大きな被害を受けて1階天井まで浸水したものの、2ヶ月後には立ち直っている。
すげーお店なのだ。
鮮魚コーナーを物色せよ
では、中に入ってみよう。
ガチめの魚のお店である。
ここは市場そのものではないが、市場からゴソッと魚を持ってきているので、もう雰囲気は市場だ。
かなり巨大な魚もドデーンと並べられており、一般人である僕はちょっとたじろぐ。
女川や金華山で揚がった魚もいっぱいいる。
もうその地名を聞いただけで「間違いないヤツですやん!」と叫びたい。
しかもそれが割と安価なのだ。
先に言っておくと、こういう大体の魚は頼めば捌いてくれる。
綺麗にお刺身としてお皿に盛ってくれる。しかもたしかタダでだ。
三枚に卸そうとしてもただのミンチみたいなってしまうであろう、大雑把なO型の僕としては嬉しいサービスだ。
右端、「ぶどう」と書いてあるけれどもフルーツではない。
ブドウエビだ。
高級かつメチャうまいブドウエビが無造作にモリッと置かれている。
イクラ・ウニ・マグロ…、パッケージになっているのもある。
これは買いやすいね。
ちなみにタコもうまい。僕はよくここでタコを買った。
このあとの章では出て来ないので、ここでタコアピールしておく。
ウニは木箱で買っても良し、殻つきをパックリ割ったヤツをスプーンとかでほじくって食べても良しだ。
カニ・シャコ・ホヤなどなど…。
ホヤは東北の三陸ならではだね。すごくよく見かける。
しかし僕はホヤは苦手なのだ。
見た目がちょっとアレだし、初めて食べたときに「なんだなんだ!?海の隅っこの方のような味がずるぞ!」と騒いだ記憶。
あとはバケツ一杯に蠢いている沢ガニがユニークだったので写真を撮らせていただいた。
1匹30円ですってよ、奥さん。子供のおやつにいかがか。
あとは焼き魚・煮魚・玉子焼き・コロッケのような加工品や総菜なども少々ある。
食べたいもの、決まったかい?
その場で食べよう、海の幸
魚介などのメインに加え、もしご飯や味噌汁が欲しいのであればレジで頼めば200円でセットにしてもらえる。
これで定食が完成するぞ。
そんでそれらをどこで食べるのかと言うと、ここだ。
売り場スペースのまさに中央、会議机とパイプ椅子が並べられている。
お店自体は朝から営業しているが、11:30~の昼の間だけ、ここで飲食できるのだ。
ほんの1m後ろには魚介を選んでいるお客さんが右往左往している中で食べるという、豪快さがまたいい。
配膳も後片付けも、お茶を淹れるのも醤油を用意するのも、全部セルフ。
あと電子レンジもあるので、惣菜類も自由に温め直すことが可能だ。
買ったものを並べていく。
1人だと胃のキャパシティ的にも金額的にも制限があるだろうが、複数名で来るのであれば具材をシェアできるというメリットがある。
1人がウニを買い、もう1人がイクラを買えば、ウニ&イクラのハーフ丼を2人で食べることができる。
はい、優勝ですね、これ。
味噌汁にはワイルドにカニが入っていたこともある。アタリだ、これ。
海の幸に感謝の気持ちしかない。
ウニも臭みが無くて新鮮だ。
こんなもの、関東だとなかなか手の出にくい値段なのだが、ここであればそれなりにリーズナブル。
柵で買ったお刺身も、そして1ブロックのゴロッとした状態だった玉子焼きも、こうやってカッコよく盛り付けてくれる。
ツマやシソもつけてくれるから、テンション上がっちゃうじゃない。
4人ほどで訪問してそれぞれがオーダーすれば、もう宴会みたいなビジュアルになる。
思わず日本酒が飲みたくなってしまう構図だ。
石巻、最高かよ。
これはヒラマサとアジ、そしてウニ・イクラを注文したときの図だ。
僕も何度かこのお店を訪れて熟練度が上がっていたので、初めてのメンバーを連れて行ったときの図だ。
非常に喜んでもらえて、僕も嬉しい。
3食丼にした。
とりあえずご飯の上に飾りたくなる性分なのだ。
石巻の魚介がおいしいのは当然だが、ここのように「まさに形ある魚を食べることができる」っていう体験をできることが貴重ではないかと思う。
ここは本当に海の町なのだ。海と共に生きているのだ。
このお店はまだ武器を持っているぞ。
それがこのイートイン専用のお弁当だ。
確か700円だったろうか。
その日の献立は漁獲で変わるけど、いい感じに詰め合わせた状態で個数限定で提供している。
手軽に楽しめるハッピーセットだ。
これはサンマだったな。うん、季節的にもサンマで間違いない。
都心部だとなかなか生で食べる機会もないだろうが、三陸だとこういうことも可能だ。
サンマ&イクラ丼と、お弁当のコラボ。
秋の味覚が口いっぱいに押し寄せた。
そんなお店もコロナに勝てず…
2022年の3月中旬のことであった。
あの忌まわしき3.11も過ぎ去ったころ、東北を巡った思い出の写真を眺めたり、現地の情報をWebから収集していた。
そこで目を疑った。
プロショップまるかが3月末に閉店するというクチコミであった。
マジで!?あと2週間で!?
しかし情報ソースはその1つだけであり、オフィシャルな情報もなければ多くの人が認識している状態でもない。
勘違いやガセかもしれないなって思い、僕も質問をWeb上に投げかけてみた。
情報は本当だった。
3月中旬ごろに急に月末閉店が確定し、地元もちょっとザワめいているのだそうだ。
Webで閉店が正式にニュースになったのは、たぶん3月27日だ。
もう本当に閉店直前だった。
オーナーさんは70歳になるので自分が引退することは前から考えていた。
そしてお店は後継者を見つけて譲りたいと考えていた。
しかしこのコロナ禍でお店の売り上げは半分になっており、後継者もやり手がいなくって、残念ながら閉店となったのだ。
そっか…。
僕自身、コロナ禍になってからここは訪問しなかったしな…。
あともう1つ言えば、3・4年ほど前に徒歩1分くらいの場所に「いしのまき元気市場」っていう施設ができたのも影響したかもしれないと思われる。
道の駅のようなピカピカ大規模施設で、魚屋さんもあればレストランもあり、とても充実していたのだ。
思い出の地が、また1つ無くなってしまった。
そして遠方なので、最後に食べに行くことも叶わなかった。
何度かやりとりしたことのある店員さんの顔が浮かぶ。
今頃、どこで何をしているだろうか。
プロショップまるかさん、50年以上の長きに渡り、ありがとうございました。
二度とこの店に行くことはできないけど、それでも石巻が日本有数の魚の町であることは事実。
コロナがもう少し落ち着いたら、また石巻の町を再訪し、海の幸を楽しみたい。
そう夢見ている。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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