ただただ穏やかな気持ちで散歩をしたい…。
これ、たぶん全人類の求める夢だと思う。
「違うよ」って言うあなた、それはご自身の深層心理に気付いていないだけだ。
あるいは、あと20年すればきっと気付く。
毎日ドタバタし、旅に出ればハプニング連発のYAMAさんも、実は平穏な人生を臨んでいたりする。
例えば朝の「後楽園」を歩いたあの日。
あの日は本当に穏やかで、最高の朝だった。
どんな日だったのか、ご紹介しよう。
マジで緩急もオチもない、ダラダラした記事だが、まぁ読んでくれ。
イカとトビウオに出会う
ある年の4月、ちょうど桜も完全に散り、新緑の季節へと推移しようとするシーズン。
そう、ちょうどこれを執筆している今くらいの時期であった。
岡山駅の近くのビジネスホテルで目を覚ました。
珍しく昨夜の僕は、車中泊ではなくホテルに宿泊していたのだ。
なんだか治安が微妙なエリアのホテルで、夜は前の通りで深夜まで酔っ払いが「グルォォォォ!!」みたいに、それこそ野獣みたいに吠えていたんだけど、僕はそういうのは特に気にせず普通に爆睡した。
そしてステキな朝が到来した。
最高に晴れている。これは本格的にお出掛けする前に近所をちょっと散歩だな、って考えた。
行き先は日本三名園の後楽園だ。
茨城県の「偕楽園」、石川県の「兼六園」と共に日本庭園のレジェンドに君臨するスポットだ。
たぶんここから10~20分歩けば到着するから、散歩にはちょうどいいだろう。
シャワーを浴びて目を覚まし、7:00からの朝食バイキングに突撃した。
健康を考えてヘルシー寄りにしてみただけど、最終的にイカリングがやたら魅力的に見えたので揚げ物も取っちゃった。
でも清少納言も「春は揚げ物」って言っていたしな。
普段そうそうイカリングなんて食べる機会ないんだもの、しょうがない。うまい。
朝食後、「ちょっと近所を散歩して来るので」とフロントに告げ、後楽園に出かけることにした。
あえて街を歩くのだ。
路面電車を使うという手段も魅力的だったが、イカリング分のカロリー消費をするためにも歩くのだ。
「西川緑道公園」。
これの存在は知っている。岡山市の中心部を南北に流れる小川沿いの公園だ。
もともとが江戸時代の用水路なんだよね?確か。
だから真っすぐに町に沿って流れている。
この小川沿いを少し歩いた。
少しずつ新緑が芽生えてきた町中の散歩道を感じることができた。
あと、平日なので岡山駅方面に忙しそうに歩いていく人々を眺められて、優越感を感じられた。
僕は普段大自然の中をドライブすることが多いが、ときおり都会に行くとこういうのが楽しい。
出勤や買い物などの日常光景。僕の知らない町でのそんな当たり前の光景を客観的に見れるのが、なんだかとても新鮮で楽しいのだ。
喉が渇いたなって思って自販機に近づいたら、焼きあご(トビウオ)のダシのペットボトルだった。
危ない危ない、誤ってこれを購入したら甘美なダシの世界に溺れるところであった。
このダシの自販機は少しずつ関東などにも普及してくるのだが、このときはまだ希少なものであり、僕自身この自販機を見たのは初めてであった。
2022年現在でああれば「よし買おう、すぐ買おう」ってなるのだが、当時は雑な一人暮らしをエンジョイしていたので、まだダシの奥深さには目覚めていなかった。
従い、購入はしなかった。
ペットボトルの中はよく見えないが、本物のトビウオがモリッと入っているような雰囲気であった。
なるほど、最後にこのペットボトルを資源ゴミとして出すときに悩ましいね。
さて、こんなことをしていたらいつまでたっても後楽園に辿り着かないので、先に進もう。
さよならトビウオ自販機。
カラスのように漆黒
まずやってきたのは「岡山城」だ。
その向こうにあるのが後楽園。まずは岡山城を見学し、そのあと後楽園の予定だ。
もともと後楽園っていうのは、お城の横に造られた日本庭園。
江戸時代前期、城主の「池田綱政」がレクレーション施設として造った庭園だ。
最初は「御菜園」とか呼ばれていたそうだけど、お城の後ろにあることから「後園」っていう呼び名となり、いつしか後楽園ってなったみたい。
まずは堀がすごいステキ。
この無風の水辺。癒し効果絶大の水面だ。
そして天守閣。
黒いのが特徴的。だから別名は"烏城"なのだ。
僕、黒いお城は大体全部好きだ。
平日の朝早くなので、お城の敷地内はほとんど誰もいなくって、近所の人がチラホラ散歩しているくらいで、すごい静か。
音も無く、雲も無くて時間が止まったようなスカッと晴れた気持ちのいい朝。
そんな天気の中でこんなお城を見上げていられるなんて、贅沢だね。
昨日の夕方も雇用友えばここに来れたのだが、無理してここに来ないで、今日の朝を選んでよかったよ。
昨日は天気イマイチだったし。だから酒飲んでたんだけど、あれが正解。
ちなみに天守閣の中には入らない。
外から眺めるだけで満足だし、そもそもこの時間はまだOPENしていないし。
この天守閣は第二次世界大戦で焼失して、その後に復元されたもの。
実は当時のまま現存している月見櫓っていう櫓もあるんだけど、それは写真に収めなかったので今回は割愛しよう。
話は反れるが、夜の岡山城も訪問済みなので参考までにご紹介したい。
2月の夜21時過ぎに寒い寒いと言いながら歩いてやってきて見上げたのだ。
周囲は真っ暗で人もいなくて怖かったが、ライトアップされたお城はカッコ良かった。
なんだか緑色ではあったが、地色が黒いことはわかる。
とても幻想的であった。
話を戻そう。
岡山城近辺で少し曲がりくねっていて、岡山城で暮らすにあたって治水工事だとか大変だったろうなっていうのが地図を見るとよくわかる。
実際、江戸初期に必死に金をかけて治水事業をして、それでちょっとお金にゆとりができたから作ったのが後楽園だしな。
平和な時代の象徴。
橋の名前は「月見橋」。風流な名前だ。
そして橋からの川面がとても澄んでいる。
「これ、ちゃんと水は流れているよね?」って聞きたくなるくらいに静かな川面。
振り返って、後楽園の端っこからの岡山城だ。
緑に囲まれていて映える。
では、本題となる後楽園に入場しよう。
後楽園は曲線がステキ
後楽園に到着した。
複数ある料金所の南門で料金を払い、この庭園の中に足を踏み入れる。
料金は400円だ。(2022年現在は410円になっている)
このときの後楽園は、僕にとってメッチャ久々であった。
しかもこれまでは真冬で寒くて曇った日にしか来たことが無かったので、こんなにも気持ちのいい後楽園は初めてであった。
つまるところ、気分はルンルンなのである。
敷地に入ってすぐの池のほとり。
そこに佇む廉池軒は、第2次世界大戦の戦火をまずがれた貴重な建物の1つなんだって。
前述の池田綱政さんが一番好きだった園内施設であったと言われているよ。
池にはコイがゆうゆうと泳いでいる。
これだけで絵になる。コイってズルい。
岡山城に続いて人はほとんどいなくて、静かに散歩したり写真を撮ったりしている人が数人いるのみ。
いいねぇ。日本庭園って、こういう静けさが似合う。
ツアーとかで多くの人がワイワイ来てしまったら、渋みが半減するような気がする。
いや、それってすごい自分本位な意見だけどさ、事実としてそう思う。
渋さと喧騒は正反対なのだ。
「ここが後楽園のハイライトかな?」って思える場所にやってきた。
園内の中心にある唯心山っていう10mほどの小高い丘だ。
そこで園内で一番大きい池である沢の池を見下ろす。
この池には小さな島がいくつかあったり、そこへと続く橋が架かっていたりして、なんとも絵になる。
赤いのはツツジかな?春だもんね。
この景観、ずっと見ていられる。
どこかで聞いたが、日本庭園って箱庭の中に世界を表現しているんだってね。
陸があり、川があり、池があり、山があり、そして家があり…。
ちょっと大きめのジオラマのような感覚なのだろうか。
そしてこの曲線美が見ていて飽きないのだ。
上の写真、見る限り直線が全然ない。
一見不規則と思われる曲線が形作るからこそ、見る者を惹き付けるのだろうと思った。
今しがた"ジオラマのよう"というフレーズを使ったので、実際にカメラのジオラマモードで撮影してみた。
かわいさが格段にアップした。本当にジオラマの世界のようだ。ほしい。
丘を降りた。
上の写真の右側に映っている建物は延養亭というらしい。
沢の池の近くにある。
岡山藩主の居間の位置付けであり、だからこそこの後楽園において最も重要な建造物だったんだけど、第二次世界大戦で焼失してしまったんだって。
現在の物は戦後の1960年に復元されたもの。
たまーにやっている特別公開のときじゃないと中には入れないのだそうだ。
池の東側まで回り込んだ。
近代文明が全然視界に入らず、なんだかタイムスリップした気分になる。
「東京ディズニーランド」は外のビル群などが見えないようにすることで夢と魔法の世界を演出しているが、後楽園は同じく現代の建物が見えないことで江戸時代を演出している…って思った。
遠くに岡山城が見えているのがとても良い。
ここが日本&江戸版のディズニーランドだとするなら、あれはシンデレラ城だ。
そのあとは東側の緑の多い木立の中を歩いた。
視界は開けないが、鬱蒼とした緑の中もいいね。この2・3週間できっと一気に新緑の季節となったのであろう。
この一番生命力がみなぎる緑の中を歩けば、きっと僕自身も元気になれるはずだ。
ふと見つけた小川の中に設置された水車が、また涼しげであった。
さて、まだまだ庭園は広い。東京ドーム3個分ある。
全部見るには果てしない時間がかかるが、今回はここまで。
このあと行きたい場所があるし、満足したのでホテルへ戻ろう。
満ち足りた。
この一言に尽きる。
さすが江戸時代から維持されてきた庭園は、貫禄が違うな。
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ちなみに、岡山城は2021年10月~2022年11月まで大規模な修復工事をしている。
後楽園は普通には入れるが、岡山城は入れない上に工事用の足組等で覆われているので、今年の秋までに行かれる方については注意してほしい。
ただ、それ以上はリニューアルされた岡山城を拝むことができるな。
楽しみだな。
江戸の情緒を残す岡山は、まだまだ未来に生きるのだ。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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