僕は、仏教のことも宗教のことも疎い。神社仏閣についても詳しくない。
だけども、寺に咲く桜の美しさは理解できる。
社殿と桜のコラボレーションに思わず目を奪われる、それは日本人でもそうでなくても共通の反応なのではなかろうか。
日本5周目において、ちょうど3月下旬の早咲き桜のシーズン、僕は和歌山県の西海岸を走っていた。
ドライブしているとところどころで桜の花が目に入り、新しい季節がやって来たのだと気分を高揚させてくれる。
今回は、関西一の早咲き桜の名所と言われる「紀三井寺(みきいでら)」を訪問した話をご紹介したい。
早咲き桜のお寺へ
和歌山市の国道42号。
この国道沿いには紀三井寺っていう有名なお寺がある。
あまり神社仏閣に知識がない僕でも、名前くらいは聞いたことがあるスポットである。
国道42号から見ると、上記のような絵である。
国道42号が紀三井寺に突き当り、そして右に折れている。
紀三井寺の政治的パワーで国道を屈折させたのであろうか?
事実、結構日本各地にはそういう背景があるスポットもあるが、ここにおいては背景事情をWebからは調べきれなかった。
日本5周目にいたるまで、何度もこの道を走っている。
当然紀三井寺も視界に収まっている。
だけれども神社仏閣巡りを趣味とはしていない僕は、あえて立ち寄ったことは無かった。
ただ、今回は「今回は行ってみよっかな?」って思った。
上の写真のようにお寺が視界に収まってから判断した。
なぜなら今日ははポカポカの快晴でいい天気。そして紀三井寺の桜が満開を迎えているのが、国道を走る車からでもよく見えたからだ。
こういうテキトーな判断ができるのが、一人旅のメリットである。
国道42号がカーブするポイント。
寺の境内はここからさらに奥なのだが、もうこの時点でこの周辺は参拝客の人がゾロゾロと歩いている。
しかもこの先は道も狭そうだし、駐車場は満車かもしれない。
僕の車はHUMMER_H3っていうんだけど、かなり横幅が広いし左ハンドルで運転しにくいしで、あまり狭路には入りたくない。
もしものときのUターンも大変だし。
従い、国道沿いのコインパーキングにスルリと入った。
上の写真のように、紀三井寺のガーディアンのようにモスバーガーがあるので、朝食がてら入ってみた。
そしてホットサンドを1つテイクアウトにした。
境内で食べられそうな場所があったらこれを食べよう。
ここが入口だな。
護国院の楼門。これは重要文化財とのことだ。
そいてその周囲の桜の見事さに感動したわ。これには僕もニッコリだ。
この桜を見ただけでも、ここに来た意味があったと感じる。
境内でモスバーガーをムシャムシャ食べるのもよろしくないと思い、周囲の桜がいい感じに咲いている場所に移動した。
まず食べよう、ホットサンドはホットなうちに。
「300円したわりにはペラペラな感じなのな…」と、普段モスバーガーを食べない僕は思ったが、味は確かだった。さすがモスバーガーさん。
なにより桜の木の下でご飯を食べる。これ花見の代表的な楽しみ方じゃないですか。何を食べてもうまいに決まっている。
さらに、ここ紀三井寺のソメイヨシノは関西で一番開花が早いのだそうだ。
つまり関西で今年最初に満開の桜の下でモスのホットサンドを食べているのは僕なのかもしれない。優越感しかない。
では、改めて楼門をくぐり境内に入って行こう。
階段がマジで急だ。本堂までは231段あるらしい。
いや、段数だけ見ればたいしたことないように思われるかもしれないけど、傾斜がえげつないんだ。
運動不足の身には堪えますな、これ。
中央の立て札にご注目いただきたい。
この石段は「結縁厄除坂」という名前だそうだ。
若き日の「紀伊国屋文左衛門」が、結婚と出世の契機となる出会いをした坂なんだって。
そしてさらに気になる表記が。
是より上の登段最速記録は二一・九秒
無謀な挑戦はおやめください
(元陸上100m日本記録保持者・青戸慎司選手)
なるほど。煽っているのか諫(いさ)めているのかわからないフレーズだが、少なくとも僕はやらない。
「青戸慎司選手」はソウルオリンピックやバルセロナオリンピックに出場した、若山出身の陸上選手だ。
しかもだ、2018年から「紀三井寺福開き 速駈詣(はやがけまいり)」というイベントが始まったらしい。
年始にみんなでここをダッシュで登り、そのタイムを競うようだ。
「鯉の滝登りに開運を目指せ!」的な意図だそうだが、なかなかにパワフルな行事ですな。
初回は青戸慎司選手もゲストとして来たそうだぞ。
途中で足を停めて桜を見上げたりする。
決して息が切れたり足が限界に来ているからではない。桜が綺麗だからだ。
ゼーゼーと荒い呼吸をしているのは、この桜を見て興奮しているだけだ。いたって普通。
階段の途中には湧水がある。
これが紀三井寺の名前の由来となった湧水の1つだろうか…?
実はね、紀三井寺って僕はあんまり由緒とか知らないんだけど、名水が3つ湧いていることがこのお寺の名前の由来になっているようなのだ。
ツーリングマップルの情報から知ったのだけれど。
"紀三井寺の三井水(さんせんすい)"という名称で、「日本名水百選」にもエントリーされているのだよ。
境内と黄金の仏像
石段を登り切った。暑い、疲れた。
まずは右手に仏殿っていうゴッツい立方体のお堂がある。最強の守備力を誇っているようなフォルムだ。
ちょっと境内での写真がないので、国道から遠望したときの写真を引用する。
これが仏殿ね。文字通り新しそうだ。
このすぐ前に下界を見下ろせるスポットがある。
まずは登って来た街並みを見降ろそうそうではないか。
すげー絶景だな!!
いやこれ、頑張って石段を登って来た甲斐があったというものですな。
なんか足がプルプルと小鹿のように痙攣しているけど、そこまで足を酷使してきたことが報われた瞬間だ。
あの下界の町の中から一気に石段を上ってきたのだな。
遠くには和歌山市の由緒ある景勝地である「和歌の浦」も見えているぞ。
しいて言うのであれば、ちょっとだけ残念なのは、ここまで登ったらまだ桜がほとんどツボミだったことだ。
2つ前の絶景写真を改めてご覧いただきたいのだが、写真の下半分は全て桜の木なのだ。
これらが満開になったら、桜の花に包まれるように下界の町を眺められるだろう。
想像するだけで鳥肌が立つような絶景だ。
あと5日…ってところかな?僕が来るのはちょっと早すぎたのかもしれない。
続けては本殿だ。
小さな堀に、これまた小さな朱塗りの橋が架かっているのが風流だね。
頭上の桜は2分咲きといったところだろうか?
実は、和歌山県のソメイヨシノの開花宣言は、ここ紀三井寺の標本木が基準となっているそうなのだ。
和歌山の桜の基準となるスポットなのだ。
なぜ和歌山県内に数ある桜スポットの中でも、この紀三井寺がエントリーされたのかというと、かつての第二次世界大戦の和歌山空襲で、多くの桜が燃えてしまったそうなのだ。
そんな中でも紀三井寺の桜は無事だったため、標本木とされたそうだ。
そう考えると、境内に少しずつ咲いてきたこの桜たちが、とても愛おしいよね。
そして咲いたばかりの桜はとても生命力がみなぎっているように生き生きしている。
満開前ならではの力強さかもしれない。
本殿で参拝をした。
この1年はいろいろと人生に動きがありそうだからな、無事を祈るのだ。
提灯にも書かれているが、ここは救世観音宗の総本山なのだそうだ。
しかし僕自身はあまり知識がないため、これ以上は語れぬ。
でも開創が西暦770年だというから、気の遠くなるような歴史があるのだ。すごいところに参拝できたものだ。
これは多宝塔だ。これまた重要文化財だ。
周囲の桜は1分咲きくらいではあったが、周囲の観光客はみんな春の訪れを喜んでいた。
ホントステキなシーズンだ。境内はどこも観光客で賑わっており、僕もウキウキであった。
さて、僕は仏殿に戻る。
あの最初に見た、セキュリティがゴッツリゴリゴリの建物である。
鉄筋コンクリート3階建ての、強靭な建物である。
その中には金色の巨大な仏像があり、入場無料だというのだ。
記念に見て行こう。
はい眩しい。
目がくらんだ。なんだこの部屋。
大千手十一面観世音菩薩像という、高さ12mの巨大な千手観音が中央にチュドーンと聳えていた。
木造の立像としては、日本最大の大きさなのだとか。
そしてこれは「松本明慶さん」という仏師さんの作で、2007年に完成したもの。
まだ歴史が浅いので、これだけピカピカなのだろう。
ちなみに100円払うと、頭のすぐ脇くらいの高さの回廊まで登れるそうだ。
いや、それはいいや…って思った。
僕は下から見上げるくらいの上下関係でちょうどいい。
髪の毛が青いのが、なんともオシャレだな。
寄木造りの仏像で、ここで組み立てたのだそうだ。従い、よく見ると正中線が走っている。なるほど納得。
そして「あれ?小指から赤い糸が…?」って思ったのだが、両手の手のひらの間から出て入るっぽい。
そして用途は不明だ。Web検索してみたが、僕の探した限りではこの用途について触れられているページは無かった。
たぶんだけど、この赤い糸は僕にか見えていない。
僕と千手観音との赤い糸だ。ラブ。
紀三井寺は進化する
こうして日本5周目の僕は、桜とモスバーガーを堪能して紀三井寺を後にした。
今でもよく覚えている、ステキな思い出である。
さて、つい先日の2022年3月下旬のことだ。
日本6周目の紀伊半島を走る僕が、再び紀三井寺の前にやって来た。
紀伊半島にはかろうじて桜前線が到達したようだが、まだまだ1分咲きにも満たない状態だ。
今回はあそこには行かなくていいんだ。今回は今回でやることあるから。
…こうして撮影したのが、トップに掲載した写真である。
懐かしい思い出に駆られながら撮影した。
そうそう、2020年にはエレベーターが設置されたそうだよ。
上まで少し楽に行けるようになったのだ。
そこまでは知っていた。
旅を終えて帰宅後に改めて調べると、2022年4月頭にケーブルカーも運行開始!!
…とのことだ。
うおぉ、アツいな。どんどんハイテク化が進んでいくのな。
Webを調べていると、仏殿の右側あたりに山頂駅が設置されるらしい。
3月末開業であれば、先日お寺の前を通った僕の視界にも収まっているハズだよな…。
遠景を撮影した写真を改めて見返してみた。
あった。メッチャちょっとだけ、ケーブルカーのレール部分が写っていた。
さて、2022年の春を生きるあなたにお知らせとご提案だ。
今年の紀三井寺の開花宣言は3月25日、満開は3月31日とのことだ。
ピカピカのケーブルカーで満開の桜を見ながら丘の上まで登ってみてはいかがだろうか。
僕が10日ほど早くて実現できなかった夢、叶えて見てほしい。
以上、日本6周目を走る旅人YAMAでした。
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